心がこもった生物学の著書です。
2023/06/26 21:39
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
生物学を専門とする著者が、生物学の視点から人間の生き方について持論を展開する1冊です。
生物学を用いて著されている点はクールですが、生き方については大変心がこもった内容です。著者の持論も納得する点が多かったです。
生き方について悩む方々に、ぜひとも読んでいただきたい1冊です。
とても良い本だと思います。
2023/04/10 23:28
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投稿者:さとうきび - この投稿者のレビュー一覧を見る
生物が生まれて人類にたどりついた理由を本質的な視点に立って説明。
また”何のために生まれてきたのか”という問いに対して”目的”でなく”価値”に目を向けること という視点に自分としても救いを見いだせた。
小学生のときに自分が「最後は死んでしまうのにどうして生きるの?」と何かの課題で書いて、それに対して友達に「なんでそんなこと言うの」と言われたときのことを思い出した。10歳前後でよくそこまで達観した事を言えた自分に感心してしまうが、この本では人間は何を頼りに生きていくべきかという点で回答を示してくれている。
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投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高齢者の身になって人類の行く末を考えることよりも、自分のこれからの老後のことの方が切実な問題だ。「何のために生きる」という大命題も頭の外に置いて、ただただ日々を過ごしている。そんな人にも人類の進化のことを未来のことを考えるよう促してくれそうな本だ。
世界的にも沸騰する環境だけでなく、怨嗟が沸騰している状況は明るい未来を想像できないが、一縷の望みでも多くの人がもてるようにしなければいけないのだろう。
進化生物学者の生命観・人間観
2023/08/16 22:30
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投稿者:ノホホン - この投稿者のレビュー一覧を見る
進化生物学の視点から,「何のためにうまれてきたのか」等の哲学的な命題を
考える内容。新しい切り口で,専門的過ぎることもなく,内容も良い。
でも,進化生物学の本として期待していた私としては,本選びの的を
外してしまった感じ。また,理解しやすいように,深入りし過ぎずに
まとめられているためか,読後に「納得」はしても「共感」までにならなかったかな。
切り口も内容も良いので,個人的な意見として,
もっと尖って理系の読者をも唸らせるサイエンス本に,
本書を『進化』させていただけることを期待します。
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自分の存在についての悩み「なぜ生きているのか」という問いに対して、「なぜ死にたくないのか」「なぜ他の人とかかわらなければならないのか」「なぜ異性がきになるのか」という観点に分けて、それぞれ進化論の観点で説明している。
特に自分を含め現存の生物は、増えることに注力してきた祖先の末裔であることから、そのための特性が残っていることによるものであることを述べている。
また現在の生き方自体がそれらの特性に合致していないことも説明しており、昔は必要だった特性も、今や今後の社会や科学では必ずしも必要でないことも述べている。
最終章では、それらを含め、著者の考える「生きている理由」を述べているが、まぁ科学者らしく前向きな諦めという感じである。
議論の裏付けとして、事例の数や定量的な情報はあまりないが、その分話の腰を折らないので読みやすいし、その情報自体も特に違和感なかった。
専門的な用語もちょいちょいあって勉強になる。
わかりやすいような表現はしているが不適切に過剰でもなく、初心者にもわかりやすいし、分かる人にしても誤りがあるわけではない。
多少言い切ってしまっている論調はあるが、偏見や極端なメッセージ性があるわけでもなく、読んでて違和感はなかった。
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『サピエンス全史』や『銃・病原菌・鉄』も面白かったけどやっぱりちょっと難しくて、これは読みやすくて面白かった。
なぜ生きてるのか
なぜ死にたくないのか
宗教やスピリチュアルな言葉じゃなく
生物学の視点で書かれてる。
