読割 50
電子書籍
人間の条件
条件づけられた人間が環境に働きかける内発的な能力、すなわち「人間の条件」の最も基本的要素となる活動力は、《労働》《仕事》《活動》の三側面から考察することができよう。ところ...
人間の条件
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
人間の条件 (ちくま学芸文庫)
商品説明
条件づけられた人間が環境に働きかける内発的な能力、すなわち「人間の条件」の最も基本的要素となる活動力は、《労働》《仕事》《活動》の三側面から考察することができよう。ところが《労働》の優位のもと、《仕事》《活動》が人間的意味を失った近代以降、現代世界の危機が用意されることになったのである。こうした「人間の条件」の変貌は、遠くギリシアのポリスに源を発する「公的領域」の喪失と、国民国家の規模にまで肥大化した「私的領域」の支配をもたらすだろう。本書は、全体主義の現実的基盤となった大衆社会の思想的系譜を明らかにしようした、アレントの主著のひとつである。
目次
- プロローグ/第一章 人間の条件/1 〈活動的生活〉と人間の条件/2 〈活動的生活〉という用語/3 永遠対不死/第二章 公的領域と私的領域/4 人間──社会的または政治的動物/5 ポリスと家族/6 社会的なるものの勃興/7 公的領域──共通なるもの/8 私的領域──財産/9 社会的なるものと私的なるもの/10 人間的活動力の場所/第三章 労働/11 「わが肉体の労働とわが手の仕事」/12 世界の物的性格/13 労働と生命/14 労働と繁殖力/15 財産の私的性格と富/16 仕事の道具と労働の分業/17 消費者社会/第四章 仕事/18 世界の耐久性/19 物化/20 手段性と〈労働する動物〉/21 手段性と〈工作人〉/22 交換市場/23 世界の永続性と芸術作品/第五章 活動/24 言論と活動における行為者の暴露/25 関係の網の目と演じられる物語/26 人間事象のもろさ/27 ギリシア人の解決/28 権力と出現の空間/29 〈工作人〉と出現の空間/30 労働運動/31 活動の伝統的代替物としての製作/32 活動の過程的性格/33 不可逆性と許しの力/34 不可予言性と約束の力/第六章 〈活動的生活〉と近代/35 世界疎外/36 アルキメデスの点の発見/37 宇宙科学対自然科学/38 デカルト的懐疑の勃興/39 内省と共通感覚の喪失/40 思考と近代的世界観/41 観照と活動の転倒/42 〈活動的生活〉内部の転倒と〈工作人〉の勝利/43 〈工作人〉の敗北と幸福の原理/44 最高善としての生命/45 〈労働する動物〉の勝利/謝辞/訳者解説/文庫版解説(阿部齊)
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
全体主義の現実的基盤となった大衆社会の思想的系譜を明らかにしようとしたハンナ・アレントの主著です!
2020/04/11 13:40
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ドイツ出身の哲学者であり、思想家でもあったハンナ・アレントの主著の一冊です。アレントは、ユダヤ人であり、ナチズムが台頭したドイツから、アメリカ合衆国に亡命し、後に大学で教鞭をとり、主に政治哲学の分野で活躍し、全体主義を生みだす大衆社会の分析で知られる人物です。同書では、「条件づけられた人間が環境に働きかける内発的な能力、すなわち<人間の条件>の最も基本的要素となる活動力は、労働、仕事、活動の三側面から考察することができる。ところが、労働の優位のもと、仕事と活動が人間的意味を失った近代以降、現代世界の危機が用意されることになった」と主張し、全体主義の現実的基盤となった大衆社会の思想的系譜を明らかにしようと試みています。ぜひ、一度は読んでいきたい一冊です。
紙の本
学生時代
2023/03/28 21:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:monsieurbutter - この投稿者のレビュー一覧を見る
頑張って読んだな~。ハイデガーと仲が良かったとか、昔も知ってたかな?まあそのことを知ろうが知るまいがこの本の価値は変わらないが。映画を観て掘り出して再読しました。
紙の本
政治的なものの復活
2001/02/27 22:23
15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
アレントの思想の根幹をなすのは、全体主義と大衆社会への徹底的な批判、そして人間の自由に立脚し、複数の人間の意識的な相互活動から織りなされる「公的なもの」による新しい社会の「始まり」の構想である。『人間の条件』は、そのような思想を体系的かつ詳細に叙述した主著の一つである。
アレントはまず、人間の基本的活動力として、労働(labor)・仕事(work)・活動(action)の三つを掲げる。それぞれ、生存のために必要な消費財の生産(労働)、有用性と耐久性をもつもの、つまり消費に抗する道具や器具、美的永続性をもつ芸術作品などの人工物の製作(仕事)、談話すなわち言語によるコミュニケーションや英雄的個人の偉業(活動)を典型とするものである。
これらのうち、アレントが重視しているのが第三の類型、すなわち言論と実践を通じて「私とはだれか」(アイデンティティ)を他者の前に明らかにしつつ、多数性の条件に羈束された人間社会への参入を果たし、人と人との関係の中から新しい価値や意味を生み出していく、人間の自由に立脚した「活動」である。その典型あるいは理想型は、いうまでもなく古代ギリシャのポリスにおける政治生活であった。
