紙の本
読みやすい痛快「書評」「テレビ評」
2023/04/10 17:21
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナ禍にサンデー毎日に連載されていたエッセイをまとめたもの。この時期にはやった(売れた)本やテレビ番組などトレンドについて、著者・高橋源一郎氏が「痛快に」な語りがら、「現代のこれは、昔で言うとこれだな」…というような作品を紹介しながら評している。高橋源一郎氏の博学さに感心するとともに、それを一般読者に分かるようにゆるーく書けるところが、またすごいと思った。
トレンド評(のはず)ながら、一歩遅れて読んでも楽しめる。
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今まだ36頁しか読んでいないのだけれど、読み終えたころには忘れちゃっているだろうから、書いておく。
源一郎さん、あたし、1日で3冊も読めません(笑)。もし本気で明日死ぬつもりだとしても、喉は乾くだろうし腹も減るし、トイレも行くし目も疲れるし。たぶん尻も痛くなる。決行を1日延ばして読め、と言われても、歩いて往復できる範囲にある書店は雑誌とか新刊本とかしかないし、熱林に頼んでも届くまでに1日以上かかるから、1日では本が手に入らない。てことでこの時点で諦めちゃうから、結果としては奏功かな。では続きを読みます。
『大奥』の最終巻を未読なので、ネタバレ章以降は読了してから読むことにします。危ない危ない。p143まで読んだ、一旦返却。(2022-07-23)(2022-08-24)
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「みんなが「こんなことは初めてだ!」とか「こんなの初めて見た!」というなら、あえて「いや、同じことは、前にもあったんだよ」と呟いて見たくなったのである。つまり、「これは、アレだな」と」
とタカハシさんが考えて、世の中の新しい作品や出来事について、これってよく考えると昔からずっとある考えが今の時代の社会的構造や技術に応じて出てきたものだよね、と意外な組み合わせを掘り出してしていくものだ。そこにはタカハシさんならではの発想があって、その意外性を批判的精神などはいったん忘れて純粋に楽しむのがこの本の「正しい」読み方だと思った。もちろん「正しい」読み方などないんだけれど。そういう自分では思いつかないような組み合わせに触れることで物事が少し違うように見える。そこから自分なりの「これはアレ」を見つけて、それでいてそれを押し付けたりしないのが、そろそろよい歳を重ねた一読者の愉しみ方なのかなと。
ということで、まずはタカハシさんの「これはアレ」を書き出してみたい。
① 「滝沢カレンは、谷崎潤一郎」 ... 滝沢カレンすごい!これはまさしくアレだ
② 「ピエール瀧おじさんは、伊丹おじさん、植草おじさん、寅おじさん」 ... 悪いおじさんの系譜
③ 「『リズと青い鳥』、『櫻の園』は、吉屋信子」 ... わからん!
④ 「村山聖、藤井聡は、坂田三吉、舛田幸三」 ... 将棋界も「おじさん」から「カワイイ」に
⑤ 「角幡唯介、高野秀行は兼高かおる、小田実を通りこして遣唐使の圓仁」 ... 冒険作家のツートップは遣唐使が源流だったか
⑥ 「鶴見済、寺山修二、末井昭は、ゲーテ」 ... 自殺本のルーツ
⑦ 「村上龍『最後の家族』、阿部和重『ニッポニアニッポン』、滝本竜彦『NHKにようこそ』は、ドストエフスキー『地下鉄の手記』」 ... ひきこもり文学の元祖。もっとありそう。
⑧ 「チャラ男は、光源氏」
⑨ 「井上理津子『いまどきの納骨堂』は、伊丹十三『お葬式』」
⑩ 「『35歳の少女』は、『岸辺のアルバム』で、さらに『うちのママは世界一』で『パパ大好き』で『奥様は魔女』」 ... ホームの概念は外からやってくる
⑪ 「『物語上野動物園の歴史』は、『旧約聖書』ノアの箱舟」
⑫ 「『定額制夫のこづかい万歳』は、『びんぼう自慢』」
⑬ 「『食べることと出すこと』は、正岡子規『病床六尺』」
⑭ 「『YOUは何しに日本に』は、小泉八雲で、もっと言うと鑑真」
⑮ 「『82年生まれ、キム・ジョン』は、『(18)83年生まれ、シガ・ナオヤン』(志賀直哉)」
⑯ 「『料理大好き小学生がフランスの台所で教わったこと』は、『海老坂武のかんたんフランス料理 ―― シングルライフ、84歳のおもてなし』」
⑰ 「『鬼滅の刃』は、宮沢賢治」 ... 兄と妹の物語らしい
⑱ 「瀬戸内寂静『いのち』は、山本周五郎『小説 日本婦道記』」
⑲ 「有吉佐和子『非色』は、『ふぉん・しいほるとの娘』」
⑳ 「ネットフリックス『クイーンズ・ギャンビット』は、テレビの『拳銃無宿』」 ... タカハシ家でも今ではVODサービス三昧らしい
