ユーミンはユーミンになるべくしてなったということがよくわかる
2022/12/03 18:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を一言で言うなら、ユーミンこと松任谷由実の伝記小説である。
とは言え、始めに生まれた日付に「一人の女の子が生まれた」とあり、ページをめくるといきなり3歳の由実ちゃんが東北の田舎道を歩いているシーンから始まる。ユーミンと言えば八王子の老舗呉服店の生れだということは有名な話なのに、山形の田舎町か始まるのは意外だ。もっとも、読み進めてゆけばある意味ユーミンにとって欠かすことのできないエピソードだということがわかるのだけれど。
そこからはもう、八王子の由実ちゃんがいかにユーミンだったかということがわかるエピソードが並んでいる。後にユーミンの歌のモチーフになったと思われるエピソードや、特に中学生になってからの非常に行動的(?)に日々を過ごす中で後に我々も知ることになるミュージシャンやアーティストたちの名前やその活動がドンドン出てくるので、ユーミンを中心とした音楽関係の人たちの当時の様子を知ることができて面白かった。中高一貫の女子校の様子であるとか、自宅に外階段が付いていて、そこから夜中に出入りしていたとか、ライブハウスに通っていたとか、1960年代の雰囲気が伝わってきそうだった。
後半は、八王子の由実ちゃんがいよいよユーミンとなり、そしてシンガーソングライター荒井由実になっていくところが描かれていて、これはこれで興味深かった。もともと作曲家志望であったのが自分で歌うことになったエピソードや、本格的に音楽活動を行いだした頃にはすでに松任谷正隆氏がユーミンの身近にいたことなど、今のユーミンに直接つながっていく話が続き、前半とは別の意味で面白くて仕方なかった。
で、荒井由実がデビューするところでこの本は終わる。通常の伝記ものであればここからこそ描かれるべきエピソードが並ぶところなのだろうが、この本ではそこはほとんど素っ気ない7行ほどの記述があるだけだ。まあ、そこらへんは別のところでみんな知ってるでしょ、ということなのだろう。確かにそのあたりの話がなくてもこの本は十分にユーミンの伝記になっていると思う。そして、本の帯コピーでユーミン自身が「つくづく私は、”ユーミン”以外のものにはなれなかったのだなあ」と語っているように、本当にこれはユーミンが幼い時からユーミンでしかなかったということを知らしめてくれたように思えてならないのだ。
本書はユーミンのデビュー50周年を記念したものと思われるが、確かにこれを読みながら、記念のベストアルバムを聴くと一気に「ユーミン、デビュー50周年おめでとう!」と言いたくなってしまう。
ユーミンファンはもちろん、同時代の音楽(ニューミュージックと呼ばれ、J-POPと言われるようになり、最近はシティポップなどとも言われるような)を聴いてきた人たちは一読の価値があるのではないか。
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ユーミンの子供の頃、中学生、高校生、
大学生とその時にあった出来事が手に取る様に分かり、まるで我が子の様に愛着が湧いてきて、何度も読みながら笑ってしまう。子供の頃から呉服店で多くの人と出会ったからだろうか、物怖じしない活発な行動力は中学生から大人の出入りするライブホールにGSを追いかけて、
いつしか顔パスのユーミンは音楽についても相当早くから才能の開花が出来た事が分かる。また、時代背景が一緒に描かれるので、そうだったんだという発見もあり、先が読みたくて、ほぼ一気読みしてしまいました。面白かったですね。
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わぁ〜!あの曲たちはあんな風に生まれたんですね☆まるでその瞬間に立ち会えたような気持ちになれて感動した〜何度もハッ!となりました。
時代背景で日本のポップスやファッションの歴史も学べます。
読んで良かった。ユーミン好きなら必読です。
ユーミンはユーミンになるべくしてなった運命、必然、だったんですね。
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(2023/6/6読了)
八王子の由実ちゃんからユーミンとなるまで、美大生でデビューしたこのまでの話。
ユーミンと同じ頃を生きる音楽好きな読者にはたまらない一冊。いろんな重鎮が由実に関わってくる。
呉服店の二女として生まれ、自由奔放かつ、自分を持ち続け育つ。その時代の女性としては珍しいタイプの母から、生まれながらにして大きく影響を受けているのだと思う。
この環境と、この性格と。ユーミンになるべくしてなったのだと実感。もちろん真似できないほどの努力もいている。
中学校一年生で、パイプオルガンの音色に魅せられ、(自分の声がその音色のようだと思う)中学校ニ年生で、プロコル・ハルムというロックバンドの「青い影」に衝撃を受け、あの「翳りゆく部屋」となる「マホガニーの部屋」を作った。
「翳りゆく部屋」は、私のユーミンNo.1。それがどのようにして生まれたかとか、「ひこうき雲」のあの "友人" は誰なのかとか、大学生のユーミンと正隆さんとの出会い、ユーミンの声の成り立ちなど。
