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夏にピッタリ
2023/07/18 07:10
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリ、サスペンス、ホラー、SF、ファンタジー、仄暗いものを全て凝縮した7篇からなる短篇集。
本を食べて異世界を共有したり、耳や目や鼻や夢から一体化したり、誕生前に還ったり。不安と猜疑心を持ちながらも、欲望から何かに縋り、そして溺れる。一種の中毒を描いた作品。
爆発的な脅威に晒される訳ではなく、底知れぬ恐怖がひたひたと付き纏う。もっとも対応に困る巧妙な禍。
「髪禍」の体から離れた途端、排泄物と化すような嫌悪感など、あり得ない世界の中にも共感を見付けてしまった。
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表紙そのままなんとも禍々しい内容の作品集だった。単純に人間が気味悪く感じることを、気味悪く感じるように描写されている。が、それは人の狂気の象徴としての気味悪さであり、慣れたら物語自体を楽しめるようになるはず。基本、救いのない話がほとんどだが、「農場」は絶望が救いとなるなんとも印象的な作品だった。
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短編集7編
口,耳,目,鼻,髪,皮膚などをお題として短編を仕上げているが,そのじわっと怖いこと,ゾワゾワ感はすごい.アイデアも面白く特に「食書」『耳もぐり」が良かった.
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7編からなる短編集。最初の「食書」は、作家である主人公がショッピングモールのなかに入っている書店の近くのトイレで便座のフタの上に座って本のページを破っては口に含み食べる女を目撃したところから始まる。と、のっけからぎょっとする序盤で一気に惹き込まれる。
最後の短篇「裸婦と裸夫」以外はどの短篇も主人公が抱えるトラウマや嫌だと思っているものの等々、負のものから始まる。そしてどの短篇も身体が関わってくる。口、手、耳、目、肉体、髪、身体。普段なにも考えたことがない自分の体の一部。切っても切れないものが関わるからこその厭さみたいなものがあって、だからこそ物語の引力が凄まじい。気持ち悪さ、気色悪さを感じさせる描写もじゃんじゃか出てくるのに妙に気持ち悪さを感じないというか。相反しているのだけど、気持ち悪い描写がとことん気持ち悪いのに、気持ち悪く感じていない気持ちもある。この感覚はなんなのだろう。すごく不思議な読み心地で、そこが妙に惹き込まれてずいずいと読んでしまった所以なのかもしれない。
本のタイトルが『禍(わざわい)』読むとたしかに“わざわい”だなと思う。自分だったらどうするか、を考えるのが怖い。そして主人公たちが不幸になったのか幸福になったのかを考えるのが怖い。そんな本だった。
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幻想的な短編集。ホラーといってもいいでしょうか。どの物語のテーマも人間の身体に関わるものなので、奇妙な親近感というか身近な感じがとっても嫌です。
お気に入りは「食書」。本好きにとってこれは良いのか悪いのか。とりあえず幸いにも、やってみたいという気にはなりませんが(私の持っている本は、好きだけれどその中に没入はしたくないものばかりだなあ)。こんなふうに引き返せなくなってしまうのは想像するだけで怖いです。
「髪禍」は一番嫌な物語でした。たぶん「髪」というだけでホラーの要素としては充分すぎるほどに恐怖を生み出してくれるものですが。ここまでくると何というか、怖いとか恐ろしいとか通り越して「嫌」としか思えません。ほんっとうに嫌だ。
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どのお話も、低空飛行が当たり前だった世界がじわっと激変(崩壊)(解放)していくので羨ましいと思いながら読んだ。物語はいいなあ。
