1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
熊を題材にした海外特有のクスッと笑えるジョークと、顔を顰めてしまいそうな皮肉とが詰め込まれた寓話集の文庫化。
闇に多くスポットが当たった内容にピッタリの、独特でちょっと不気味な挿絵が引き立っていてとても良かった。
「精霊熊」「罪食い熊」と序盤はお子さんでも楽しめる教訓めいた内容で、中盤はブラッド・スポーツなど闇が深くなり、終盤は全体を通し「人との距離感」を悟った熊たちの集大成。
熊と人の集団心理的なものと、日頃の鬱憤を残虐性の中で発散しようとする感覚、慣れと群れによるエスカレートの精神に、残念な事に共感を覚えてしまった。イギリス人と熊の歴史を皮肉ったとても深い作品
投稿元:
レビューを見る
これは――おとぎ話なのか?痛烈な風刺なのか。どうとも捉えられそうな、イギリスと熊の物語8編。
言葉なき熊と取引めいたことをして、人間は心の安寧を得る。しかし、しょせんそれは異なる種族との取引。常識も前提も違う熊との間で、お互いに利がある取引なんてのはまやかしなのだと明らかになる。熊は知らず課された役割を、やはりそうとは知らぬまま放棄して、少しずつ人間社会から遠ざかっていく。そのさまが、人への皮肉や糾弾にみえる。
読み進めているうちに、熊が人にも思えてくるのがこの本の怖いところ。虐げられている人、支配されている人、社会の中で見えない存在とされている人たちを熊に仮託しているのではないか?ときに団結する、しかしたいがいは物も言わずうなだれて、その場を去ってゆくしかない人々を。
『下水熊』。"少年は、母親に手を引かれ、明るい陽だまりのほうに連れ戻されながら言った。「ねえ、さっき熊がたくさんいたの見た?」"
分断された、光と影。
そして影たる熊たちは、舟に乗り込んで外海へ出ていく。さながらユートピアを探し求める人々のように。
"何頭かが後ろを振り返り、冷たく残酷なイギリスに最後の一瞥をくれた。"
ラストのここに至って、イギリスが"見捨てられた場所"に感じられ、いつのまにか視点が熊に寄っていることにはたと気づく。
哀しさ、さびしさ、あきらめの思いが、読後の心を揺らしている。
投稿元:
レビューを見る
実話と寓話の境目なのか
本当の話かと読んでたら、ファンタジーになってくるし、これ嘘と思ってたら実話みたいだし
挿絵と相まって、あやふや加減と熊の可愛さで一気読みだった
精霊熊と下水熊が好き
ツーツリー島ってどこ?
投稿元:
レビューを見る
「10の奇妙な話」を読んでからこの本が読みたくて読みたくてしょうがなかったので、文庫化により再度発売されたことがとても嬉しかったです。
読み終えて、期待していたものがここにあった感動がすごくてさらに嬉しかったです。
あとがきと解説もとても良くて、この美しくて寂しくて、ユーモラスで残酷なお話をより深く楽しめる内容となっていました。
エドワード・ゴーリーやランサム・リグズの雰囲気が好きな方におすすめの一冊です。
投稿元:
レビューを見る
哀愁を感じる熊たちの物語だった。
数世紀前の動物に対する残酷な扱いが物語の背景にあって皮肉めいた寓話。
デイビッド・ロバーツの挿絵が世界観にピッタリ。
解説を読んでイギリスには実際に熊がいないことを知った。最後の話はタイトルに繋がっていて、子どもの頃にこの物語を聞かされたら本当のことと信じてしまうかもしれないと思った。
投稿元:
レビューを見る
片手で癒される文庫本、大人の絵本。
イギリスと熊の関係、熊は絶滅していたとは・・・。
イラストの熊も日本のイメージとはかなり違う。
お話とイラストがシンクロして、おとぎ話のようでもあり、イギリス社会の風刺でもあり、明治期日本文学の幻想物にも近い。
挿絵のミック・ジャクソンの作品にとれも惹かれた。
子ども向けに書かれたものとは、ちょっとテイストが違うようだ。
投稿元:
レビューを見る
二子玉川の蔦屋書店で出会い購入。
熊にまつわる短編寓話。今読みたい雰囲気に合っていてすごく良かった。
イギリスでは熊が絶滅していたとは知らなかった。
(サーカスなどの見世物の対象や、毛皮としての利用など。)
人間に支配されながらも、決して腹の底では屈しない姿。弱肉強食のこの世界で人間が頂点に君臨しているのもほんと偶然なのだな、と。
秋田では熊が人間社会に降りてきて襲われた事件が年に数回起こるなどがあるから、熊を割と恐ろしい存在として認知しているから、(イントネーションもく"ま"と後ろにアクセントを置いて可愛らしさを排除)すんなりと熊の恐ろしさを分かった上で読み進められたけど、都会の人にとってはひとつのファンタジーなのかな。
