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初めて韓国人作家さんのSFではない小説を読んだ。装飾の多い文章(暑いを暑いと言わないという意味で)は少し読むのに苦労させられたけど(こういう詩的?とも言える表現は韓国独特のものだろうか)、独特の彼の国の“重苦しさ”をビシビシ感じつつ、クールなおばさん殺し屋(お婆さんと言うにはまだ失礼だろう)の抗う姿は、ある種微笑ましくもある。映像化したら観てみたいなと思いながら読んでました。
余談だけど、最後がなんだかよくわかんなかったけど、そういうことかなと勝手に納得したりして(読んだらわかります)。
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SL 2023.4.27-2023.4.30
心身ともに加齢による衰えを自覚する殺し屋の爪角。衰えというだけでなく、その感情の変化に戸惑いながらも、いつしか受け入れて人生に対峙する。
あとがきにもあったように、敢えてわかりやすくしない文章と、65歳のおばあちゃん描写に違和感があり、あまり入り込めなかった。
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"韓国文学が熱い"ということを最近ひしひし感じている。本書は、主人公が殺し屋稼業の高齢女性というだけでも興味をそそられるが、飽きさせないストーリー展開やキャラクターの背景描写の繊細さなど、一気にのめり込んでしまった。主人公の老いと世代交代の刹那や、それに反して実力を見せつけてくれる場面など、ノワール小説を超えて人間ドラマであり、同じ不安を抱える女性として共感や応援の感情が湧く。韓国ドラマ好きとしては、実写化映像と配役が勝手に頭に浮かぶ。細かい描写も多いのに、ハマれるのは邦訳の素晴らしさも手伝ってのことと感心させられた。
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カバー写真は藤岡亜矢「私は眠らない」におさめられているようですが、この小説のエンディングのために撮られた写真かと思うほどしっくりきました。美容師の手のようで長く仕事した人の手に共通するイメージを持ちます。不遇の幼少期に見出された才能が殺し屋。雇われ仕事であるものの個人の裁量で成果を出すため、独立独歩、大事なものは持たないと決めた孤独な生活であったはずが60歳を超えて、加齢する肉体に苦労して対応しながら、気持ちは弱い立場にある家族、リヤカーを引く生活の人、拾った犬などに執着してしまう。トゥは自分を記憶しているといってほしい以上の望みがあったのか、共感を拒む難しい存在でした。
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65歳。女性。なめられがちな属性を、二つも重ねもつ、プロの殺し屋。物語の面白さって、自分ではないものの視線を借りることでもあると思うから、こんなふうに今まで見かけなかった人物設定、どんどん世に出てほしい。自分自身、昔はできていたのに…と思うことが増えているので、爪角の動揺が、レベルは違えど、よくわかる。
「防疫」場面はスピード感があるのに、全体は疾走感というよりジグザグに走る感じで、これが作者の狙いである「文章を読みやすくしない」ということなのかな。眼が滑らずに、しっかり噛み下しながら読んだ。
無用のいない部屋を、爪角は寂しく感じるのだろうか。
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ノワール×おばあちゃん!?みたいな惹句見たけど、ノワールはよいとしても「おばあちゃん」の言葉は適切でない。「おばあちゃん」のわかりやすいあたたかさ、親しみやすさはない。「老女」という覚束なさ頼りなさも、「老婦人」という優雅なリタイア感もないのが、主人公爪角である。
爪角のような女性を一言で表す言葉はないし、このような女性を主人公にした小説もあまりないのではないかと思う。そこがとても良かった。
かつて有能な殺し屋であり、人情など歯牙にもかけない徹底した仕事ぶりだった爪角も、老いて能力は確実に衰え、捨て犬に情けをかけてしまうようなていたらくである。その加齢(と経験)に伴う衰えと弱さが、非常にリアルで他人事とは思えなかった。
壮絶かまってちゃんのトウ、薄給の医師カン博士、爪角の「育ての親」リュウなど、他のキャラクターも良くて、映画になりそうだなと思った。
韓国映画ならできるだろう。アメリカでリメイクしても良いかも。フランシス・マクドーマンド主演で。日本映画は無理。爪角を演じられるかっこいい女性の老人俳優がいないし、撮れる監督もいなさそう。
驚くのはこれを岩波が出してること。なんか路線変わった?表紙もちょっとグロテスクだし。
日本では桐野夏生なら、こういう作品が書けそうな気がする。書いて欲しい。
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タイトルの「破果」は韓国語では「傷んでしまった果実」と「女性の年齢の十六才」を意味すると言う。
65才の女殺し屋爪角の壮絶な人生を、現代の体力的に衰えだした中での死闘の中に、そこへ行きついた彼女の生涯を散りばめながら進む。
同じ年の自分には、彼女や周りが「おばあちゃん」として卑下するのが気になるが、壮絶な人生の中の恋心や「血迷って」世話をし出した一匹の犬との関係を通して温かさを感じる。
