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安全保障の成立経過と現実の問題
2022/07/04 09:39
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシアのウクライナ侵攻で日本の防衛費や安全保障について論じられる事が多々あるが
安全保障問題で常に論じられる日米安保条約、憲法第九条、防衛大綱、ガイドライン、NSCの五つについて成立過程と現実の問題点を論じている。「外部との線引き」「内部のしばり」このキーワードは国際情勢を常に見据え、国内の場当たり的対応の論に政府・政治が縛られていること。安全保障の問題はその時だけの問題ではなく、論じられ一般国民にも分かりやすく説明されコンセンサスが得られなければ国は守れないのでは。と感じた。
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文章が淡泊・一読では内容が把握できません。
2022/07/09 12:30
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
いかにも、大学の講義のテキストとして使用されそうな体裁をしています。大事な部分は図を用いて説明しています。
ですが、いかんせん文章が淡泊で、面白味がありません。そして、一読では著者の論点は理解できないと思います。何度も読み返して、初めて論点が分かるでしょう。
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極東一九〇五年体制
2022/07/11 16:20
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの圧倒的な軍事優位に基づく国際秩序の中で安住できた時代は今や過去のものであると、外部との線引きの問題と内部でのしばりの問題を通して戦後日本の安全保障の全体像を把握をする試み。
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1章は日米安保条約で、自助及び相互援助をなす国とのみ対等な相互防衛条約を結べるとしたヴァンデンバーグ決議により、当初は片務的だったこと、朝鮮密約や吉田アチソン交換公文と朝鮮国連軍と日本との関係、極東1905年体制を受け継いだ米国にとって日米安保条約はただの二国間基地条約ではなく極東地域に開かれた同盟であること。2章は憲法9条で、軍国主義の原因と考えられた天皇制を守るために捨て石として戦力不保持を謳ったこと、要塞化した沖縄の米軍で日本を守ることを前提としていたこと、自衛隊の合憲性を説明する必要最小限論の基準とされた可能性がある集団的自衛権の制限、必要最小限論と芦田修正論と小沢理論。3章は防衛大綱で、四次防衛力整備計画が財務省にメタメタにされてもう作るのやめたってなった時に、内局がデタントの影響と経済成長率の低下とを受けて生まれた脅威対応型ではない基盤的防衛力構想と合わせてできたのが防衛大綱。制服は脱脅威論に猛反対していた。だが1985年に中期防で五年計画が復活、基盤的防衛力構想は維持したまま脅威対抗論的解釈がなされるようになった。その後1992年版防衛白書で11年ぶりに基盤的防衛力構想の言葉が出現し、冷戦後の防衛力整備の古証文とされた。4章のガイドラインでは日米共同軍の指揮権を誰が持つのかという話で、ここでも日米、米韓の同盟軍が一体になり得た話とか。5章はNSCで、日本は閣議以外で行政府の意思決定はできないので日本のNSCは審議機関であり、本家のアメリカNSCとは違う。ポジティブコントロールの四大臣会合の任意的諮問事項とネガティヴコントロールの九大臣会合の必要的諮問事項の違い。
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憲法9条が放棄している戦争とは侵略戦争のことである。現代の国際法では武力行使は禁止されており、その例外が、国連安保理が侵略であると認定した行為に対する国連の枠組みdねお武力行使、すなわち集団安全保障の場合である。
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日米安保条約、憲法第9条、防衛大綱、ガイドライン、NSC(国家安全保障会議)の五大トピックから、日本の安全保障の課題に迫る。
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ロシアのウクライナ侵攻のニュースを見聞きし、いかに戦い、いかに勝利し、いかに終結させるか、の道筋が見えない。人間が「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求(憲法9条)」することで、戦争の未然防止、抑止力を強化することを願わずにはいられない。戦いは、はじめたら最後、振り上げた拳の行き場に困る状態が続くことが苦しみです。
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日米同盟、憲法9条、大綱、ガイドライン、NSCという我が国の安全保障上の重要トピックについて、歴史を辿り、なぜそうなっているのかを解説する。
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【戦後日本の安全保障をめぐる同盟、法体系、防衛力の整備と運用の指針、組織といった仕組みは、更地のうえに、先々を見通し、脈絡をつけたうえで合理的に組み立てられた、というわけではなかった】(文中より引用)
中国の台頭、アメリカの後退、そしてロシアの暴走。国際環境は厳しさを増し、日本が安全保障で果たすべき責任は重くなっている。しかし日本では憲法をはじめ、一度でき上がった独特な仕組みをなかなか変えられない。重要トピックの知られざる歴史をたどり、日本の安全保障の「常識」と問い直す(あらすじより引用)。著者は、防衛研究所主任研究官を務める千々和泰明。
「パッチワーク的」、もっと言ってしまえば「場当たり的」な安全保障政策が、いつの間にやら「不磨の大典」として不変のものとして扱われてしまう様子が見事に描かれた一冊。内的思考に凝り固まった安全保障観というのはちょっとやそっとじゃ変えられないだろうなという思いを改めて抱く読後感になりました。
