読割 50
電子書籍
春になったら莓を摘みに(新潮文庫)
著者 梨木香歩
「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らし...
春になったら莓を摘みに(新潮文庫)
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
春になったら莓を摘みに (新潮文庫)
商品説明
「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。ウェスト夫人の強靱な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける――物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
梨木文学の根底に流れる異邦人感覚
2009/02/15 13:54
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菜摘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
梨木氏の文学の根底に流れる異邦人感覚、とも言うべき感覚、『本当の故郷』 とは特定の場所ではなく、自分の心が故郷だと感じることができるところなのだ、ということを教えてくれる1冊です。
英、米、カナダと巡る梨木氏自身が 『異邦人』 として感じ見聞したことを率直に書き綴っています。1つの章で場面があちこちに飛ぶことが多いにも関わらず不思議と飛んでいる感じがしないのは、梨木氏の中では全てが一連の出来事、想いであり、それが文章として的確に表現できているからなのです。
正直梨木氏の文学、特に児童文学と呼ばれる分野の作品は読み始めはやや難解な感があるものもありますが、このエッセイは最初から最後まですんなり読むことができました。そして久しぶりにしばらく経ったらまた読み返したい1冊になるだろうと感じました。
『子ども部屋』 の章で。
>私にとっては同じ風が吹いているところがいつも子ども部屋であり、そこがふるさとなのだ。
全くその通りで『風が吹くところ』 心が感じるところが自分の故郷だと言う梨木氏。私も梨木氏のように心のまま、感じたままに生きたいと思うのです。
最も多く登場する古い友人、ウェスト夫人のことを 『受容する人』 と絶賛していますが、梨木氏自身も訪れる先々で多くの人と出会い、触れ合い、心を通わせ感じることができる人であることから、彼女自身も同様に気配りのある人なのだろうと感じました。
梨木香歩ファンは必読、更に英米カナダとその文学が好きな方にもオススメです。
紙の本
理解はできないが受け容れる。ということを、観念上だけのものにしない、ということ
2006/03/14 15:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nory - この投稿者のレビュー一覧を見る
ため息が出るほどの上等な人々と著者の交流。こんなにも静かに美しく生きている人がいるんだとあたりを見回してみる。
ページのほとんどは英国(イギリスとはいわない)のウエスト夫人とのことなのだけれど、この人がどんな国の人でも、どんな境遇の人でも、どんなに悪人でも、献身的に面倒を見て、裏切られてもまったく懲りずにまた渦中の栗を拾うような人物なのである。それも大げさにではなく、ごく自然に。
『理解はできないが受け容れる。ということを、観念上だけのものにしない、ということ』
「理解はできないが受け容れる」ということすら難しいのに、ウエスト夫人はすべて受け入れ、行動する。それがどんなに大きくすばらしいことか。世界の人々がこの気持ちを少しでも持つことができたら、本当の平和への光が見えてくるにちがいない。
紙の本
理解はできないが、受け容れる
2013/05/25 20:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者が学生時代、英国で過ごした頃、下宿した家の女主人ウェスト夫人と、そこに下宿した人々との交流記。
ウェスト夫人は全くのボランティアで下宿人を受け入れている。
様々な人種、考え方の下宿人たち。
本書で登場する人達は、クセの強い人たちばかりだが、取り上げたのがそんな人達だけなのか、本当にそんな人達ばかりなのかは不明。
「筋金入りの博愛精神」とでも言うべきだろうか。「使命感」のようなものさえ感じる。
下宿人のために嫌な思いをしても、決してボランティアは止めようとしない。
例え小切手の不正使用未遂事件を起こした住人(の知り合い)がいたとしても。
本書の裏表紙にもあるが「理解はできないが、受け容れる」というのがウェスト夫人の生き方。
見習うべき、とは思うが、自分なら嫌な事が2つ、3つあれば、もうコリゴリと思ってしまうのが関の山だろう。
この考え方を貫ける方が理解できない、とさえ思ってしまった。
ところで、今の日本では「理解できないものは、排除する」という風潮が強い気がする。
昔からそうだったかもしれないが、少なくとも「排除」しようとする人の声が簡単に拡散するようになってしまった。
(逆の事も言えるが・・・)
「受け容れる」というレベルは遥か彼方だが、少なくとも積極的に「排除しない」ようにしたい。
「八つ当たり」まがいの行為では、そこで思考停止してしまい、どツボに嵌っていくだけで、何も解決しないから。
紙の本
静かに味わいたい文章
2022/11/19 10:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
香歩さんの英国滞在中のホストマザーとその縁で知り合った人たちとの思い出や旅のことを綴ったエッセイ。
あるできごとややりとり、風景などから深める思索の世界が自由自在に広がり、変貌していくさまを静かで落ち着いた文章で語っているところが素晴らしく、何度もじっくり味わいたい。
ここまで深く丁寧に気づき、感じ、考え、それらを整理して書き留めるという作業を、さらっとできてしまうところに感動してしまう。
同じ時間を生きていてもその濃密さが違うのかとも思う。
そういう意味では、自分には、想像もできないほどの広い世界が心の中に広がっているのだろうなぁ。
豊かな気分にさせられる。
紙の本
懐が深い
2017/09/08 19:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
無理矢理理解した事にして 自分や周りを誤魔化すのでは無く とりあえず受け入れてみて、そこから始めればいい。このスタンス 好き。
紙の本
異邦人による異邦人のための…
2021/02/22 10:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぱぴぷ - この投稿者のレビュー一覧を見る
筆者が英国で留学したときの下宿先のウェスト夫人は、信じられないほどの善意の持ち主で、来る人拒まずの人である。こんなひと、いるのだなぁと驚いてしまう。ウェスト夫人の背景をみてみると、夫人は英国で暮らしているけどアメリカ人であり、キリスト教徒ではあるけど、キリスト教徒の中でも少数派と言えるクウェーカー教徒だという。つまり、ウェスト夫人は、英国においては異邦人のひとりであるし、母国のアメリカにおいても、クウェーカー教徒ということで少数派の人間であり、ある種の異邦人的存在といえるかもしれない。そうした夫人の異邦人性と、クウェーカーの特徴である平和主義、平等主義、リベラルさなどが合わさって、こうした夫人の特性を生み出したのかもしれない。
よくよく読むと、筆者が親しくする人々は何かしらの面で異邦人性を持っている人が多い。結局、そういう人たちが、別の異邦人に暖かな手を差し伸べたり、別の異邦人と心を通わせようとすることができるのかもしれない。
紙の本
"ひと"を強く感じた
2017/11/23 20:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L - この投稿者のレビュー一覧を見る
梨木さんの小説は自然を強く感じさせるものが多い印象だったけど、このエッセイは"ひと"を強く感じました。それでも梨木さんらしいなという雰囲気にあふれている一冊です。