痛快で切ない物語
2023/10/09 00:44
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投稿者:かつかつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和35年から平成25年までのキャバレー「グランドシャトー」を舞台にした、とあるホステスの一代記です。大阪の京橋にあるグランドシャトー(関西人にはお馴染みの「グランシャトー」ではない)の盛衰とともに同時代の大阪の風景・世相が描かれており、一定年代以上の大阪在住の方には懐かしさも感じるのではと思います。
平成25年、キャバレー「グランドシャトー」のホステス「ルー」は72歳であるが、経営者からの閉店提案に対して必死に抵抗します。ルーは、大阪発祥のキャバレーを50年間に渡り守り続けてきたという自負があります。ルーがグランドシャトーに拘るのは、かつて、そこのナンバーワンホステスであった「真珠」ねえさんの恩に報いるため。
ルーと、ルーより一回りと少し年上(15か16歳年上か?)の真珠ねえさんとの関係を中心に物語は進みます。家出同然で大阪に出てきたルーは、生活に行き詰まる中、どうにかグランドシャトーのホステスの職に就きます。喧嘩っ早いが、機転が利くルーは、どんどんホステスとして成功していきます。その日の暮らしに困るほど貧しかったルーが、コテコテの関西弁を捲し立てながら成り上がっていく様は痛快です。同じホステスである真珠ねえさんは、そんなルーを優しく見守ります。お互いに歳を重ねた物語の後半は、グランドシャトーのホステス職に拘る真珠ねえさんをルーが見守ることになります。ルーにとって、決して追い着くことができなかったナンバーワンホステスであり、母親のような存在であった真珠ねえさんが体力的に衰えていく中、家族同然に暮らしていながら、本当の家族ではないため、ルーは踏み込んで真珠ねえさんの無理を止めることができません。最後は切ない場面が続きます。同時に、謎であった真珠ねえさん素性が徐々に明かされ、ページをめくる手が止まりませんでした。
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投稿者:Taukofun - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が今まで読んだ本のなかでも特に感動しました。変わっていく大阪の街で変わらない真珠姉さんと長屋に懐かしさを覚えました。何度も読み返したいです。
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投稿者:ママさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
思っていた感じの小説ではなく、もっともっと素晴らしいものでした。
女性2人の昭和から平成にかけての生き様、その背景にあったもの。
なんだかとても素敵で、泣けてしまうお話でした。
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【不動のNo.1ホステスには秘密があった】高度経済成長期、名門キャバレーのトップを張る二人のホステスは、勤め人の10倍以上を稼ぎながらなぜ下町の長屋で共に暮したのか。
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202301/描写の丁寧さが却って冗長に感じるところもあったけど、登場人物達が生き生きと描かれていて面白かった。大阪人だったら更に楽しめたのかもと羨ましく思ったり。
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矢継ぎ早に繰り出される大阪弁が、耳元でずっと聞こえている。
京橋という街で存在感を放つキャバレーの、きらめきと喧騒が目に浮かぶ。
ルーのたくさんの言葉や、行間からさえあふれ出てくるような強い気持ちが熱くて、応援したい気分になりながらぐいぐい読んだ。
仕事に誇りを持ち、性別による差が社会の中にあると分かりながらもひざを折らないルーの、なんとまぶしいことだろう。
「にせもんでもいい、あれは光や。あの光の行き着く先はカネで、だけどカネになると不思議とちいとも光らん。――可能性、望みこそが光だ。」
キャバレーというビジネスの栄枯盛衰が描かれているのも興味深かった。戦後の発展、バブル、不景気。家電の登場やさまざまな新しいモノにより、キャバレーだけでなくたくさんのビジネスが変化し生まれては消える。どの時代でも止まることのない経済の流れの中で、ルーはひたすら前を向いて歩いて(走って)いた。
そして、そんなルーと対照的な真珠ねえさん。あらすじや帯文では真珠の抱える秘密がフォーカスされているが、実際ルーがそれを探ろうとするのは後半の後半。ひとにはそれぞれ事情がある、ただそれだけのことと思ってお互い干渉しすぎずにふたりはずっと暮らしてきた。
ある意味戦後から離れられなかった、立ち止まってしまった真珠の姿は、理由を知れば悲しいものだけど、歩き続けるルーのオアシスでもあった。長屋での生活を持っていたからこそのルーのまぶしさであると思うと、やさしいあじさい、たたずむ地蔵さんのような真珠との強い結びつきこそが、悲しさよりもずっと、胸にしみる。
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ねえさんの心のうちが気になり過ぎてあっという間に読み切ってしまった…現代の人間からすると高度経済成長期のヒカリにはとても惹かれるものがある一方で、ねえさんとルーの暮らしを読んでいる時の安心感もまたこの時代の良さなんだろうなぁ
本編と関係ないけどなぜか私の生活と関連する地域、名前が沢山出てきて節々に縁を感じた小説だった。
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人ってなんの為に生きるか…
自分のため?それとも自分以外の誰かのため?