千々和氏の作品は初めてでしたが、今後も手に取ることになりそう☆5つ
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ちょーおもしろい(語彙
「興味深く読ませていただいた」などと書けば良いのだろうけれど、正直、ちょーおもしろかった。
特に、憲法九条について、「芦田修正」が現行の政府の憲法解釈になんの影響も与えていないとは全く知らなかった。渾身の一撃じゃなかったのかよ!<芦田修正
芦田修正論によらずに、自衛隊合憲論を導くための生け贄に選ばれたのが、集団的自衛権だったとの説明は、とても腑に落ちた。と同時に、芦田修正に今からでも乗り換えようぜ!と思わずにはいられない。
一度「やっつけ仕事」で作った建前が、いつの間にか「しがらみ」となり、「前例」となり、変えるに変えられなくなっている。そんな中で、「妙な構造」とは言え、よくもまあNSC設立にたどり着けたものだとは思う。そこは政府関係者に努力を評価したい。
そして、終章である。
日本の現在の安瀬の補償論議には、「どうやって戦争を終わらせるか」についての観点がほぼない。見た覚えがない。ここまで(内密にでも)考えておかないとまずいよなあと、思うが、ようやく、「終わらせ方の心配」ができるようになったとも言える。とはいえ、ウクライナ侵略のロシアを見るように、侵略者には外交も論理も通じないものである。ある程度以上米軍頼みになるのはやむを得ないだろう、実際には。
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中国の近年甚だしい覇権主義だけでなく、2月のロシアのウクライナ侵攻により、日本も安全保障の重要性が以前にも増しているはず。このテーマで本を探したところ本書に出会った。
戦後日本の混乱した体制下で最善と妥協のせめぎ合いから仕組みがスタートしたところから解説。時代とともに変化した内容を功罪別け隔てなく説明してくれるのは○。色々考えさせてくれる。
問題は自分の知識、考え方がアップデートされてなかったこと。後半は結構辛かった。
2022年以降を生きる人たちには、少なくとも日米安保体制と憲法9条の前半2章は読んでほしい。好著。
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ウクライナ紛争だけでなく、イスラエルとハマスの戦い。
私達も、対岸の火事ではなく「安全保障問題」に真摯に取り組むことが求められる現代。
本書は、日米同盟/防衛大綱/NSC(国家安全保障会議)のテーマから構成される。
【学んだこと】
〇 日米同盟に関して
⇒朝鮮有事における事前協議なしの在日米軍の直接戦闘作戦行動の流れ。
⇒個別的自衛権よりも、集団的自衛権が本来の側面(モノの提供・人の提供だけでなく、日米の互恵関係を、今後どう築くか)
〇 防衛大綱
⇒米ソのデタント(緊張緩和)状態下での防衛力整備(脱脅威論)
⇒現在は、相手の能力と脅威に着目した防衛力整備(脅威論)
〇 NSC(国家安全保障会議)
⇒ポジティブ・コントロール(~しなさい)をどう築くのか(有識者の活用方法)
【総括】
理系研究の道を歩んだ者ですが、文系研究者の著書の「モノの捉え方」は非常に勉強になります(ただ、図示化した説明が欲しくなりますが・・)
国際法・国連の機能停止を目の当たりにする現代。言葉と行動をどうリンクさせれば良いのでしょうか?これからも、考えていきたいと思います。
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リアリズム的な日本の安全保障をについて書かれた好著。左翼政党が掲げる伝家の宝刀・憲法九条はそこまで優れたものでもなく、戦争に向かう1歩と主張される集団的自衛権についてのロジックもしっかりと説明がなされている。生徒を指導、教育する立場の人間は1度は読むべき。
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思った以上に好著。内容が重複する部分が多々あるが、内容自体が自分にとって新規だったので気にならなかった。
日米安保→物(基地)と人(米軍)の協力である条約には極東条項があり、事前協議があるが、朝鮮密約/吉田アチソン交換文により国連軍を介して米韓同盟/台湾関係法と有機的に結合し、1905秩序の一機能となっている。この現実を無視して外部と線引きを行うことは不適と主張する。
憲法9条→従来天皇制の身代わりに脱軍国主義の象徴となった9条は、自衛隊設立の際必要最小限度解釈の捨て石として集団的自衛権を違憲とした。その手品がガラパゴス化し、2015の限定行使容認に繋がる。憲法学を勉強すると、日本の憲法学者はこうした歴史的経緯を踏まえることなく文理解釈に拘っているように見える。国際基準からも乖離しているため改革が必要だろう。
防衛大綱→予算を獲得するための基盤防衛力構想(独力対処/拡大/地理的均衡)は、脱脅威論と脅威対抗論の両方に解釈できる虫の良い構想として長らく活用されてきた。その後、防衛力整備と運用の緊張関係の中で変遷した。
ガイドライン→人(自衛隊)と人(米軍)の協力。有事の指揮権統一に係る問題。日米は指揮権並立だが、米韓は指揮権統一である。指揮権統一を通じて米日韓が統一されるのは一国平和主義から許容できなかった。こうしてみると朝鮮情勢が日米の安保体制に大きく影響を与えることがわかる。
NSC→再軍備を伺う改進党と吉田茂の軋轢の中で、国防会議は旧軍を排除した「文民統制確保の為の慎重審議」の場として成立した。あくまで自衛隊のネガティブコントロール審議機関のため、危機管理等の追加で歪な構造になった。
この本を読んだ時に想起したのが、鎖国令/大船禁止令/田畑勝手造の禁である。どれも制度趣旨が忘れられ、歪な形で継承された。戦後日本も同様の事態となっている。鍵となるのはこうした研究や公文書の開示であろう。アーネストメイの言うように歴史家の知見が正しく活用されれば、制度改革にも弾みがつく。
また、個人的に日本の安全保障の法的障壁は芦田修正で全て解決できると思っていたが、そのハードルすらも高いという現実を思い知らされた。政府当事者はどう考えているのか、いつか考えをぶつけてみたい。