快楽としてのミステリー
著者 丸谷才一
探偵小説を愛読して半世紀。ミステリーの楽しみを自在に語る待望のオリジナル文庫。ミステリー批評の名作として名高い『深夜の散歩』から最新の書評まで。ポー、ドイル、チェスタトン...
快楽としてのミステリー
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商品説明
探偵小説を愛読して半世紀。ミステリーの楽しみを自在に語る待望のオリジナル文庫。ミステリー批評の名作として名高い『深夜の散歩』から最新の書評まで。ポー、ドイル、チェスタトンからクリスティー、フレミング、チャンドラーまで、そして、グリーン、バルガス=リョサ、エーコまで、さらには、松本清張から大岡昇平、大沢在昌まで、あっと驚く斬新華麗な名篇揃い。
目次
- I ハヤカワ・ポケット・ミステリは遊びの文化/[鼎談]丸谷才一×向井敏×瀬戸川猛資/II 深夜の散歩──マイ・スィン/クリスマス・ストーリーについて/すれつからしの読者のために/長い長い物語について/サガンの従兄弟/冒険小説について/手紙/ダブル・ベッドで読む本/犯罪小説について/フィリップ・マーロウといふ男/美女でないこと/ケインとカミュと女について/男の読物について/ある序文の余白に/タブーについて/新語ぎらひ/III 女のミステリー/酔つぱらひとアメリカ──クレイグ・ライス『素晴らしき犯罪』/ヨーロッパへゆく──パトリシア・ハイスミス『太陽がいっぱい』/IV ミステリーの愉しみ──ホームズから007、マーロウまで/終り方が大切──エリック・アンブラー『影の軍隊』/角川映画とチャンドラーの奇妙な関係──レイモンド・チャンドラー『プレイバック』/なぜ探偵小説を読むのだらう?/小説作法──イアン・フレミング『スリラー小説作法』/ホームズ学の諸問題/名探偵バーティ──ピーター・ラヴゼイ『殿下と騎手』/探偵小説の諸問題/イアン・フレミングと女たち/ハムレット王と孝明天皇──ディック・フランシス『横断』/雁を聞いて眠る──ローリー・リン・ドラモンド『あなたに不利な証拠として』/V ミステリー書評29選/探偵小説に逆らつて ロバート・L・フィッシュ『懐しい殺人』/彼女はなぜ殺されたか ミュリエル・スパーク『運転席』/イギリス大衆小説のあの手この手 フレデリック・フォーサイス『ジャッカルの日』/三作目は失敗作? フレデリック・フォーサイス『戦争の犬たち』/もう一人の大統領 フレデリック・フォーサイス『ネゴシエイター』/男には書けない本 P・D・ジェイムズ『女には向かない職業』/黒と灰いろ P・D・ジェイムズ『罪なき血』/世界一の探偵 ニコラス・メイヤー『シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険』/大英帝国を防衛する 富山太佳夫『シャーロック・ホームズの世紀末』/探偵小説の女王 アガサ・クリスティー『カーテン』/名探偵の前史 レイモンド・チャンドラー『マーロウ最後の事件』/これが文学でなくて何が文学か レイモンド・チャンドラー『過去ある女──プレイバック』『湖中の女』/ほか
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「ミステリー」は、お好き?
2013/03/22 13:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯に「追悼」の二文字が入った、これも文庫オリジナル編集の「追悼」本。早川書房の「エラリー・クィーンズ・ミステリ・マガジン」をはじめ各社の雑誌等に寄稿したミステリ関係の書評・評論を時代、内容ごとに改めて編集したものである。その多才さは知っていたものの、こうして集められたものを読むと、ミステリー愛好家としての丸谷才一の一面が、他の顔にも増して強く浮かび上がってくる。
冒頭に「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」シリーズを語った鼎談を収める。これも今は亡き瀬戸川猛資と向井敏を相手に、趣味を同じくする者同士が座談に興じる様子が伝わってくる好い企画である。
第一章にあたる鼎談を別にすると、他は五つの章に分かれる。初期の書評を集めた第二章「深夜の散歩」と第五章「ミステリー書評29選」が書評、第三章「女のミステリー」、第四章「ミステリーの愉しみ」、第六章「文学、そしてミステリー」が評論ということになろうか。
書評は英米のミステリーが中心になるが、評論においては日本の推理小説界の動向にも批評、提言を惜しまない。タイトルに「ミステリー」とついているが、エリック・アンブラーやイアン・フレミングといったスパイ小説作家にも扉は開かれている。もともとミステリーと純文学、大衆小説、中間小説といった類のジャンル上の垣根は丸谷にとって、どうでもいい区別であった。
好きな作家については重複をいとわないのが、大作家であってもファン心理というのは変わらないことがうかがえて微笑ましい。特にチャンドラーについては何度も触れ、「これが文学でなくて何が文学か」と、その文学の魅力を称揚し、村上春樹を筆頭とする日本の作家への影響力の強さを語る姿には力が入っている。
丸谷がミステリーを愛するのは、読んでいて愉しいからであって、そもそも読んでいて面白くないものは文学としての価値がない。鹿爪らしい顔をして、つまらない文士の日常の瑣末な身辺雑事をみじめったらしい筆使いで書き綴った「私小説」が、日本の文学を生きる上での色あいや潤いの乏しい、狭量な世界に閉じ込めてしまったことに対する不満が、この人にはある。
それに比べ、食事や酒、社交の席上での会話、音楽等々、人をして人生を愉しませてくれる種々の薀蓄を存分に語ることのできるミステリーは、何をおいても外すことのできない文学ジャンルである。ハヤカワ・ポケット・ミステリが、アメリカについて知る上での最も手軽な参考書であった時代を語り、日本推理小説界の大御所である松本清張と横溝正史を分けるのが、ハヤカワ・ポケミスに代表されるアメリカもののミステリ受容の有無であることを論じてみせる弁舌の爽やかさは、酒杯片手の上機嫌さにだけよるのではない。
この本、タイトルにつられて、ミステリ小説の解説本と思ってしまうと、ちょっともったいない。特に最終章「文学、そしてミステリー」は、グリーン、チェスタトンあたりはミステリーに分類されるだろうが、エーコ、清張、大岡昇平に至ると、いわゆる文学というものを読み解く作業に、「ミステリー」という「解読格子(グリッド)」を用いたとき、どんな読みが可能になるかという、その実例を奔放華麗に見せてくれる。松本清張をかつて人気を呼んだ社会派推理小説の重鎮などと括って済ませているのが、いかにつまらないことかを教えてくれる「父と子」など、ミステリ嫌い、純文学好きの読者必読といえよう。
解説
2024/08/07 23:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
主に有名な世界中のミステリー、推理小説の解説、評論ですが、中には、全く知らない本もありました。学生時代から、かなり、ミステリーは、読んできたので、意外な発見があったり。日本のは、もう少し新しいのも紹介してほしかったかな