大正史講義【文化篇】
著者 筒井清忠
大正時代の日本は、さまざまな外来の文物を貪欲に受け入れ、豊かな社会の到来もあって新たな思想や価値観、生活スタイルや芸術文化を生み出した。労働運動がさかんになり、デモクラシ...
大正史講義【文化篇】
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商品説明
大正時代の日本は、さまざまな外来の文物を貪欲に受け入れ、豊かな社会の到来もあって新たな思想や価値観、生活スタイルや芸術文化を生み出した。労働運動がさかんになり、デモクラシーへの要求が強まるとともにナショナリズムも勃興する。教養主義が成立し、女性の地位が変わり始めるなか、大衆社会化によって多様な消費文化が生まれていった。百花繚乱ともいえるこの時代の文化を、二五人の研究者による最新成果を結集して、イデオロギーにとらわれることなく、正確に描き出す。
目次
- はじめに……筒井清忠/大衆の登場と修養主義の盛行/修養主義からの教養主義の分離/日本のエリート文化はなぜ脆弱だったか/巨大な大衆化・同調圧力の国へ/第1講 吉野作造と民本主義……今野 元/西洋(西欧)派日本ナショナリズムへの道/東京帝国大学法科大学での擡頭/西洋体験とその影響/大正デモクラシーの論客/普通選挙運動・社会主義政党支援・国際協調/大正デモクラシーの終焉と吉野作造の死/敗戦後の吉野作造/第2講 経済メディアと経済論壇の発達……牧野邦昭/経済雑誌の登場/『東洋経済新報』と『ダイヤモンド』/『中外商業新報』と『エコノミスト』/学術経済雑誌と個人雑誌/総合雑誌における経済論争/経済メディア・経済論壇の発達がもたらしたもの/第3講 上杉愼吉と国家主義……今野 元/日本国家の主体性を求めて/東京帝国大学法科大学での擡頭/西洋体験とその影響/天皇機関説論争/民本主義論争/国家総動員の構想/国家総動員体制の成立と日米戦争/第4講 大正教養主義──その成立と展開……筒井清忠/修養主義の登場/ケーベルの教養主義とエリート文化/旧制高校の変化と教養主義受容/マルクス主義と教養主義/教養主義の波/第5講 西田幾多郎と京都学派……藤田正勝/教養と文化/西田幾多郎のT・H・グリーン研究/教養主義/人格主義/文化主義/ドイツの文化哲学の影響/カントおよび新カント学派の研究/第6講 「漱石神話」の形成……大山英樹/「三四郎」から「三太郎」へ継承されたもの/漱石の死から始まる「則天去私」神話/小宮豊隆による「聖人化された漱石像」の構築/「岩波文化」というレッテル/江藤淳による新しい漱石像の提示/「漱石神話」はかたちを変えて受け継がれる/第7講 「男性性」のゆらぎ──近松秋江、久米正雄……小谷野 敦/「恋に狂う男」の誕生/近松秋江の描いた「情けない男」/面白いが読まれなかった秋江/振られた男への同情で売れた久米正雄/中産階級の女性人気を得た「童貞」的青年像/新たな青年像を生んだ大正という時代/第8講 宮沢賢治──生成し、変容しつづける人……山折哲雄/雨ニモマケズ斎藤宗次郎/「デクノボー」願望/「ヒデリ」と「ヒドリ」/方言と高村光太郎/宗教と文学/賢治像の行方/第9講 北原白秋と詩人たち……川本三郎/公の明治から私の大正へ/荷風の葛藤/白秋の父との相克/文学が輝きを持ち始めた時代/孤高の芸術の美しさ/第10講 鈴木三重吉・『赤い鳥』と童心主義……河原和枝/「お伽噺」から「童話」へ/『赤い鳥』の童話/『赤い鳥』と『少年倶楽部』/「弱さ」と正義/「無垢」=「童心」の理想/「童心」の時代/第11講 童謡運動──西條八十・野口雨情・北原白秋……筒井清忠/西條八十と野口雨情/「かなりや」の衝撃/白秋と雨情・八十の対立/童謡観の対立/ほか
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大正時代の文化史
2021/08/20 08:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
大正時代は15年と短かったが政治的・文化的にも明治に始まったり大正に起こり昭和前半までに影響を与えている時代。その思想・情報発信・文学・経済文化を大学の講義に近い形で26講に纏められている。明治の富国強兵・天下国家から「個人」へと思想文化が変化した時代と。また「教養」と言う概念が確立した時代と。昭和に向かう途中でどのように文化が変化していったかを知る上で参考になった。特に吉野作造、上杉愼吉の考え方は必読。
大正という時代の輪郭
2022/12/24 10:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ユープケッチャ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大正時代の文化に関して24名の執筆者の書いた計27篇の論稿をまとめた本。
民本主義、国家主義、大正教養主義、童謡運動、新民謡運動、女子学生服、大衆文学、時代小説、漫画、大衆歌謡、映画、百貨店、カフェーなど、幅広い分野の話が載っている。
また、取り上げられている人物も、吉野作造、上杉愼吉、西田幾多郎、夏目漱石、宮沢賢治、北原白秋、鈴木三重吉、西條八十、竹久夢二、岡本一平、小林一三と多岐にわたる。
ジャンル横断的に多くの論が含まれているが、その背景にある大正という時代の輪郭が、読み進めるうちに色濃く浮かび上がってくる。
わかりやすい
2024/08/08 22:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大正時代の文化について、わかりやすく解説されていてよかったです。大正デモクラシーの背後にあるものに、興味を持ちました。
散漫な印象も
2022/09/28 14:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
興味深い論考もあるが「大正史」という視点でいうと全体的に散漫な印象もある。小林一三は確かに重要な人物であろうが、二講に渡って取り上げるのならもっと論じることもあったのではないかと思うし、ここにバランスの悪さが象徴されている。