論文なんて意味が判らなければそれでいいのさ
2024/06/11 19:07
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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説家なんてものは、多かれ少なかれ、独りよがりで自己完結型の人間ばかりだと思っている。
今回のこの短編集はその好例だと言える。
難解で、ありそうな言葉を並べ、読者を煙に巻き、誤解(ミスディレクション)に導くのがこの本の目的であると断言する。
正直言って、本の半分は何を言ってるのか全く理解できなかった。あとタイトルがやたらと長い。今どきのラノベみたいだ。
しかし、何といっても小説家は、あるいは文筆家は言葉を操る商売だ。この本の中でも、その手の小説は面白かった。
例を挙げると、倉数茂の「樋口一葉の多声的エクリチュールーその方法と起源」。この小説を、国文学を専攻した我が娘に紹介したら、えらく気に入って、彼女が樋口一葉の小説を大量に読み返すきっかけとなってしまった。(小説の最後はホラーだが)
大滝瓶太「ザムザの羽」も、カフカの「変身」の世界を取り込んで、どこからが論文で、どこからがフィクションなのか分からず、不思議に心に残った作品だ。
しかし、この本のトップというか、唯一の収穫は、この一編に収束する。
小川哲の、「SF作家の倒し方」だけは、必ず読んでいただきたい。抱腹絶倒、驚天動地、神羅万象、何やかんや。
SF好きなら、もう笑いが止まらず、腹痛で救急車要請に至ること間違いなし。
だいたい、何故倒す必要があるのか分からないし、SF作家対裏SF作家の暗闘があったなんて、この作品を読むまで全く知らなかったし。
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面白い。とても。
星新一賞で初代グランプリの方の作品も論文形式を取っていた。他にも以前京都で開催された異世界生物学?みたいなものも異世界の事象(例えばドラゴンの吐く炎)を研究して考察するみたいなお遊び半分真面目半分のものでとても楽しかった。
論文やレポートという形は現実と虚構の認識が重なって、空想の世界が現実のものとして感じられる。
論文形式をとることでさらにSFの世界というか可能世界を体験することができる。
『異常論文』は小説でありながらもしもボックスでありタイムマシンでありSFそのものだ。
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面白い。みんな良い意味でポエムになっているが、小川哲の『SF作家の倒し方』…これ、よく怒られなかったなぁ…どの作品も面白い。
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『異常論文』なアンソロジーか・・・
この手の企画で楽しめなかったことを哀しく思う
昭和時代のリケジョであった。(T_T)
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「SFマガジン」で異常論文と題した特集が掲載されて一部の界隈で話題となり、書き下ろし作も追加して満を持して刊行された分厚い作品集。
編者の樋口恭介氏が語る「異常論文とは、生命そのものである。」のフレーズが帯に踊る、賑々しい一冊です。どんだけスゴいのか!?と、期待に満ち満ちて読み進めました。
・・・まぁ、論文ではない作品が、多いですね・・・(^_^;
当然ながら「論文」をどう定義づけるか、にもよりますが、鴨の印象では論文:凝った構成の小説:小説=2:5:3ぐらい。語弊を恐れずにいえば、衒学的なタームを次々と繰り出して読者を煙に巻く、または自己陶酔に酔いしれる、独りよがりな作品が少なくないと感じました。正直なところ、描かれる世界観に全くジャックインできず(鴨的に、作品の世界観に「ジャックイン」する感覚は、SF読みとして必須だと思っています)、適当に流し読みした作品もいくつかあります。
各作品の冒頭に、編者の樋口恭介氏が一言解説を付しているのですが、これがまた「危険なヴィジョン」におけるハーラン・エリスンなみに暑苦しくてですね(^_^; 相当楽しみながら編纂したんだろうなー、という熱気は確かに伝わってきます。が、それにどれだけ共感できるか、という点で、かなり読者を選ぶ作品集だと思いました。