「食書」、いちばんホラー的な怖さがあったが、ある意味夢の世界です。これがいちばん好き。副作用が強すぎるドラッグ&トリップ。怖いけど私も食べてしまうなあきっと…。「耳もぐり」も同様の感想。
身体や感覚に訴えかけてくるという意味で似た雰囲気が全ての作品に流れつつ、ホラー、ファンタジー、カルト、エロ(?)、ギャグ(?)など、多様な要素がそれぞれに散らばり光っていた。
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小田さんは多作ではないけれど、出す作品の一つひとつにインパクトがある。今作ももはやどこに連れていかれるのだろうかとヒヤヒヤしながら読んだ。セカイの底を覗いてみたくないかとは、言い得て妙。裸にさらされたり、鼻を剃られたり、女性にのまれたり…。
奇書だ、どうこの本の魅力を表せばいいか分からないけれど、どこかに連れて行ってほしい、日常から離れたい、そういった欲求を本という媒体で叶えてくれる。
なんて想像力、そしてこれらの作品を描き切る力、凄いとしか言えない。
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まるで洗濯機に放り込まれたようだ。それも手洗いコースとかおしゃれ着洗いとかではなく、念入りコースあるいはゴシゴシコース。
アタマから思いっきり水をかけられ、ぐるんぐるん回され、遠心力に振り回され、水を絞られ、また水をかけられ…7回つづくその破壊的渦。あぁ、そういえば「渦」と「禍」は似ているな、と思いながら。
アタマで処理できないこの読中読後の感覚。何て言えばいい。気持ちいいけど気持ち悪い、粘膜に効く感じ。なんだろ、わからないけど、渦のような禍は意外と心地よき。
共に堕ちろ、とささやく声が聞こえる。一番堕ちたのは「農場」。キツい。キツ気持ちい。そっと鼻を撫でる。
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「食書」★★★
「耳もぐり」
「喪色記」
「柔らかなところへ帰る」
「農場」
「髪禍」
「裸婦と裸夫」
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日常の隙間から突然に現れる怪奇譚。
口、耳、目、肉、鼻、髪、肌と身体のパーツをモチーフにして、奇想天外の想像力と技巧を駆使して紡がれる7編の不気味な話ども。
意図的に作り上げられてきたコロナ禍から抜けきれないでいるいまの日本人の姿を予想し、紡がれてきた禍譚ではないだろうか。
(内容紹介)shinchosha.co.jp から抜粋
セカイの底を、
覗いてみたくないか?
口、耳、目、肉、鼻、髪、肌……。
ヒトの〈からだ〉をモチーフに、様々な技巧でありとあらゆる「恐怖」と「驚愕」を紡ぎ、豊穣な想像力と巧みな文章力で読み手を圧倒する、超傑作短編集。
孤高の物語作家が放つ、中毒不可避の悪魔的絶品集。
「食書」
男はとある便所で、女と遭遇する。女は本を貪り食っていた。「一枚食べたら、もう引きかえせないからね……」女の言葉に導かれるように、家の蔵書を口にした男が視る光景とは――。現実と狂気の狭間で紡がれる言葉ロゴスの連打に酩酊必至!
「耳もぐり」
失踪した恋人の行方を追い、彼女が住むアパートを訪れた「私」。そこで隣人を名乗る男と遭遇し、奇妙な話の数々を聞かされる。男が目撃した秘技・耳もぐりとは、一体何なのか。彼女はどこへ消えたのか……。やがて明かされる真実に驚愕必至!
「喪色記」
視線への苦手意識を抱え、人生の底に這いつくばるようにしてひっそりと生きていた男の人生が、二十八を境に一変する。彼の“目”の前から忽然と一人の女が現れた。それは、少年時代に彼が夢の中で何度も心通わせた少女だったのだ。終末を舞台に繰り広げられる幻想的な筆致に感涙必至!
「柔らかなところへ帰る」
路線バスに乗りこんだ。晩の九時過ぎ、仕事帰りだった。「お隣、よろしいですか?」。しっとりと耳のふちを撫でるような女の声。はっとし、顔をあげると、大柄の肥えた女が満月のように白じらと頬笑み、たたずんでいた。嗚呼、あの肉に溺れてみたい――。果てなき欲望が押し寄せる悪夢的桃源郷に悶絶必至!