大切な誰かのために生きることができるって幸せなコトだと感じさせてくれるお話でした。
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思っていたより、暗いけど希望のある話。人生そのものって感じ。
みーんなどこか悲しい、でも生きてる。
最後まで読み終わってから、最初の部分をもう一回読むことをオススメします。
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昭和のキャバレーを舞台に、行くところを失ったルーと、キャバレー・グランドシャトーのNo.1ホステス、真珠が出会う。
時代と共に生きる女性の姿を描く。ルーと真珠の言葉で表せられない関係にぐっときました。
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プロローグから、テンポの良い大阪弁の丁々発止のやり取りに笑ってしまった。
物語は大阪京橋にある、言わずと知れた、あのビルがモデル。
逞しく生き抜いてNo.2にまで上り詰めたホステスのルーと、不動のNo.1ホステスの真珠。
この手の話にありがちな「女の闘い」は二人の間には無い。
真珠をどこまでも慕うルーと、ルーを優しく包み込む真珠。
月70万も稼ぎながら長屋で慎ましく暮らす真珠は、辛い過去を背負っていた。
真珠の心中は分からない。良く生き抜いたと思う。
そして、ルーも。
高殿氏はインタビューで「キャバレー文化を筆で残しておきたいと思った」と語っている。
哀しくも温かく、夢中で読んで心を揺さぶられた。
手元に残しておきたい一冊。
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高度経済成長期、義父との結婚を迫られたルーは家を逃げ出され、大阪京橋に1人路頭に迷う。
キャバレーNo.1の真珠の家に転がり込み、キャバレーで働くホステスとはかけ離れた慎ましい生活を送る真珠とともに暮らし始める。
家族との2度の別れを乗り越えルーの逞しく生きる姿に元気をもらえた一冊。
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真珠さんと大路さんは素敵だった。ルーちゃんのノリきついなぁ、でも家族と再会したいもんなぁ、とそれなりに応援する気持ちで読んでたのに、肝心の家族が気持ち悪くて里帰り以降流し読みになってしまった。帰ってくると思うか?義父と結婚させようとする家に?母を家政婦代わりに使って、妊娠しなきゃ籍もいれさせない、そんな扱いを受けてるのを目の当たりにしてるのに?弟くんはいいよな、そんなこと強要されないもんな。 あのくだり何一つ理解できなかった。
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男の城に、女が住む。
そんな現代において消えゆく価値観が主流であった中でひとりぼっちになってしまったルーが、ねえさんに出会えたこと。
ひとりぼっちで長屋に住んでいたねえさんの元に、金を貸してくれとも言わず妹のようにずっと一緒だったルーが転がり込んできたこと。
誰もが苦しい世の中で、お互いに帰り、甘えられる家があった。それがこの厳しい世の中を最後まで生きた2人の物語の持つ唯一の温かさだと思う。
こうして強かに、身を寄せ合いながら生きた女性たちのおかげで現代を生きる自分たち女性が自由に生活出来ていることを身に染みて感じると共に、現代にもまだ残る男尊女卑がいつか必ず古いものとして、それこそこの本のように読まれて消費されていく時代が来ることを心から望む。
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2023/3/25 読了
真珠ねえさんにどうしても惹かれてしまう、ルーが東京で活躍してても、真珠ねえさんは大阪でどうしてんやろって。ルーの真珠さんに対する想いがとても良かった