予期せぬ結末の数々。
2024/03/09 23:59
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
耳、鼻、口といった人間の「からだ」をテーマに、未だかつて誰も見たことがない景色を見せてくれる本作。
各短編の主人公と共に読者である我々も全く予期せぬ、とんでもない結末へと一直線へと進んでいく。
日常の何気ない風景がほんの些細な違和感をきっかっけにどこまでも瓦解していく様は、おぞましいと感じつつも目をそらすことができない。
強制的に読者を歪な世界へと誘う、その吸引力、没入力は圧巻。
また本作は、映画やドラマといった直接的な映像表現を前にしても一切引けを取らない。
それほどまでに本作で描かれる光景は、我々読者の脳内に対して直接的に広がっていく。
自らの想像を遥かに凌駕する世界を体験する、それこそが読書の醍醐味であることを本作は思い出させてくれるのだろう。
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリ、サスペンス、ホラー、SF、ファンタジー、仄暗いものを全て凝縮した7篇からなる短篇集。
本を食べて異世界を共有したり、耳や目や鼻や夢から一体化したり、誕生前に還ったり。不安と猜疑心を持ちながらも、欲望から何かに縋り、そして溺れる。一種の中毒を描いた作品。
爆発的な脅威に晒される訳ではなく、底知れぬ恐怖がひたひたと付き纏う。もっとも対応に困る巧妙な禍。
「髪禍」の体から離れた途端、排泄物と化すような嫌悪感など、あり得ない世界の中にも共感を見付けてしまった。
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投稿者:はぐらうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず装丁からしてめっちゃ怖い。気持ち悪いとも違う、不穏な感じ。
7つの中短編集ということになるが、ぜんぶ怖かった。
最初の「食書」で、本好きのためのSFホラーということね、と半ば油断してしまったが、とんでもなかった。最後の「裸婦〜」がようやく穏やかに感じるほど。
内容を知ってたら手にとってなかったかもしれないが、あまり普段読まないホラーSFのような物語を読めて良かった。
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日常に思わぬ落とし穴があり、はまると抜け出せなくなる、なんとなくゾワリとする話が七話。
もっとホラーよりかと思っていましたが、ちょっと難解かつ気持ち悪い感じです。
理解できなかった
2024/05/07 13:22
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
これを読んで、何を感じろと?
良さが全然分からなかったなあ。
収録7作、10年に及んでるんだよね。
寡作なのか、なにか理由があったのか。
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こんな物凄い作品はいまだかつて読んだことがない。想像しないことやこの世に存在しないことなどSF的発想で奇想天外で摩訶不思議、恐怖を感じるところもあれば心穏やかになるお話もあり読んで見なければわからない絶対おすすめ。狂気ありユーモアあり発想の転換あり全てを包み込んだ作品、読んだ後に考えさせられる不思議な作品集です。
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小田さんは多作ではないけれど、出す作品の一つひとつにインパクトがある。今作ももはやどこに連れていかれるのだろうかとヒヤヒヤしながら読んだ。セカイの底を覗いてみたくないかとは、言い得て妙。裸にさらされたり、鼻を剃られたり、女性にのまれたり…。
奇書だ、どうこの本の魅力を表せばいいか分からないけれど、どこかに連れて行ってほしい、日常から離れたい、そういった欲求を本という媒体で叶えてくれる。
なんて想像力、そしてこれらの作品を描き切る力、凄いとしか言えない。
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わたしのからだ、ぜんぶ禍
短編7篇。人の体ってよくよく考えたらヤバくない?というそのヤバさを小田さんが書かれたらこうなるんですね。
収録作品は前作『残月記』の収録作品と書かれた時期が前後していますが、小田さんテイストをさらに楽しめる1冊だと思います。
前作がお好みの方にはぜひ!と言いたいです。
食書
読書好きとしてはやってみたいような、いや無理か。能力としては似た作品に「“文学少女”シリーズ」がありますが、小田さんが書かれるとこうなるんですね。
耳もぐり
あの人になってみたいなぁなんて気持ちを捨てたくなります。あと耳掃除がちょっと嫌になるかも(笑
喪色記
ディストピアもの。映画っぽい。
柔らかなところに帰る
デブ専、の一言では片づけられない。最後のシーンはもみくちゃにされるお祭りを思い出してしまった。
農場
うわぁ嫌な仕事、と思ったけど動物や植物相手には毎日やってることでもある…。
髪禍
個人的ぞわぁっときたNO.1(私自身がセミロングヘアなので)。髪の毛って抜け落ちると途端にゴミに早変わりするものだと思っていましたがまさか○○になるなんて。いやぁ気持ち悪い(褒めてます)。
裸婦と裸夫
テンション高めのディストピア。新しい世界と新しい姿。不謹慎だけど話の中盤辺りは絵面を想像すると笑ってしまいました。
#禍 #NetGalleyJP
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一旦ページを開いてしまったら
え、これからどうなるの?