「農場」
死の観念に取り憑かれた宿なしの若者は、謎の老人に誘われるがまま“農場”とよばれる施設を訪れる。そこでは、バイオ関連企業からの依頼で実験的な作物を植えつけ定期的に収穫するというのだが……その苗とは、どうみても鼻だったのだ。地獄を世に現出せしめる、唯一無二の世界に呆然必至!
「髪禍」
「壊れかけた人生」を生きてきた女は、10万円の報酬金に目が眩み、“惟髪(かんながら)天道会”と名乗る宗教団体が執りおこなう〈髪譲りの儀〉にサクラとして参加する。身の毛もよだつ悪夢が待ち受けているとも知らず。想像を絶する悪魔的ヴィジョンに戦慄必至!
「裸婦と裸夫」
『現代の裸婦展』に向かう、うだつのあがらぬ三十男に突如、災厄が降りかかる。感染者に触れるとたちまち脱衣症状に見舞われる病〈ヌーデミック〉が爆発的に流行。大混乱に陥った車内を命からがら抜けだし、ビルの屋上へと籠城を図るが……。諧謔と奇想が乱れ飛ぶ、予測不能の展開に仰天必至!
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期待しすぎたか、ちょっと個人的には合わなかった。好きなお話は、農場。
全体的に想像を超えてくるのは期待しているが、超えすぎてどうも頭の中に靄がかかった感じが続く。流石に文章はグッとー引き込まれ読み進めるがどれもラストがなんだかという感じ。
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最初から最後までなんじゃこりゃ!の連続でした。いろんなタイプのなんじゃこりゃ(驚)なんじゃこりゃ(怖)。なんなんだ、いったい何を読まされてるんだ、でもすごい面白いかったです。どのお話も実に禍々しい。
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わたしのからだ、ぜんぶ禍
短編7篇。人の体ってよくよく考えたらヤバくない?というそのヤバさを小田さんが書かれたらこうなるんですね。
収録作品は前作『残月記』の収録作品と書かれた時期が前後していますが、小田さんテイストをさらに楽しめる1冊だと思います。
前作がお好みの方にはぜひ!と言いたいです。
食書
読書好きとしてはやってみたいような、いや無理か。能力としては似た作品に「“文学少女”シリーズ」がありますが、小田さんが書かれるとこうなるんですね。
耳もぐり
あの人になってみたいなぁなんて気持ちを捨てたくなります。あと耳掃除がちょっと嫌になるかも(笑
喪色記
ディストピアもの。映画っぽい。
柔らかなところに帰る
デブ専、の一言では片づけられない。最後のシーンはもみくちゃにされるお祭りを思い出してしまった。
農場
うわぁ嫌な仕事、と思ったけど動物や植物相手には毎日やってることでもある…。
髪禍
個人的ぞわぁっときたNO.1(私自身がセミロングヘアなので)。髪の毛って抜け落ちると途端にゴミに早変わりするものだと思っていましたがまさか○○になるなんて。いやぁ気持ち悪い(褒めてます)。
裸婦と裸夫
テンション高めのディストピア。新しい世界と新しい姿。不謹慎だけど話の中盤辺りは絵面を想像すると笑ってしまいました。
#禍 #NetGalleyJP
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暗い実に暗い話ばかりが七編も並んでいる。著者には申し訳ないが始めの第一編は面白くもない。第二編後半退屈、第三編色を失った鳶、第四編第五編は実に悍ましい、第六編人が羽化したなら殺虫剤で皆殺しに、最終章でほんの少し救われた。女性には読ませたくないな。しかしこれもいいかな。
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こんな物凄い作品はいまだかつて読んだことがない。想像しないことやこの世に存在しないことなどSF的発想で奇想天外で摩訶不思議、恐怖を感じるところもあれば心穏やかになるお話もあり読んで見なければわからない絶対おすすめ。狂気ありユーモアあり発想の転換あり全てを包み込んだ作品、読んだ後に考えさせられる不思議な作品集です。