比喩や飾り言葉の多い文章だが、慣れると心地良い。一気に読んだが、もう一度ゆっくり味わいたくなる作品です。
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○ライムでよく見る韓国ノワール映画の一場面のよう。映像がクリアにイメージできます。設定は素晴らしいし主人公の雰囲気も好みなのですが、、文で読むとちょっと勢い削がれる感が。長文で整理しきれてない印象を受けました。映像ならすっきりいくところがもたついたようにも感じられました。儒教のニュアンスも影響してるかも。
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老いた女性の殺し屋が主人公。殺し屋稼業なのでひっそりと目立たない生活をしているが、加齢の為にその生活や生き方に変化が起きている。
ヒタヒタと押し寄せる老いの恐怖が、まさに敵対者を暗示するかの様。翻訳が素晴らしくて高齢者への固定観念を払拭し淡々と描いているのが好感が持てた。最後らへん「もう錠剤、のみこめるのかい」が切なかったし、最後のネイルのシーンまで無駄なく味わい深かった。
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60代女性の殺し屋、爪角(チョガク)。長年の殺し屋稼業を冷酷に遂行していたのに、身体も心も衰えがきた頃に人や飼い犬へのこれまでと違った感情を持ち始める。孤独に生きてきた先で気づいてしまったもの。守ろうと思ったもの。そこから生きる意味が見つかったかのようになる。犯罪小説であると同時に爪角の生い立ちや殺し屋になるに至った背景なども興味深い。韓国のミステリーや犯罪小説をいくつか読んできたけれど、その中でも読み応えのある作品だと思う。
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最近話題の韓国文学。
主人公は年老いた殺し屋の女性で、何者かに狙われる彼女の戦いを描いたもの。いわゆるノアール小説ということになるのだろう。
そこそこのページ数だが、テンポがよいのでするする読める。主人公の描き方も上手く、結末はどうなるのか、ドキドキはらはらした。
しかしそれ以外の部分で雑だなぁと思うところも多々あり。
読後感がよかったのが救い。
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著者が訳者にコロナ禍の後に贈った言葉、私たちは壊れません。これがズシリと響く年齢に入ったと実感する。
他人からどう思われようとも、何て言われようとも、壊れないでいること。唯一の武器を手に入れたような読後感。
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ずっと殺し屋をやっている65歳の女性、爪角(チョガク)が自らの身体の衰えなどが原因で少しずつ生き方・考え方が変容していく時に、同じ殺し屋「防疫」グループの一人、トゥから絡まれるようになる。実はその30前半のトゥとは因縁あり、トゥは爪角が自分を思い出せないことに苛立っている。
爪角の生き方が格好いいのと、殺人などのアクションシーンが読みごたえありです。そういうのが好みの人は当たりの本だと思います。不幸な生い立ちの爪角の人生でリョウに拾われて、成長しながらリョウを慕う気持ちと相反する仕事の内容。立て続けに起こる不幸。更に老いてから失敗した仕事で負った怪我を治療してくれたカン博士(医者)への思慕。その辺が話を展開させながら織り混ぜられて語られます。
殺人を普通にやってるお話なので、高校からかなぁ。性的な描写少しです(リョウに拾われる事件あたり)。
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キャリア45年の殺し屋(65歳女性)
純文学といえる文章の美しさがある、一筋縄では行かないエンタメ作品
女で高齢者だとナメられることが多い世界だが、それさえも抱えてなおかつ若い男性への愛も描いている
みごとな小説だった
ク・ビョンモ作品がもっと邦訳されたらいいのにと思う
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著者、役者のコメントが読後に与える影響がこれほどまでにある作品、そうそうないと感じた。
読後、いま一つの評価を抱いたのだが、訳者による表題の意、「あえて踏み切った」読みやすくてわかりにくい文章、映像で観たいと思わせるようなもって生き方を秘めた展開・・なるほどの作品だ。
世界的にも韓国の映像制作陣のレベルが高いことは知られており、めったと映画化への希望を欲しない私ですら、然りと思える。
高齢、女性、して防疫という職業。ジャンル的気もノワールという社会的存在・意味合い。
訳者が嘆く「日本人ならではの固定観念」の内在するマイナス概念は決して作品の中身を貶めることなく立派な仕上がりとなっている。
読み手の私のほうこそ、固定概念が邪魔をし、初読時のなんともいえぬイラつき、うっちゃってしまいたい「エイジズム」概念を猛省する。
別のサイトでかなりの好評を得ていることに激しく疑問を感じ、再度ぺらぺらと。
そうかぁ。。腐っていても、弱体化しても、(それはそのままで)壊れないでいることの潔さ。
ノワールは単なる殻であって、コアの部分の爪角葉例えば【ネイルで美装】して出陣するがごとくの女、生き物なんだと!そりゃ、リュウの出番は早いはずだ。
痛快なラストを手にできた。