アルバイトで相手をするのは彫刻
2023/09/28 16:31
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学でラテン語の講義を受け、ラテン語での会話ができるホラウチリカは恩師からの紹介で、休館日に私設の美術館でヴィーナスの彫像の話し相手を務めるアルバイトを始める。
突拍子もない設定ながら、すんなりと話に入り込める。ホラウチリカは人には見えない黄色いレインコートに身を包み、外界から自分を遮断していた。人ならざるヴィーナスとの関わりがリカに違った扉を開かせる。
不思議であやうい展開となる。
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰も触れない静謐な純文学。人には見えない黄色いレインコートで自分を護る主人公が、休日の美術館でヴィーナス像とラテン語で愛を育む。ただただ凄い世界に迷い込んでしまった。永遠を生きる無機物と、瞬間を生きる有機物が、極限まで歩み寄り自由に手を伸ばす。かなり不可思議な設定なのに、慎ましやかに交わされる何でもない会話すら神秘的で、美しく響いた。受け入れる準備がなくても、当たり前に証してくる世界に溶け込む不思議な感覚。
普通ならコミュニケーションを取れない石像と、言葉を持ちコミュニケーションを取れる人間。果てしない欲求を溜め込むと、出来ない事も出来るようになるのかもしれない。反対に、容易く出来る事には頓着しなくなるのかもしれない。変わらないものの安心感と不安感、衰えゆくものの軽重、際限ない世界からの圧を独特に彩った傑作。
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他の人には見えない、黄色いレインコートで守られたホラウチリカ。ラテン語が堪能な彼女は、大学時代の教授の紹介で、週に1回博物館でアルバイトを始める。その仕事とは、ヴィーナス像とラテン語で会話をすることだった……。
なかなかに異常なシチュエーションを、当たり前のことのようにさらっと書いてしまうのがこの作家のすごさだ。レインコートは、人に心を開けない彼女の隠喩だと理解して読んでいたが、そういうわけでもなさそうで……。
この物語自体をどう解釈するか、なかなか難しかった。
刊行日2023/03/16、NetGalleyにて読了。
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新しいアルバイトの場所は美術館、仕事内容は話し相手、アルトよりの声を持つ女神の彫像の。
落ち着いた美術館で彫像とお話ができるなんて夢のまた夢、を味わうことができて本当に楽しかったです。著者さんは本作が二作目ということですが「すごい人が出てきた」というのが率直な感想です。
不自由さを身に纏っているのは自分だけ、それに合わせて生きているし生きていくと思っていた女の子たち。彼女たちの友情と愛情ができるかぎり続きますように。
#休館日の彼女たち #NetGalleyJP
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クセは強いが、読んでいて何故か癒やされる作品だった。ラストに向けての展開が好みで読後感も良かった。
「ラテン語が話せる主人公が、美術館のヴィーナス像と話をするアルバイトをする」という発想は天才的。
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なんかすごい作家さんに出会ったしまったな...(絶句)...。
これは一体?
一回読んだだけで感想を書いてしまっていいものか迷う。
『コンビニ人間』を読んだ時の衝撃に近いものがある…。
ホラウチリカが唯一心を通わせるのはヒトではなく、美術館のヴィーナス。
彼女が纏うのは、世界から身を守るように厚みを増す、他人には見えない黄色いレインコート。
でも、本当はだれもが皆、何かをまとっている...。
生きるために身を置く倉庫の職場と、心を放つために訪れる休館日の美術館。
その対比が何よりも鮮明にホラウチリカを語っているように感じた。
2023.6
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なんとなくタイトルに惹かれて。美しくもゆったりと描かれたヴィーナスの苦痛な人生。
久しぶりに美術作品に触れられていい時間だった。
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題名につられて、読んだものの思っていたものと、少し違っていた。途中髪をカットしに行った、葬儀やの美容室がすごーく気になった。
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夢を見ているような、不思議な読書体験だった。
主人公からみた現実世界の温度や色彩に頷くところもあり、、、その表現が的確で没頭した。
美容院行く時のシミュレーションする気持ち分かるなぁ。でもそれをいい意味で裏切っていく美容師(?)さん、良かった!
気づかないけどみんな何かを纏っていて、自然と自分を守ったりしているのだろうか。
本のカバー外したらピンク一色だったのが、心に刺さった。なんでもないけど、きっかけってどこにあるかわからないもんだなぁと思う。
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こんなケッタイな小説読んだ事ない。
物事をどう見たらこんな文章になるんだろう。
話があっちこっちに飛ぶような、事象を裏側から見てるような、それでいて話は進んでいく。
一体この話はどこに行くのだ?何処に収斂するのだ?と思ったら素晴らしいラストが待っていた。
どうやってヴィーナスを盗み出したのが具体的描写が全くないので不明だが、しかも台車に乗せたくらいでヴィーナスと一緒に飛行機に乗れるのか。
それにしても爽やかなラストであった。
癖になりそうな変な小説。
デビュー作も読んでみようかな。
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新聞書評で見かけて気になっていた本。
何やら不穏な設定に馴染むのに少しだけ時間がかかったが、黄色いレインコートに身を包んでいるぎこちなさと不快さを自分も肌に感じながら、ラテン語を日常語のように操る主人公とともにヴィーナスの元へ通ううちに、だんだんとだんだん楽しくなった。
冷凍倉庫でのバイト、ハシバミという名の学芸員(整った容姿の)、隣の部屋の小学3年生、大家のセリコさん(「う」と「い」の音が抜ける人)、隣の部屋でポルトガル語講座を聞いているトド、葬儀屋を兼ねている美容院…
おもしろかった。
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リカさん、セリコさん、トウマくんは社会的にな弱い立場かもしれないのですが、お互いの弱さがよく見えているゆえに関わり方が適度に距離があって良い具合です。ところが、リカさんとヴィーナスの関わり方は突拍子もない。先にサービスドッグ、ファシリティドッグの活躍する本を読んで犬には擬人化するに値する底力があることを思い知ったものの、この小説では、彫刻の苦悩に共感することになるとは。芸術に対するサービス人間、ファシリティ人間は、関わり方によって幸不幸がありました。
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『空芯手帳』が良かったので、同作を手に取った。
ホラウチの新しいバイトは、休館日に美術館のヴィーナスとラテン語で話す事。そんなホラウチは、常に黄色いレインコートを着ている。
煙に巻いた訳の分からない設定だが、笑いながら読んでいるうちに真顔になり、最後はまた微笑んでしまう。誰しもコートか何かを着ているし、ヴィーナスの憂いも深刻だ。
癖になる作風だ。
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夢みたいに
ばらばらなアイディアと
存在しない時空とが
共存してた
倒置法が多くて
日本語読んでるはずやのに
置いてかれて息苦しい本やった
そのくせ
想像通りの展開で
『苦い現実から救ってくれるヒーロー』
っていう甘ったるい加工物に
酔いしれる物語が怖かった
何度も忘れる
女の子とヴィーナス像の話
だってお前に言っても、意味ねぇからな
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喋る石像や脱げないレインコート。そんな不思議に最初は戸惑いながらも、最後はじんわりとあたたかい気持ちで読み終えた。
何だか私もインナーカラーを入れたくなった。