- 販売開始日: 2022/02/18
- 出版社: 晶文社
- ISBN:978-4-7949-7283-5
21世紀の道徳
現代哲学を「政治的正しさ」の呪縛から解放する快著──帯文・東浩紀ポリティカル・コレクトネス、差別、格差、ジェンダー、動物の権利……いま私たちが直面している様々な問題につい...
21世紀の道徳
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商品説明
現代哲学を「政治的正しさ」の呪縛から解放する快著
──帯文・東浩紀
ポリティカル・コレクトネス、差別、格差、ジェンダー、動物の権利……いま私たちが直面している様々な問題について考えるとき、カギを握るのは「道徳」。進化心理学をはじめとする最新の学問の知見と、古典的な思想家たちの議論をミックスした、未来志向とアナクロニズムが併存したあたらしい道徳論。「学問の意義」「功利主義」「ジェンダー論」「幸福論」の4つのカテゴリーで構成する、進化論を軸にしたこれからの倫理学。
哲学といえば、「答えの出ない問いに悩み続けることだ」と言われることもある。だが、わたしはそうは思わない。悩み続けることなんて学問ではないし、答えを出せない思考なんて意味がない。哲学的思考とは、わたしたちを悩ませる物事についてなんらかのかたちで正解を出すことのできる考え方なのだ。(…)
この本のなかでは、常識はずれな主張も、常識通りの主張も、おおむね同じような考え方から導きだされている。それは、なんらかの事実についてのできるだけ正しい知識に基づきながら、ものごとの意味や価値について論理的に思考することだ。これこそが、わたしにとっての「哲学的思考」である。(…)倫理学のおもしろさ、そして心理学をはじめとする様々な学問のおもしろさをひとりでも多くの読者に伝えることが、この本の最大の目的である。(「まえがき」より)
【目次】
■第1部 現代における学問的知見のあり方
第1章 リベラルだからこそ「進化論」から目を逸らしてはいけない
第2章 人文学は何の役に立つのか?
第3章 なぜ動物を傷つけることは「差別」であるのか?
■第2部 功利主義
第4章 「権利」という言葉は使わないほうがいいかもしれない
第5章 「トロッコ問題」について考えなければいけない理由
第6章 マザー・テレサの「名言」と効果的な利他主義
■第3部 ジェンダー論
第7章 フェミニズムは「男性問題」を語れるか?
第8章 「ケア」や「共感」を道徳の基盤とすることはできるのか?
第9章 ロマンティック・ラブを擁護する
■第4部 幸福論
第10章 ストア哲学の幸福論は現代にも通じるのか?
第11章 快楽だけでは幸福にたどりつけない理由
第12章 仕事は禍いの根源なのか、それとも幸福の源泉なのか?
終章 黄金律と「輪の拡大」、道徳的フリン効果と物語的想像力
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現実を 直視できない クリッツァ―
2025/01/30 21:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
プロフィールによると「大学院(修士)を修了後」とあり、明確な履歴を確認できないが、本書の限りでは、クリッツァ―,ベンジャミンは、哲学や倫理学を専攻している者と思われる。そんなクリッツァ―が、学問、功利主義、ジェンダー、幸福について、哲学や倫理学の文献を引用しながら妥当な在り方を論じた本である。
2.評価
(1)第1部はそれなりに面白かった。人文学サイドの説明責任や、動物を傷つけることと差別の関係といったことは、突き詰めて考えたことがなかったので。
(2)第2部からは少々怪しい。本書における「『左派』」は、おそらくp.28-29の「『弱者や貧者、虐げられ搾取されている人々、あるいは単に低いレヴェルの生活さえ維持できない人々』(略)の痛みや苦しみを和らげるために、彼らに苦痛をもたらす状況を改善することを目標とする」立場だが、そうであれば、トロッコ問題は、むしろ左派の批判には矛盾がない一方で、クリッツァ―の左派批判は自らの採用する見解に持ち込みたいがための強引な展開に終始していると評価する。
(3)第3部のフェミニズム批判も空振りの印象である。クリッツァ―のいう「生物学的」が強引である一方(生物学的性差とジェンダーの区別は難しいが、クリッツァ―の言わんとしていることが「生物学的」かどうかは分からない。体つきの違いはそうだろうが)、フェミニズムの方は現実から議論を提起していると言えるからである。「感情は道徳の基盤とするには不確か」(p.207。ただし、終章を読んだ限りでは正しくないが、抽象的な思考や理性が必要というクリッツァ―の見解には賛成)としても、「家父長制」(p.197)や女性差別が虚偽でないかぎりはフェミニズムに一理あると評価する。
(4)第4部のマルクス主義等への非難も空振り。非難は「過労死」(p.353)等の現実から提起されており、それゆえ「労働条件の改善(p.347)が現実に起こっている一方、「心理学や生物学に造詣が深い人であれば」(p.352)と煙に巻くことしかできていない状況である。また、クリッツァ―が何を言おうと、労働から逃げきれる人はごく少数だし、労働から逃げるのがよくないことは、マルクスでも説明可能である(労働力は商品なのだから、アップデートせずに(仕事や訓練をせずに)有利になることはない)。
3.以上、第1部など、それなりに面白いところが4点、現実から提起されていると認定できる思想について有効な批判がほぼなかったことが2点、中間をとって3点とする。