紙の本
平頼盛の思惑
2022/08/02 20:15
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
平頼盛が明晰な頭脳で難題に挑み、事件などを解決していくミステリー仕立て平家物語。
異母兄清盛に疎まれ、権力の舞台から追われた頼盛が、家族郎党を守るために生き残りをかけ頭脳で闘う姿が描かれています。
大切な人たちを守るために表舞台に立たず政局を泳ぎ切った姿が清々しい。
紙の本
歴史に埋もれた謎達
2021/10/03 22:16
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
平家物語の時代を描き、その時代ならではの謎を、平清盛の異母弟・頼盛を通して、解き明かす。主人公の生き様を見れば、時代の権力者に虐げながら、権力の横暴に激しい憤りを抱き、意趣返しのように、生き抜いていく頼盛の姿は、蝶になる前の、芋虫であり、さなぎであり、時として蝶のようにはばたくのである。
電子書籍
歴史ミステリー
2023/04/04 08:02
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
平清盛の異母弟・平頼盛が主人公の連作短編ミステリーですが、平頼盛は、本当に、清盛に疎まれていたのですかねえ……史実はさておき、内容は、現代ならば、DNA鑑定や、指紋といった当たり前の捜査が出来ない時代だからこその面白みアリ。
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日本史が苦手だった。源平の時代なぞ、壊滅的といっていい。
なにせ、出てくる人名が、源、平ばかりなのだ。
そのうえ、彼らは親子兄弟で一文字を共有したがるものだから、
平○盛、平○盛、平○盛、平○盛、源義○、源義○、源○朝、源○朝、etc.etc.etc...
どうしろというのだ。
よって、私は平家物語を読んだことはない。開いたこともない。
平頼盛なんて知らない。その名を見たこともない。
いっそ、だからかもしれない。
これを読んでみようという妙な気をおこしたのは。
まず最初に、家系図があるのが助かった。
平清盛――これくらいは知っている――の名が太字で書かれ、そして、いま一人、平頼盛の名がさらに太字で真ん中にある。
線をたどれば――ふむ、清盛の異母弟だ。
頼盛、よりもりと読むらしい彼が、主人公で、探偵である。
そしてこの本には、5編の物語がある。
これもよかった。
1編に出てくるのは、それぞれ数人だ。
家系図すべてが一度に出てくることはない。
これくらいなら覚えられる、よし!
勇んで読んだ5編は、はたして、たいそう面白かった。
ミステリーの謎にはいろいろな種類があるが、5編がそれぞれにちがうものになっているのだ。
誰が、なぜ、殺したのか。
誰が、どうやって、成し遂げたか。
どれが、あの人の遺体なのか。――などなど、
1編ごとに、趣が違ってたいへんによい。
さらにその上、謎が2段階になっている。
一つの謎が解けた上に、さらに大きな謎が現れる。
これはこうだとわかった。
すると?
そもそも?
ところで? ――などなど、
この次なる謎の現れ方も、それぞれにちがう。
5つの話に、謎は10、なんて楽しみが多いのだろう!
その上、その謎は平家の盛衰、それによる頼盛の人生の節目にかかわるものなのだ。
清盛の弟なら、さぞかしいいくらしをしているだろうと思ってしまうが、実はちがう。
解官、破産、全焼――頼盛の人生は波乱万丈だ。
自分と一家郎党を護るべく、頼盛は推理をする。
一つ一つの謎の解決が、一家の進退を決めるのである。
webにある作者『ここだけのあとがき』によると、古今東西のミステリーのモチーフを、色々と組み込んであるらしい。
私はそれほど数を知ってはいないが、それでも、これはホームズだな、これは犬神家の一族かななどと、みつけるとにやりとさせられる。
頼盛が地面に四つ這いとなって、足跡をみつける下りはまさにホームズだった。
すると、その兄たる清盛はマイクロフトかと想像されるが、むしろマイクロフトとモリアーティを兼ねるような、よほど巨大な存在である。
混乱の時代の兄弟とは、一筋縄でいかない、えげつないものらしい。
この描きようが、大きな読みどころだった。
『禿髪殺し』(かぶろごろし) 嘉応元年(1169年)
『葵前哀れ』(あおいのまえあわれ) 治承3年(1179年)
『屍実盛』(かばねさねもり) 寿永2年(1183年)
『弔千手』(とむらいせんじゅ) 元暦元年(1184年)
『六代秘話』(ろくだいひわ) 文治元年(1185年)
5編で、頼盛の話はいちおうの決着がついている。
けれども、彼の推理譚を、私はまだまだ読みたい。