狩猟採集社会の時代からたった1万年程度では、私たちの身体や脳のつくりを現代型にするのはあまりに短いらしい。
性別の枠にこだわり過ぎるのは人間だけか。
自分って結構狩猟採集民よりの性格かも。
進化に追いつかないのは自分だけじゃない。
なんて身近な物事が客観的に見えてきてすごく面白い。
面白いついでに心も何だか軽くなる。
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悩める10代の若者たちに思い悩むことが当然と肯定し、力づけてくれつつ、さらに生物の進化の面白さについて解説してくれる1冊で2度美味しい本。もちろん50歳を越えて未だ達観に至らない中年にとっても興味深い良書。
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進化生物学者により生物の性質について書かれた本。人類を含め、生物の性質は「増える」ことであり、そのメカニズムについて説明している。その観点から生物は、「多産多死」か「少産少死」に分かれ、人類は後者に属する。少産少死の生物は進化を続け、より死なないようになっているが、それが現代では本来の目的である「増える」ことからかけ離れ、「悩み」などの弊害をもたらしていると言う。今までに聞いたことがあることが多かったが、わかりやすく体系的に纏められているので、明確に再認識できた。面白い。
「脳で幸せを感じるしくみは、幸福感をつかさどるニューロンに信号が伝わるからですが、ニューロンというものはあまり頻繁に信号が送られると、どんどん鈍感になる性質があります。そのため最初は幸せであってもすぐに慣れてしまって、同じくらいの幸せを感じるには次はもっと強い刺激が必要になっていきます」p15
「間違いないのは、私たちの祖先となる生物のすべてが子を残そうとしてそれに成功したことです。もしどこかで失敗していたら、私も皆さんも存在していなかったでしょう」p17
「生物は、増えられる環境があると後先かまわず限界まで増えてしまう性質を持っている」p22
「生命誕生前の原始地球において、何の命令も持たず、増えて遺伝する能力だけを持った物質が出現したと考えられています。ひとたびそのような物質が出現しただけで、様々な能力を生み出し、私たちが現在目にする生物へと進化したと想像されています」p35
「「増える」という現象には、時間が経つにつれてどんどん増える能力が向上していくという特徴があります。たまたま少し増えやすいものが現れると、それは元のものよりもたくさんの子孫を残すからです。こうして増えやすさに貢献する能力がどんどん進化していくことになります」p41
「(増え方の戦略2つ)「多産多死の戦略(とにかく速く増える)」「少産少死の戦略(ゆっくり増える代わりに、できるだけ死なないようにする)」」p45
「私たちは増えるものの末裔です。私たちに受け継がれている性質は、身体的な特徴も精神的な特徴も、増えることに貢献しているか、少なくとも増えることに害のない特徴に限られます」p65
「個体の生き残りやすさと生殖細胞の増えやすさとのズレが大きくなっている)原因は多細胞個体とは生殖細胞の乗り物であったにもかかわらず、多細胞個体のほうを大事に思ってしまったという誤解にあります。これが人間の未来に大きな影響を与えるような気がしています」p78
「付き合いの長さが安定な協力関係を生み出すひとつの要因になっていることが分かっています」p86
「私たちは協力しないと、今の人口も快適な生活も維持することはできません。協力することが増えることに貢献すればするほど、協力を善いものとみなし、他人にもそれを強いる性質が子孫の中で強化されていきます。そして私たちはますます協力するような性質と倫理観を持つようになってしまっています。人間が協力関係を増やすことによって大成功したことが、現代人の抱える他者との関わりの悩みを生み出しています」p93
「私たち人類が今のように農耕を行��定住し始めたのは1万年ほど前だと言われています。それまでの100万年ほどは、少人数のグループで移動しながら狩りや採集で食べ物を集める狩猟採集生活を送っていたと考えられています。1万年という時間は、長いようですが生物の体のつくりを変えるには短すぎます。したがって、私たちの身体や脳は未だ約100万年続いた狩猟採集社会に適応していると言われています」p96
「(食肉)どこか人目につかない場所で生身の動物から肉を切り離す作業が行われています。マグロの解体ショーはよく見世物になっていますが、あれは魚だからまだ許されているように思います。ウシやブタの解体を見たい人はあまりいないでしょう。私たちは、哺乳類を殺すこと、さらには解体することに少なからぬ抵抗感を持っていることを示しています(少産少死の戦略では、命を大切にするから)」p102