他方、「これは!」と魂掴まれる作品も複数ありましたので、決してスルーして良い作品集とも思えませんでした。むしろ、その「これは!」と思えた作品がインパクトあり過ぎて、その数編のために永久保存しておきたいぐらい。
鴨のお気に入りは、柞刈湯葉 「裏アカシック・レコード」、酉島伝法「四海文書注解抄」、伴名練「解説ー最後のレナディアン語通訳」の3編。柞刈氏作品はすっとぼけた洒脱さが、酉島・伴名両氏の作品は独特な構成で描かれる圧倒的な世界観が、たいへん印象的でした。特に、酉島伝法「四海文書注解抄」の、注釈だけが淡々と並ぶ行間から立ち昇る、このエレガントな恐怖!ある登場人物が、他の主要な登場人物を指して呟く「いまはどうされているんでしょうね」という言葉についた注釈の先に、何も書かれていない空白の一行・・・その空白を目にした瞬間、背筋が総毛立つ寒さを覚えました。傑作ホラーと言って差し支えないのではと。
収録作品が玉石混交すぎて、鴨的な全体評価は星3つとさせていただきましたが、たぶんこれはもぅ本当に好みの問題なので、一つ二つは刺さる作品があることを期待して、手に取ってみるに損はないと思います。一つも刺さらなかったらスミマセン(^_^;
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異常論文は批評・解釈を拒絶する。異常論文はこの世界のこれまでとこれからを論じる。異常論文は疑問や課題を解き明かす。異常論文は新たなる問題を提起する。異常論文は何の役にも立たない、どーでもいい論文集である。
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論文形式で書かれた短編小説集。ではこの作品は終わらない。小説と論文という正反対の方向性を持つ種類の文章の中間に全く新たなジャンルを確立している。文章は存在するはずだった世界を抜け出し、私たちのいる現実世界へと浸出すると同時に私たち自身もすでに異常論文の世界に取り込まれている。記述されている異常論文が読者によってコンパイルされ、脳内に展開を始めた時点で異常論文の時空世界はすでに新たな現実として存在を始める。
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なかなか読むのにエネルギーを費やした本だった。そもそも論文を読みなれていないので、正常な論文と異常な論文との区別がつかない私である。どう読み、どう感じればいいのか戸惑う作品だった。異常論文とは事実を追求すると見せかけた虚構と思えばいいのだろうか。難しい作品ばかりだが、最初の「決定論的自由意志改変攻撃について」(円城塔)は未来を予測できないことを尤もらしい数式で読者を煙に巻くようで面白かった。最後の「解説--最後のレナディアン語通訳」(伴名練)は最も小説らしい作品で素直に楽しめた。
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円城塔「決定論的自由意志利用改変攻撃について」★★★
青島もうじき「空間把握能力の欠如による次元拡張レウム語の再解釈およびその完全な言語的対称性」★★★
陸秋槎「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」★★★
松崎有理「掃除と掃除用具の人類史」★★★
草野原々「世界の真理を表す五枚のスライドとその解説、および注釈」★★★
木澤佐登志「INTERNET2」★★
柞刈湯葉「裏アカシック・レコード」★★★
高野史緒「フランス革命最初期における大恐怖と緑の人々問題について」★★★
難波優輝「『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延」★★★★
久我宗綱「『アブデエル記』断片」★★★
柴田勝家「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」★★★★
小川哲「SF作家の倒し方」★★★
飛浩隆「第一四五九五期〈異常SF創作講座〉最終課題講評」★★★
倉数茂「樋口一葉の多声的エクリチュール」★★
保坂和志「ベケット講解」★★
大滝瓶太「ザムザの羽」★★★
麦原遼「虫→……」★★★
青山新「オルガンのこと」★★★
酉島伝法「四海文書注解抄」★★★★★
笠井康平、樋口恭介「場所〈Spaces〉」★★
