紙の本
最後の数ページ、泣かせる。。
2021/08/31 22:52
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
ぼろ雑巾のように働く中年男の変わらない夏に突如転がり込んでくる、大人びた少女ととらえどころのない五反田の風俗嬢。「ボクたちは」の時は、在りし日の渋谷系文化を交えたテレビ業界寄りのストーリーだったけど、今回は人それぞれの心に空いた小さな穴を描いている。
忙しさの中でなんとなく年を取ってしまった主人公、母子家庭で大人びていった明菜、五反田の片隅で昼も夜も分からずに生きてきた優香。それぞれが欠けた心を埋め合うように、ファミレスで、市民プールでただの夏を過ごす。「夢に迷って、タクシーを呼んだ」にも繋がるようなエピソードもあって嬉しい。
淡々と懐かしさ・儚さを醸し出す文章といえば、燃え殻さんのエッセイを挙げたくなるくらいここ最近ハマってはいたけど、今回は最後のラジオのシーンでかなり泣けた。本当に良い文章だった。自分がおじさんになっただけかもしれないけど、8月最後に読んだからかもしれないけど。めちゃくちゃ良かった。
紙の本
夏は・・来る
2021/12/13 13:24
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんて手触りがよい文章だろう。
読んでいて夏の太陽の焼けつくような日差し、じっとりする暑さ、そんな空気が感じられる。
自分も物語の中にいる様な錯覚すらおぼえる。
「これはただの夏」
これまで流されるようにただ生きてきた主人公。
いつのまにか中年と呼ばれる年齢になった。
仕事を確保するために潜りこんだ結婚式で出会ったキラキラの黒いワンピースを着たセクシーな優香、同じマンションの母子家庭のしっかり者の10歳の明菜、入院したテレビ局の大関達と過ごした特別に楽しく、虚しいほど突然終わりを遂げた夏の物語。
この本はこれからも僕のそばにいて、何度も開かれる予感がする。
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どんな感想を書いてもネタバレになってしまいそうで、感想が書けない。
僕にとってはいいタイミングで読めたような気がする。
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ノスタルジックな気分にさせられ
現実の寒さを忘れ(読了中冬)
夏の匂いを感じてた。
あんな夏あったよなあ
たまにふと思い返される夏の日
その時は楽しく
来年も同じように過ごせると思ってたけど
同じ夏は来ないんだよなあ
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テレビの下請け製作をしているボクの一夏の経験。同じ階に住む10歳の明菜、F1グランプリ優勝の優香、そしてディレクターの大関、ほとんどこの4人による会話で進む物語が結構深く心に染みる。
章ごとのタイトルが短い文でセンスよく書かれていて素敵です。
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燃え殻さんの小説を読むのは確か2冊目だけど、胸がしくりと痛むような別れを描くのがとても巧いという印象。
思えば自分もいろんなかたちの別れを繰り返しながらここまで来たのだけど、強く残っているものもあれば薄れてしまったものもある、そういう残酷さのようなものも読んでいる最中に自分の中に見たような気がした。
「これはただの夏」というタイトルがとても秀逸だと読み終えた後に思った。胸が痛むようないくつかの別れを知った夏。だけど長い人生の中においてはきっとそこまで大きくない種類の別れで、時々ふと思い出すような別れに最終的には収まるのだろうと思える、そういうことがいくつか起こったひと夏の物語。
テレビ業界で働く主人公が、1人の女性とほんの短期間恋のようなものをして、1人の少々とほんの短期間親子のような関わりを持って、そして長い付き合いだった上司はステージ4の膵臓がんになった。
日々は一転した…とまでは言えない。基本は社畜のように働く主人公の生活の合間に、彼や彼女らとの時間がまるでサブリミナルのように差し挟まれて、そして夏は過ぎてゆく。
突然降り出した夏の夕立の匂いだとか、芋洗いがごとくの市民プールで一瞬見たきらきらした水面だとか、いびつなかたちだけど美味しいおにぎりの味だとか、コンビニで買ったスイカバーを歩きながら食べたこととか、多くの人が経験したことがある出来事が散りばめられていて、だからこそ自分が持っている思い出とも重なって見えるような気がしてしまう。
昔の夏の思い出って、内容は楽しいものなのにどうして感傷的に感じてしまうのだろう、と考えたりした。楽しかったからこそ、なのだろうか。二度と取り戻せないことがわかっているから。そういう感覚って、春でも秋でも冬でもなく夏なんだよな、とつくづく思った。
この方の小説やエッセイは、感想を書こうと思うととても感覚的になってしまう。読んだ時に感じたものを言葉で表現するのが難しいというか、なかなか正しく表せなくてもどかしい。
感傷に浸った小説はあまり好きではないのだけど、この方の小説は方向性としてはそちらなのに苦手だとは思わない。のは、その感傷をどこか冷めた部分で見ているような雰囲気を文章から感じるからかもしれない。
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夏の終わり(もはや冬のはじまりか…)にぴったり。
