再分配政策と経済政策を切り離して考えてはいけない
2018/08/11 21:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:miyajima - この投稿者のレビュー一覧を見る
安倍政権に批判的な方の多くが、アベノミクスも批判されています。ですが、金融緩和と財政出動についてはそもそも安倍政権オリジナルというわけではなく、マクロ経済の基本中の基本のはず。
しかし、野党はおろか与党内部からも「トリクルダウンに過ぎない」などと批判されるのを見るにつけ暗澹たる気持ちになっておりました。これでは安倍政権以外に選択しようがないではないかと。そんな忸怩たる思いを抱いていた矢先、本書に出合いました。
松尾先生はバリバリのマルクス経済学者、ブレイディみかこはアナキスト(笑
ということで左右という立ち位置で言えば完全に左派。ただし、アベノミクスのうち少なくとも反緊縮の部分については肯定し、それどころかそれを強化すべしと説きます。
マルクスの唯物論は一言で言うと「結局世の中メシの問題だ」というもの。それはマルクス主義の基本中の基本。世の中はメシの問題(土台=下部構造)で動いていて、その問題を解決すると主張する政治思想や体制(上部構造)が選択されるというのが唯物論の考え方。
食べていけない貧困層がいっぱい出てくるとどういう上部構造が選択されるかと言えば、メシの問題を解決してくれる政治体制に決まっている、と説明します。
世界的にみて左派は反緊縮の流れで一致しているのに、なぜか日本の左派は真逆を選択しようとしていることの危険性を説いた本書。感情的な批判ではなく非常に説得力に富む本なので、一人でも多くの方に読んでいただきたいと願う次第。
右とか、左とか。
2018/08/22 21:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:walkalone - この投稿者のレビュー一覧を見る
みんな、考えは同じではないのが当たり前なんだと思う。右派にも、左派にも、お互いに言い分があるので、理解しようとすることが大切なんだと思う。考えが違う人とも、いつか分かり合える日が来るといいな、と思う。
日本の左派のつまずきを説いた書です
2018/05/13 10:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、日本の左派、リベラルについて解説した書です。筆者が、我が国のリベラルが躓いたのは、その下部構造にある経済だったと主張します。この経済に注目し、経済のデモクラシーを求めていかなければ、左派のつまずきは解決できません。新しい視点から左派の将来的な道を示してくれる良書です。
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本のリベラル、左派について、一つの分析をしていて、おもしろかったです。下部構造としての経済の重要性を、認識させられた。
投稿元:
レビューを見る
経済が重要だということはわかった。ヨーロッパの現況もわかった。
だが、レフト1.0だとか2.0だとかはどうでもいい。オタクの言葉遊びだ。
投稿元:
レビューを見る
うーん、俺Leftだから、当然反緊縮だよ?
弱者だからこそ保護が必要だと思う側だ。
だから、この本でいうLeft1.0的なことを、この本で言う「日本型リベラル」が主張してないとも、ましてや緊縮を主張してるとも思ってないんだけど、
いわゆる「フツーの人たち」がLeftを批判している文脈が理解できたのは良かった。
Leftは緊縮を主張してると思われてるんだな。そりゃ排斥されるわ。
ぼくとしては「安倍政権はセイの法則だよりで、金融で反緊縮してるけど、効くわけがない。使う人間に直接分配しなきゃ、需要は喚起できない。成熟社会で、供給が需要を生む筈ないだろ?」ってこと
また(若干の違和感はあるけど)右派は人々を左右に分けて区別し、Leftは上下に分けて区別をしてる。というのも、なんとなくわかった。
この本の主張は「もう安倍政権はこのまま完全雇用まで走り抜けるから、Leftは出る幕ないね」というもので、ぼくもトキすでに遅し。と覚悟せざるを得なかった。
投稿元:
レビューを見る
経済運営で何とかいっている安倍政権。ただ、消費増税圧力に抗うことは難しく、東京五輪後の景気後退に対処できないとの予測は明快。では、対抗勢力は何をすべきなのか――という一考に値する内容。
投稿元:
レビューを見る