「(栄養を得ることは生存を決める要因ではなくなっている)2019年のデータでは、世界中で生産されている食料を世界の人口で割ると、平均して一人あたり毎日約2900kcalの食料に相当しています。成人男性でも一日に必要なカロリーが約2600kcalですから、この値は世界中のすべての人間に必要な食料は生産できており、適切に配分さえできれば飢えて死ぬことはないことを示しています」p105
「人間にとっても、生き残って子孫を残すことは最重要事項です」p118
「性差の解消は、社会性を発展させた生物にとっておそらく必然かと思います」p142
「結局のところ、生物は末永く幸せになるようにはできていません。これは増えるものとしての当然の性質です。そして「幸せになりたい」という欲求も「死にたくない」「仲間外れにされたくない」といった欲求と同じで先祖から与えられた刷り込みです。その程度のものとして、ほどほどに追及するくらいがちょうどいいのかもしれません」p155
「(みんな宇宙で極めて珍しい存在)「(動物学者リチャード・ドーキンス)我々がこうして存在しているのは、驚くほど幸運であり、特権でもあるので、決してこの特権をムダにしてはならないのです」」p160
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耳蓋もない人間論と言えば、かつての竹内久美子が思い出されるが、本書はその流れに進化論的な淘汰・適者生存・「増える」という原理を持ち込んで、人間の現在と未来のあり様をクールに描いてみせている。論理もここまで振り切ると清々しいが、そのまま物理的必然からの安易な決定論に陥ることなく、かえって人間の本能や社会の道徳観念を、個々人としては、過大視・絶対視する必要はないと説き、意外に、よく出来た「お悩み相談」になってもいる。それだけに、最後あたりに「希少価値」とか「ミーム」とかを持ち出しての議論は、それまでの議論のシャープさをやや曇らせた感はある。
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人間がもつ悩みは、生存や繁殖といったいわゆる本能的な欲求に起因している。とはいえ、今日では文明のおかげで生存が脅かされる事態は相対的に少ないし、繁殖は必ずしも生きる目的ではなくなった。だから、本能的な欲求に基づく悩みを必ずしも持ち続ける必要はないし、それらを理性によって乗り越えていこう。
・・・といったことを言っている本だと思う。
ただ、理屈でどうこうなるなら悩んでないよなあ、とも思う。
書名からは生物一般のことを書いている、むしろ生命の興りに関する進化について書いているような印象を受けたけれど、実際には人間に関する記述が多い。というか、人間の考え方とか社会の在り方とかを、進化の観点から見直そうとしている、という感じだろうか。
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生命と非生命とを分けるものを「増える」ことというポイントから説明していく。とっても分かりやすい説明。物理現象としての細胞分裂からなぜ生きているのか、何のために生きているのかまでを考察する。
ヒトの生存戦略は狩猟採集時代を基本に組み立てられているのだそうな。不安定だった食料確保に対応するためのものだ。
で、少子化が取り沙汰される現在から未来を考える時、新たな生存戦略を求めて進化の階段を上がることはあるのかなぁ。
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地球上の生命は増えて進化してきた。『やさしさ』を持つヒトが牛や豚などの食肉を止めるようになることや、ヒトの生殖も変わっていく可能性が高いことなど記されていた。
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増殖するという特性に着目した生物の進化について
自己を複製する物理現象こそが生物の本質
増えるために有利な形質が遺伝的に残る
というのはまぁ理解できる
増える戦略の多産多死と少産少死の軸
少産少死だからこそ命が大事になる
他者も含めて命を奪わないという方向へのシフト
ヒトの場合、他者との関わりにより社会全体の生存率を上げるという戦略が発達している
食料も人工物が増えるという予測
増えるという意味では枷になる性別の意義
多様性を生み出すため
個で発生した形質を次世代に残せる
環境の変化に集団として適応しやすい
遺伝子だけでなく、ミームという概念
生きる意味とは?
