辺野古入門
著者 熊本博之
普天間基地移設問題の最前線としての名護市辺野古――。しかし、そこには地域の歴史があり暮らしがある。キャンプ・シュワブとどのような関係にあるのか、普天間基地移設の候補地とし...
辺野古入門
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商品説明
普天間基地移設問題の最前線としての名護市辺野古――。しかし、そこには地域の歴史があり暮らしがある。キャンプ・シュワブとどのような関係にあるのか、普天間基地移設の候補地としてなぜ辺野古が浮上したのか、「条件つき受け入れ容認」とはいったい何を意味するのか。二〇年にわたり現地でフィールドワークを続ける社会学者が、親愛の情を込めて描く、辺野古を知ってもらうための初めの一冊。
目次
- はじめに/ふたつの出会い──社会学と沖縄/大きな勘違い/普天間基地移設問題の研究へ/「よそ者」の限界/「命を守る会」へ/突然おとずれたチャンス/勘違い、再び/状況の大きな変化/本の出版/本書がめざしていること/第一章 辺野古の歴史/シュワブ以前の辺野古/米民政府からの要請/辺野古区の動き/要請の受け入れ/沖縄の人たちの反応/住民たちの声/土地賃貸契約の締結/村長の思い/辺野古区民の思い/建設工事がもたらした影響/駐留開始後の盛衰/第二章 辺野古のいま/辺野古社交街の現在/軍用地料の存在/米兵との交流/角力と米兵/米兵との交流が持つ意味/シュワブを組み込んだことが生み出す問題/第三章 普天間基地移設問題の経緯(1) 一九九五─二〇一〇/一九九六年四月──普天間基地移設問題の発端/一九九七年一月──「命を守る会」発足/一九九七年四月──「辺野古活性化促進協議会」発足/一九九七年一二月~一九九八年二月──名護市民投票と名護市長選挙/一九九九年一二月──岸本市長、条件つき受け入れ表明/二〇〇二年二月──名護市長選挙/二〇〇四年八月──沖縄国際大学ヘリ墜落事故/二〇〇四年九月──海上での阻止行動開始/二〇〇五年一〇月──沖合案からL字案へ/二〇〇六年四月──V字型案での合意/二〇〇七年五月──米軍再編推進特措法の成立/二〇〇九年八月──民主党政権の誕生と迷走の始まり/二〇一〇年一月──名護市長選挙/二〇一〇年五月──辺野古区行政委員会、「条件つき容認」決議/二〇一〇年一一月──沖縄県知事選挙/第四章 普天間基地移設問題の経緯(2) 二〇一一─二〇二一/二〇一一年六月──新生・命を守る会発足/二〇一一年一二月──環境影響評価書の提出/二〇一二年一二月~二〇一三年一月──第二次安倍政権の発足と建白書の提出/二〇一三年一二月──仲井眞知事による埋め立て承認/二〇一四年一月──名護市長選挙/二〇一四年七月──ゲート前抗議活動開始と一八項目の要請書/二〇一四年一一月──沖縄県知事選挙/二〇一五年~二〇一七年──埋め立て承認をめぐる攻防と工事の進展/二〇一五年~二〇一七年──辺野古に広がるあきらめ/二〇一八年二月──名護市長選挙/二〇一八年六月──辺野古の地位の相対的な低下/二〇一八年八月──埋め立て承認の撤回と翁長知事の死/二〇一八年九月──沖縄県知事選挙/二〇一八年一二月──土砂投入開始/二〇一九年二月──辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票/二〇一九年一二月──工期と費用の計画見直し/二〇二〇年九月~二〇二一年一二月──進む建設工事/第五章 二〇二二年名護市長選挙/一月一九日(水) くもり/一月二〇日(木) 雲が多めの晴れ/一月二一日(金) 晴れ/一月二二日(土) 曇りときどき小雨/一月二三日(日) 雨/一月二四日(月) 曇りときどき晴れ/おわりに/決定権なき決定者/決定権なき決定者としての名護市民/決定権なき決定者としての辺野古区民/決定者に祭り上げられるということ/責任を負うべき者/あとがき
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沖縄を踏み台にして安全保障と言えるのだろうか
2023/01/20 21:11
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
沖縄の普天間基地は世界中で最も危険な基地と言われている。この危険な基地の周辺に住民が集まったという無責任な言説もあるが、日本の敗戦により、村民が住んでいたところをアメリカ軍が強制的に接収して建設してきた歴史がある。その代わりに辺野古に基地を作るというが、機能が全く違うので、辺野古新基地と言われている。この辺野古には、キャンプシュワブという米軍基地があり、そこから大浦湾等を埋め立てて、基地を作るという。著者は長年、現地に足を運び、基地建設反対派と推進派の声を聞いて、本書を書き上げている。そもそも、推進派と言っても、軍事基地を積極的に受け入れるというわけでない。反対して基地が建設されない、撤去されるなら反対という人が多い。反対と言えば、政府は何も聞かないために泣く泣くと言っていいのが現実ということがひしひしと伝わってくる。本書の目次を見ると、
