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児童文学とは思えぬダークミステリー。
これはファンタジーとされているが
ミステリー要素が最初から散りばめられ
学者の父が犯した捏造の噂から逃れる為
一家はある島に逃げる様に移住する。
そして、父親の不審死から謎の植物の存在
が発覚する。
それは人間の吐く嘘を養分にして大きく
実がなり、それを食すと世の中の理や真実が
ビジョンとして頭の中に映し出される
と言う不思議な力をもった植物だった。
この時代の女性達は男性に従ってしか
生きられず、娘は父の死の謎を解き明かす
為に今までの抑圧された生活から
一歩踏み出し、嘘の木と父親の死の謎を
解き明かす。
抑圧されたこの物語の全ての女性達は
最後の最後に嘘の木の消滅と共に
全ての鎧を脱ぎ捨て、力強く生きるのだ。
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これ、児童文学?
幻想に入り込むのは難しく、カタカナ名で誰が誰だかわからなくなったが、読後の不思議な満足感はなんだろうか。
単に父親殺しの犯人を探し出す…のがテーマではなく、この時代の限られた女性の生き方が語られていることに、心を奪われた。
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そう、世界は公平なんかじゃない。嘘を養分として育ち、嘘が広まるほどより真実を見せる実をつける「嘘の木」という設定が面白い。本作の世界では、大人の女性でも男性をサポートすることしか期待されておらず、14歳の少女である主人公には、聞き込みや捜索といった普通の探偵が行う手法は到底とれない。しかも主人公の一家はとある理由から迫害を受けており、彼女にできるのは、誰にも注目されない立場を利用し、少しずつ嘘を広め、嘘の木の力を借りて真相に迫ることしかないのだ。誰にも理解されず孤軍奮闘する主人公が切ない、良い作品だった。
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ファンタジー要素は少なく
40%くらいまで現実的なミステリーです。
後半は中々のトリップ感があります。
種の起源の発表後のキリスト教世界と
嘘で膨張する植物を絡ませた物語は、いつもながら児童文学とは思えないですね。
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舞台は19世紀イギリス。価値観や風俗が現在と異なるのでタイムスリップしたような気分になれます。
前半は男尊女卑の甚だしさにちょっと辟易しましたが、半ばから物語が動き出してそこからは面白くて一気に読んでしまいました。
SFでありミステリーであり冒険であり、ストーリーの面白さだけでなく文学としても素晴らしく、傑作と謳われるのに納得しました。
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とんでもない行動力と体力と知力がある少女が主人公。
これはSFになるんだろうか。
『すずめの戸締まり』のすずめ並みの体力をもつ主人公。(うろ覚え)
悪党に嘘の木を渡すな!
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初のフランシス・ハーディング。
児童文学賞とか嘘やん笑、と言いたくなるほどがっつりミステリ。
序盤は主人公のフェイスに襲いかかる苦難が読んでいて辛くて辛くて。
19世紀のイギリスという時代背景も含め、女性がとことん生き辛い世の中、父の捏造の噂からの死。自殺で処理されると埋葬もできない、加えて後半判明するが資産相続もできないため、これから生きていくためには、父は殺されたのだという証明=犯人探しが必要となる。
このあたり、中盤以降に登場する「嘘の木」の性質をうまく利用し、フェイスが島の裏で暗躍する段になってからがかなり読み応えが良くなった印象。児童文学としていいかどうかは置いといて笑
犯人に至るまでの過程も見事。伏線がうまく張られていた。
帯にもあったが、終盤の親娘の会話も良かった。
19世紀の女性の闘い方で家族を守ろうとした母親、新しい時代を切り開こうとした娘。どっちも正しいよなぁと。
評判どおりの面白さで、次作も楽しみ。
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不思議な読後感。
おもしろくて、ページをめくる手が止まらない!
というわけではなく、どういう着地をするのか、
気になって最後まで読んだ、という感じ。
嘘を与えると成長する木、という、途方もない設定なんだけど、関わる者みんながそれに取り憑かれ、
信じてしまう。そのことにそれほど違和感を感じなかったのは、それだけこの作者に筆力があったからだろう。
主人公の少女は完璧なヒロインではなかった。
悩み、時に卑屈になり、親の愛情に疑問を持ったり飢えていたり。かと思えば、この時代に似つかわしくない大胆さで意見や行動をする。
世の中の多くの少女が持つそんな特性に、読んでいて共感する部分も多いかもしれない。
少女の母親も含め、登場する女性の描き方がおもしろい作品だった。
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これまでに読んだことがない感じの本。現実世界に嘘の木というファンタジー的なものが科学的に研究されているという独特な世界観が新鮮だった。最終的にフェイスとマートルの距離が少しだけど縮まったのがすごく嬉しかった...