鳥肌が立つような静かな感動を覚えながら読みおえた。
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幼い頃からのユーミンの伝記的小説。
呉服屋のお嬢様ユーミンは、愛情と家庭環境の恩恵をたっぷりと得てのびのびと育つ。両親が忙しく構いすぎないところも良い。
本人の持つ素質と相まって大輪の花を咲かせる。
ユーミンが見たこれらの景色が『翳りゆく部屋』『ひこうきぐも』の下地になるのね。もちろん松任谷正隆さんとのデートの帰り『中央フリーウエー』も。
戦後から高度成長期の日本文化の移り変わりと発展と、音楽の歴史が理解できる。
飯倉のキャンティとグループサウンズ、この時代を育ってきた人には"買い"をお勧めしたい。
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わたしは山内マリコさんと同世代のため、あまりユーミンを知りません。というかほとんど知らない…知ってる曲はもちろんあるけど世代が違うので。
なので山内マリコさんが好きだから手に取ったわけだけど、これがユーミンかぁーって思ってしまっていいのかな?ってちょっと思った。
小説ユーミンってあるけど、ご本人はノンフィクションというよりルポルタージュに近いとおっしゃってる。どうして山内さんが書くことになったんだろとちょっと不思議。
これがユーミンの青春時代からデビューまでであってるのなら、そのまま受けとるけども、いまいち信用してないのかも、だって同世代だから。
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『ヒップしていたころは、スピードというディスコで踊って、家に四時ごろの始発で帰ってくるのね。それでもなにもなかったように学校へ出かけるんだよね。タフだよね、若いから。秋とか、冬とかだと、まだ真っ暗じゃない。霧がすごく深いわけ。信号の色で街中が変わっちゃうのよね。信号が変わるたびに街が赤になったり、青になったり。アスファルトがぬれていて。だからグルーミーな景色っていうのがとっても好きなのよ。「雨のステイション」というのは、雨といってもザアザア雨じゃなくて、霧雨というか、シトシト雨で西立川のお話なのね。』2月19日西立川にあるユーミンの歌碑をたまたま見つけました。同じ日、日経新聞の「私の履歴書」で2月の主人公、村井邦彦がアルファレコードのAスタジオでの最初のレコーディングを荒井由美「ひこうき雲」であったことを書いていました。そして、友人から借りたこの本を読み始めたのも19日日曜日。この偶然、偶然でしかないけどなにか深い記憶になりそうです。昨日の日経で村井は「ユーミンがアルファに残した4枚のアルバムはどれも忘れがたい」と記していましたが、ユーミンが松任谷由実になる前の荒井由実だった時代のアルバムは樋口一葉の「奇跡の14か月」みたいな「奇跡の4枚」だったと思っています。この小説はそのアルバムの歌詞やタイトル、歌われた風景、込められた心象風景がパッチワークにように引用されていると思いました。この小説はユーミンを主人公にしたモデル小説ではなく「ひこうき雲」「MISSLIM」「COBALT HOUR」「14番目の月 」をベースにした2次創作なのではないでしょうか?もっと言うと歌詞やメロディーとして昇華される前の言葉にならない言葉、月の裏側をデコンした創作なのでは?そういう意味で「小説ユーミン」ではなくて「小説荒井由実」だと感じました。デビュー50周年で繰り広げられるプロモーション、例えば紅白で披露された松任谷由実とAI荒井由実のコラボにはマーケティングの匂いがしますが、自分としては「私の履歴書」「西立川の歌碑」「小説ユーミン」の重なりにはディスティニーを感じてしまいました。ここは敢えてユーミン万歳!と言いたいです。
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ユーミンの歌はいくつもの思い出につながっている。ひこうき雲になった人や、帰りたいあの日もある。
高校生の時どきどきしたような、別れの日に彼の部屋のベッドの下に真珠のピアスを落としてきたことはないけれど、それでもユーミンの歌を聴くたびに思い出がつぎつぎとめくられていく。
ユーミンの歌から感じるくったくのなさの源がここにある。
恵まれた生育環境と、生来の好奇心の強さ、そしてその好奇心へと向かっていく活動性。
どれが欠けていても「ユーミン」は生まれなかったのだな、としみじみ思う。
ブリティッシュロックを、グループサウンズを、その柔らかな心にしっかりとしみ込ませたからこそ、その内側から湧き出る音楽たち。
時間を超えて場所を超えて、躍るように届く歌たちとYumingという名前と一緒に私たちはこれからも歩いていくのだろう。
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ゆーみんの音楽が脳内でバンバン流しながら読みました。
全ての作品を理解したわけではないけれど。
私は小池真理子の短編が好きです。
ちょうど、私のイメージと重なるからかしら?
