ヴィーガンの理屈
2021/09/28 17:51
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
動物に権利はあるのか。近代哲学のカントあたりから説き始め、その変遷を辿りながら現代の応用倫理学に至る。シンガーとか有名な哲学者の論によりながら、倫理学のどういう内容に即して動物の権利を根拠付けるのかという議論が本書のもっともおもしろい部分。第3章からはいくぶん告発ルポめいた語りになり、確かに心を乱されるものの著者の文面も説教めいてくる。正直この本の後半は、現代の倫理問題をマルクスと結びつける発想もおもしろいとは思うが、前半に比べて少し落ちる。しかし入門としてこの内容が新書で読めるのはありがたい。
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「牛や豚の肉は食べても良いが人肉はだめ」の理由をこどもに説明できるか。動物を愛玩するか食べるかは人間社会の常識や慣習によって決められていることを文明や商品化の否定、地球温暖化や乱開発といった論点を持ち出して考察している。
動物倫理を知ることは地球を救うことに繋がる
2021/07/12 09:56
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投稿者:魚大好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
どれほど多くの動物が人間のために犠牲になっているのか、深く考える知る必要があるが、ベーガンになって動物性食品を一切摂らないようにすることは、ストレスになり、本末転倒になってしまう。減らす努力はもちろん必要だけれども。
ペットショップ、動物園、水族館は無くすべきだと強く思う。
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環境とマルクス以外ざっと読んだけど立派だと思う。ゼミぐらいで使うにもよさそう。同時に出版された浅野先生のほどおどろおどろしていない。
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ペットや害獣駆除の話だけでなく、ブラッドスポーツに動物性愛、動物園や水族館など守備範囲は広い。特に本書は食肉生産と動物実験についての是非が中心。前者については実践に対する筆者の冷静なバランス感覚が絶妙。後者については医療用だけでなく食品や化粧品分野が小さくない市場であることを教えられた。
映像資料が氾濫する現在において、動物園や水族館が歴史的役割を終えた遺物である…というのは納得できる。
「動物」と一括りにされてるが、線引きがかなり曖昧。ある動物が苦痛を感じるかどうかは未だ未知のところが多いだろう。一説で魚類や鳥類が後付けで含まれるようになった経緯を知って、今だってまだ過渡期ってことよねと思った。
積極的に自分のスタンスを表明したいほど動物愛護精神に富む訳でもないが、愛玩動物は生理的に受け付けないし、そもそも他の生き物を「飼う」=生殺与奪を握る、ってのは野蛮ってもんでしょ…とは言え、我が家に鉢植えはあるし、話し掛けたりもする。食物連鎖は現実だし、弱肉強食は原則だと思う。
馬に代わる車がなく毛皮に代わる繊維がなかった時代と現代とで考え方が変わるのは当然だけど、科学技術の発達と社会的背景を絡めて先駆者の考察を追うのは、純粋に興味深い。
「現代の常識である動物福祉的な見方」とあるが、現代日本社会に限定されるよね?
「動物虐待が法で罰せられる」ってのも、少なくとも先進国諸国では普遍的なんだろうか?かなりお国柄があるような気もするけど。
もっと言っちゃうと、動物の方は人間に危害を加えても、その動物社会内で何らかの制裁を受けてたりしないよね、恐らく?だから何よって言われても困っちゃうんだけど…。
そもそも動物理解に乏しいヤツがこんな本読むなって言われると、全くその通りだろうし…歯切れ悪くてスミマセン。だって普段から、犬猫を飼ってることを声高に明言し、あまつさえ「あなたも飼ったら?」みたいなことを平気で言う輩に辟易してるんだもん…「ソレって虐待よね?」って言い返せる日が早々来るとは思えない、今のニッポン。
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良著。特に前半の論述の明晰さ、まとまりの良さには目を見張った。田上先生は文章家としても優れていると思う。
高評価を前提に敢えて重箱の隅をつつくならば
・アニマルライツの根拠が知的能力に求められることの詰めた論証がなくサラッと流されている印象(しかしおそらく多くの日本人読者的にはそこが最も疑問なところだろう)
・後半は実践的ではあるがやや散漫、平板に感じた
こんなところか。
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動物倫理学の入門書でもあるが、倫理学、厳密には規範倫理学の入門書でもあります。動物倫理学といえばお恥ずかしながらピーターシンガー氏くらいしか分からず、功利主義的な立場からの物言いは理解はできるけど、地球の裏側のキッズことまで考えられへんな〜という稚拙な印象しかなかった私ですが、本書では規範倫理学の3つ(2+1)の柱をもとに展開されていく動物倫理学を明快な文章で書かれていました。動物が可哀想という感情に訴えるのではなく、理路整然とした動物倫理学には批判すべきところが見当たらず私も小さい一歩から始めてみようと思いました。
また、マルクス研究者でもある筆者は最終章でマルクスと動物倫理学を架橋しようと試みていてそこも独創的で興味深かったです。
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読書会の課題図書。一部極論がはいっていて受け入れられないな〜と思っていたけど、うまく否定する術がなく心に残る一冊。確かに動物園や水族館て今は要らないかもしれない。でも全ての動物が弱肉強食な世界で勝ち抜いた人間だけそんな譲歩って必要なのだろうか?