鈴木一平、山本浩貴「無断と土」★★★
伴名練「解説――最後のレナディアン語通訳」★★★★★
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学術論文の体を取った虚構作品を”異常論文”という定義し、23本の作品を収めたSFアンソロジー。23本もあれば多様性も極めて高くなっており、質のバラつきはあるものの、数作品に関してはちょっと驚愕してしまうようなクオリティであり、アンソロジーとしてのレベルは非常に高い。
最も驚愕したのは、鈴木一平+山本浩貴による「無断と土」という作品。これは架空のVRホラーゲームの謎を解説した人文学の論文テイストの虚構であるが、その作品で引用される菅原文草なる20世紀前半の詩人にフォーカスする。実際のテクストなどの分析を元にしながら、このVRホラーゲームでなぜ彼の作品が引用されたのかを明らかにしていく体を取っているのだが、しっかり脚注での解説や参考文献なども用意されていることから、全てが史実のように見える完成度を誇りつつ、微妙に虚構が入り混じっており、何が真実かなのかがわからなくなってくるうちに、どっぷりとその世界にはまってしまう仕掛け。
”異常論文”という概念によってバラバラだった作品間に1つの関連性を見出しつつ、新たな虚構世界を作り出すためのテクニックとしても十分に可能性を秘めているということがこの豊饒な作品を読むと深く理解できる。幾人かの作家についてはこれを機に単著を読みたいとも思ったし、日本の若手SF作家を知るためのアンソロジーとしても有益。
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* テクノミュティス
円城塔とはいえ、最初にこれは心を折られるので、もっとわかりやすいやつを持ってくれば、と思ったが、異常論文というコンセプトとしては、読みやすいよりもむしろこういうやつだという気もするので難しい。
数式が出てくると、なんとか意味を理解しようとトライしてしまうので勘弁していただきたい。
予測と想像により存在そのものが上書きされるとかなんとか。
* レウム語
一番好きかもしれない。ただし、現実と虚構が混ざっており、複雑。ザグロス山脈が存在するのか調べないようにしている。
遺伝子に全員が聴覚異常を持つレウムという民族… 確かにそういうのは有り得そうではある。その民族は音声による会話ができないので、一人ずつ持っている石版に文字を書き、さらに石版を動かすという三次元的な動きで意味を伝えるという。
そんなんあるかと思ったが、手話も手の形という二次元情報と動きの三次元情報の合わせ技という説明があり、なるほどと思った。音声言語って便利だな…
ヒロイン?は双子の子どもたちで、しかも一人は空間認識力が低いため、レウム語もちゃんと「喋れる」わけではない。しかしきょうだいがそれを解読することでむしろ「喋れない」子が巫女のような存在になっている。
数年後、通訳の子があっさりと事故で亡くなり、でも巫女の子が著者に話しかけてくる。その意味が詩のような形になっており、ただただエモく、切ない。
あくまでも論文形式なのに感動させやがって…
* インディアンロープトリックとヴァジュラナーガ
これも現実と虚構を混ぜてくる系。どこからSFかわからなくなるし、そうなってしまう自分の現実知識に自信がなくなるのでSFは難しい。
空中で上に伸びる縄を人が登り、てっぺんで人もろとも消えてしまうという手品についての説明。
実は縄として使っていたのは絶滅した蛇、ヴァジュラナーガであり、その蛇はなにかの拍子に鋼のように固くなるという性質がある、と。
* 掃除と掃除用具の人類史
途中まで、銃・病原菌・鉄のように、人類史はこれこれがきっかけで発展した、という感じなのだが、「この一歩は掃除機がもたらした偉大な一歩である」とか言い出して、スッキリSFだとわかった。
でも掃除をしないと不衛生になって病気になるという大事さとめんどくささ、掃除を効率的にできることで余暇ができ、発展したというのは納得力が高い。
一気に理論が飛び、マイクロブラックホールを使った掃除とエネルギー創出、そしてブラックホールが宇宙すべてをきれいにしてしまって崩壊という切なさ。論文自体もスッキリと終わって、とてもあとがよろしい。
* 5枚のスライド