㉑ 「ピーター・シンガー『動物の解放』は、宮沢賢治「ビジテリアン大祭」と「氷河鼠の毛皮」」 ... ���沢賢治二度目の登場
㉒ 「『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』は、『金子文子 わたしはわたし自身を生きる』と『ミル自伝』」 ... 教育って大事だがひとつの正解があるわけではないよね
㉓ 「『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』は、マルクス『イギリスにおける労働者階級の状態』」 ... これは、確かにアレだ
㉔ 「森元首相発言(の反対)は、藤本和子『ブルースだってただの唄』であり、森崎和江『からゆきさん』であり石牟礼道子『苦界浄土』」 ... 男性こそ女性の話を聞かずに長々と話してきたのだ
㉕ 「『短歌ください』、『サラダ記念日』は、『万葉集』」 ... 『近代秀歌』で句ごとにこれはアレだをやってみた
㉖ 「『侍女の物語』は、ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』で、徳富蘆花『不如帰』」 ... ディストピア小説
㉗ 「朝の連続テレビ小説」 ... いろいろなのがあったね
㉘ 「よしながふみ『大奥』は、カミュ『ペスト』」 ... 女性問題続く
㉙ 「渋沢栄一『論語と算盤』は、毛沢東『毛沢東語録』」 ... 論語つながり。こっそりと自分の口語訳を紹介
㉚ 「YouTuberと『ドクターストーン』は、『ロビンスン・クルーソー』と『十五少年漂流記』」
㉛ 「『その女、ジルバ』は、岡本かの子『老妓抄』」
㉜ 「朝井リョウ『正欲』は、『【図説】"特殊性欲"大百科』で谷崎潤一郎「富美子の足」
㉝ 「スタジオ・ジブリは、トキワ荘」 ... ある意味ね
㉞ 「乗代雄介『旅する練習』は、『男はつらいよ』でジャック・タチ『ぼくの伯父さん』で島崎藤村『新生』で連城三紀彦「私の叔父さん」でレーモン・クノー『地下鉄のザジ』でナボコフ『ロリータ』で『海街diary』」 ... いろいろなものに似ているらしいがモトを全然知らない
㉟ 「『クラシック名曲「酷評」辞典』は、柳下毅一郎『皆殺し映画通信』でさらに直樹三十五『文壇諸家価値調査表』」
㊱ 「「オリンポスの果実」は、『エヴァンゲリオン』」 ... 東京オリンピック「あなたは、いったい、ぼくが好きだったのでしょうか」
㊲ 「『おばあちゃんのおせち』(youTubeチャネル)は、江川トミ『私の料理』」 ... YouTuberまで出てきた
㊳ 「源氏鶏太『英語屋さん』は、『江分利満氏の優雅な生活』で、そして二葉亭四迷『浮雲』」 ... 連綿たるサラリーマン小説
㊴ 「小池百合子は、伊藤野枝」 ... つねに一人称の女性政治家として小池百合子は伊藤野枝の後継者w
㊵ 「カズオ・イシグロ『クララとお日さま』は、フランケンシュタインで、フランケンシュタインは綾波レイでPLUTOのアトム」 ... 愛を表現するためにはAIを必要としている
㊶ 「『キッチン』は、幸田文「台所のおと」」 ... 『キッチン』にキッチンは一度しか出tえこなかったのか。へぇ~。
㊷ 「『窓ぎわのトットちゃん』は、今でいうとADHDだな」
㊸ 「『ノマド 漂流する高齢労働者たち』は、『怒りの葡萄』、そしてさらに『方丈記』」 ... これは、アレ過ぎるらしい
㊹ 「矢部太郎『ぼくのお父さん』は、『おとうさんとぼく』」
㊺ 「『東京オリンピック 文学者の見た世紀の祭典』」 ...東京オリンピックと二度目の東京オリンピック
㊻ 「氷室冴子『新版 いっぱしの女』は、上野千鶴子・鈴木涼美『往復書簡 ���界から始まる』」 ... 『往復書簡』は読んだ
なかなか「これは、アレ」のフォーマットに沿ってなくて無理あるかなあと思うものもあったが、タカハシさんがあとがきで書くように、サンデー毎日の連載としてネタはあっという間に尽きてしまったと白状している。なので、その辺りはケチをつけるのではなく、タカハシさんの腕を鑑賞するという楽しみにふけるべき。
最後に読者のみなさんもそれぞれの「これは、アレ」を見つけてほしいとのこと。
自分にとっての「これは、アレ」は、例えば「稲盛和夫『心。』は、マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』」かな。
タカハシさんももう70歳越え。最後に出した小説は渾身の『日本文学盛衰史 戦後文学篇』は2018年8月でもう三年半前。新しい長編小説はもう読めないのでしょうか。そういえば、「ローラン・ビネ『言語の七番目の機能』は、高橋源一郎『日本文学盛衰史』」かもしれない。