左派が語るべき経済のあり方を学ぼうとすると期待外れ。そういう話題になると不思議と話がそれて、断片的にしか把握できない。対談本に書いてする必要があったかなーとも思う。対談をもとにもうすこしまとまりのある構成をとれたのではないか。反緊縮ってとこやケインズ的に需要を作り出すべきってあたりかな、せいぜい把握できたのは。需要が不足していたというのはアベノミクスによろしくという本でも学んでいたため、すとんと腹に落ちた。
左派が経済を語る必要性を啓蒙するための本としては、優れている。左派思想史としても鋭い分析が随所にある見られ、目を開かされる。過去の左派の思想へのツッコミは的確だし、新たな時代の左派像にも共感する。
地に足つけて金の話をしようや、という当たり前のことに改めて気づかせてくれる良書。
投稿元:
レビューを見る
ちょっと難しかった。拾い読み。
ブレイディ:左派とは本来、社会構造の下敷きになっている人々の側につくものであり、不公平は不可避だという考え方を否定するものではなかったか。
ハニス・バルファキス「誰もがきちんと経済について語ることができるようにするということは、善き社会の必須条件であり、真のデモクラシーの前提条件だ」これがトランプや極右政党台頭の時代に対する左派からのたった一つの有効なアンサーであると確信する。この対談は二人の学者から多くの貴重なことを教えていただいた時間の記録だった。
左派の人がイデオロギーばかり唱え経済にあまり言及しないのに違和感を持っている。育った家庭が経済的に苦しく、高校は遠方で中学を出たら働けという母に対し、定期代は自分で出すから行かせてといった高校。アルバイトをすると、今時定期代も出せない家は無い、と担任に言われる。そういう経緯から、まずは経済だ、という考えを持つブレイデイ氏。
北田:きっと担任は本当に嘘をつかれていると思ったんでしょう。背景の生活感が大切。
ブレイデイ:その時に私はUKの音楽を聞いて(15歳だと1980年)「ワーキングクラス」というのが英国にはあるらしい、わたしもワーキングクラスなんだって思った。それでいつか本当にワーキングクラスのいる国に行こうって決めた。
保育士になる前にはロンドンでフリーの翻訳をやりその時投資・金融関係の翻訳をけっこうやったという。英語の日本語訳も適切な語で訳す必要があるという。
もはや「右」対「左」の時代ではなく、今は「下」対「上」の時代。「移民や難民を受け入れる多様な社会政策というものは、緊縮とは絶対に両立しない」(ヤフーニュース・2015.9.7 欧州の移民危機:人道主義と緊縮のミスマッチとする文を書いた)
あとがきにかえて
松尾匡:経済学者:日本に左派の反緊縮運動を!
北田暁大:社会学者:ソシャル・リベラリズムの構築に向けて 日本語訳は何?
2018.5.1第1版第1刷 図書館
2018.6.3NHKAM著者からの手紙
2018.6.16当初登録
投稿元:
レビューを見る
「リベラルは自由や平等や人権を訴える金持ち。レフトは自由と平等と人権を求める貧乏人」とは著者の一人の英国人の夫が息子に言った言葉らしいが、支配層であるリベラルの意識がレフトから乖離し、経済成長に気を配らなくなったことが特に欧州の経済停滞の原因だというのが、著者たちの共通認識だ。
経済政策を初め、安倍政権の政策に理由も示さず否定的コメントをするところはいかがかと思うが、それ以外は、欧州の実例を踏まえつつ、経済政策の変遷をまとめていて、参考になるし、ブレグジットやトランプ支持の背景がよくわかる。
投稿元:
レビューを見る
専門の異なる3氏の鼎談で、主に欧州の政治、社会から日本のそれを分析しつつ、「左派」に対する提言が行われています。以下、要約です。
<ネタバレあり>
若者をして「『ビッグになろう』と考えたらあかんのかな」と言わしめる左派主導の脱成長的な風潮。左派はアイデンティティポリティクスや文化の問題に耽溺し、「下部構造」を忘れてしまったのではないか。
一方、欧州ではドイツあるいはECB主導の緊縮政策に対し反緊縮(緩和的な金融政策と積極的な財政支出)を唱える左派(一部右派)が勃興。例えば英国では、2015年に労働党党首として強硬左派、”オールド・レイバー”のコービン党首が選出され、2年後の総選挙で善戦。かかる左派は、第2次大戦直後に勃興し70年代に行き詰まった”レフト1.0”、その反省の上に立ち90年代に隆盛を迎えるも貧困に対処できなかった”レフト2.0”の思想を乗り越える、”レフト3.0”と言えるもの。