「あの頃のあの話」などは、ホームズでもよくあることなのだから、ところで何年のいつ頃には・・・・・・と、次々推理譚が書かれていけば嬉しい。
そうして、いずれ――さらに妙な気を起こした私は、かの『平家物語』を手にするのかもしれない。
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平清盛の異母弟・頼盛を探偵役にしたミステリー。
この作品によると、平頼盛は平家一門が追い詰められるや袂を分かち、敵方の源頼朝を頼って鎌倉へ逃げ延びたらしい。一般的にはあまり印象のない人物だが、そんな彼を主役にするとどんな物語になるのか、ミステリーというよりもそちらに興味が湧いて読んでみた。
「禿髪(かぶろ)殺し」
『平家一門を誹謗中傷する者達を取り締まるために、清盛が都中に放った赤い衣の少年たち』である「禿髪」が殺された。清盛に弓引くような大罪を犯したうえに、死体を隠すわけでもなく晒すわけでもなくその場に放ったのは誰で、何故なのか。
「葵前(あおいのまえ)哀れ」
高倉天皇(安徳天皇の父)が寵愛した葵女御が毒殺された。厳重に警備され口にするものについては特に神経質なほど気を付けていた葵女御に、誰がどうやって毒を飲ませたのか。
「屍実盛(かばねさだもり)」
源氏の木曽義仲から、敵ながら恩人でもある斎藤実盛の屍を、首のない五つの屍から特定して欲しいと頼まれる。断れば頼盛を討ち自らも自害すると脅迫する義仲に押し切られ難題に挑戦する。
「弔千手(とむらいせんじゅ)」
木曽義仲を滅ぼした源頼朝が、その息子でまだ幼い義高まで討った。義高の許嫁である頼朝の娘・大姫は以来寝込んでしまう。なのに何故か頼朝が義高の話をすると起き出し頼朝のところまでやって来ては睨みつける。頼朝の話が聞こえない場所で寝ているはずの大姫になぜ頼朝が義高の話をしていることが分かるのか。
「六代秘話」
清盛の嫡流の血を引く曾孫『六代君』を匿っているとの密告で頼盛の元にやってきた北条時政。頼盛の息子・為盛が実は『六代君』ではないかと疑うのだが、頼盛は認めない。さらには三日後には為盛が『六代君』ではない証を出すというが、それは何なのか。
頼盛がいかにもな名探偵キャラではなく、今陥っている窮地をなんとか脱するために必死に頭を働かせているという様子が新鮮だった。一方で現代の捜査に通じるような知識を持っていたのも面白い。
謎解きそのものはそう複雑ではないが、その謎解き後に明かされるその奥の真実であったり、その後の展開が歴史小説として楽しめた。
この作品での清盛はダーク。平家一門の栄華を極めた棟梁だけあって、先の見通しの鋭さであったり抜け目なさであったりというところが印象的だった。
清盛以上に血筋が確かでありながら(だからこそだろうが)清盛に抑圧され続けていた頼盛が、なんとか清盛の手の中から開放されたいと足掻く姿が終始描かれていた。
戦国時代であればその時々の情勢によって立ち位置や主君を変えるというのはよくあることだろう。しかしこの時代、しかも清盛の弟が一門から離れるというのはかなり勇気の要ることだったと思う。
もちろん彼の実際の人となりは分からない。しかしこの作品のように『生き延びる』ことを第一に、周囲にどう見られようが悪あがきに見えようがしぶとく立ち回っていたのであれば、それはそれで生き様としてアリだと思う。
少なくともその結果、清盛の男兄弟では唯一彼だけが壇ノ浦の戦い後も生き延びたわけだし、その息子たちも生き残ることが出来たのだから。
頼盛がなりたい『蝶』は華やかな地位に返り咲くという意味を指すのではなく、誰の目を気にすることなく誰にも顧みられることなく自由に飛び回る蝶そのものだった。だとすれば歴史に埋もれ忘れられていったことは彼の本望かも知れない。
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平家物語というより清盛があまり好きではなかったので、頼盛についても全く知らなかったのですが、3話めくらいからどんどん面白く読んでいけました。
あくまでも小説なのでどれだけ本当の頼盛像に近いのかわかりませんが、親兄弟でも討伐されてしまう世の中で家族(一族)が平穏に暮らしていけることのみを抑圧された環境でも考え、手に入れていく生き様は本当にかっこいいものであるし、後世に対して功績が残されていないことこそ、頼盛の狙いだったのかと思います。
スマホ片手に人物を調べながら読みました。
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連作短編5編
平頼盛が謎を解決する形で一族郎党を守っていく.権力を握るのではなく権力をうまく交わしながら,先に自由を見ている姿を蝶にたとえ,強かに生き抜く姿が潔い.