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19世紀英国。女性の立場は低く、学問を志すことも自立した生き方も許されず、ただ貞淑で家庭にいることを強いられていた時代。まさに子供から女になろうとする14歳のフェイスが、知恵と勇気をふるい多くの束縛や困難を乗り越えて真実を追い求めるミステリー。
高名な学者であり畏れつつも敬愛していた父が殺され、その汚名をすすぎ犯人を見つけるために奮闘するのだが、高潔と信じていた父が実はそうではなかったという皮肉。
それに対し、美しく着飾り男に媚を売ってばかりの母を軽蔑していたのに、それが家庭を守るための母なりの闘いだったのだと知り、終盤で母娘がお互いを認め合うシーンが良かった。
自分の信念(faith)を持って闘う少女は、女が自由に生きられる新しい時代を切り拓いてゆくに違いない。
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前半は、鬱々として、うーん辛いと思いつつ進んでいくと、途中からの主人公フェイスの脱皮で、物語は凄みを帯びてくる。
そこからは怒涛の展開で、ラストは涙した。
ファンタジーでありミステリであり、ダークヒロインの物語であり、少女の成長と勇気の物語である。
とても好きだった。読み返すと思う。
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ウソを食べて育つ『嘘の木』の果実を食べると… 暗く静かでキレイなファンタジーミステリー #嘘の木
■あらすじ
19世紀のイギリス、宗教の協議と進化論が折り合わない時代。
博物学者を主とする一家が、研究結果捏造の中傷を浴びてしまい、島に移住をしてきた。島の住民に疎まれながら、肩身の狭い生活を余儀なくされる。
娘であるフェイスは、ある日の夜中、博物学者の父に秘密の場所に引き連れられる。しかしよく朝起きると、父は不審死を遂げてしまうのだった。納得ができないフェイスは独自で調査を始めるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
これがファンタジー小説というやつか… 美しく幻想的な作品でした。
翻訳ミステリーは物語をいかに盛り上げていくかが読みどころなんですが、本作はひたすら静かに、そしてゆっくりと進行していきます。何もかもはっきりとは説明もされず、ずっと薄暗い世界を読み進むことになるのです。
そこに現れるのが「嘘の木」。
夢のような効果が得られる植物にも関わらず、やはりそこには暗澹たる世界しかない。素晴らしいダークファンタジーを体験することができました。
本作は儚げな美人を眺めているような文章で、可憐すぎるんですよ。圧倒的な筆力。じわっと心の染み入る表現が素晴らしかった。
本書 P81 引用:
女性たちがひっそりと羽をのばして素の姿になっている。
見た目の変化はなくとも、花が開くように、あるいは折りたたみ式ナイフを開くように、本当の姿を見せはじめていた。
本作は登場人物の推しは、やっぱり主人公フェイス。
控え目ながらも、父を想う優しい心と、問題解決に立ち向かう熱い姿が可愛い。19世紀イギリスでなくとも、現代の日本社会の第一線で戦っている女性たちを見た時と同じにように、勇気と生気をもらいました。
そして事件の結末と真相も、まさに胃が締め付けられるような展開でしたね… ただこれから未来のフェイスには、一筋の光が差し込んでいるような気がしました。
■ぜっさん推しポイント
書き連ねてくるテーマ性がめっちゃ痺れましたね。
作者はまだまだいっぱい作品があるので、楽しみに読もうと思います。
・女性の生き方
この時代における社会や家庭における女性の立場が、あまりにも痛み入る。どんなに優秀であっても、正しくても、権利が与えられないという現実がどれほど人の価値観を卑屈にしていくか…
・宗教と種の起源
人はどこから生まれ、どこに帰っていくのか。キリスト教の禁忌を犯した者の運命は… 深い深いテーマに人の欲が絡み合ったとき、こんな物語になるのだと感動しました。
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こんなに贅沢な児童文学もないものだと感じ入りながら、読み応えのある物語を堪能しました。文学小説家としてもフランシス・ハーディングさんは天性の才能を持っている方だな思っております。
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時代背景をよく表した本であると思った。
当時の女性は、こうあるべきだ、といったものがとても強かったのだろう。
そして、そのように生きなければ生きられないくらい厳しい時代だったのも事実。
だが、そんな中でも少数派として生きていく人は、誰かに共感してほしく、どうにかして自分を貫いて、表には出ない形で活躍していく。
主人公の周囲を考えないで突き進んでいく行動力はよくもあり、悪くもあるが、こうあるべきだ、という概念が強すぎる時代には必要なのかもしれない。
今の比較的自由な価値観を持つことが許されるようになった時代の前には、数々の苦労があったと思う。その苦労があったからこそ、今の自由があるのだと感謝して生きていこうと思った。
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んー。取り敢えず、読むのに体力のいる本ではあったかなぁ。前半から中盤にかけてては陰鬱な感じで中々話が進んでいる感じはしなかったし。19世紀イギリスの歴史、文化的背景に私の無知も相まって一体どういうこと?そんなに過剰に反応するところ?のような、キャラクターの反応が理解しづらい場面が所々あった。宗教的価値観もうっすら根底にあるのが前提の作品であると感じたし、理解出来ないところも結構あった。読んでいて好きになれたキャラがいなかったのが、あまり好感もてなかった所以かも。
帯の評判で買ってみたけど、私にはあんまり刺さらなかった作品かも。。。。
※あくまでも個人の意見です