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『今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇』 (高橋源一郎)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062180111
『言語の七番目の機能』(ローラン・ビネ)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4488016766
『心。』(稲盛和夫)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4763132431
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ヴェーバー)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4003420934
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「タイトルが『キッチン』なのに、本文では「台所」というところに、深い味わいを感じる。(212頁)」1956年公団晴海団地のDKにステンレス流し台が取り付けられて以降、台所がキッチンと呼ばれていくようです。いろいろな切り口の話があったのですが、心の底から落ち着くための台所の考察が一番気に入りました。
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これ、書評集だったんですね。書店でパラパラめくってみてはじめてそれに気づき、入手・読了。相変わらずの独特視点が面白く、本作では特に、”これをアレに見立てる”という視点の動かし方が垣間見えて、興味深い。絶賛連載継続中ぽいから、続編がきっとあるんだな。楽しみ。
完全自殺マニュアル
いまどきの納骨堂
皆殺し映画通信
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年取ってくると、何か新しいものを見ても「これはあれに似てるな」と思うことはよくあり、そしてこれとあれをつい比べてしまう。若い人は全く新しいと感動するけど、本当に斬新であることはほとんどないんだよなあ。こういうのが長生きのつまらなさかもしれない。
しかし、それを逆手に取って面白い文章にできるというのが素人とプロの違いですね。
「飛ぶ教室」聴いてるので既に知っていたり読んだりした本も多かったのだけど、同じ本の紹介でも切り口が違えばまた違った魅力を感じる。一粒で二度美味しいってやつ。高橋さんがヘビーな読書家を長年続けているので比較対象する作品にも事欠かないね。
ご本人は書くのは大変とおっしゃっていたが、読者は読むのが楽しいので、ぜひ第二弾もお願いしたい。
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家の墓が生まれたのは江戸時代で住民統治目的、宗教的意味はない、檀家制度は1952に終わってる
もっと「これは新しいと思われてるけどこれと似てるよ」があるかと思ったらあるエピソードに思い出した関連書籍の提示、程度だった
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世の中で起こっていること、話題の事件などについて、過去の書籍や名言などとの共通点を見出し、解釈するという新たな理解手法。「鬼滅の刃」は「ヘンゼルとグレーテル」、日本の作品で言うなら「安寿と厨子王」、「YOUは何しに日本へ」は、黒船的なことも、日本の良さも外国人からいろいろなことを学ぶという点で「明治のお雇い外国人」。滝沢カレンのネーミング、文章、発言のセンスは谷崎潤一郎によく似ている、などなど。とても面白い。こういう解釈をするためには過去の作品の本質的なことを理解していなければならず、ある種の教養がいる。また、中で紹介される過去の名著など、読んでみたいものがたくさんあって良かった。
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高橋さんご出演のNHKラジオ「飛ぶ教室」を聞いているので、そこで紹介されている本と割とかぶっていて良かった。耳で聞くのは聞き損ねたり、熟語(漢字)が浮かんでこず、意味が取れなかったりすることもある。本だとそれはないし、また2回同じようなことに触れてるので、ますます頭に残る。
この本を読んで高橋さんが紹介されている本をずいぶん読んできたなとしみじみ感じたし、読みたい本リストの中にもたくさん残っている。なかなか追いつかない。
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例えば「カレンの台所」を読んで、この本に似たものをどこかで読んだことがあるぞ、と感じ、谷崎潤一郎の「美食倶楽部」だと発見する。