注釈をきちんと読んでいかないと単語の意味がどれもこれも分からないので、注釈含めて一つの作品ということに半分ほど注釈読まずに進めてて気づいた。考察系。理解する必要はないのだが、ちょっと理解してるかもと思えるところが面白く、楽しい。エンタメの楽しさというより、学びの楽しさ感。
* internet2
インターネットは素晴らしい。
現在のネットにはありとあらゆる情報があるが、人類そのも���がインターネットになってしまい、全能感ありながらも、すべての悲劇の当事者としても追体験しっぱなしなので切ない。
* 裏アカシックレコード
横浜駅SF作者、きたー。
裏って、そういう意味だったのか。すべての嘘、なるほどー…
この人の話は特に現実と虚構がいい感じに混ざる。ややこしいのではなく、「ありそう」。特に、検索に莫大な費用がかかる裏アカシックレコード機械を、政府の他に一人だけ富豪が持っているというあたりがとてもありそう。
* 緑の人々
過去のフランスで起きた「大恐怖」という出来事。ほんとにあったのかなかったのかわからないが、それの裏というか同時?に緑色のヒト様の生物が見られた、という話。どうやら宇宙人っぽいが、著者含め、調べようとした人が次々に死亡あるいは行方不明になっているという、実はホラーなSF。
* 絶滅主義
人類は、宇宙は滅ばなければならない。なぜかというと、生きていると幸せはあるが苦しみもあり、幸せはなくてもよいが苦しみはあってはならないものだから。
第三次世界大戦で静寂機械/戦争機械という遺伝子地雷が作られ、知らぬ間に汚染されていて子供が確実に苦しんで死ぬという、ホラー極まりない話に。
苦しむのを避けるために滅ぼすという理念のために、苦しむためだけに生まれる生き物を作ってどうする。門垣はマードックの発明を知ったらブチ切れたのではないだろうか。
ともかく、修復不可能な遺伝子地雷により、人類全体で絶滅に同意し、宇宙全ても滅ぼすことに。うーん、死は救済。
* アブデエル
預言書というSF。こういうのも、良い。
翻訳者の意見だと正直に書いていたり、原文の意味がわからないところはハテナがついてたり、原書が破損してたり、リアルで良い。
日本にも同じような話があるというのもまた熱い。
* 火星環境下における宗教性原虫
宗教性原虫、キリスト原虫、ブッダ原虫というパワーワード。更に宗教だけではなく、共産虫、資本虫など、響きだけで色々な方面に怒られそうな内容。
とはいえ、宗教観が原虫の寄生による、という考え方はとてもおもしろい気がする。
自然現象や言語にまず寄生し、そこから人類を宿主としていく。そして信仰様を発症したり、好死性をもつものだと死を恐れなくなったり。
実際、宿主を自殺させる寄生虫もいるわけだし、トンデモ論ではないのかもしれない…
でも、宗教性原虫だけでお腹いっぱいのところ、火星環境とまで来ると、短編なのに満腹感がある。
* SF作家の倒し方
タイトル通りだったわ。倒すな。
* 異常SF創作講座
飛浩隆さんも書いてた!異常論文を読み始めたときは気づいてなかったわ。
そしてやはりやはりの入れ子構造。難解だが楽しい。「事態」が起きておかしくなった世界でのSF批評という論文。様々なSF作品?の批評をしている内に、実はこの批評している自分そのものが現実ではないのでは…?というゾクゾク感。
* 樋口一葉
どこからSFになるんだ…?と最後まで違う意味でドキドキした。普通の民話的怪談だった。
そう言えばこの本、異常論文なだけでSFとはひとことも言ってなかったわ。叙述トリックか!
* ベケット講解
ベケット言いたいだけちゃうんか。
と言うかベケット知らないけど、文体自体が本文で語られている小説に似ている。独特な句読点。
本文で語られている、ベケットは読んでいると気持ちよくなる、みたいな感覚と似たような、読んでるだけで催眠にかけられるような謎な構成の文章。なるほどわからん!
* ザムザの羽
カフカの変身を題材にしてると思ったら著者本人が虫になっていてでも第三者視点ででもやっぱり身体にりんごを投げられて内臓を傷つけられて死んでしまう?あっちもこっちもザムザムザ。
* 虫→
ある意味テクノミュティスよりなんだかわからなかった。少なくとも矢印の意味はわかったようなそうでもないような… 虫に寄生されて書いた論文的なものということ…?
* オルガンのこと
なるほどわからん!
話題がすごい飛ぶ。もはや飛んでるというよりは単に別々の話題が語られているだけといった感じ。
腸内で微生物を育て、それを他人と共有する?
腸を基準とした様々な世界の捉え方?
