明るくない日本の未来を直視
2023/02/14 11:35
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投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はダイヤモンド・オンライン、東洋経済オンライン、現代ビジネスなどに公表された内容を基に大幅に加筆したものである。経済成長の必要性、未来の世界での日本の地位、医療・介護需要の増大、医療・介護技術の進歩、メタバースと無人企業、エネルギー問題、量子コンピュータの未来など多岐にわたる話題が展開されている。著者は、未来を考える意義について、次のような趣旨を記している。「予測できない重大な事態が起きることもあるが、未来を考えることには意味がある。変化が生じた時、できるだけ早くそれをキャッチし、それが従来想定していたシナリオにどのように影響を与えるか考えるべきである。こうしたことを行うために基本となるシナリオを持っていることが必要である。本書が基本シナリオとしての役割を果たせることを目的としている」。その内容の一部を紹介する。◆日本政府のさまざまな長期見通しは、非現実的に高い成長率を見込むことによって、問題の深刻さを隠蔽している。◆著者のかねてからの主張であるが、出生率を高めることは、日本の重要な課題であるが、それによって、社会保障問題や労働力不足問題が緩和されると期待してはならない。出生率を高めると、近い将来においては労働力とならない0~14歳人口が増えるため、問題はむしろ悪化する。当面の課題を解決するためには、出生率引き上げより、高齢者や女性の労働力率引き上げが重要である。◆OECDデータによると、中国の2060年のGDPは日本の約10倍となる。中国では少子高齢化によって、労働力不足が顕在化するが、それでもこのように成長すると予測されている。◆中国の脅威が高まっていることから防衛費をGDPの2%に引き上げる議論が起こっているが、GDPの差がこれだけ広まると、防衛費増額がどの程度の効果があるか、冷静に判断すべきである。全世界的な規模での対中安全保障を更に推進することが必要である。
決して明るくない近未来の日本について、考えさせられる一冊である。ほぼ同時期に出版された『未来の年表 業界大変化』(講談社現代新書)と併読をお勧めする。
日本って大丈夫かな?
2023/03/16 15:20
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投稿者:Ken - この投稿者のレビュー一覧を見る
野口先生には以前講演会の講師をお願いしたことがございました。聴衆の皆さんに大変好評だったように記憶しています。さて、2040年の日本はどうなっているか?データに基づいた鋭い分析に感服しましたが、読み進むとだんだん嫌になってきてしまった。現実問題として日本の経済成長はゼロないし若干のプラスにしかならないのに、政府は2%成長を見込み、これに基づいて予算を始めとして、諸々計画されている。政府は将来のリスクを覆い隠すために2%成長にしているのではないか?国会議員は自分が当選することが最優先で日本の将来のことなど考えもしない。少子化対策も遅きに失したのではないか?日本って先進国でも何でもないかもしれない。先生の予測が当たらないことを祈るしかない。
データから分析される近未来の日本
2023/09/13 04:31
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投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代日本が抱える様々な問題を、経済の観点から分かりやすく解説する。政治、大学の教育現場などの腐敗を悲観する一方、問題意識をもって行動を変えることで、「日本はまだ修復可能」だという著者の強いメッセージが胸に響く。
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記録によれば本書の著者である野口氏の本は18冊目となります、どの本も読むたびに日本の将来を考えると色々と考えさせられてしましいますが、かなり前に出された「1940年体制」という本を読んだ時のことを今でも覚えています。
かなり前に読んだので、このサイトにはレビューを書いておりません。ネットで調べたところ、オリジナル本は2002年に、増補版は2010年に出されています。それを踏まえて今回は野口氏が2040年に現れるであろう日本の姿を解説しています。
技術進歩については不透明な部分もあるとのことですが、人口に関する推測、その結果起きる様々なことはかなり確度が高く起きるであろうという予測のもとで書かれています。中国やインドはこれから伸び率が落ちるとはいえ、経済が大きくなっていくのに対して、日本の場合は、1%成長ができるか、また0.5%成長の場合はどうなるのか、その違いも20年後には大きな違いとなって私たちの生活に降りかかってくることが書かれています。
本書は悲観的なことばかりではなく、日本の将来の成長となりえる分野についても書かれています。私が社会人として勤めてきたいわゆる製造業の占める位置が下がっていくのは残念なことに思いますが、今までにない人口構成をいち早く迎えるであろう日本が、他の国が真似したくなるようなモデルができると良いなと思いました。
以下は気になったポイントです。
・成長率が1%と0.5%の差は大きい、40年後には2割以上の差が生じる。1%成長を前提として収支計画を立て、実際には0.5%しか成長できなければ、一人当たりの負担は2割増となる。あるいは、一人当たりの給付を2割減らさなければならない。成長無くして分配なし、である(p27)