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ユーミンより少しだけ年下の私には、「うんうん、そうだった!」と懐かしい話がてんこ盛り。
タイガースやテンプターズ、スパイダースをはじめとして、出てくる内外の有名人とのかかわりがすごすぎる。
自分から天才を自認する発言をしても、誰も異を唱えられないスペシャルな人であることを、再確認した。
これから先もさらに進化し続けるであろうユーミン様、ずっとついていくからねっ
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ユーミンは、ユーミンにだけ与えられた感性と行動力で、人生をびゅんびゅん生きている。レンゲを編んだ小さい頃からずっと。あの時代に生まれてきてくれた奇跡と天才的な生き方で、常に周りの人をワクワクさせてくれている。そしてまだまだ続く霧の中の未来も、どこまでも歩いていってくれそう。
小説にふと出てくる歌詞と同じフレーズに感涙しながら、ユーミンの半生をたどることができて幸せだった。自分の感性を信じて生きていくことの豊かさを思った。
長靴下のピッピみたいだった。
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純粋にこの本は面白いと思った。
ユーミンのことは何となく知っていて何となく曲も聴いていたけど、ますます興味と親しみを持って聴いてみることができそうだ。#松任谷由美 #荒井由実
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いまや、神様ともいえる荒井由実がまだ、何者でも無かった時代のこと。急成長を遂げる東京の街並みの中で駆けまわる早熟で才能豊かな女の子がいた。才能のみならず環境にも恵まれていたが本人の色鮮やかすぎて独特な上昇思考もあり、化学反応を起こし爆発するような音楽の結晶として漿果されてゆく。
言葉ひとつひとつに今に通じる彼女が見え隠れしてファンなら、必読の一冊。
有名な人、店、街も建物も実名で登場してきてその頃の東京の香りが漂う。
こうやって天才少女は醸されてきたのだなぁ~としみじみ。畏れ多いです拝m(_ _)m
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・映画化してくれ!と思った。
・ミュージシャンの自伝や評伝を読んだ事はまぁまぁあるけど、小説、みたいな形式では考えてみたら無かった。多分。記憶にないと思う。
・そして、ちゃんと「小説」だった。
・めちゃ興味のあった題材(音楽的にもこの辺りの、とか)であっただけに、小説ならではの時代の感触であるとか、心情描写で夢中に読めた。「ユーミン」という音楽が始まる時代。
・後日談的にその後の成功がサラッと(シレッと)書かれるのだけど、その感じもまるで映画じゃん!と思った。もうそのまま映画にして下さいと思った次第です。
・キャスティングを考えるのも楽しそう。
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デビュー50周年を迎え、第一線で走りつづけているユーミンはどんな人生を歩んできたのだろうと前のめりで読み始めたお話。最初からぶっ飛んでいて、お金持ちというのもあったけれど、常識にとらわれず自分の思うままに天性の勘やすさまじい行動力でエネルギッシュな人なのだと圧巻された。10代で紡ぎ出した、あと楽曲たちが頭のなかにあったなんて本当にすごすぎる。作中に出てきた有名人たちとの邂逅も興味深くて、こんな神懸かった人なのだとびっくりの連続だった。歌唱で苦労していたのにもオドロキ。確かに独特ではあるけれど、そこがよかったりするからなぁ。