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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
で、この高校生がなんとなく同性に関心を持っていて……みたいなお話です。舞台を1995年にしたのは、まだ今のように、LGBTQがそれほど一般視されていなかったせいかな、とも思いましたけど。自分には、合いませんでした。
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高2の頃の、子供と大人の間にある不安定な時期に感じる微細な違和感や感覚などが言語化されているように感じた。
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まずはじめに否定しておきたいのだが、この作品の紹介で、男性同性愛者と知り合う(かもしれない)男子高校生、という記述があり、この作品はその様な事象を主な題材とした作品なのか?、と捉えてしまいそうになるが、それは作中の主人公の好奇心の一端であり、決してそれが主題では無い。
主題、と言うか時代背景、は1995年という極めてピンポイントな「年」である。この「年」を通過した者なら誰もが実感するように、年初から立て続けに大地震、テロ事件、が起き、そして何よりWindows95が世界中で発売されて一部の者はその「世界中」と繋がりうる「インターネット」の可能性に大いに心震わせた「年」である。
主人公の多感な高校生は、比較的裕福で温和な家庭の中で、父親の職業を通じて、また自分の学校生活、あるいは兄弟(妹)との関係…等と、先に書いたような社会環境、の中で、かつて多感な思春期時代を過ごした者なら誰もが感じ得たような経験、興味、を示して日々を過ごしていく。またそのツールとして今でこそ当たり前になったインターネットが存在し、一般的になろうとしていた、事が実に興味深い。当時はまだ駅に伝言板はあったはずであるし、ファックスは当たり前、カメラも一眼レフかポラロイドくらいでしかなかった。私ごとにはなるが、その様な時代背景を私はちょうど転職をして、一気にデジタル化を進めようとする地方の一企業のデジタル化推進担当社員として、過ごした。この作品の主人公と同じように、時代が、コミュニケーションの方法が、変わっていく事を仕事でも遊びでも、大いに実感していた。その様な私の個人的な思い入れがあるからこの作品を楽しめた、という部分はあるかもしれない。
作中では決してそういった時代背景の描写だけでは無く、個性的な家族、また登場人物一人一人のある種、軽薄なディテール(ポルシェに乗ってやってくる女であるとか)も、読む者が頭の中でそれを思い浮かべるときに興味を抱く事ができる材料なのでは無いかと思う。
最後まで読んで複雑などんでん返しがある様な作品でも無いと思う。ただ決して言いようのない不快感とか、逆に高揚するハッピーエンドといったものもない。では何が面白いのか?、先に書いた様に私が同じ時代を主人公の高校生の様な何か言いようのない高揚感を抱いて過ごしたから、この作品を特別面白く感じたのかも知れない…。
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この小説の舞台となる1995年といえば、僕が「エレクトリック(=電気の)」と「エレクトロニック(=電子の)」の意味の違いを理解した頃だ。
語感は近いけど全く非なるものであることにある日突然気がついた…そんな頃だ。
そして、その頃、インターネットはそんなに普及してなかった。世界はまだクモの糸で繋がりきってなかった。
インターネットが海のものとも山のものともわからない。
とりあえず資料はワープロ使ってきれいに作れますし、エクセル使うと表計算とか便利なんですねって気づいた頃。ブラインドタッチ練習しなきゃなって。
きっと、1995年はエレクトリックとエレクトロニックの狭間の年だったのだ。
いまさら「エレクトリック」ってなんやねん?と思いながらも想像した小説の世界観がまんま描かれていて、安心感の中読み進められた。
それがよいことなのかどうかはわからない。
主人公の高校生達也がゲイなことと、そのフェティシズムの対象には少し心がざわついたけど。
第169回芥川賞候補作品。
でも、どうかな?
石田夏穂さんとか、児玉雨子さんとか、結構強力な対抗馬がいますわね。
発表が楽しみです。
♪Dinosaur Tank/電気グルーヴ(1994)
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1995年、この年は本当いろんな出来事があった。
地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災など、目まぐるしく変わる日常のなか、本作は、そんな時代背景をもとに、東武宇都宮駅中心に物語が進んでいく。主人公達也は、父、母、妹の4人家族で高校生だ。父は、広告業で、自分で会社を経営している。ある時、父は取引先のためにアンプ制作を実行するために、インターネット接続を達也にまかせた。当時はネット黎明期、そこで、達也はある
コミュニティを見つける。自分の新たな扉が開かれる。第169回芥川賞候補作。
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Amazonの紹介より
性のおののき、家族の軋み、世界との接続――。
『現代思想入門』の哲学者が放つ、待望の最新小説!
1995年、雷都・宇都宮。高2の達也は東京に憧れ、広告業の父はアンプの製作に奮闘する。父の指示で黎明期のインターネットに初めて接続した達也は、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みる。轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。新境地を拓く待望の最新作!