113/140
投稿元:
レビューを見る
とある本屋さんが紹介していて気になった。
熊と人が織りなす、八つの短い寓話。
熊と人と言えば、ふと思い出したのが川上弘美の『神様』だった。
テイストは全然違って、この作品では人のテリトリーを離れ、放浪する熊の哀しさが漂っている。
でも、熊という生き物が持つ、ぬぼーっとした感じは共通しているような、気もする。
神様のように畏怖されたり、ペットのように調教されたりする話から始まって。
サーカスで働いたり、下水道で暮らしていたり、人間とペアになって危険な「仕事」をするという、随分と人に近い描かれ方をしている話へと続く。
熊は人の言葉を持たない。
けれど、人の思いを解する。
そして、自らの意志を暴力として振るう以外に、伝える術を持たない。
そして、この本では、熊は去っていくだけなのだ。
投稿元:
レビューを見る
イギリスが生み出した(^(エ)^)キャラは有名なのに、この国では11世紀には野生の熊は乱獲により絶滅、動物虐待ショーをするために熊を輸入していたそうだ。
そもそも人間が生み出したキャラクターたちとその生態とにこれほどギャップが激しい動物も珍しいのだが、本書に登場する熊は、熊本来の野生と我々が熊に感じる独特の神秘性を備え、8つの話に見事に収められている。(ちなみに私のお薦めは「下水熊」)
短編集ではなく、串刺しで読まないと意味がない。
話(時代)の順に、熊たちは森から町に近づき、聖性を失い、人に虐げられるようになる。いつも彼らに言葉はなく、荒ぶる野生を抑えながら運命と諦めるがごとく哀しく生きるが、チャンスを得ては逃げる。話を追うごとに人間社会に紛れ込んでいるのだが、また逃げ、最後は・・・。
イギリスの熊は絶滅したのではなかった。人間が愚かで滑稽な生き物であることを、こんな描き方で表現できるなんて!
可愛くないデイヴィッド・ロバーツの挿絵も味わい深い。クマチャンは可愛くなくていいのだ。
投稿元:
レビューを見る
【2023年42冊目】
表紙とタイトル、挿絵にひかれて購入。短編集なのですらりと読めました。なんとも不思議な物語の詰め合わせ。やはり翻訳なので、というか海外の小説を日本語のリズムに合わせるとなかなか読むに難しいと感じることが多いんですけど、こちらの小説も多分に漏れずと言ったところ。けれど、不思議な魅力があり、著者の他の作品も今度読んでみようと思ったのと、再読しようと思いました。
しかし、読み終わったあとの表紙が切ない。すごく好きだけど。
投稿元:
レビューを見る
タイトルに惹かれて買った本でした。
イギリスに熊がいないことも知らずに読みました。
グレートベアに導かれてイギリスを逃れた熊たちが幸せに暮らしてほしいと願うのは、人間のエゴなのだろうと思いながら、本を閉じました。
デイヴィッドロバーツの挿絵が気に入り、他の絵も色々と見てみたいと思いました。
投稿元:
レビューを見る
タイトルと表紙の絵に惹かれて借りた本。イギリスという国は、熊を絶滅させてしまった国なんだな。
表紙の絵の話は人も熊もお互い何も悪意はないのに、いや寧ろ信頼関係で結ばれていたのに、身体的理由のために、人が砕かれてしまう話。これは悲しかったな。
投稿元:
レビューを見る
なんとも不思議な本である。
イギリス人は熊を絶滅させてしまったと言う話は聞いていたので、熊絶滅に至る物語を時代を追ってやや幻想風に書いた連作かな、と思って読みはじめたのだが。
どうも、必ずしもそうではなさそうだ。
どこまでが史実で、どこが寓話で、どこからが伝説なのか、奇妙にぼやけてわからない。
途中までは、たしかに伝承に基づいた実話だろう。熊は森では恐れられ、サーカスでは虐待されてきたのだろう。だが、その先は?
史実として熊が下水掃除をしたり、潜水士をしていたわけがないと思う。
この辺は寓話なのだろう。
だが、その光景は妙に心に届く。
たぶんこの本は、伝承であり、史実であり、寓話であり、伝説であり、幻想なのだろう。
それにしても、熊たちが受けてきた理不尽な虐待には心が痛み、暗い気持ちになる。
イギリスを去っていく熊たちの姿が見えるような。
そんな気持ちになる一冊でした。
投稿元:
レビューを見る
初読。挿絵が多くてびっくり。「サーカスの熊」「市民熊」がよかった。あとがきと解説ですこしわかったような気になった。
投稿元:
レビューを見る
タイトルどおりの結末へ導かれる八篇。
挿絵があるので、奇妙なお伽話のような読み心地でした。
どうして熊が愛されるのか。人間性を見出そうと試み続けられ、古今東西あらゆるキャラクターになっているのか。
考えてみると確かに不思議です。