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冬に暖炉の前で読みたい1冊
2021/10/20 10:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:青の子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
蛍と写真。
自然の刹那と一瞬の人の心を捉える。
瞬間という儚さに温度を与えてゆく。じんわりする。温かい後味がたまらない。
フィクション小説なのにドキュメンタリー映画を見ているかのようなリアリティがある。
大学生が突然地方に移住?そんな作り話、、と思うかもしれないけれど移りゆく季節の中に描かれる暮らしのグラデーションには違和感がない。
夏の色、夏の光。冬の温度、冬の光。
写真家としても活動する小説家だからこそ、ファインダーから見える世界、カメラで切り取った世界を文字に起こしたときの言葉に美しさがある。
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大学を休学中の主人公が地方を訪れ、自分を見つめ直していく青春小説。主人公は、将来のことや家族のことに思い悩み、微かな記憶にある辰野を訪れる。そこで様々な価値観をもった人達と出会い、自分を見つめ直していく。
若い頃、華やかに見える人達との交流やアグレッシブさに憧れるのはよくわかります。控えめな主人公が、自分にできることをコツコツと行動していくことで、道が開けていく展開は読んでいて微笑ましい。都会にはない人との距離感や助け合いが温かく描かれているのもよかった。
アレルギーや地方再生の事も盛り込まれていたけど、きれいにまとまっていて違和感なく面白かったです。
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【読んだきっかけ】
河邉徹さんの小説5作目
【心に残った要素】
タイトル『蛍と月の真ん中で』と、カメラマンを目指す主人公·匠海の撮る写真。
自然の刹那と一瞬の人の心を捉える。
瞬間という儚さに温度を与えてゆく。じんわりする。温かい後味がたまらない。
実在する地名を用いたり、辰野の人たちの細やかな描写があったりする今作は、これまでの作品と同じく人生の苦楽に揺らぐ人の心を描きながら、これまでになかった要素・視覚的な色彩がはっきりと描かれていてフィクション小説なのにドキュメンタリー映画を見ているかのようなリアリティがある。
やりたいことよりも、やっておかしくないもの、たしかに。そうやって取捨選択している自分がいる気がした。
大学生が東京から突然地方に移住?そんな作り話みたいな、と思うかもしれないけれど移りゆく季節の中に描かれる暮らしのグラデーションには違和感がない。
特に印象的だった言葉は「灯」。
【ここが好き!】
夏の色、夏の光。冬の温度、冬の光。
写真家としても活動する小説家だからこそ、ファインダーから見える世界、カメラで切り取った世界を文字に起こしたときの言葉に美しさがあると思う。
明里ちゃんの宿いってみたいな~
今作は音の描写が多くはなかったけれど〇〇のような声ってところが私好みでよかった!
──著者紹介──
河邊徹(かわべ・とおる)
1988年兵庫県生まれ。3ピースバンド・WEAVERのドラマーとして、2009年メジャーデビュー。バンドでは作詞を担当し、2018年に小説家デビュー。『流星コーリング』で第十回広島本大賞を受賞。その他の著書は『夢工場ラムレス』『アルヒのシンギュラリティ』『僕らは風に吹かれて』。
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父の影響により、写真家の道を志した匠海。写真専門の大学に進むのだが、友人の影響や自身の環境に飲み込まれ、毎日が辛くなっていった。そして1年間休学することになった。
母とはあまり仲良くなく、実家にも帰れないので、父がかつて撮影した印象的な写真の舞台である長野県の辰野へ向かった。お金も少ししかなく、特に何も考えていなかったが、そこで出会った女性に導かれ、辰野で住むようになった。
辰野で暮らす人々との出会いを通じて、匠海の心は段々と変化していく。
作家の河邉さんは音楽バンド「WEAVER」のドラマーとしても活躍されているだけでなく、作詞家としての顔もあります。
その影響なのか、河邉さんの書く表現が、短い文なのに奥行き感があって、歌詞を読んでいる感覚がありました。
一つの文で多くの文を語っているので、ちょっとした充実感がありました。全体の雰囲気は、青春ならではの瑞々しさがあって、綺麗でした。
物語の舞台は、長野県の辰野でしたが、そこでの自然や出会った人との温かみが伝わってきて、自分も行ってみたいなと思わせてくれました。
何かを目指そうとは思うものの、理想と現実に阻まれます。誰しもが通る道ですが、匠海の心理描写が丁寧に描かれていて、共感する部分もありました。
辰野との出会いによって、心の変化が垣間見られる匠海。突然行ったところで急に移住⁉︎という展開は、小説ならではでしたが、人との出会いで運命が変わるかもしれません。
ネットとは違う「生」の体験があるからこそ、感じるものも大きく変わります。
匠海の体験は、この先の色濃い人生にさせてくれるものばかりで、羨ましくも感じました。
自分も若かりし頃に戻って、色んな体験をしてみたかったなと思いました。
過去には戻れませんが、「これから」として、「写真」のために頑張る主人公の姿に何か頑張ってみようかなと思いました。
全てがハッピーに描かれていましたが、個人的に匠海の大学の友人は、ちょっと不幸要素が欲しかったなと感じてしまいました。何となくイラつかせてくれる部分もあって、最後は出会った団体が怪しげなところだった!といったオチがあったら、何となくスッキリがより際立って面白かったのですが・・・。
