ナチスと鉄道 共和国の崩壊から独ソ戦、敗亡まで
著者 バン澤 歩(著)
なにが独裁国家を崩壊させたのか?ナチス・ドイツを生み出した共和国の崩壊から、第二次世界大戦における敗亡までを、鉄道という切り口から描き出した通史。当時の最先端技術を結集し...
ナチスと鉄道 共和国の崩壊から独ソ戦、敗亡まで
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なにが独裁国家を崩壊させたのか?
ナチス・ドイツを生み出した共和国の崩壊から、第二次世界大戦における敗亡までを、鉄道という切り口から描き出した通史。当時の最先端技術を結集した新車輌開発、交通政策をめぐる組織内外の駆け引き、鉄道からみた独ソ戦、死の特別列車……。「生存圏」拡大や「ユダヤ人絶滅政策」とも密接にかかわりながら、これまであまり語られてこなかったヒトラーとドイツ国鉄の「知られざる歴史」から、独裁国家終焉までの軌道を明らかにする!
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文中の鉄道車両の写真に圧倒&鉄道の発展の裏に戦争あり
2021/11/17 12:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドイツの鉄道の歴史をたどった、着眼点の良い1冊です。
私は鉄道ファンなので、強い興味を持って読み進められました。特に、文中に登場する、ドイツのかつての鉄道車両の写真に圧倒されました。こんなに斬新なデザインの列車が、ドイツではかなり昔に開発されていたのかと。
しかし一方で、鉄道が発展した裏には戦争があり、多くの方々の命が犠牲になっていた事実を文章で見るのには、正直苦しく感じました。読み終わって、やはり戦争はしてはいけない、と思い直しました。その点では、当書を読んで良かったと思います。
「第四の軍隊」ドイツ国鉄ライヒスバーンとヒトラー・ナチス
2021/11/28 15:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
「鉄道」という切り口からドイツ史を見るばん澤氏最新作。最初の著作は「ドイツ工業化における鉄道業」(2006)である。ドイツ統一前のプロイセンの鉄道業の発展を描いたもので、ドイツ史を経済発展という側面から知るため読んだが、このような斬新なドイツ史になると思ってもみなかった。鉄道という近代的な技術および組織を通して描く5冊のばん澤ドイツ史は、「ドイツ工業化」に次いで、「鉄道のドイツ史」(2020)はドイツ帝国の成立から二つの大戦、そして戦後の東西分割までを描く、「ふたつのドイツ国鉄」(2021)は東西ドイツ国鉄の歩んだ道を第二次世界大戦後の東西ドイツ分断の時代と再統一そして現在という流れで描き、完結する。「鉄道人とナチス」(2018)では鉄道人ユリウス・ドルプミュラーの伝記の形で彼の生きた時代の社会経済史を描き、彼がドイツ国鉄総裁となって鉄道行政の責任者として戦争とユダヤ人虐殺に加担するまでに焦点があてられる。本書は、タイトルに端的に示されているように、主に産業としての鉄道、鉄道の技術の切り口からヒトラーの時代に焦点を当てる。
これまでヒトラー=ナチスドイツに関する書物で取り上げられてきたことが、ドイツ国鉄ライヒスバーンRBに関連づけて描かれ、ヒトラーとRBの知られざる関係と歴史がわかる。例えば、「ユダヤ人移送」デポルタツィオーンへのRBの加担はすでに周知のことだが、ゲシュタポのアイヒマンのユダヤ人課のRB窓口課ライヒ交通省鉄道第2局第21課第一係があり、組織的・事務的に対処していたこと。ヒトラーの「ゲルマニア構想」は写真・図版などで知られているが、それを支える鉄道路線・巨大駅の計画があった。この詳しい内容は、「鉄キチ」にとってはたまらないのではないか。昨年ブームになった「独ソ戦」については、その敗因を「鉄道の破綻」という観点から詳しく描いている。さらにRBは大ドイツ・ライヒ構想によるヨーロッパ統合を鉄道で支えようとした。それは線路の規格統一(超広軌鉄道)と自動連結器というドイツの技術優位性を背景に行われ、RBが積極的に関わったのである。
ローマ帝国時代の軍隊は、征服地を整備する土木部隊でもあった。RBも同じように、「鉄道部隊」として占領地支配を支援したので、「第四の軍隊」である。RBがドイツ経済において果たすべき仕事をただ一つあげよ、とすれば、ドイツ・ライヒ内の資源供給基地であるルール地方からの石炭輸送であった。石炭やそれに由来する燃料を全国規模で工業地域や都市部に運ぶことこそが20世紀前半におけるドイツ鉄道業の主要な経済的貢献であった。ナチス・ドイツは、このエネルギー資源輸送を軸とする19世紀後半以降のドイツ経済の地理的・空間構造をそのまま引き継いだ。1930年代前半の世界大不況からの回復は、結局のところルール地方のエネルギー資源を利用した重工業の回復であった。鉄道の終わりはヒトラーの戦争の終わりであった。鉄道がエネルギー輸送の任を果たせない以上ドイツの戦争遂行能力の維持は不可能だったのである。
本書で2世紀のドイツ鉄道と政治経済史を描くばん澤ドイツ史は一応完結のようである。次はDBの将来であろうか。おりしも気候変動対策との関連でDBにも試練が訪れそうである。SPDショルツ新政権は2030年までに石炭火力発電を全廃するという。産炭国ドイツでは、石炭は主要エネルギー源であり、2019年の電源構成では石炭火力は3割近い。2038年までに全廃する方針だったのが前倒しされることになる。エネルギー輸送というドイツ鉄道の背骨がなくなってしまうかもしれないのである。戦争ではないが、DBにとっての新たな戦いの始まりとなるだろうか。