大豆やらなんやらで肉らしいものは作れるかもしれないけど、それってよくSFで描かれてるディストピアじゃん。そこに向かってわざわざ邁進していく必要ってある?
ただし愛玩動物については人類として責任を持つから、どうかこのまま繁栄させてください…。
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新書という形式では本邦初の動物倫理学の入門書。これまでの人類の動物への扱いは基本的に不当であり、動物に権利を認め、動物を「生きた道具」として使わない文明とライフスタイルをこれからの人類は構築すべきだと主張。
倫理学の3つの主要学説である功利主義、義務論、徳倫理のエッセンスの解説から始まり、それぞれの立場に基づく動物倫理学の経緯や考え方を解説した上で、人類は動物とどう付き合っていくべきかの考察や人間中心主義の問い直し、環境倫理学との対比、マルクスから得られる示唆へと論が展開していくが、動物倫理学やその周辺について理解が深まり、とても勉強になった。
しかし、動物倫理学の考え方には違和感が拭えず、著者の主張に納得できたかというとそうは言えなかった。
まず、動物に人間と同様の「権利」があるとする根拠が曖昧なように感じた。「生の主体性」や苦痛を感じるなどの感情があることが根拠とされているが、やはり人間の持つ意思表明能力、世界の認識能力、言語によるコミュニケーション力など、いわゆる理性といえる能力は一般的な動物とは区別されてしかるべきではないかと思う(著者が人間に近いとして例に挙げているのは基本的に類人猿であり、百歩譲っても認められるのは類人猿の権利だけではないか)。
また、権利を持つ対象となる動物の範囲も不明確である。魚類や鳥類も生の主体たり得る可能性があるとしているが、では、昆虫やエビ・カニなどはどうなのかについては全く語られていなかった(蚊に刺されたからと言って死ぬわけでもないのに蚊を殺すことは動物倫理学ではどう評価されるのか)。また、感情を持つというならば、植物にも感情があるという研究もされているが、植物については権利を認める必要はないのだろうか(そうなれば、人類は餓死せざるを得なくなる)。
そして、肉食を倫理に反すると主張しているが、雑食動物である人間にとって動物を食べることは自然の摂理に沿ったものであり、否定されるべきものなのかという疑問がある。「工場畜産」に問題があるとしても、それはそれとして動物福祉的な考え方で対応すべきことではないか。
ほかにも、「自然の権利」を否定するところで、本来の意味での権利は法的な権利ではなく道徳的な権利である旨を主張しているが、個人的には権利というのは法的なものという説明のほうが理解しやすく、道徳的な権利というのは内容が不明確だと感じた。このように、「権利」などの動物倫理学で使用される用語が観念的で、恣意性を帯びているように思われることも、その議論にあまり説得性を感じない一因である。
以上のように、個人的には、本書の主張には疑問が多く、納得はいっていないのだが、動物と人間との関わり方に関する議論に一石を投じるという意味で、本書の意義は認めるところである。
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触れたことのない動物倫理という学問。入門編にピッタリと思い手に取った一冊だったが、衝撃的な内容だった。人間が動物たちにしてきたこと、現在もしていること、正直目を瞑りたくなるもので、本を閉じそうになったのが本音。でも向き合わなきゃいけない、一人一人が知らなくてはいけない、そう諭してくれる本だと感じた。
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倫理学知らない自分でも基本から説明してくれるのでありがたかった。元々の学問が難しいのでやや難解だったが、、、
3章が兎に角エグい。動物との付き合い方を本気で考えさせてくれる本。環境倫理学の話は批判的な立場で述べられていた。確かに万人が実践できない倫理観を押し付けてるところがキツイと思う。マルクスに関してはそもそもマルクスに関する知識が個人的に浅いのでこれまた難解だと感じたが、言いたいことは分かった。
生体売買は資本主義の悪い部分だと思うから、換えていかなければならない問題だと感じた。
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従来、牛耕や戦馬など動物利用は不正ではあるものの仕方のない必要悪だったが、今日ではその必要性が消失したため、単なる悪と化した。
その前提には、「人間は常に主体であり、動物は客体である」という考えがあり、これに基づき、動物は生きた道具とされている。
倫理的実践は、平常的な個人が常識的な努力で実現できるものでなければ意味がない。
よって、ビーガンは今すぐには不可能であるが、フレキシブルに動物成分を避けるフレキシタリアンや動物成分を削減するリデュースタリアンを目指すのが現実的である。
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動物倫理「学」とは何か、という方向での入門。動物に倫理を当てはめる理由と各理論における位置付け、最後にマルクスにおける動物倫理観は余計な感じがあるが、マルクスの専門家故仕方ないか。
苦痛や幸福を勝手に判断する点、ペットを絶滅に向かわせる視点、動物倫理であって生命倫理ではない点などは広げるべき課題。人類規模がどこまで縮小したら成り立つのか興味はある。
実世界ではない机上論として。