と先が気になって止められない。
突飛な発想にもかかわらず
その状況や有様、そのときの感情なんかを
言葉を選ぶことを疎かにせず
丁寧に的確に表現しようとしているから
読んでいて戸惑うこともない。
その特異な禍の世界にはまりこんでしまう。
まるで本のページを破いて
むしゃむしゃ食べているように…「食書」
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すごい熱量のすごい作品を読んだ。
本を読んだ、というより読まされたような、独特の世界の中へ引き込まれた感覚。
非現実的なのにまるでそこで起きているかのような、圧倒的な熱量を感じました。
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耳からもぐる男、鼻から再生する人間、口に書物を含む女、生涯に渡って生える髪の全てを吸い尽くす女…
おぞましかった。人間の身体が題材になっているものはどうにもだ。
特に鼻、耳は普段から穴が開いている部分であり、何かが入り込んできても自ら出ていってくれない限りどうしようもない。そんなこともあって、私は髪を耳にかけるのを躊躇してしまう。
耳もぐりは抵抗のしようがない。簡単に乗っ取られてしまうだろう。乗っ取られる側は嫌だが、乗っ取る側は楽しそうに思えて来てしまい、ふと怖くなった。
どの話も、自分の身に起きたら恐ろしい、嫌な話だったが、恐怖感が無くなりさえすれば受け入れてしまえそうだ。
鼻さえ残っていれば亡者を甦らせることができたり、本の世界に肉体ごと入り込んで体験できたり、新鮮ではないか。
しかし、この著者の本は活字中毒者にはたまらないほど空白がない。どちらかと言うと遅読の私には読了するまで時間がかかった。
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まるで洗濯機に放り込まれたようだ。それも手洗いコースとかおしゃれ着洗いとかではなく、念入りコースあるいはゴシゴシコース。
アタマから思いっきり水をかけられ、ぐるんぐるん回され、遠心力に振り回され、水を絞られ、また水をかけられ…7回つづくその破壊的渦。あぁ、そういえば「渦」と「禍」は似ているな、と思いながら。
アタマで処理できないこの読中読後の感覚。何て言えばいい。気持ちいいけど気持ち悪い、粘膜に効く感じ。なんだろ、わからないけど、渦のような禍は意外と心地よき。
共に堕ちろ、とささやく声が聞こえる。一番堕ちたのは「農場」。キツい。キツ気持ちい。そっと鼻を撫でる。
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とりあえず読了したけど、なかなか進まないし、独特な世界観にも入り込めなかった。想像力が凄くて感心はしたけど、私には合わなかったなぁ。
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奇妙極まりない7つの短編集。絶対に普通の日常が描かれることはないと分かっていて、読まずにはおれない誘惑に負ける。読んでいる間も読み終えてからもゾワゾワした気持ちがおさまらず、しばらく脳裏から離れない。分かっているつもりで構えてたけど、想像を超えていた。なんだか、そこまでを全てひっくるめて期待して読みたくなっているのは今回も同じか。また次も同じ気持ちで読みたくなるのだと思う。
以下はあらすじを省いて、簡単な感想のみ書きます。
「食書」
読み進めると、ちょっと恐怖を感じるが、体感してみたいとも思えてしまう。そんな戻れなくなる世界。最後の一行はなかなかに辛辣。
「耳もぐり」
終始、主人公の語りで綴られるのだが、状況が分かってくると意識が揺らいでくような感覚になる。恐怖とは少し違うのだが、不穏極まりない。
「喪色記」
世界の終末を迎えるのだが、暖かな気持ちになる結末に少しホッコリとした。ただ、内容はやはり相当に不可思議。
「柔らかなところへ帰る」
今までの物語よりは、現実的かと思っていたが、甘すぎた。欲望の行き着く先はとんでもない世界だった。
「農場」
禁断の行為も軽々と予想を超えてくる。まるで崇高な行いであるかのように錯覚するが、異様な世界であることに違いはない。
「髪禍」
極めて奇想。しかし、心酔する者からすれば悦びである世界の異様は、なにも物語に限ったことではないとゾッとする。
「裸婦と裸夫」
途中ちょっと可笑しく感じて、最後は少し笑える話なのかと思ったが、やはりこれも甘かった。ただ、この世界の終末も少し暖かな気持ちになる物語で、未来を見たいと感じた。
現実と地続きかのような混乱と恐怖、世界の終末、信仰の行き着く先、など内容は色々で、奇想的な物語はどれも心穏やかに読めないのだが、どうにもクセになる。
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小田雅久仁先生、なんて中毒性が高いんだ…!
2023ベストに入ると思う。
「残月記」の時もそうだったけど、ボディブローのような嫌さや怖さがずっと続いて、結果的に小田雅久仁先生作品のことをずっと考えてしまう。
この「禍」も各小説が全て人間の身体のあるパーツをモチーフにしている時点でなんか生々しくて怖いし、全体的に嫌・怖い・気持ち悪い・エロい・グロいっていう負の雰囲気がまとわりつく短編たちなのに、それを描く文はなぜかものすごく美しいことよ。
美しい文が集まってるのにこんな気持ち悪い作品になるんだって感心してしまう。
その文の美しさも、美麗にゴテゴテ飾り立てたって感じではなくて、シンプルな単語選びでスッキリ美しいのもため息です…。
どの短編も前述のように全体的に不穏で嫌だったり気持ち悪いトーンなんだけど、絶対に「気持ちいい」「心地よい」「快感」と感じられる(登場人物が感じてる)場面があるのが面白い。
だから自分も流されて錯覚して、(これはもしかしたらいい話だったのかもな)と思って、パタンと本を閉じると、タイトル「禍」。
ですよね…。