読んでいるときは、芥川賞候補作ということで、どんな作品なのか興味があって読んでみました。
思ったよりは読みやすかったなと思いました。
物語の舞台は1995年。この当時、WINDOWSが発売されたことにより、パソコンやインターネットが大いに盛り上がりました。そこで「世界」との繋がりによって、色んなものを目にします。
初めての「モノ」に出会い、そして興奮したり魅力にハマっていく描写を気持ち抑えめに文学的に表現されていて、読了後は「読んだ」という感覚がとてもありました。
また、当時のパソコン事情の描写もあって、懐かしさが込み上げてきました。
当時を振り返ってみると、回線を繋いだときのダイヤルっぽい音や初めてチャットといった世界とのコミュニティに触れた時の印象など、色んなことが沸々と甦ってきました。
そして、エロいサイトにも。この作品では、主人公は同性を意識しているということで、ゲイのコミュニティを覗いている描写があります。一歩前に進もうか進むまいか、気持ちが揺らいでいながらも、文学的にその辺りを描いている印象が強く、文学作品だなと改めて思いました。
その一方で、レトロな位置にあるアンプが、パソコンという「未来」と「昔」とを対比することで、「今」と「昔」の狭間に立っているんだなと感じました。
他にも「地方」と「都会」など色んな狭間の中で生きていく状況で、主人公の高校生の心の揺れ動きが、淡々としていながらも良かったです。
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ギリ幻想じゃない平成について、懐かしさと憧れを感じてしまった。エヴァをリアルタイムで触れる高校生。それらの固有名詞に一定の距離感を持ってる感じも、潔さがあっていい感じもした
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自分如きの読解力では一度読んだだけではスッと入って来なかった。主人公の主体性があるようでないような感じが引っかかるのかもしれない。
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つい先日、金原ひとみさんが編んだ『私小説』で覚えたばかりの著者のことを、ポリタスの石井千湖さんが紹介していたので読んでみることに。
小説の舞台となった時代、大きな出来事が起こったあの年のこと。激しい雷鳴やインターネットの接続音が聞こえ、土地勘のある宇都宮の景色‥当時、暮らしの中で見聞きしたニュース、感じていた希望や不安などが次々に目に浮かぶようで一気に読んでしまった。
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「デッドライン」「オーバーヒート」と進み、今回は主人公が高校生。「デッドライン」で孵化しかけて、「オーバーヒート」で蝶々になって、この「エレクトリック」はさなぎという感じ。高校生なので家族と住んでいて、そのかかわりを丁寧に描く。最後には自らを目覚めつつある性への扉に近づく。
舞台は宇都宮。雷都に雷様、なじみのある土地なので、主人公の鉄道沿線の家とか、最後の繁華街の描写は、あそこらへんなのか?などと想像してしまった。また主人公の家は街の中心部からは少し離れていて、中心部に行くことを「街へ行く」といっているのは、同じだなあ、などと思った。
2023.5.31発売
「新潮」2023.2月号掲載時に読んだ。
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古いアンプやインターネット、ポルシェ、シトロエンなど伏線のような何かを暗喩しているようなものがたくさんあるが、私には何が何を示しているのか読み解けなかった。ゲイの話に行くのかと思いきやそうでもないし。1995年というインターネットが普及し始める黎明期に、古い価値観から新しい価値観に代わることを示しているのかもしれないが、私には分からないし正解でもないだろう。読みやすいんだが、読み解きが難しい。
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「古いアンプ/最新のMac」「家族/各々が持つ違う世界」「対話/ネットのチャット」「不確かな性の認識」など、様々な要素が折り重なって混沌とした世界が描かれているように感じた。明確なテーマが分からないまま読了してしまいスッキリしない心地だが、現実味はある。文章表現はとても秀逸だった。
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芥川賞候補作なので読んだ。
同郷でもある。応援したい。
高校2年生の主人公のドキドキや悩みが雷のようにきらめく。
1995年の様子も懐かしい。
ハンドパワーは静電気。
栃木県宇都宮市はなぜだか雷が多く「雷都」(らいと)と呼ばれたりする。
「アウト・オブ・眼中」という言い方、どこかでマネしたい。
エゴン・シーレの画集は名作。
「エヴァンゲリオン」という名称を出さないのによくわかる説明がとても上手い。
皆が行く方向に行かない。それだけで勝てる。説。父の哲学。本当なのか?
ラジカル→ 急進的なさま。過激なさま。極端なさま。
ゲイの世界は裏世界で、
その入り口を発見した場面のドキドキがとても印象的。
宇都宮市の様子も想像できるので読みやすかった。
「オーバーヒート」を読んだ時に、千葉さんの実家は白楊高校の近くなのだと思ったが、
そこは祖母の家だったのかも。
とにかく、宇都宮市。
場所が想像できて楽しい読書だった。
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作者は、この作品及び主人公を通して、自らがゲイであるのをカミングアウトされていますが、その書き方に未だ躊躇いを感じます。
書くのであれば、ちょうど今回の市川沙央さん(「ハンチバック」)のように、全てを曝け出す覚悟が欲しいです
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バラバラの部品、でも確かに一つの何かを構成するものを都度都度渡されて組み立てる。もちろん順番通りではなく、形にハマらない時は見送って次の機会を伺う。ような、全体を通してエレクトリックなもので、順次増えていく部品のような物語たち。しかし、僕には上手く組み立てることができなかった。