電子書籍
氷柱の声
著者 くどう れいん
第165回芥川賞候補作。語れないと思っていたこと。言葉にできなかったこと。東日本大震災が起きたとき、伊智花は盛岡の高校生だった。それからの10年の時間をたどり、人びとの経...
氷柱の声
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氷柱の声
商品説明
第165回芥川賞候補作。
語れないと思っていたこと。
言葉にできなかったこと。
東日本大震災が起きたとき、伊智花は盛岡の高校生だった。
それからの10年の時間をたどり、人びとの経験や思いを語る声を紡いでいく、著者初めての小説。
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紙の本
いつしかそれらを乗り越えて
2023/04/28 20:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
薄い本だ。すぐ読み終えられる。しかし書評を書く行為は、すぐにとりかかることはできなかった。それは書くことがない、ということではなく沢山の想いが波のように、揺れながら私の心に迫って来たから。私の脳裏にもあの日々が蘇った。壊れてしまった日常。それでも維持しようとする建前。それが成立する程度の被害。ピリピリした空気に、ひと皮むかれて表に現れてくる人間の本性。与えられた役割。押しつけられた役割。いつしかそれらを乗り越えて、飲み込んで、前へ進む力を身に着ける。そして冬は去り、春は訪れ、氷柱から陽に輝く水が滴る。
紙の本
この小説の素直さが好きだ
2021/09/22 17:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第165回芥川賞候補作。
惜しくも受賞には至らなかったが、東日本大震災を扱ったテーマに真摯に向き合っている印象を受けた。
今回の受賞作、石沢麻依さんの『貝に続く場所にて』も東日本大震災のあとを生きる若い世代を描いていたが、2011年の震災から10年を経て、若い人たちがあの日とその後を描こうとする姿勢に拍手を送りたい。
作者のくどうれいんさんは、1994年生まれの岩手県盛岡出身の歌人。この小説の主人公である伊智花と同じようにあの震災の時は高校生だったろうか。
俳句や短歌の時は工藤玲音、長い文章の時はひらがな表記の著者名にしているという、そんな彼女のこれは初小説になる。
震災当時高校生だった彼女のその後を点景のようにして描いていく作品で、彼女が出会う人たちもまた震災の傷をひっぱっている。
伊智花は震災体験者といっても、内陸であったおかげで大きな被害を被ったわけではない。しかし、その一方で彼女はそのことに後ろめたさのようなものも感じている。
「何かを失った人間にしか、当事者しか起きたことを語る資格はない、と思うきもち。(中略)綺麗事を言うなと叫ぶ行為そのものが、またひとつの綺麗事になってしまう途方のなさ。」
あれだけの大きな犠牲者が出た災害だけに、そのことを表現することの難しさやもどかしさを実に正直に描いた作品といえる。
東日本大震災をめぐる作品群は、発生から10年を経て、前に向かって歩き出したのだろう。
電子書籍
感動ストーリーを求める世間へ警鐘を鳴らす
2023/03/05 20:30
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投稿者:future4227 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2022年中学入試では麻布、海城などで出題された。あとがきでわかるが、東日本大震災の被災地にいながらも大きな被害を受けなかったために、被災者としての資格がないと思い悩む作者がその複雑な心境を物語に託している。「希望」や「絆」というメッセージをマスコミや周囲から強要されているような同調圧力に違和感を感じる主人公。就職も被災者枠というお情け採用がはたして救済なのか?10年経ってもロウソクや海を見られないトラウマを抱えてしまった人。陸前高田の海を毎日写真で投稿する人。それぞれに震災後の人生が続いている。
紙の本
なるほど
2022/11/22 11:06
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
一口に東北もしくは、東北の特定の県を指しても、
内陸と沿岸部ではまったく違うんだね。
これは、そこで生きていた人にしか書けないと思った。
紙の本
春、氷柱に閉じ込められていた声も融け、出ていく
2021/12/13 15:20
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投稿者:遊糸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊智花(いちか)は、盛岡の高校生で
絵画の全国コンクールに向けて
滝の絵を描くことに熱中していた。
亡くなった祖母が好きだった不動の滝を
どうしても描き残しておきたかった。
そして
東日本大震災。
被災地に送るため、別の作品を描くことになり
それは画集の表紙を飾ることになった。
作品展も開かれ、新聞の取材も受けることになるが
記者の関心は、絵そのものでないことに
伊智花は違和感を覚える。
自信のあった滝の絵「怒涛」は、コンクールで優良賞。
前年の成績よりワンランク落ちた。
最優秀賞に選ばれたのは、大船渡市の女子生徒の
「震災」を題材にした作品である。
伊智花には納得し得ない結果であった
大学生時代を仙台で過ごし
卒業後は地元に戻った伊智花は
フリーペーパーの編集部で働いている。
震災から10年。
その間に出会った人たちは
震災へのそれぞれの思いをときに語り
また、そのトラウマによる行為で示したり。
ここでは
一つひとつのエピソードにふれるのは控えたい。
ぜひ手に取って読んでほしい。
主題からは逸れるが、パンデミックのいま
「うまいものをたべる。人と会う。それが生きるってことよ」
セリカさんのセリフが胸に沁みる。