老人ホームで死ぬほどモテたい

投稿元：

レビューを見る

2022.02.15
わたしの人生のテーマが「善く生きる」なんだけど、上坂さんは「善く生きているひと」という印象が強くて美しいなぁと思う。
強くて泥臭くてきれいで愛おしい歌集だった、わたしこれから先いろんなタイミングでこの歌集のこと、上坂さんの短歌のことを思い出すんだろうな～～

投稿元：

レビューを見る

偶々立ち寄った書店の、何となく足を向けてみた句集・歌集の売り場に積まれていた本書をタイトルに一目惚れして衝動買い。


『老人ホームで死ぬほど』ってブラックジョークのような、皮肉のような、無遠慮なフレーズの下に『モテたい』という生々しい欲望がぶら下がったタイトル。
ただ、てっきりシニア川柳というか、ファンキーめいた中高年の歌人による作品集かと思い込んでいたら思いの外に若い方だったのに驚き。表紙にちゃんと『新鋭短歌』と入っているのにね…。
そう理解した上でタイトルを読み返すとまた違った感じがしますね。


イントロの「ばあちゃんの〜」(p6)の歌にガツンとやられました。まあよく考えたら「骨のつまみ方」はともかく「燃やし方」は斎場の方にお任せで良いのでは…と。

「ロシア産鮭と〜」(p19)も血縁の無い親子間の空気をサーモンいくら丼に見立てた歌だが、まあ確かに上手くいかないでしょうな。ここに出てくる「丼」は’家’というか’住まい’というか。ひとつ屋根の下で共同生活していればまあ形にはなるよと。産地が違う鮭といくらでも美味しい丼にはなれるし。醤油があれば尚結構。ただし、それらは’家族’にはなりきれない。

私が一番好きなのは「すべり台の〜」(p88)の歌。
「すべり台の一番上」で「ストレスを減らすチョコ」をくれる「少年」。少年はどうしてそのチョコを持ってたんだろう。’わたし’にあげるために家から持ってきたのか、たまたま誰かに持たされたのか。「一番上」が最も見晴らしの良いピークの状態なので、すべり始めてしまったらあとは人生下る一方。少女時代の公園で遊ぶこのひと時が人生の中でも比較的良い時で、貰ったチョコは餞別のようなもの。ストレスの多からん人生頑張れよ…みたいな感じかな、と理解。深い歌だな。。

「知らないだろうけど〜」(p103)は改めて言われなくともわかっとるよ！とも言い切れないな。’あーあ、家に帰ったら吉岡里帆がいればなー’という妄想は誰もが抱きつつも、吉岡里帆が居るだけで人生オールオッケーかというと実はそうじゃない。その吉岡里帆を養っていくだけの気概や、愛想を尽かされぬ様にたゆまぬ甲斐性を持っていないと、結局は「さみしい」のである。


クセになる刺激をもらえる足ツボマッサージみたいな作品集。

私は本書で「イエベ」「ブルベ」「プリエ」という言葉を知りました。



1刷
2022.3.13

投稿元：

レビューを見る

初めて短歌集を読んだ。とても良かったしもっと短歌を読みたい知りたいと思うきっかけになった一冊。人生のえぐ味をユーモアで包んだ柔らかい爆弾のような歌たち、内臓にキくパンチ力がある。

投稿元：

レビューを見る

自伝小説を読んでいるよう。内面に向き合って出てきた言葉だとおもう。それでいて読んでいるこちらにも届く。めっちゃいい。

投稿元：

レビューを見る

歌集を読むのは中学生の時の俵万智ぶり。それくらい短歌って自分の生活とは離れたところにあったんだけど、たまたま紹介されてた1首 2首が刺さって購入。うまく言えないけど、綺麗じゃないのに綺麗なところが好き。

投稿元：

レビューを見る

初めて歌集を読んだ。歌集が持つ他とは違う空間感みたいなものを味わうことができた。とても印象的な読書体験になったと思う。
少女ではないが大人でもないような独特な鋭さがあって痺れた。全体を通してこの人がどんな人か想像するのが面白かった。

投稿元：

レビューを見る

淡々とした描写で奥に潜む深い感情を表現する短歌を作る人だという印象から手に取った短歌集。

想定外に、作者の辿ってきた人生が見える流れに驚き引き込まれた。
生々しく、チクチク刺さる。

生い立ち、恋愛、上京、仕事。
31文字が束になり、まるで私小説を一冊読んだような読了感。
31文字で風景が、登場人物の表情が、感情が、一時におそってきて、その情報量の多さに圧倒された。
これが短歌の力強さなのか。