・この数年間、我々はコロナとインフレという問題に振り回されて長期的な課題を忘れている、特に重要なのは、世界で最も深刻な高齢化に直面する日本においてである(p30)デジタル化とか、データ経済への移行と呼ばれる変化に対応できるように、経済構造を変革していくことだ。それがうまくいけば1%成長も期待できる(p46)
・出生率が低下しても2060年の高齢者数は影響を受けない、現役世代人口(15−64)も同様の理由によって2030年までを見る限りは殆ど変わらない。しかし2060年には5割にまで減って高齢者人口とほぼ同数となる(p64)2040年になって100万人程度減る。今回の調査で分かった出生率の低下は、2040年までの高齢者数や労働者数には殆ど影響を与えない。0−14歳の人口が2040年で2割減るので、教育関係には大きな影響(私立大学の定員割れなど)を及ぼす(p61)
・今後は中国への輸出は消費財の輸出が増える可能性がある、中国の所得水準が上昇するから、中国の高額所得者の総数は、日本の人口よりずっと多くなる。だから日本の生産者としては、中国の高所得者向けの製品を作ることにビジネスチャンスを見出す可能性がある(p80)日本の将来のGDP(米国や中国比較)を考えると、日本は「大きさ」に変わる何かを見出さない限り世界経済の中では生き延びられないと(p91)
・ビックマックの場合には国際的な転売が起こらな���ので、国際的な一物一価が成立せず、賃金の安い国でビックマック価格が安くなる傾向がある。現実の為替レートと国際的な一物一価を成立させる為替レートとの比較である、それに対してiphone のように国際的転売が可能な場合には、日本の賃金が安くても価格が値上がりしてしまうのである。国際的に移動できるモノやサービスについては状況が大きく変わってきている、つまり賃金は安いが物価は高い日本になりつつある(p97)
・2040年は就職氷河期時代(1970-1982年頃生まれ)と呼ばれた世代が退職を迎える頃であり、2022年で40−52歳であり、2040年には58−70歳になる。団塊ジュニア生代とは、1971−1974年生まれであり、就職氷河期に含まれる(p108)年金支給年齢が70歳に引き上げられればそれまでの生活は年金に頼ることができない、これによって影響を受けるのは2025年において65歳となる人々以降である、つまり、1960年以降に生まれた人々である(p112)
・遺伝子組み換えとは、別の生物から取り出した遺伝子を導入することで細胞に新たな形質を付け加える技術であったが、それに対して「ゲノム編集」とは、遺伝子を切ったり繋げたりする、狙った性質の遺伝子だけを編集できるので、優れた特徴を持つ品質に新たな性質をピンポイントで追加できるようになった、細胞が元々持っている性質を細胞内部で変化させる(p143)
・NFT(非代替性トークン)は、デジタル創作物(画像、写真、記事、ツイート、ゲーム内アイテム、アバター、キャラクター、音楽など)について正当な所有者であることを証明する手段として機能する。ブロックチェーンを用いてビットコインなどの仮想通貨が取引されてきたが、それと同じようにデジタル創作物を取引する(p181)
・AIは単純労働を自動化するが、DAO(分散型自立組織)は管理職の業務を自動化できる、ルーチン的な仕事は基本的には自動化が可能である、企業の管理職が行っている仕事の大部分はDAOによってとって変わられる可能性がある(p189)
・自動運転において社会的な影響が大きいのは、1)ドライバーの失業、2)経済活動の空間的パターンが変わる、人々の移動の仕方が変化すれば、経済活動や住居の分布も変わり、地価にも影響を与えるだろう(p197)乗用車は、運転手のいない自動運転が登場し、普及するだろう(p204)
・日本において自家用車の平均稼働率は4.2%と言われている、自家用車が全てロボタクシーになれば自動車生産台数は現在の25分の1で済むことになる(p206)
・自動運転車で重要なのは、ハードウェアではなくソフトウェアなので自動車産業の主役はメーカではなくなり、AIによる自動運転に関するものにシフトするだろう、携帯電話では2000年代に同様の変化が起きた、ハードウェアを作る携帯端末メーカからOSを提供するソフトウェア企業へ主役が移り、アップルとグーグルがリードする企業となった。自動車ではGoogleの子会社である、ウェイモがリードしている。自動車を保有しなくなるので、修理工場、駐車場も影響を受ける(p209)
2023年2月9日読了
2023年2月11日作成
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未来への的確な見通しが重要と考える著者が、9章からなる基本的なシナリオを示した。
日本の将来が、必ずしも明るいものでないと思えてくる。
財政収支試算では、2%を超える成長率を想定しているが、少子化のもとで1%成長できるかと疑問を投げかけ、政府の見通しの甘さを指摘する。
未来の世界の中で日本の位置を考えたとき、新興国との差も縮まるし、GDPが日本の10倍となる中国とどのように向き合うべきかと。防衛費を1%から2%への引き上げ論議が喧しいが、日本のGDP1%は、2060年においては、中国のGDPの0.1%にすぎず、どの程度の効果があるのかと、疑問を呈する。
日本は「大きさ」に代わる何かを見出さない限り、世界経済の中で生き延びられないとする。
今後ますます進む高齢化社会では、社会保障の問題とともに、要介護人口が増加し、人材が確保できるかどうかが大問題だと。だが、医療技術の進歩とともに、介護技術も進歩し、介護ロボットなどのめざましいだろうとの見方も。