ほんとになんだか分からないが、シャンバラ、虚船、プラトンのティマイオス、プロメテウス、アセファル…全体的に言葉遊びのような、歌のような、読んでて心地よくなってしまうのは確か。
「イチジクの葉脈に神経系のイメージが重ね合わされる時、そこにはアダムとイヴの下腹部を包み込む神経叢が浮かび上がる。」
なるほど、と呟いてしまったが、実際何一つ意味はわからない。なんかそれっぽいイメージが脳内に浮かんだだけなのに。
* 四海文書注解抄
怖い。いきなり頭にマジで「訳の分からない文章」が並ぶ。文字化けのよう。
そして一見なんの関連もなさそうに見える【注】がずっと続く。それぞれが一つのストーリーを為していたり、やはり意味がわからなかったり。でも読んでいくとそれぞれが関連しており、その繋がりが少しずつわかってくる気がしてきて、それが怖い。知ってはいけないことを知っていっているような。
それぞれの注の終わりにたまにある、漢字のルールが現代と違うだけで意味はなんとなくわかりそうな文章が、人間に似た知的生命がこの四海文書とやらの解読まとめを更に上から評価しているような形に見える。
ドグラ・マグラ的な怖さ。最後まで意味はわからないが、こういうの好き。
* 場所(Spaces)
Spacesって、実際にあるオンライン会話スペースのやつか。本文中に著者のTwitterアカウント名も出てきて、どこまでが現実なのかわからなくなる。
とりあえずツイッター見てみたら、12/6あたりになにか炎上したらしく、それの弁明や謝罪などをしており、割と真顔にさせられた。
こういう仕込みをするならもうちょっとなんかこう…
* 無断と土
最初は明治天皇の短歌や、謎の詩、そして論文序文がわけわからんくて、思わず残りページを確認してしまったが、インディーホラーゲームという単語が出てきて俄然ととっつきやすくなった。知ってる単語パワー、強い。
普通にSteamで2023年に発売されたインディーゲーム、とかも出てくる。同じ開発者の前作が2020年に出ており、事前に英語、ドイツ語、中国語を実装していたことにより���ンキング上位に食い込むようになり… と、Steamにやけに詳しくて面白い。
というか本文内で普通に2020年のAutomatonの記事が参照されてる!
菅原文草は存在するのか…?しなさそう。でも詩のほのかな怖さがたまらん。これこそ虚構論文だ!と言える傑作。途中わかりそうで結局最後にわからなくなる点も含めて。
* 解説ー最後のレナディアン語通訳
すべてが架空の小説。でもなんかタイトルを見て「あー、あれ、面白かったよね」と通ぶってしまいたくなる。
と思ったらレナディアン語とは実は…という、普通にSFとして、サスペンスとして、作品として面白く、虚構論文的面白さではないが、普通に傑作だった。そしてタイトルに戻ってきて、なるほど… となってしまう。これは… ええやん。好き。
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結局異常論文とはなんなのか?なんなんでしょうね。
でも作品として好きなものと、異常論文として好きなもの、と分けられる、気がする。
作品として好きなのは「解説ー最後のレナディアン語通訳」、異常論文として好きなのは「レウム語」かな。でもレウム語も物語性が強いからな…「四海文書注解抄」かなぁ… 難しい。
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2022-01-23
異常論文という先鋭的な宣言に呼応しただけあって、ドレもなかなか尖っている。が、玉石混交の印象は否めない。論文形式の(意外と)普通のSF、ほぼアイデアのままの素描、言語実験をリアルタイムに推し進めるもの、などなど。
こういう運動は絶えず起こって欲しいものです。
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わけわからんものと面白いのが交互に出てくる感じ。掃除、SF作家、樋口一葉、四海文書、とかが良かったが最後のレナディアン語がすごく良い
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樋口恭介編「異常論文」読了。SF作家の倒し方を筆頭に不思議な論文達に魅了された。お腹一杯。あー美味かった。特に、保坂和志のべケット講解は著者の頭の中に浮かぶ事象をそのまま掬いとったような文体で気持ちよかった。内容はほぼ頭に残らなかったけど、作中の鎌倉公文堂に行ってみたいなと思った。
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しばらく前に買い、読み進めていたものの途中で挫折。ゴールデンウィークに時間があったため、ようやく読み終えることができた。
内容は本当に意味不明。巻頭言にもあったが、現実と虚構が入り混じりすぎている。登場している作家ですら現実なのか虚構なのか、実際にはいないんじゃないかと思ってしまうほどの異常さ。自分の知らないどこかで実際に起こっていそうな出来事や事件、それらの表現とリアルさ。理解しようにも理解できない。わかりたくてもわからない。不気味で脳内がぐちゃぐちゃになるのに読み進めたくなる作品。スペキュレイティブ・エンジン。
ここに評価を書きたくなったのも、異常論文が紛れもなく「強い小説」だったからだと思う。