ハンチバック
著者 市川沙央
私の身体は、生き抜いた時間の証として破壊されていく「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」圧倒的迫力&ユーモ...
ハンチバック
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商品説明
私の身体は、生き抜いた時間の証として破壊されていく
「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
圧倒的迫力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた、第128回文學界新人賞受賞作。
打たれ、刻まれ、いつまでも自分の中から消えない言葉たちでした。この小説が本になって存在する世界に行きたい、と強く望みました。
――村田沙耶香
小説に込められた強大な熱量にねじ伏せられたかのようで、
読後しばらく生きた心地がしなかった。
――金原ひとみ
文字に刻まれた肉体を通して、
書くという行為への怨嗟と快楽、
その特権性と欺瞞が鮮明に浮かび上がる。
――青山七恵
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす――。
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問われているのは私たち
2023/08/16 18:48
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第169回芥川賞受賞作。(2023年)
作者である市川沙央さん自身が重度の障害者であることから、多くの注目を集めた作品である。
描かれた作品の主人公もまた重度の障害者で、「私はせむしの怪物だから」と作中に出てくる。「せむし」という言葉に「ハンチバック」というルビがつけられ、それがタイトルにもなっている。
それを自虐と呼ぶか、突き放した言い方というか、微妙だし、そのことの微妙感がこの作品をどう読むかという境界線ではないだろうか。
障害を持った主人公の女性が「妊娠と中絶をしてみたい」と願うことは、障害者である前にまず人間としてありたいという実に単純なことだ。
つきつめれば、これは人間の本質が書かれた作品だといえる。
男だろうが女だろうが、健常者だろうが、障害者だろうが。
だから、作者が障害者だから書けた作品には違いないが、書き手として想像の翼を広げれば書きえた作品ともいえる。
芥川賞の選評で、平野啓一郎氏が「当事者性が濃厚な作品だが、(中略)今後の自由な展開の期待」と書いていたが、おそらくそれこそ市川さんの受賞の大きな意味だろう。
多様性を認めうる社会にあって、市川沙央さんの作家性は必ず求められるはずだ。
ただ、その一方で過激な性描写について、松浦寿輝氏が書いているように「露悪的表現の連鎖には辟易」という意見には私も同じだ。
そこまで表現することがあったのかと思わないでもない。
抜きん出た才能を感じる
2024/10/23 11:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞受賞作ですが、予想以上に現代文学でした。読み手を想定してないような最新の用語を惜しげもなく並べているかと思えば、古典的文学かと思うほど重厚な深い文章があったりで、その辺りは一種抜きん出た才能だと思いました。生々しさという点でも突き抜けていて、病気や精神状態の描写に制限なく、ある意味非常に丁寧に描かれていると感じました。この作品の本質を理解するには至りませんでしたが、さすが芥川賞に選ばれるだけの作品だとは思いました。
「ハンチバック」って?
2024/10/03 13:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタばれ
第169回芥川賞受賞作品、タイトルの「ハンチバック」はいわゆる「せむし」のこと、作者自身も筋疾患先天性ミオパチーにより症候性側弯症を罹患している、背骨がかがまって弓なりに曲がる病気だ。主人公も同じ病を罹患している、読む前は難病を克服するために努力する美談かなと思っていたのが、そんな愛に溢れた作品なぞではなかった、「せむしの私は嫌な男の子供を受胎して中絶したい」という願望を持つ主人公の話なのだから。しかし、ラストの数ページで主人公が入れ替わる、このラストをどう解釈すればいいのか、何度か読み返してみて自分なりの結論を得た、あの「コンビニ人間」にも通じる気味の悪さがここちいい。しかし、気味悪いだけではなくてところどころに作者の笑いのセンスも読みどころ(文科系の人に対する毒舌等)
ショックを受けた
2024/07/14 10:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
電子書籍よりも紙の本が好きなわたしはショックを受けた。そうか、このこだわりも本の重さに苦しむ人には思い上がりなのか。
著者の実体験をも思わせる生々しい記述に圧倒されつつ、虚構であると解っている文章の達者さにも息を呑み、最後にあれ? どこまで騙されたている? と驚かされる。
読み手を驚かせ、楽しませる著者の力量と人生を見詰める冷徹な視線に、感じ入った。
生きるとは
2024/06/05 02:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:本が好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の稚拙な表現力を持って伝えるより、作家の金原ひとみの評価をここに紹介しておきたい。「小説に込められた強大な熱量にねじ伏せられたかのようで、読後しばらく生きた心地がしなかった。」衝撃的といえば衝撃的な作品なのだが、これを衝撃的と思ってしまう我々一人一人が作者に、生きるとは何か、無意識の優越感や軽蔑を抱いていないかを問いかけられている作品。最近読んだ本の中では圧倒的に印象的。多くの方に薦めたい。
すごい本を読んでしまった
2023/08/23 11:25
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
すごい本を読んでしまった、という素朴な第一印象が口をついて出るのは、その実、描かれている世界が特殊なように見えて、現代社会をまんま映しており、その根深さに気づかされるからだ。
難病による重度障害者の視点から、この世に横たわる多様な偏見/ステレオタイプを、皮肉と自虐で浮き彫りにしていく。彼女の視点から、この世の中のあらゆるマチズモ(優位主義)が露わにされ、読む側も、自分自身のアンコンシャスバイヤスやアンコンシャスマチズモ(男性であることの優位性といった意味だけだけでなく、例えば健常者であることのマチズモなど)に気づかされる。
