人間のしがらみ(下)
ミルドレッドへの思いを断ち切ったフィリップに訪れる新しい出会いと思わぬ再会。感情を大きくかき乱す出来事の数々に翻弄されるなか、青年は偶然知り合ったある一家との交際のなかで...
人間のしがらみ(下)
商品説明
ミルドレッドへの思いを断ち切ったフィリップに訪れる新しい出会いと思わぬ再会。感情を大きくかき乱す出来事の数々に翻弄されるなか、青年は偶然知り合ったある一家との交際のなかで人生の「真実」に気づき……。人気絶頂期のモームが劇壇との蜜月関係を破り、専念して書かざるを得なかった20世紀英文学の代表的傑作。
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生きることに何の意味があるのか?主人公が辿り着いた結末は。
2022/04/11 13:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
9歳で母親を亡くし、叔父夫婦に預けられたフィリップ。生まれつき内反足であるがゆえの苦労や、自分を抑えきれない恋などを経験しながら、生きる意味を自問して成長する彼が辿り着いた幸せとは。
著者モームの自伝的小説。
上、下巻のページ数に読了できるか不安だったが、読み始めるとフィリップの人生から目が離せずあっという間に読めた。
“やりたいようにやれ”を人生訓にいざパリの美術学校に入学したフィリップだったが、自分は絵に人生をかけるほどに才能があるのか迷い、苦しむ。
芸術家ではない私でもその苦悩、不安が手にとるように伝わってきて、胸が苦しくなった。
何のために生きるのか、生きることに何の意味があるのか、幾度となく自問してきたフィリップが、人生に意味などない。自分の人生は1つの模様で、幸せも苦しみもすべて人生という模様を凝ったものにするだけ。終わりが近づけば、それは自分だけが知る芸術作品となり、死をもって直ちに消え去るがゆえに美しい。と悟る場面がとても印象的だった。
何かを成し遂げたい、立派に生きたいと願えば願うほど理想とのギャップに苦しむ気持ちが生まれる。そんな現状にやるせなくなった時にこれも1つの模様に過ぎないと考えれば少しだけ心が落ち着くと思った。
この物語を読み、その時は人生に失望し、全て無駄だったと感じたとしても、そこで経験したことは自分が気づかないうちに豊かな心と人格を作り、いつか思いもしない場所へ連れて行ってくれるかもしれないと思えた。だから生きることを諦めてはいけない。そんな風に感じられた。
巻末で著者モームが辿った人生とフィリップの人生を比べてみるのも面白かったし、モームの他の作品も読んでみようと思った。
本著には深く考えさせられ、心を打つ言葉が沢山あり、自分のおすすめ小説ベスト5に入る本になった。