古代ギリシャ世界から抽出された「ポリス(都市空間)=公的領域」と「オイコス(家空間)=私的領域」との区別は、中世ヨーロッパにおける「教会=天上的世界」と「世俗=地上的世界」へと推移する。そして、近代になって「社会的なもの」という第三の領域が現われ、公的領域と私的領域との原理的な区別を解消してしまう。
産業と商業の勃興による「社会」の出現は、西洋近代における「労働する動物の勝利」がもたらした現象であり、その実質は国民全体にまで拡大された「オイコス」にほかならない。すなわち、社会という新しい領域の出現によって、古典的二分法によれば私的領域に属する「経済」(個体の維持にかかわる機能)が公的領域を制覇し、その結果、政治は「公共生」を喪失し、「労働」の論理(生命の必要の論理)に立脚した「家政」へと変質していった。
こうして、公的領域と私的領域は「社会的なもの」によって制覇され、近代的な意味での公私の観念が生み出されていく。やがてもたらされることとなったのが、「必要」を超える無制約の「欲望」に支配された社会である。それは、「活動」が成り立つための前提条件(人間社会の「多数性」、いいかえれば個人間の差異としての個性)を圧殺する画一主義的な大衆消費社会であり、「ついには世界の物が、すべて消費と消費による消滅の脅威に曝されるであろうという重大な危機」が支配する社会であった。
以上が、現代社会へのアレントの診断である。それでは、このような状況下にあって、いかにして「公共性」を恢復することができるのか。いいかえれば、いかにして「活動」を再構築すべきか。この点に関してアレントが示唆する処方箋は、言語を媒介とする人々の相互作用を可能ならしめる場の復活、すなわち古代ギリシャのポリスにも比肩しうる「公的空間」の創出である。
《正確にいえば、ポリスというのは、ある一定の物理的場所を占める都市=国家ではない。むしろ、それは、共に行動し、共に語ることから生まれる人々の組織である。そして、このポリスの真の空間は、共に行動し、共に語るというこの目的のために共生する人びとの間に生まれるのであって、それらの人びとが、たまたまどこにいるかということとは無関係である。「汝らのゆくところ汝らがポリスなり」という有名な言葉は単にギリシアの植民の合言葉になっただけではない。活動と言論は、それに参加する人びとの間に空間を作るのであり、その空間は、ほとんどいかなる時いかなる場所にもそれにふさわしい場所を見つけることができる。右の言葉はこのような確信を表明しているのである。》
紙の本
今につながる
2017/10/14 16:18
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間が生み出したシステムによって、人間自身が組み込まれてしまうことが伝わってきました。異なる存在を排除してしまう、今の時代に重なるものがありました。
紙の本
人間の条件
2016/03/08 04:53
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シエル - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者ハンナ・アレントはドイツ出身のユダヤ人女性思想家。
第二次大戦中にフランスに亡命、その後アメリカに亡命した。
「人間の条件」の最も基本的要素となる活動力は《労働》《仕事》《活動》の三側面から考察できると言う。
彼女が言う《労働》と《仕事》とは台所でオムレツを作るのは「労働」であり、タイプライターで作品を書くのは「仕事」なのだと、答えたと訳者解説にある。
この3つに分類した側面を現代の世界で置き換えて様々に論じているが20世紀の全体主義を生み出した現代大衆社会病理を分析しながら論じる。
抽象的で少々分かり難いのは止むを得ないと思うが、欧米人特有の「神」キリスト教信仰が根底にあってのもので我々東洋の人間には理解しづらい部分も感じた。
こういった、大衆社会の系譜を明らかにしようとするところが彼女の論点の大元にあると思うがその論は批判的であり、且つ特別なものには感じない。
科学の発展などにも触れながら世の中は便利になることを追い求める一方に進んでいる現代社会への警鐘なんだろうと思う。
中々、読み応えのある面白い本だった。
紙の本
アーレントの主著の一つ。
2012/08/22 00:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:えりか - この投稿者のレビュー一覧を見る
彼女の根本的な思考を理解する上では外せない著書。
アーレントの本は読みにくいものが多いが、他の著書を読む前にこれは読んでおかなくてはいけない本の一つ。
紙の本
意味が把握できない本である
2015/10/20 07:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アーレントは映画にもなり優れた解説本が新書や文庫で出版され、目にすることが増えた政治哲学者である。
人間の条件はアーレントの人間のおこなう三分類が書かれているもので原典にあたりたいと手に取った。
悪戦苦闘である。ハイデッカーの弟子であるアーレントは政治学というよりも哲学者であり、一筋縄ではいかないだろうと思ったが、悶絶してしまった。無理だ。
訳はいわゆる政治学者の直訳型であり、日本語との対応を十分に考慮くして論旨の意味をとれるようにではなく、とにかくまじめにちゃんと訳したいう感じ。
この訳本だけでアーレントの世界がわかったというよりは「いわれている大事なことがやはり書いていあるな」という天下り的な確認までであった。
まともにこれを読んでわかるひとが本当にいるとは思えなかった。
だから解説本がうれたのかな。