そんな黒い気持ちをクリアにするために、どこか旅してみようと思いたくなりました。
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限界集落、移住者、迷える好青年、美しい地元少女、親子の葛藤、有機農業、共生、もういっぱい詰め込みながらも、読書をうまくくすぐる作品でした。
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とても印象に残る一冊だった。
大学を休学した匠海が長野県辰野町にやってきたのは蛍を撮るため。かつて父が撮影した場所で蛍を撮ることが彼の目的であり、そこで辰野に住む多くの人たちと出会っていく日々を描いていく。
何か大きな出来事が起こる訳ではない。美しい景色やそこに住む人々との生き方に触れる中で、自信を持って自分だけの居場所を見つけていく。
登場人物すべてのキャラが立っており、自分を支えてくれる他人の優しさ、温かさを感じる物語である。
「何者にもなれていない自分を、恥ずかしがらなくていい」という正にあまり冒険せずに平凡な人生を歩んできた自分にとっては、とても印象深い言葉だった。
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自分の立ち位置や将来や存在に不安を抱えた青年が、長野県辰野の人達との生活で変わる…そんな物語だけど、私は本当に好き、というか、こういう物語を読むと心が浄化される。実際にモデルになった場所があるみたいなので、辰野に行ってみたいなぁと思った。
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大学で写真を学んでいる匠海。勉学とバイトで忙殺される日々。そんな中、大学へ行く意味を失ってしまう。休学し、亡き父の思い出がある辰野へ。自然に合わせた暮らしや辰野の人々との関わりの中で、匠海は自分と向き合っていく。
匠海が辰野で出会う人達が皆、ありのままを受容してくれるようなところがあり、自分もそんな人に出会いたいし、なりたいと思った。
読後、Googlemapでストーリーに出てきたお店や景色を調べてみた。匠海はこんな風景を見たのだなと、自分も辰野を旅した気分になった。とくに「月」の窓からの景色は素敵だと思った。諏訪湖にも行ってみたい。
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舞台となる長野県の辰野が美しく描かれている。匠海が滞在したのがちょうど1年なので、四季の景色が目に浮かぶよう。
辰野で出会う人々もみんな個性的でいい人ばかり。こんな村でなら自分をしっかり見つめ直せそうだし、移住もありだなと思いながら読んだ。
田舎では一人で生きていくことは出来ないとあったけど、どこで暮らしていても頼り頼られ生きていくことが自然とできたらいいなと思う。
真の豊かな暮らしとは、辰野の人々のような生活なのかも。
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写真家を目指し東京の大学でがんばってきた匠海は、学費のことだけを考える毎日、人間関係、思うように写真を撮れない日々にすり切れてしまう
休学し、わずかなお金を持ってたどり着いたのは、亡くなった父が蛍の写真を撮った長野県辰野市。
思わぬ出会いから過ごした1年間の日々。
〇「僕はこの町で、僕の知らない答えを持っている人とたくさん出会いました。」
この言葉が良いなあと思った
〇写真の奥深さに少し触れた
〇クマの子ウーフを思い浮かべずにいられない
〇実際のお店や宿や人に取材をしているよう。行ってみたいな!
・古民家ゆいまーる
・月のもり
・アトリエ和音
・甘酒屋an’s
・ 0 to &
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バイトと勉強に追われ疲れた大学生が、休学して亡き父の縁の地で過ごす1年間のお話。
優しくてほわっとした作品でした。
現実問題、ここまで恵まれることはないかと思いますが、自分の固定観念を打ち崩してもらう経験って本当に貴重だなぁ、と思います。
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出てくる人がみんないい人で、安心して読める。でも、過去をカミングアウトされた会話でこんないいことばかりスラスラ言えないなぁ。
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大学を休学して、父の写真にあった長野県の辰野へ。何も先を決めずに行った先での1つの出会いが、また別の出会いにつながり、主人公の生き方・考え方を変えていく。
将来への不安や人と較べて焦る心情と、周りの人の温かさとたくましさと、自然の描写が織りなす季節と気持ちの移ろいが味わい深かったです。
読んだ後は前を向いて歩けるような気持ちになりました。
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カメラマンのたまごの匠海は
進む道に迷いを感じ、休学して
昔、父親が撮ったホタルを見に長野県の辰野へ。
ところが季節外れだと教えられ
一年間、集落に住みながら待つことに。
移住先輩の家に居候しながら
少しずつささくれた気持ちを緩めていく匠海。
何もかもうまくいくわけではないけれど
ずっと集落にいる者、移住してきた者
一度都会へ出て戻ってきた者と
さまざまな人々との関わりが温かい。
集落の端のゲストハウスには
健康上の問題で都会へは行けない
明里という少女もいて
この物語は彼女の成長譚でもある。
やっぱり自分はこういうハッピーエンドが
好きなんだなぁと実感しました。