だけどかなりの子沢山.そちらに感心しました.
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【収録作品】禿髪(かぶろ)殺し/葵前(あおいのまえ)哀れ/屍実盛(かばねさだもり)/弔千手(とむらいせんじゅ)/六代秘話
平清盛の異母弟・平頼盛を主人公とした連作。平家の栄枯盛衰を背景に、自分を頼りとする一族郎党と共に「生き延びるため」、知恵と交渉術を駆使するさまを描く。
堅実で忍耐強い頼盛は、よい主人であり、家長だとは思う。
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題材やストーリーは悪くない。
ただ文章がプロの作家とは思えないくらい読みづらい。もう少し熟達して欲しい。
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平清盛の異母弟・平頼盛が主人公の連作短編ミステリ。
下敷きとなった物語から探偵役として頼盛が解き明かしていく謎や清盛との戦いなど、歴史物語としてもミステリーとしても楽しめる。おもしろかった!
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清盛の異母弟、平頼盛が主役のミステリ連作短編集。
平家全盛期から源氏の天下に移行する世の流れの中で、一族郎党を守ることに全力を尽くす頼盛の人生を描いた話でもある。謎を解く動機が権力者にゴマをするためだったりと最初のうちはあまり好感が持てない頼盛だったが、読み進んでいくうちに波乱万丈な人生を頭脳で乗り切った彼に敬意を表したくなった。
ベストは、木曾義仲から戦死して首のない5つの死体の中から恩人の死体を特定してほしいと迫られる「屍実盛」。
しかし平家って名前が”〜盛”という人が多すぎて困る。
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『平家物語』を下敷きに、うまく料理した短編連作。平清盛の異母弟頼盛を主人公とした歴史小説と本格ミステリの融合というもの。それなりに面白く読め、力のある作者だとは思うが、「融合」のせいで中途半端な感は否めず、絶賛とまではいかない。最初の二作に登場する清盛の怪物ぶりにはわくわくした。ミステリとして推理に重点を置くか、歴史小説として人間像を強く描くか、どちらかにした方がいいと思う(個人的には後者が好み)。
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「源平の怨霊」や「我れ清盛にあらず」等と同じく、平頼盛物(そろそろそういうジャンルが出てくるかも)。
歴史はふまえているものの、きちんとしたミステリー。謎解きについては、それゆえ、色々な制約があるし、多分に叙述物風なところもある。
しかし、頼盛の人物像を、「生き抜く」というところに置いたのは素晴らしい。表舞台に出ないことの強さ。
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平清盛を頂点とした平家全盛期から源平合戦の動乱期までを舞台に、清盛の異母弟であり一門きっての知恵者と謳われる頼盛が持ち込まれた謎を解いていく連作短篇集。謎に自身と一族郎党の運命が掛かり続け、頭脳で渡り合っていく頼盛の姿を追っていく形式が面白い。当時の時代背景が緻密に描かれ、平家物語有名所しか判らないけど鍔迫り合いの合戦ではない戦いを裏から見る感覚で充分楽しめた。知ってたらもっと面白かったのかも。謎はそう込み入った物はなく手堅い印象だが後出し要素がちょっと気になる。帝が大事に護っていた中で命を落とした寵姫の死の真相「葵前哀れ」と五体の首無し死体のうちどれが実盛のものかを特定する「屍実盛」が好み。
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米澤穂信作「黒牢城」と似たようなコンセプトの連作。平家物語を下敷きにし、平清盛の異母弟頼盛が保身のために様々な謎を解く話。さすがに「黒牢城」のような重厚さはないが、思ったほど軽くはなく、考証も充分。意外と本格的な歴史ミステリになっていた。源平時代に興味があればそれなりに楽しめる。独自解釈の真相はなかなか面白いのだが、そこに至るまでの過程が少々まどろっこしい。ミステリが読みたい!新人賞受賞の「屍実盛」は秀作。著者の今後に注目したい。