2000日の海外放浪の果てにたどり着いたのは山奥の集落の一番上だった

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久しぶりにビジネス本以外のものを読んだ。
世界一周のストーリーは圧巻。
自分に正直に好きなこと、やれることをやることで、自分にフィットする環境、またそんな環境を好む人たちを吸い寄せるサイクルを作れたんだろうなと参考になりました。

人には向き不向きがあると再度認識しました。
人と比べてというより、自分と向き合い自分の役割に邁進する生き方って素敵だと感じた。

『生きがいをもって働き、家族を養う喜びを感じる』
ムヒカ元大統領が言うと、言霊の力がハンパないですね。

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海外旅行記であり、かつ、半生記を綴った著書。高校卒業前後に始まり、海外旅行体験を中心に時系列順で著者の来歴をたどり、ところどころで当時の写真も掲載する。全５章で、全体が約290ページ。本書の中ほどにあたる２章と３章の間には約10ページ、世界各地や日本における「その後」のカラー写真がまとめられている。

純粋な海外旅行記として切り出せばそれなりの出来で、窮屈な日本社会を離れた若者の海外体験談の書籍化は珍しくはない。本書を特徴的にしているのは、「旅のその後」までを描いた半生記を兼ねている点だろう。刺激的な海外体験の感動を伝えながらも、旅の終わりが著作としての終わりになってしまうと、結局そこで得たものが「その後」に反映されているのかがわからない。著者の場合、旅の感動をモラトリアム期間の「美しい思い出」として押入れにしまうのではなく、帰国してからも旅で得た価値観の延長線上で人生を歩んでいく。

帰国後の著者は、日本社会の一般的な組織に馴染めない自身を、海外体験以前のように無理やり押し込めることをせず、「就職」も「起業」もあっさりと諦める。そこで選んだのが、山奥における自由気ままで低コストな生活だった。人並みの収入を得るために働くという発想ではなく、出費が少なくて済むという選択により、海外体験によって手に入れた健全な心身のままで暮らすことに成功する。そして、そのような著者の周りには価値観の近い人びとが集まることで相乗効果をもたらし、生活や地域にもプラスの影響を与えていく。逆にいえば、このような結果を導いた海外体験となったからこそ、著者が海外で感じ、考えたことが、その後の人生の裏付けとなることで旅行記としての価値をも高めている。

本書の後半で連想した他の著書が、同じく山奥を舞台にした『「山奥ニート」やってます。』だった。「海外旅行」と「ニート」では、行動のベクトルとして真逆といっていいほどだが、出発点には「社会に上手く馴染めない自分がどう生きていくのか」という同じ悩みがある。そして、それぞれ正反対のルートを経由した後で、「山奥で価値観の合う仲間とカネのかからない生活をする」という意味では全く同じゴールに着地する結果がとても面白い。行動の動機としてそれぞれに共通するのは、「どうせ社会での自分は底辺で、生きづらいのだから」という開き直りであり、結果として自分らしく無理のない生き方や、価値観の近い人びとを呼び寄せる。

通読して、一般的な海外旅行記としての期待を上回る内容だった。できうるなら著者には今後とも生涯を通して幸福度の高い生き方の実践を継続し、そのような生き方が可能なことを証明してほしい。そのように幸福を感じて生きる人が増えていくことこそが、社会にも少しずつの変化をもたらすのではないだろうか。

余談だが、山奥という点では、国家の影響を逃れた山地民の歴史をテーマとする『ゾミア』も思い浮かんだ。山という場所には、既存の共同体に馴染めない人びとを導く何かが備わっているのだろうか。

（※以降は各章の概要を順に記載します）

１．ドロップアウトするまで
高校卒業とともに自衛隊へ入隊した著者が、赴任先の沖縄を転機として海外旅行にはまり、依願退職するまでを綴る。基本的に６年間の「自衛隊時代」にあたる章で、周囲に馴染めない、集団のなかで落ちこぼれてきた自身の性質による当時の生きづらさと、海外旅行によってもたらされた解放感が対比される。

２．世界一周の旅
カナダ・アメリカに始まる世界一周の旅を振り返る。旅程の概要は、カナダに始まる南北アメリカ大陸縦断と、ヨーロッパからロシアを経由して中国に終わるユーラシア横断の旅となる。訪問国数は20カ国で、約２年９カ月間の1005日をかけて故郷・福岡にたどりつく。タイトルに含まれる"2000日"のうち約半分はこの24～27歳時の旅ということになる。100ページ超と最長の章で、期待される海外旅行記としての役割を最も多く担うパートである。序盤にワーホリで滞在するカナダの印象が強い。

３．二度目の海外放浪
帰国して一年ほど親元で働いて過ごす日々を経て、二度目の海外放浪へと出発する。訪問先はニュージーランド、東南アジア、そしてヨーロッパ各国。当時、クリミア問題でロシアとの戦争状態にあったウクライナにも滞在し、基本的にはのどかな本書としては異色の緊迫感がある。ワーホリ先となったニュージーランドのゲストハウスでの勤務経験とそこでの考察では、とくに日本人の労働観とのギャップが明確になる。29歳の誕生日を迎えて帰国するまで。

４．田舎移住
本章と次の最終章は、「旅のその後」にあたる。ここでは主に、著者の母方の祖母の住む、お茶の名産地である山奥への移住と当地での暮らしぶりを伝える。これまでの海外旅行によって得た世界中に散らばる人脈もあって、著者の元には多くの友人が集まる。先住の村人や共同体との関係性が築かれ、それによる成り行きもあってある事業を手掛けることになる。

５．山奥で事業
最終章では前章に引き続く事業の進展、オフシーズンを利用した中南米への旅（通算60か国）、そして尊敬するある人物のアドバイスもあって婚活を始める著者の様子などが中心となる。新型コロナウィルスの感染拡大によって翻弄されながらも、エピローグでは本書にふさわしいハッピーエンドで幕を閉じる。

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◎メモ
・お金があるから、物質的に豊かであるからといって、幸福とは限らない。

・みんな不完全なので、やりたいときに走りながら形にしていけばいい。完璧な状態はないので、都度都度考えていけばいい。

・会社員以外にも生き方があって、色んな生き方がある。会社員が向いていないなら、違う道に進めばいい。頑張って無理に適していない社会に適合する必要はない。

・都会は人と人の繋がりが薄く圧迫感があるので、田舎の方が空気感的に住みやすそうと感じた。もちろん、田舎だと周りの人たちとうまく関わっていく必要はあるけど。

◎参考になったページ
6.7.32.39.116.117.146.148.166.169.200.207.208.209.210.212.213.215.226.229.231.235.237.238.259.261.266.296