後半は、メタバースやブロックチェーンや、「スマートコントラクト」、あるいはDOA(分散型自律組織)や「フードテック」やら、馴染みのない単語が続出し、理解能わずの頁も。
何にしても、未来に向けては人材開発が急務で、それには大学改革が不可欠と。
現状、日本のデジタル競争力は、スイスの国際経営開発研究所でのランキングでは、63カ国中29位だとかで、デジタル人材育成の遅れが基本原因と指摘する。
未来の世代に対する責任を果たしているか、現代の我々が未来の問題を自分自身のこととして意識する必要に迫られている。
今ならまだ、修復可能な段階にあると、著者は述べる。
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人生設計をするにあたって、ある程度、将来の見通しを持っておくことは大事。
日本人の丁寧さや勤勉性は将来も損なわれることなく、世界で一定の競争力を維持すると思うが、国の財政運営、教育制度、高齢化、自然災害など暗い材料が目白押しの中で、今後も日本にBetしていく理由はかなり乏しい。
特に社会保険制度の軌道修正と、医療・介護人材の確保に関しては、一刻も早い見直し議論・改革が必要。
一方で、リアルタイム自動翻訳が実用化すれば、これまで言語がネックであった日本人にとっては強力な追い風になるかも。
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p125 核戦争が現実的な危機であった1960年代に、「核戦争の生存者は、死者を羨むだろう」といわれた。来たるべき人生100年時代に、長寿者は死者を羨むのだろうか?
p127 医療・福祉だけが成長を続ける
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2040年の日本の姿をデータとともに紹介してあります。
日本の未来に関する本は、読むと悲しい気分になりますが、本書もつらい現実を紹介しています。
特に、日米中のGDP(購買力平価による比較)が衝撃的でした。2060年には中国のGDPが日本の10倍になるデータが紹介されてあります。今後の中国との付き合い方を考えさせられるものでした。
日本の置かれた現状と今後の予測を詳しく知ることは、未来を変えるためにも重要であるため、未来を変えたいと考えている方には本書はおすすめです。
本書の最後に、政治と行政の近視眼的バイアスをどう克服するか、みんなで考える必要があると書いてあります。まさしくその通りだと思いますし、日本の未来を少しでも明るい方向にもっていくには、これを解消する努力を国民全体で行っていく必要性があると感じました。
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2023年12冊目。満足度★★★☆☆
野口氏の本は過去にたくさん読んでいて、過去の著作との比較において正直やや期待はずれ
本のタイトルにある「2040年」という遠い将来よりも、もっと近い未来の記述が多い印象
それでも、将来の日本や世界がどの様に変化していくのか、重要な点については理解できる。悲しいかな、日本の未来は明るくない、楽観できない
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将来の日本は社会保障でも国防でも絶望しかないことがわかった。
将来の姿を見据えて自分はどうあるべきかを考えるのに使える。
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数年後の世界は予測がつくが、2040年という、ほぼ20年後の日本はどうなっているか、それを野口悠紀雄氏が語る、そこに興味をもって読み始めた。
これまでは停滞した30年と言われるが、まさに、それをデータで裏付けていく。Japan as No.1と言われていた時代もあったが、バブルではじけた日本。その後の無策というか場当たり的な政策が浮き彫りにされるような内容だった。直近の勢力にしか関心のない政治の劣化やポピュリズム傾向、官僚の近視眼的な見方が、日本を足踏みさせている。解決策は何か?
結局は民度に帰着するのだろうが、長いものにはまかれろ、の風土がいま問われていることを感じた。
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中国はGDPが日本の10倍になるか・・
なぜこんなに差がつくことになるのか。
リスキングが必要だということだが、抽象的ではなく具体的にどんなことを学べばいいのだろうか。
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私が小学生の頃、当時の日本は決して裕福では無かったが、将来の日本は希望に溢れていた、と思う。いま現在、日本は裕福にはなった(と思う)が、この書籍に書かれた将来の日本を全てこの通りの悲観的な国、にしない為にこれから、「軌道修正する努力」を怠ってはならない、そのように感じた。
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下記印象に残った点。
・2060年には日本のGDPは中国に10倍の差をつけられる
・医療技術が発達することによって寿命は伸びる。たとえば再生医療で癌や糖尿病を解決することができるかもしれない。
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日本人は自らが置かれている状況を直視していない。明るい未来を実現するための擬態的な方策を取らず、希望的観測を羅列しているだけ。世界から取り残される日本