生物学的に間違ってはいないんだけど、ところどころツッコミを入れたくなる
包括適応度の視点で語られている部分がないな
社会性云々を言い出すなら、その辺の概念は必要だと思う
そもそも本能なんてものはあるのか?
後天的な行動と遺伝子に由来する先天的な形質をごっちゃにして語っている
途中までは、ミームを無視しているなぁと思って読んでいたら、最後に言い訳的に出てきた
ヒトの場合、環境の変化に対して遺伝的な形質の変化による適応ではなく、ミームにより社会全体、もしくは一部の集団を生かすという戦略にシフトしたのだと個人的には思う
社会的に地位の高い個体、例えば権力やお金を持っているといった個体の方が生存率も包括適応度も高い社会なのではなかろうか?
特に現代日本では
極めて少産少死の社会が出来上がった場合、その中の多産戦略をとった個体の割合が増える場合がある
昔は貧乏子沢山と言われたような現象が起こったけど、今や貧乏は子供を持てない時代になりましたねぇ
あと、ツッコミを入れたいところとしては
同族同種の生物でも殺し合いが起こる事はある
ハト派集団の中のタカ派個体は排除されなければいけない
ハト派、タカ派を決定づける因子は遺伝なのかミームなのかという問題は判断が分かれるところだけど
同質の社会性で生き残っている集団としては、同じ戦略を取れない個体は、遺伝的要因だろうとミームだろうと受け入れてはいけない
多分、こんなところが小規模ではいじめ、大規模では民族や宗教間の問題になってるんだよなぁ
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章ごとにまとめると次のように..
原始地球で生まれた「増えて遺伝するもの」が進化していった果てが人間を含む生物。その本質は①増えること②形質を次世代に伝えること③ただし変異をすること。①②③を繰り返しながら「増える」ことに有利なものが生き残り、変異の蓄積が進化。
増えるための作戦として「多産多死」(細菌やアメーバ)と「少産少死」(多細胞生物から人間)があり、「少産少死」派の成功の末に人間がある。少産少死では繁殖できるまで時間がかかるので「命」を守ること(=長命)が必要。ただし、本来は繁殖できなくなったら死んでいたが、さまざまな要素で死ななくなりますます少産少死が進行。
社会性の獲得、利他性もまた「少産少死」で「増えて遺伝する」ことの推進にかなう。
性があることは、有性生殖による遺伝子混交が変異機会を増やしてきた。
「幸せ」とは「増えて遺伝する」ための鼻先のニンジン。伴侶を得たり子を得たりしたときの幸福感もまた進化の目的にかなうものであり、幸福感が長続きしないのも同じ理屈で説明できる(増えるしくみとしての幸福感)。
「幸せになるために生きている」のでは当然なくて、「増えて遺伝するものの存在に目的や使命はない」→すべては「増えて遺伝する」という物理現象の結果であり過程でしかない。
ではどうやって生き続けるのか・・「生きることに目的や使命はないが価値と生きがいはある。」学問や芸術や文化は「増えて遺伝する」ことには直接役にはたたないが「生きがい」をもたらす。
という具合で、すべてを「増えて遺伝する」ことへの合目的性でとらえなおすことで、長寿、男女の愛、幸福感、生きがいなども理解可能。かなり牽強付会なところもあるが、真実はこのように単純なのかもしれない。
「すべてを増殖と進化への合目的性というコテコテの唯物論で解説できる」というわかりやすいだけに胡散臭さもある。戸田山和久の「哲学入門」に近い立場。
一方で、必要以上の長寿、行き過ぎた少子化などは「増えて遺伝する」という根本原理からすでに逸脱しつつあるとも言えるのでは?まあ、現代日本の有様が一時的なゆらぎでありガラガラポンの大災害や大戦争でまたもとの「増えて遺伝する」社会にもどるのかもしれないが。
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結局ミームになるってどうなんだろう。概念で生物の本能を越えられるのがヒト、というけれど。平等概念がどこまで行くのかもそれなりにどうなんだろうと思う。