”レフト3.0”は、”レフト2.0”がもたらしたマイノリティによる多数派の抑圧から脱し、”労働者”全体を復権させることを目指し、金融緩和と”大きな政府”(財政出動)を通じた経済成長、雇用拡大がその政策の目玉となる。一周して”レフト1.0”に戻った感もあるが、現代的にジェンダーやマイノリティの問題も取り込んでいるもの。
このような欧州の状況を踏まえると、日本はどう評価されるか。まずアベノミクスについて。3氏は、アベノミクス≠ネオリベ政策と評価する。金融緩和と財政支出の組み合わせであるから。これに対し左派は緊縮主義的に批判する。欧州の状況と比べると”ねじれ”が存在。アベノミクスにも第2の矢=財政支出が不十分という問題があるが、(旧)民主党政権下と比べ明らかに安定している安倍政権下の経済を前にしては、「きちんとした経済政策を出していかないと、いつまでたっても有権者の支持を得ることはできない」(176ページ)。「『ご飯をたべたい』という、民衆として普通、当たり前の願いを拒否したり、侮蔑したりしていては、左派は信頼を得られない」(216ページ)。そのため「コンクリートから人へ」の実装、消費増税反対・反緊縮を訴えるべき。
(上記では端折っていますが、ブレイディみかこ氏のあげる欧州、特にイギリスの人の生き方、考え方の例がいちいち魅力的でした。是非入手してお読み下さい。)
以上が要約。経済政策だけ見れば3氏が左派に期待する理由は薄い訳ですが、そこはやはり”リベラル”(ただしこれも多義的)な社会を守るため、野党に期待せざるを得ない訳であります。
選挙を通じた民主主義政体を採っている以上、いつでも政権交代可能な緊張感のある状況が望ましいと思いますが、失業こそしなかったものの私も(旧)民主党政権下では経済的に苦労させられました。当時の主要メンバーが各所で生き残っている野党の状況をみると野党に票を投じることについては躊躇させられます。
投稿元:
レビューを見る
《Summary》
大雑把にいうと左派による左派自省の書。
現在の左派(日本でいうと旧民主党系・共産党系)は、経済について語られることなく、イデオロギーの戦いに終始しているということを、左派自身で反省し改善するための方策を中心に記載している。
面白いのは下記の4極の差異と比較を通じて、日本の左派として取るべき道を記載している。
①. ブレグジットに揺れ動くUK
②. ドイツを中心とした緊縮財政のEU
③. 極右/立つグローバルに舵を切ったUS
④. 右派的な政治スタンスを取りつつ金融緩和を続けるJP
結論としては、右派左派というイデオロギーで思考を分断するのではなく、"経済"を物事の中心に据え置いて政治的な判断を行うことが良いと(まぁ当たり前のことを延々語っていたが)
ケインズ経済学/新古典経済学を軸に記載しているので、割と理解しやすい内容かなと。
《Topic》
面白いのは、著者は左派だけど、左派のダメなところを指摘すると、左派の周りの方々から右派扱いされる…という、面白い現象が起きている。
回り回って、左派的な人が、「現政権は良いんじゃね?」という事を立証してしまっている事が、読んでいて面白かった。
《Forecast》
ただ、イデオロギーに関係なく日本の経済状況は、東京オリンピックを境に冷え込むことは見えているとの事。数年後を見越して準備しておいたほうがいい。
投稿元:
レビューを見る
レフト3.0…いい響きだ(^-^)
小生もリベラルではなく、レフトを名乗ろう(^o^)/
もっと早く本書を読んでおけば良かった、と後悔。対談形式なので、分かりやすい、けど難しい議論もあり、という感じで、ボブの知的好奇心をくすぐってくれる。
経済学の再々々勉強をしなくては…と考えるわけだが…(^^;;
投稿元:
レビューを見る
野党の経済政策のなさや、成長が欠落していることに違和感がある人にはおすすめ。モヤモヤが無くなった。対話式だが読みやすい。章によって段組がバラバラなのが玉に瑕。
投稿元:
レビューを見る
「無駄遣いヤメろ」も良いんだけど,それしか言うことないのかよ⁈
どうやったら豊かになれるのか,明日のメシにも困り,1年後の身分保障もままならない不安から抜け出せるのか⁈
何でそれを大声で言わないんだよ⁈
観念的な綺麗事ばっかり並べてんじゃねーよ!
って思うから,左派は信じられないんだ〜って,ずーっと思ってきた.
この本には,左派がそこから脱却するヒントが溢れていると思う.今までの左派の歩みに対する論評もなるほどと膝を打つものばかり.
願わくば,同じ内容で右派,特に虐げられてるにもかかわらず,安倍政権を熱烈に支持しているような人達が手に取るようなタイトルと切り口で再編して出版して欲しい.