投稿元：

レビューを見る

短歌集だけど、ほぼTwitter文章のような感じで読みやすい。
連作によって物語のようになるなど、短歌の可能性、遊び方がわかった。
気に入った句に付箋を貼ったらたくさん貼らさりました。

投稿元：

レビューを見る

Twitterで存在は知っていた短歌集だが、タイトルと最初の「スナックはまゆう」に心を掴まれ思わず購入。ファンキーでユーモアに溢れながらもそれと同時にずっと冷静で、とても良かった。短歌に手を出す1冊目にも良いと思います！

投稿元：

レビューを見る

とても良かったのでもっと多くの人に読んでほしい。30代女性歌人の、生きてきた軌跡をたどる短歌集。

短歌と聞くとちょっと高尚なイメージがあるけど、最近は若い人たちの作品が多くあって注目すべきジャンルだなと思う。

短いからこそ伝わるものがある。解説、あとがきがあるのも良かった。それを読めば、著者の意図を短歌初心者でも汲み取ることができた。

いちばん最高なのはキャッチーで心惹かれるタイトル。見た瞬間、どういうこと？と思いつつも老人にだってモテってあるよなとか考えたり、とにかく惹かれた。あとがきでタイトルのアンサーのようなものがあるので、気になった方はぜひ。

投稿元：

レビューを見る

面倒くさそうな家庭で育ったらしき人の短歌集。どっかで誰かが誉めてたので気になって読んでみた。

短歌集というものを読むのはこれが二冊目。やはり一度読んだだけではしっくりこない。沁み込んでこない。連作のようになっているから行間を読む必要もある。その行間は小説のそれよりずっと深い。それでも短歌集はすぐ読み終わるし、三回くらいは読んだほうがいい。

ヤンキー濃度の高い家に育ったように読めた。海というモチーフがあるようにも思う。前半の家族がらみの短歌が印象に残った。

シャンプーノズルかすかすと押す
さふさふとエノキの根本を割いている、

の擬音表現がいい。こういうのはやり過ぎると興ざめで、やり過ぎてないのが良い。以下の短歌、印象に残った。

魚にはまぶたがないのでたいせつなことを見逃すこともできない

投稿元：

レビューを見る

タイトルに惹かれ、
読んでみました。

私も、
老人ホームで
死ぬほどモテたいです。

私は、
短歌の本、あまり読まないのですが、

老人ホームって、
なんだか、暗いイメージしかなかった私に、
希望をくれる、
そして、
クスッと笑えるタイトル。

1日で読み切れました。

何度も、書きますが、

老人ホームで
死ぬほどモテたい
です！

投稿元：

レビューを見る

短歌って、国語の教科書でしか馴染みのないカタいものというイメージだったけど、自由で、余白があって、広がりを感じた。
タイトルが面白くて手に取ったけど、本文を楽しく読んだ後、あとがきを読んで「そういうことか…」と、より一層この本が好きになれた。

投稿元：

レビューを見る

2022年2月17日出版販売前に増刷されたという注目作。私が手にした本は2022年4月25日第四刷発行分。
表紙も題も胸騒ぎがする存在感。赤裸々な私小説を読んでいるような、瞬きができない苛立ちを含む生命力に圧倒される。読者にこれでもかと不意打ちのように鋭い言葉が突き刺さる。途中モノクロ写真や黒塗りのページが時の経過を印象付ける。
「前へ進むためには必要な作品だった」「あらゆる芸術、絵画、漫画、彫刻、映像などを挑戦したけれど、表現したいことを作品にするのに一番早い方法が短歌だったから」トークイベントでの笑顔で語る姿が眩しく頼もしかった。出版する前に、歌集全体の構成と構造、一首を分解して分析するなど徹底的に研究したという。「楽しく生きられますように」と添えられた直筆サインがお守りになりそう。
個性的な小テーマ、「スナックはまゆう」「Xの値を求めていた頃」「国民年金」「たのしい地球最後の日」などの後に列記される短歌のパンチの力強さで清々しさと希望に似た光を感じる。

人は皆イエベで生まれ死ぬときはブルべになるのかもしれなくて
富士山が見えるのが北と言う教師　見える範囲に閉じ込められて
ブックオフではどんな本も100円です　家族を好きでも好きじゃなくても
ジャグジーの押し出すちからと母さんの雑な「がんばれ」つよさは同じ
業務スーパーで売ってた幸せを２㎏単位で腐らせてしまう
大体はタンパク質と水なのにどうして君が好きなんだろう