電子書籍
ナチスの北欧幻想:知られざるもう一つの第三帝国都市
著者 著者:デスピナ・ストラティガコス , 翻訳:川岸 史
ヒトラーは、北欧のフィヨルドに何を幻視していたのか。今明かされる、「もう一つの第三帝国都市」の衝撃。ナチスにとって、ノルウェー人はそのナチス的世界観の人種ヒエラルキーの頂...
ナチスの北欧幻想:知られざるもう一つの第三帝国都市
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
ナチスの北欧幻想 知られざるもう一つの第三帝国都市
商品説明
ヒトラーは、北欧のフィヨルドに何を幻視していたのか。
今明かされる、「もう一つの第三帝国都市」の衝撃。
ナチスにとって、ノルウェー人はそのナチス的世界観の人種ヒエラルキーの頂点にある存在であった。そのため、ナチスはノルウェーをほかの占領地とは異なる扱いにしたにとどまらず、その地をもう一つの第三帝国の重要都市に改造するという、異様な建築・都市計画の構想を持っていた。
一方的にナチス様式を押し付けるのではなく、自発的に第三帝国の様式に染まるように仕向けるなど、ほかの占領国と全く異なる態度によって生み出された建築、都市インフラは、どのようなものであったのか。
また、ヒトラーをはじめ、シュペーア、ヒムラー、ゲッペルスといった要人たちは、計画に対してどのような思惑を抱いていたのか。
そのナチスの様々な計画に対して、現地ノルウェーの人々、なかでも建築家はどのような態度だったのか。
そして、その計画が現在に残したものとは、何か。
ノルウェーのアーカイブを利用して、スーパーハイウェイ、兵士の家、レーベンスボルン、ニュー・トロンハイムといった計画を詳細に読み解き、ヒトラーの構想した「もう一つの第三帝国」の全貌を明らかにする。
図版多数収録。
1 北欧を美化する過程:ナチス占領下のノルウェーに関するドイツの報道記録
2 新秩序のノルウェー:スーパーハイウェイ(高速道路)からスーパーベビー(優等人種の子供たち)までのインフラ構築
3 ドイツ人気質の島々:占領下のノルウェーにおける兵士の家
4 ノルウェーの町のナチ化:戦時下の都市生活と環境の形成
5 フィヨルドに築くゲルマン都市:ヒトラーのニュー・トロンハイム計画
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
ノルウェーはナチ化を拒絶した
2023/05/01 09:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1940年春、ドイツ国防軍はノルウェー侵攻で1万4000棟の建物を破壊した、ノルウェーの町々をナチ化しようと試みたのだ、傀儡政権も誕生させた、でも国民はそれを拒否した、ストライキ、ボイコット、レジスタンス
紙の本
ナチスの占領政策研究:ノルウェー編
2023/03/20 21:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナチス「総統都市」と言えば、ベルリン、ニュルンベルク、ハンブルク、ミュンヘン、オーストリアのリンツだが、ノルウェーにも「総統都市」計画があったという。最終的には幻となった「トロンハイム計画」である。本書は最終章にこれを置き、「ナチスの北欧幻想」として展開しているが、違った視点からこの本を読んだ。
ナチス・ドイツの占領政策は支配地域全体を対象とすることが通例で、国別・地域別研究は見かけない。被占領国・地域で展開された政策、戦後の状況を扱う研究は乏しい。苛烈な略奪と虐殺が中心となって、国別・地域別に分けて扱う必要性に乏しかったからだろう。
本書はノルウェーを対象に、「アウトバーン計画」スーパーハイウェイから人種改良計画「レーベンスボルン」スーパーベビー(優等人種の子供たち)計画を同じ次元で見て「インフラ」構築として論じることから始まる。なぜこのような扱いをしたかというと、ナチスにとって金髪碧眼ノルウェー人はそのナチス的世界観の人種ヒエラルキーの頂点にある存在であるためである。そのため都市・建築政策では、ノルウェーを第三帝国の重要都市に改造するという構想を持っていた。経済的搾取、あるいは文化を含めて根こそぎ破壊した他占領地域と比べると、対照的な扱いである。
ナチス「民族共同体」は都市を再編成する事業の主導理念でもあった。大ゲルマン帝国を建設するという使命のもと、大規模な社会実験の枠組みをつくり、都市の構造を利用してノルウェー人を人種的な同志に仕立て上げようとした。ただ、支配関係を前面に出して一方的にナチス様式を押し付けるのではなく、「同胞」として自発的に第三帝国の一員となるように仕向けた。
第4章「ノルウェーの町のナチ化」で、他の占領国と全く異なる態度によって生み出された建築・都市インフラがどのようなものであったか、具体例を交えて詳しく論じられている。それは機能的な大都市を作るというよりも大衆にナチズムの帰属意識と信仰を育む「政治のための印象的な舞台美術」を創り出すことであった。そこでは新たな公共空間がナチズムの空間として特別に「ブランド化」される。形や素材、色彩を通じてブランド化しようとするやり方は、ヒトラーに協力した建築家パウル&ゲルディ・トロースト夫妻の建築計画の特徴であり、シュペーアを含む後のナチス建築に強い影響を及ぼした。著者はヒトラーの住居の家具・内装デザインをした女性建築家ゲルディ・トローストを扱った『ヒトラーの家』(2018作品社)のアプローチを都市にも応用し、建築のブランド化によって、ナチズムの支配空間がより広範な思想や価値観と結びつき、それを発展させつつ、個々人にも浸透させようしたことしたことを示す。
本書での発見は、ナチスに協力したノルウェーの建築家スヴェレ・ペデルセン(1882-1971)の存在である。大戦中としては、前例がないほど占領下被占領下の建築家の間で深い交流と協力が行われる中で、いわば「ノルウェーのシュペーア」として、ノルウェー都市改造計画責任者であるNSDAP建築・都市計画総監シュペーアに協力する。「ナチ化」に消極的抵抗を示し、ノルウェーのアイデンティティを守ろうとするが、戦後は批判された。研究と評価はまだのようである。
最終章では戦後、都市再開発への長期的な影響や建物や施設の戦後利用などはいまだに疑問視されていることが紹介される。また、都市計画・建築研究者の著者には専門外だが、都市改造に投入された戦争捕虜と強制収容所の囚人への償いにまで目を向ける。ナチス・ドイツ占領政策の国別研究ノルウェー編としてまとまった著作といえるのではないか。