そして「これ」は「アレ」だ、という理由を述べるという本。
なのですが、私にとっては読んだことのない本が多くて、「これ」も「アレ」も両方知らないものばかりであまり楽しめなかった。
「鬼滅の刃」はグリム童話の「兄と妹」だ、と言われてもピンとこなくて脳内 ??? ですから。
「これ」とか「アレ」とかの作品の説明に、少しだけ興味を引かれたのは、吉本ばななのデビュー作「キッチン」で、
文中では「キッチン」でなく「台所」が使われ、最後に1回だけ唐突に「夢のキッチン」と出てくるらしい。
台所とキッチンの違いをいろいろと考えたりしている。
「これはアレ」という類似性には全く関係なく読みたいと思ったのは「将棋の渡辺くん」。
この本は最近気になっていたのだが、作者(伊奈めぐみ)が渡辺名人の奥様と知って読むことに決めた。
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■ Before(本の選定理由)
気になるタイトル、と思いなんの先入観もなく読み始めた。
■ 気づき
物事の抽象化が上手く、例えが秀逸な名人芸という印象。(つまり、こうだね。これは、アレだな。)
全く接点の無い物が繋がって見える。とても贅沢で、本という形でこんなに安く触れられるのラッキーと感じた。
■ Todo
滝沢カレンのレシピ本に谷崎潤一郎を見出したり、鬼滅の刃に宮沢賢治を見出したり。具体と抽象の宝箱。私もこうなりたい。
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予備知識無く読み始める。大好きな書評集の類いのようだ。「これ」は「アレ」だな、と言葉を綴る。決して断じることはありませんが、時空を超えた繋がりに思える。
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『#これは、アレだな』
ほぼ日書評 Day569
世の中の出来事や、書物・映画等の各種作品、オリジナルに見えて、実は根っこのところで共通性のあるものが色々ある、というのが、この「これ」が「アレ」である意味。
その共通点を見極めることが本書のテーマなのだが、純粋に書評集としても楽しめる。
さすがプロの物書きの方だけあって、一般書籍は言うに及ばず、映画、漫画、アニメ等と、きわめて幅広くカバーする。
そして、著者が興味を持った作品を、共通項でつなぎながら、数行、長くても1ページほどで、内容やポイントを紹介する。
そして、わずかそれだけの分量なのだが、紹介された本や映画を、経験したくてたまらなくさせるのだ。
評者の長々した駄文とは大違い、勉強させてもらおう。
で、評を読んで、特に読みたくなった本を、備忘のためにメモしておこう。しばらく、ほぼ日で、以下の本が続くかも知れない。
完全自殺マニュアル(鶴見済)
青少年のための自殺学入門(寺山修司)
新編 日本の面影(小泉八雲)
海老坂武のかんたんフランス料理
いのち(瀬戸内寂聴)
正欲(朝井リョウ)
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作家を本業としている著者によるエッセイ。
今起こっていることや流行っているコンテンツ(本、映画、漫画、ドラマなど)と似た過去のコンテンツを比較しながら紹介する形式。
或る雑誌で連載していたコラムをまとめた本なので、形式やパターンが同じでそこに冗長さは感じた。
とはいえ、知らない作品も多く、興味深いものもあった。紹介されていた中から幾つかは確認してみたい。
なにか事件や出来事が起こる。すると、その事件について「それは〇〇だ」という意見が一斉に押し寄せる。その一方で、「まったく違う!」という意見も反対方向に現れる。そして、人々の意見は、「これか、アレか」に分かれ、「これ」派と「アレ」派の間で終わりなき対立が起きる。
しかし、ほんとうにこの世界は、「これか、アレか」で分けられるものなのだろうか。「これ」と「アレ」の間には、無限のグラデーションがあるのではないか。これが本書における著者の主張である。
楽しいことや面白いもの、反対に直視するに耐え難い辛いことや苦しいことも、過去になんども起こったことの繰り返しだと気が楽になる。
そしてその過去の「アレ」が今のものとは微妙に異なっているグラデーションを楽しむ姿勢が重要なことだと思う。
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NHKラジオ飛ぶ教室で、伊藤比呂美さんが本のタイトルを
「これは、ソレだな」「あれは、ソレだな」とかいちども正しく言わないのに対して、いちいち訂正していた源一郎さんがかわいかった(笑)
ラジオ繋がりの話も多く、いつものノリで楽しく読ませてもらったのでした。