アメリカで生きるということ
2021/07/29 22:48
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカで黒人として生きていくのはどういったことなのか。それはこの短篇集を読むと全てとはいわないがかなりのことが想像できるようになるだろう。SF的想像力も駆使して、アメリカの今を描き出す。
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こ、これは。。。すごい作家が出てきたな。暴力的で辛い作品もあるけれど、現実に起きた事件からの構築だ、これも現実の側面ではあるな。ブラックフライデーをおちょくった表題作が滅茶苦茶面白い。『旧時代』『ラーク・ストリート』の発想に唸り、『ライト・スピッター』は残酷ながらも後味が不思議と悪くない。
若干、ここまで訳注やらなくても読者はわかってんじゃないの、というところもあるが、そこはまあ念のためだったのかなと。
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2018年にリリースされたアフリカ系アメリカンによる短編集。
短編集は収録されている中でどれか1つグッとくるのがあればナイス、音楽でいえばアルバムみたいなものだと思っている。この観点で言えば、どれもが珠玉の短編ばかりでハズしなしのクラシックアルバムだ。アフリカ系アメリカンへの暴力や資本主義という名の下の新たな奴隷制度による彼らに対する搾取。それらからインスピレーションを受けた物語の数々は心の深いところをやすやすとエグってくる。巻末の藤井光の解説にもあるように日常を少し変化させただけにも関わらず、一気にディストピアと化してしまうことを描いている。そんな今の社会はどうなんだ?という問いを突きつけているようにも思えた。
どのエピソードも好きなんだけど、とくに表題作とHow to sell Jacket as Told by IceKingの鏡像関係がめちゃくちゃ好みだった。前者は買い物客をゾンビに見立てたSFで消費欲をコミカルに描いて、後者は同じ舞台で極めてリアリスティックな資本主義下における仕事をシビアに描いている。行き来して読みたくなる短編は初めて読んだ。SF作家と読んでも差し支えないくらいに想像力が豊かな物語が多い。帯にKendrick LamarのTPAB、GambinoのAtlantaが引用されてるけど、それよりもNETFLIXで見れるBlack Mirrorに近いと思う。こういったタイプの物語の場合、アイデア自体がオリジナルなものか、既出の舞台設定だとしてもどれだけ新鮮なものを見せれるか?でオモシロさが決まってくると思う。この高いハードルをやすやすといずれの短編でも超えてきている。エンタメとして抜群にオモシロいのだ。ここまで述べた複数の要素が絡み合うことで今まで味わったことのない満足感のある読後感に繋がっていると感じた。本の冒頭にあるKendrick Lamarの言葉(School Boy Q - Blessed にfeatで参加したバースからの引用)は忘れないで生きていたい。
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救いはなさそうだな…と思わせる冒頭。
救いはないな…と確信させる展開。
やっぱり救いはなかったな…と納得させるラスト。
落ち込みたい時に最適な、社会派地獄短編集です。
是非。
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人種差別に関わる話ばかりではなく、マジックリアリズムばりの斬新な切り口や設定の話が満載。だけど読後が殺伐として、「読んで良かった」って気分にはあんまりならない。今時の小説って、こういうのか癒し系かの両極端…(-_-;)
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ある日、ステレオタイプの危うさについて語り合っていた時のことだ。「私は数学が大の苦手だから、アジア人は数学が得意というステレオタイプは苦痛」と私が言うと、友人が言った。「でも、犯罪者/犯罪予備軍ってステレオタイプよりずっといきでしょ」。「フィンケルスティーン5」の訳出中、この言葉が浮かんだ。肌の色だけで、犯罪者/犯罪予備軍だと決めつけられる。下手すれば、殺されてもやむなし、との司法判断まで出る。だからこそ、「フィンケルスティーン5」のエマニュエルのように、自身のブラックネスに留意する黒人は、現にとても多い。
アメリカに住む者なら、「ジマー・ランド」の題名から「ジョージ・ジマーマン」を連想するだろう。トレイヴォン・マーティンを射殺したが無罪になった自警ボランティアの男性だ。
訳者あとがきより
ブラックライブズマターが#MeTooやハラスメントに対する問題提起といった運動と異なるのは、彼らの命が脅かされているという事実、生命の危機に関することである点にあります。それは今現在も進行形であることがより切実なものでもあるのですが、本書はそれをダークなユーモアと切れ味の鋭い視点と構成、語り口で表現しています。
お気に入りは、Finkelstein 5、Zimmer Land、Light Spitter。SFチックな設定だけでなく、表題作にもあるような、小売で働いていた著者ならではのストーリーがいい塩梅。12篇のバラエティに富んだ短編集でした。Friday Blackは映像化が決定してますし、Zimmer Landは是非、長編で読みたいと思える出来栄え。
他の方もレビューで挙げていましたが、Netflixの『Black Mirror』を彷彿とさせる、というかその群にあっても遜色ないレベルです。『Black Mirror』を知らない人に簡単に乱暴に説明すると、英版(現在は米も関わってます)世にも奇妙な物語SFバージョン(日本国内とは比べ物にならないほどに高クオリティ)という感じです。
