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戦争獣戦争 上
著者 山田正紀(著)
1994年冬、北朝鮮・寧辺の核処理施設の査察に訪れた国連職員が目撃したのは、使用済み核燃料の沈むプールの中で泳ぐ二体の奇妙な生物だった――その正体は、戦争によって生まれる...
戦争獣戦争 上
戦争獣戦争 上 (創元SF文庫)
商品説明
1994年冬、北朝鮮・寧辺の核処理施設の査察に訪れた国連職員が目撃したのは、使用済み核燃料の沈むプールの中で泳ぐ二体の奇妙な生物だった――その正体は、戦争によって生まれるエントロピーを糧に成長する四次元生命体〈戦争獣〉。生態系ならぬ死態系に潜む死命(シノチ)の最優勢種である彼らは、華麗島で独自の文化に基づき生きる超人〈異人(ホカヒビト)〉のみ扱うことができる。敵対し合う二体の戦争獣、そして異人たちの前に現れる謎めいた男女の双子。彼らが人類にもたらすのは破滅か、救済か。奔放な想像力が生み出す傑作長編。
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紙の本
戦争はなぜ起こるのか
2022/04/01 20:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんで人類は戦争をするのだろう。なぜ戦争をやめられないのだろう。その疑問への答えに、なんとか辿り着きたいという思いなのだろう。その仮説は、生命現象がエントロピー増大の法則に逆らっているため、それを解消するための神、すなわち戦争獣がいるというものだ。戦争獣の存在は特定の部族の中に認められていたが、第二次世界大戦の混乱に乗って東アジアに拡散し、朝鮮戦争やベトナム戦争にも関わり、今また朝鮮半島の核施設に干渉しようとしているというのだ。
人間に憑依する神だとしても、それらはエントロピーをコントロールするシステムであって、超自然や怪異の類ではない。そして方法論の違う種類の神の間で闘争があり、憑依される人間はさまざまなレベルで、一対一の格闘から、核物質の制御にいたるまでの戦争という場面で、人類の存亡をかけての戦いに巻き込まれていく。
なんかそういう話って山田正紀の場合、神獣聖戦とか妖虫戦線とかあったような気がするけど、完結したんだっけ。
デビュー第二作の「弥勒戦争」では冒頭に、屋台でカストリを飲む坂口安吾が登場して、終戦直後の時代の雰囲気をあらわすとともに、主人公の人生観も暗示する効果を出していたが、本作ではやはり終戦直後に共産党オルグにやってくるのが作家デビュー前の安部公房であり、それは何か世界の構造に対する不安のあらわれだろうか。何にせよこの手法をもう一度持ち出したところに、作者の意気込みが感じられる。
極東の地ではこの物語のように戦争獣という神として存在したわけだが、実は世界中で同じようなことが起きていて、それが神の姿に見えるのか、悪魔に見えるのか、それぞれの文明の世界観に従って認識されているのだろう。そしてアジアのさまざまな民族の若者たちは、仕える神の論理に従って果てしなく戦い続ける。それはエントロピーの代理戦争のための戦士になることであって、それで戦争は避けられるのか、現実が示す通りに戦争は永遠に終わらないのか。目に見えない世界の構造のどこかに、そのヒントが落ちていそうな気がする。
紙の本
むずかしい
2021/12/08 21:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
山田正紀の小説は、純粋に物語を楽しもうという人にはお薦めできない。
なぜなら、この作者の小説は、単に小説を読むだけではなく、「考える」ことを強いられるからだ。彼の書く物語は、純粋なエンタタインメントではないのである。
ボーっと生きてると、山田正紀に叱られてしまう。
今作でも、「戦争獣」というタイトルからして難題である。
おまけに作中に登場する「シノチ」「ホカヒビト」「マガタマカガミノモリ」などという、禍々しい造語の数々は、読んでいておぞけ、控えめに言っても吐き気を催すイメージのものばかりである。
前に読んだ「カムパネルラ」は好きだったんだけどな。
あんな、読後の余韻を楽しむような作品なら、どんだけでも読めてしまうんだが、今作のような、何が言いたいんだか分からない本は、一般の読者には到底受け入れられないと思う。
下巻で話がどう動くか、真剣に読まなくてはついていけないだろうな。
余談だが、安部公房の下りは全くの蛇足である。必要なし。