本書は、性と生が大きなテーマではあるが、性的な描写などに嫌悪感を覆える人はいるだろう。
それは恐ろしくも現実である
2023/10/22 21:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:狂ったチワワ - この投稿者のレビュー一覧を見る
障害という生涯の、人を読む事ができた。
傑作であり、感情が爆発する感じがとても生きていると思った。
p.83 以降が何か 唐突だ
2024/11/25 21:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
第169回芥川賞受賞("市川沙央".ウィキペディア.参照)。主人公の井沢釈華は43歳のせむし(ハンチバック)女性で、ウェブ上で文章を書いたり大学に所属したりして社会とつながっている。そんな障害を持った女性の視点から、読書や性に関することが書かれている。
2.評価
(1)本書は当然電子書籍で読めるが、筆者は本書を紙で読んでおり(レビューのルールには違反していないはず)、他の本もたいてい紙で読んでいるが、障害を持っている人からすればそれがつらいことであることに気が付かなかった。出版に関わる全ての人は、本書を熟読して、読書のバリアフリー化を推進すべきだと思った。
(2)本書は読書のことばかり書いてあるわけではなく、障害者の性に関する記述が多めで、健常者である筆者には気が付かないことであった。ただ、p.83-p.93の部分と他の部分のつながりがよく分からなかった(いろいろな名前を用いて活動しているということなのだろうか)。
(3)以上、全体として5点、p.83-93の部分と他の部分のつながりが分からなかった点で1点減らし、4点とする。
色々な読書
2024/05/28 22:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ももも - この投稿者のレビュー一覧を見る
紙媒体での読書が困難であることを、近い時期に読んでいた別作品や記事でも目にすることがあり、本作や著者の話題から注目されるようになったのかと思う。
殺人犯が出てくる作品を読んでもその著者と殺人犯を重ねて読むことはないが、本作は主人公と著者を重ねて読んでいることに気がつきその境界はどかにあるのかなどと考えた。
作者が何を一番に伝えたかったのかを考える。
2023/09/08 22:01
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
一番なんてないと思うんだけれど、目の前にいる同じ時間を生きる人間と向かい合った時、その人自身と会話をすることが大切だと思う。それって、障害や年齢や文化に関係なく、私を私として認めてもらうことで、苦しい時に私が一番欲しいものだ。正直、当事者の苦しみを理解できるとは思わない。だけど、その周囲に生きる者として、一緒に生きる方法を考える。
誰もが自由に読書をできる「読書バリアフリー」化の実現を強く意識しました
2024/05/01 12:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:WakaWaka - この投稿者のレビュー一覧を見る
序盤から性の過激な描写で驚きましたが、考えさせられることが多く心を揺さぶられる内容でした。
ラストシーンは読書後に色々な考察を見たのですが、それでもよく分からなかったです。それぞれで自分なりの解釈を持って良いのだと思います。
筆者が作中で強く訴えていた「読書バリアフリー」について日本は遅れているとのことですが、日本の「読書バリアフリー」化が少しでも加速するよう切に願っています。
壊れながらも生きることの意味とは。
2023/10/02 21:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みつる - この投稿者のレビュー一覧を見る
障がい者である作者の、健常者であったなら。
という思いが、多く見られました。
障がい者であるだけで、恋愛や結婚の相手に見られない現実は、無くなることはありません(減ってきているかもしれませんが、無くなったわけではない)
"私の身体は生きるために壊れてきた。
生きるために芽生える命を殺すことと何の違いがあるのだろう"46頁
莫大なお金があっても、できないことがある。
お金より幸せなこととは何かを、問われているようでした。
あというま
2023/08/22 21:57
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:玉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あっというまの通読でしたが、評判のほどには、心をうごかされませんでしたね。
最後の転換も、何かきちんと読まないと、真意にはたどりつけないのでしょうね。
それまでは、感心しながら読んだのですが、無念です。
賞の意味
2023/08/14 16:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の伊沢釈華は、身体に障害を持ち、グループホームで生活している。両親の遺産がたっぷりで問題はなく、通信制の四大に籍を置く。出産は臨めないが妊娠、そして堕胎の願望がある。そうしたことを書き綴った小説をサイトに投稿しているうち、男性ヘルパーに自分の存在、考えを知られてしまう。まずは実録私小説と言った按配。次回作から果たして、どんな純文芸が書けるのか。受賞作は話題性先行だけに。
信念・信仰・伝道
2023/07/23 01:16
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろんどん - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説と批評の中間のような作品というか、小説とプロパガンダ(いい意味でも悪い意味でもなく)の中間というか、そういう読み物を読んだという読後感だ。物語として批評したり感想を言ったりするのがしっくりこない(これは褒めていない)。
感想をここに書くにあたって、「市川沙央・荒井裕樹 往復書簡」も読んでみた。それを読んで思ったのは、多分私がこの小説を好きになれないのは、作者の根底にある「生命への賛歌」「生きることへの肯定」への拒否感があるからだ。
その点に共感する読者はこの小説を肯定的に捉え、強く響くのかもしれない。
私には響かなかったので「あらはないけれど刺さるところもない、欠点も美点もない作品」と感じた。
作者は伝道として書いているのかもしれない。私はそういった物語を歓迎しない。
1点か2点か迷ったが、1点は読んだ人の人生を損なうような本に与えるべきだろう。この本は問題提起もしているし、読者のためになる視点や知識も提供しているし、読んだ人はそれぞれ得るものがあるだろうからプラス1点。