どの場面も自分の出来事のような感じがして、淡々と。燃え殻さんの読了感がとっても好きだ。
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デビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』がNetflixで映画化された著者の新作。続編ではないものの主人公は本作でもテレビ制作会社に勤めており(その後に展開されるストーリーはやや類型的ではあるものの)半自伝のような雰囲気が漂っている。人生のひとときを確かに一緒に過ごしたのに今はどこで何をしているかも知らない人たち。ノスタルジーの中にスカイツリーを登場させる事でもたらされた時代性がその刹那感をより強調する。読み進める内に読者それぞれのいつかどこかに連れて行ってくれる小説。
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12月に遅めの夏休み(ちょっと長めの連休)を貰って、ちょうど届いたこの本を持って出掛ける。
不思議なお話だった。普通の日常と思いきや、なんだかいつもと違うような数日間。それを主人公は"バグ"と呼ぶ。ありそうでなさそうな、そしてそう長くは続かない、言いようのない切なさが全体を纏う。各章のタイトルがまた良かった。
211217読了、図書館本。
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儚いな。
明菜や優香と過ごす時間は、温かく幸せそうなのに、後ろに垣間見える寂しさが…
タイムリミットのある幸せは、切ない。
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これはただの夏。
夏と同じで幸せな時間もいつか終わりが来る。
読み終えた後のこの切なさがたまらないです。
夏が終わる。夏が終わった。
大好きな作品。
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【これはただの夏】
燃え殻著
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〜あらすじ〜
青春は遙か彼方へ過ぎ去り、自分より好きだった人はもういない。なんとなく独身で、テレビ制作会社の非人道的な労働環境下で働いてきた夏、ボクにバグが起きる。その瞬間、手にしたかったものが目の前を駆け抜けたような気がした。「この切なさは事件だ」とネットと文学界をザワつかせた著者の最新作、切なさと事件はつづく! (Google Books)
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〜感想〜
「ずっと夏が続けばいいのに」
もうすぐ8月が終わり、9月になる。
夏の終わりが近づいてくるこのタイミングに読むべき本に出会えた気がする。
やっぱ燃え殻さんの読み終わった後の余韻が好き。
映画を観終わっても映画の世界観に浸ってそこから動きたくないような感覚。
夏が去って秋になって冬になって春になってまた夏がまたやってくる。
夏の思い出も、また夏がやってきて思い出す。
隣に君がいると思っていたのに。
一緒にプールに行ったこと、
3人でご飯食べたこと、
手作りの弁当食べたこと。
全ての思い出が秋に向けて消えていく。
思い出と共に歳を重ねて成長していくことがこんなに切ない気持ちになるなんて。
「本当のことは簡単に話せない」
凄くこの言葉がわかる気がする。
「またね」の返事が「おかえり」って返せれる未来だと信じて。
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終わり方がめちゃくちゃ良かった。
夏の終わりみたいにすべてが切なくて、目がうるうるしちゃった。
また読み返したいと思える本だった。
明菜いい子かわいい。
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はっとりさんの書評があまりにも八月の陽炎だったので買ってしまった
読み終わってから書評を読み返して、これは半分この本の話で、残りの半分ははっとりさんの話なんだなと思った(書評の感想)
やっぱり夏って季節の流れの中で急に切り取られたみたいに別物みたい
後悔しないように、手遅れにならないように、と思ったりするけれど、そうやってもたもたしているうちに過ぎ去ってしまうからこそ夏らしいのかも、ね!
夏のハッピーセット、後悔の燃えかす付き
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これはただの夏
って言ってるように、
これは自分にとっての日常の1ページだと言い聞かせてるだけあって、
その分ノスタルジーとか後悔とかがすんごい詰まってる。
ノスタルジックすぎて、全体が黄ばんでみえるくらい。
人生に疲れた感じの脇道逸れてる主人公が同じマンションに住んでる小学生の女の子に声かけるんかな、とか、
これはただの夏
っていうわりに大胆な行動に出るなぁ
とかは置いておいて。
まあ、夏ってそういうとこあるよねー、男性ってそういう思考回路好きだよねー、と共感。
ボクたちは、、、が映像化されたみたいに、この作品も映像化したいと感じる人が現れる気がする
小説は絵がないので自分の思い出とかイメージに重ね合わせて、自分の中でできあがるので、何も起こらずに終わる話も自分の中で自然と膨張していくけど。
映像化した途端それは誰かの話になるので、起承転結がより重要になるよなぁとか、考えてた。