はじめに
第1章 辺野古の歴史
第2章 辺野古のいま
第3章 普天間基地移設問題の経緯1 1995-2010
第4章 普天間基地移設問題の経緯2 2011ー2021
第5章 2020年名護市長選挙
おわりに
あとがき となる。
米軍が高圧的にキャンプシュワブを建設した時代、1ドル=360円時代に歓楽街が繁栄し、円高になると閑古鳥が鳴き、現在に至り、苦しい中でも果敢に生きてきた人たちを描くところから、辺野古を抱える名護市の市長選挙経過を辿る。地元や沖縄県が住民を守るための条件を示しても、政府は無視続けてきたことがよくわかる。沖縄に寄り添うと言いながら、軽視又は無視をしてきた総理大臣がいたりすれば、条件付き容認を取らざるを得ない苦悩がある。本書では「決定権なき決定者」と表現する。また、名護市民全体が重い負担を担わされているわけでなく、辺野古、久辺3区の地元と言われるところに負担が集中する。しかし、米軍再編交付金は容認する市に交付され、基地のことを触れずに、保育料や給食費の無償化に使われる。原発と同じように、いずれ交付金は減っていく。地方自治体の自治権にも関わる問題でもある。沖縄の基地は辺野古だけでないが、一読する価値がある。
わかりやすい
2024/09/12 21:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
普天間基地の辺野古移転について、興味深く読むことができました。辺野古の地盤など、諸問題について、わかりやすかったです。
「『決定権なき決定者』」に 追い込む本土
2024/04/11 23:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
普天間基地返還の条件として、名護市辺野古沖に米軍専用基地が建設されようとしている(p.79参照)。辺野古への基地移転については、辺野古、名護市、沖縄県は、いわゆる「『決定権なき決定者』」(p.212)になっており、「賛否を問われること自体から距離を置くようにな」(p.212)っている。そのような状況に追い込んでいるのは、日本政府を支持している「『本土』」(p.217)の人たちである。従って、「『本土』」の人たちは、とりわけ辺野古の現状を知らないといけない。本書は、熊本博之のフィールドワークや辺野古の歴史(米海兵隊のキャンプ・シュワブができた時から)を通して、辺野古が置かれている状況を明らかにした本である。
2.評価
(1)筆者は恥ずかしながら、辺野古を含む名護市は辺野古基地移転反対で、普天間基地がある宜野湾市は賛成である、程度のイメージしかなかったが。そんな単純な話ではないのが分かって有益であった。辺野古への基地移転の根拠の一つがキャンプ・シュワブだったり、辺野古への基地移転が止められないなら交渉できる人がいいとして、基地反対を前面に押し出す人ではなく保守系の候補者を応援する状況には考えさせられた。
(2)このように、辺野古や基地移転問題を考えるのに有益ではあるが、「『本土』」の人からしても複雑な問題である。一例をあげると、当時の民主党の政権担当能力のなさもあろうが、防衛大臣や外務大臣(p.111)のみが「県外移設」(p.111.実現すれば、辺野古への基地移転はなくなる)に反対していたのではなく、アメリカの「圧力」の問題や官僚の問題がある(一例:矢部宏治.鳩山元首相が絶句した…自分を「裏切った」腹心の官僚が、じつは忠誠を誓っていた「ヤバすぎる相手」.現代ビジネス.(アドレス略))のだが、そこが無視されているのは問題である(「『本土』」の人に決定権があると言えるのか疑問である)。
(3)以上、(1)が5点、(2)で1点減らして4点とする。
沖縄の選挙ドキュメント
2022/05/12 16:23
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
沖縄の米軍基地問題を、基地誘致賛成と反対の候補がぶつかる名護市長選挙や県知事選などの選挙から振り返り、著者が分析する1冊です。
実際に著者が基地反対側の候補を支援しながら、選挙を振り返るドキュメント形式となっています。賛成と反対の意見で揺れる地元の方々の葛藤にも追求しています。
辺野古の実情を知る
2022/05/10 12:22
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
20年以上沖縄に通い、フィールドワークを続ける筆者が、「よそ者」であることを自覚しながら、辺野古の歴史や地元の人々が抱える複雑な思いや事情を知った経験を踏まえ、時系列で辺野古問題を追うまさに入門書。
研究者である筆者が上から目線ではなく、易しい言葉で、一人の「よそ者」としてつづっているところに好感が持てる。
移設/新基地建設に賛成か反対か、政府VS住民、などという二元論では語れない実情を明らかにしていく。
読み進める内、辺野古問題で浮き彫りになった構造的暴力は、決して沖縄だけの問題ではないことに気付かされる。