中国のSNSのランクづけやVR、死者のAI、マッチングアプリといったテーマもさることながら、すこし先の未来を垣間見せてくれる魅力がありました。が、ここ最近では、その未来が現実に侵食しているというか、手を伸ばし、片足突っ込んでくる感じが、どこかうすら寒くなる、そんな感触すらあります。すこし経てばそうなる、というかすぐそこまで来てるし、現実には起こってるけどあなたは知らないだけ、という感じ。この小説にもその現実を突きつけてくるよう鋭さがあり、どこか通ずるものがあったので、想起されたのだと思います。
ケンドリックラマーの引用、Friday Blackの客のゾンビ化、ジャレットコベックはメラニン色素でブラックの度合いを示していましたが、本書では
エマニュエルはここで、危険を冒してみようと思い立った。キャップを後ろ向きに被ったのだ。これで、彼のブラックネスは一気に八.〇まで上昇した。
Finkelstein 5より
という具合に小気味よくブラックを表現する。
こんなふうに誰かに話したくなるような小説でしたし、2020年の今、読むべき小説の一つでもあると思います。
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めちゃくちゃフィクション的なストーリーの中に、ノンフィクションのようにも思われる描写や意見が織り込まれていて、少しでも今日のアフリカンアメリカンの置かれている状況を理解できていたとしたら良かったと思っています。
話のテンポ、展開の急カーブ、ユーモアは純粋に読んでいて楽しめました。
作者はすごい若い、他の作品も読んでみたい!
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フィクションなんだけど、その中に現実の感情が込められているのだろう。辛くて読み終えるのに時間がかかったけど、それだけ衝撃があった。すごい。
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「頭のない少女が、エマニュエルに向かって歩いて来た。フェラだ。」という衝撃的な書き出しで始まるナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤーの本書は、黒人差別を描いた衝撃的な書物だ。こんなおぞましい、#BlackLivesMatterを思わせる衝撃的な書物に出会えたという事実に、ゾッとするものを隠し切れない。
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BLMのことをきちんと理解するために読んだ方が良いという、現地を知る方からの推薦で読んだ一冊。
元ネタとして実際の事件があり、差別が起こる考え方の根底や闇を学ぶ一助になった。
本当に知らない事ばかり。
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アメリカ現代文学の短編集。
読み始めはどういう設定の世界かわからないまま読み進める。どの話も人種差別、暴力や貧困が通底している。
いくつもの映画を観たような読後感。
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楽しい、でも苦しい。のループを何度も繰り返し、もはや早く閃光きてくれないかな、と願うような読書体験。これを喜ぶべきなのか悲しむべきなのか…
素晴らしい発想力と筆力、そして毒っ気溢れる皮肉に興奮しながら血の気が引く思いをさせられた。これだけの作品が生まれる理由がいつまでもなくならない人種差別であることが一番の皮肉かもしれない。
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本作のタイトル、フライデー・ブラックという言葉は日本でも最近よく耳にするようになった。それは単にセールの日を表す言葉ではなく、経済や私達の意識の変化を含めているのだと、名古屋で起きた事故(大型店舗でのレアアイテム発売日にケガ人が発生)のニュースと重ね合わせて知る事となった。
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ガーナ移民の両親を持つ著者によるデビュー作であり、12の短編を収めた作品。BLMの運動とも連動するかのように、黒人として現代を生きることがどのような暴力と共にあるのかをここまで生々しく、かつ高いリーダビリティと共に描き出す力量は天才と言っても過分ではあるまい。
まず本書の冒頭を飾る「Finkelstien 5」を読んだ時点で、完全に作品世界に引き込まれてしまった。白人男性が、自らに危害を加えようとした5人の黒人の少年少女をチェーンソーで殺害した事件に対して、怒りを覚えた黒人が白人に暴力的な復讐を遂げる、というのが主な筋書きである。特筆すべきはドラゴンボールのスカウターの如く、自らの”ブラックネス”が定量化して示されるという意匠である。例えば、キャップを後ろ向きに被るだけでブラックネスは増加し、周囲の白人に緊張感を与える、というように。
単にキャップを後ろ向きに被るという行為ですら、その行為の意味合いを考えざるを得ないという日常的な黒人の生活がこれ以上ないリアルさで描かれる。
他、11の短編もいずれも物語の開始と同時に引き込まれる特有の意匠を備えたものばかり。聞けば『地下鉄道』、『ニッケルボーイズ』のコルソン・ホワイトヘッドの推薦を受けて全米図書賞が注目する若手作家にも選出されているという。コルソン・ホワイトヘッドと同等クラスの力量を持つ作家であると感じたし、他作品も楽しみに待ちたい。
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ゲームやコミック、ホラーに影響を受けたような近未来(?)世界、パラレルワールドに描かれる物語の背景には、作者が感じたと思われる現実に起きた事件に対する、怒りや悲しみ、無力感などを想像することができた。