いろいろ楽しめる短編集
2024/11/07 17:22
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投稿者:なお - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙がきれいなので紙の本購入。
表題作が良かった。こういう話の場合、そんなにうまく行くはずない!と大抵はしらけた気分になるのだが、この作品は、違った。
ずっと主人公を応援してあげたかったし、10年後の展開が本当にうれしく、ホッとした。
そのままの気分で他の作品を読んで行くと、良い意味で次々に裏切られる。クラスメートを密かに同輩と呼び、膝の傷を大事に育てる幼稚園児は、その10年後、20年後を見てみたいし、怪しげなパワースポットへの旅行案内を読んでいると、アメリカならこんな場所が本当にあるかも、と思わされる。
ガゼルの話では、最後に感じた開放感のようなものが凄かったし、行列の話には、人間の価値観の違いから生じる日常の様々なあるあるが、行列という行為に全部詰まっている気がした。
その他の話もそれぞれ面白く、1冊でいろいろ楽しめた。
ただ、ルールブックは、違うパターンで何度も読みたくなってしまうのが困った。
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投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「この世にたやすい仕事はない」を読んで面白かったので、同じ津村記久子さんの本を。
短編9編の中で、表題作「サキの忘れ物」が一番好きです。あと「隣のビル」。どちらも終わり方がよくて、前向きになれます。
色々な人生を体験できる
2024/06/20 11:41
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投稿者:amami - この投稿者のレビュー一覧を見る
色んなテイストのお話が楽しめる短編集。
津村さんの中には何人の人が住んでいるのだろう?と思うくらいそれぞれの年代や男女の書き分け、人を観察する力がすごいなと思う。どの人もいそう!と読み進めるたびに驚く。
ゲームブックを久しぶりに読んで懐かしさとワクワク感で何週もしてしまった。ゲームブックはまだあるのか?最近見なくなった物の一つ。
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投稿者:ゆかの - この投稿者のレビュー一覧を見る
たぶん初めての津村作品だと思うのですが、なんというか不可思議な話を書かれる方なのだなぁという印象でした。
普通な話もあるけれど、どこかズレていたり、奇妙だったり。
行列はストレスの溜まる内容ながら、ラストにはそれを忘れるような雰囲気でよかった。
ゲームブックは純粋にワクワクしました。
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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
おもしろいと思える話はなかったかな。
本屋さんって、興味のない人が働けるようなところじゃないと思うんだけどな。
キツくて続かないでしょ。
1冊の本がきっかけになって好きになったのかなあ。
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昨年からゆっくり読み進めた。
なんてことないけどたやすくないことを、ここまでリアルに書けるのすごいな。境界線の曖昧さを飛び越えたときのような清々しさ、ちょっと寂しさを感じた。
つめたいけど優しい不思議な短編集だった。
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内容に毒々しいものはないのだが、なぜかその中にもユーモアが溢れている。癖のない文体になぜか注目してしまう。
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津村作品の好きなところ。
少ししんどい(けどまだ本人は耐えられているのがミソ)状況に、フッと風穴が開くところ。
名前も知らない隣人(街の人くらいのニュアンス)が、その風穴を開けていくところ。
風穴が開いたその瞬間、私たちの人生に活路が生まれる。行き止まりだと感じていた道に、分岐があることに気付く。
本作も、表題作『サキの忘れ物』ほか、好きだな〜と感じる作品が並ぶ。主人公だけでなく、読者の生活にも風穴を開けてくれる。
さらに、挑戦的な構造の作品がいくつかあり面白い。
読まれる際は、ペンと紙をお忘れなきよう。
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解説も含め一つの作品だった。自らの読解力では落とし込み、腹落ちしなかった部分も、都甲幸治さんの解説で納得行った。たしかに「境界線を越える」がキーワードだった。繋がりのない短編集だと思っていたが、すごく納得。
わたしもサキの短編集読んでみたくなった。
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津村さんの作品を2作ほど読んで、この方は日常のほんの一ミリの感情を、私たちにこうだよね?と示してくれる作品が多い気がする。
確かに、そうかも、と思いながら読む作品が多い。
個人的には「王国」と「ペチュニアフォールを知る二十の名所」が好き。
私も変わった子だったので、「王国」のソノミの行動や考える事が自分と面影を重ねて読んでしまっていた。
「ペチュニアフォールを知る二十の名所」はプチミステリー感があって面白かった。
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最近ひそかに気になっていた津村記久子さんの短編集。
むむ、この人、うまい・・・!好きな作家さんのひとりになりそうな予感。
収録作品は9作。全て、全然違うんだけど、全部おもしろくて(ガハハと笑うという意味ではなく、お話として、という意味)、全部「うまいな・・・」と思ってしまうものばかりだった。
「サキの忘れ物」
病院併設のカフェという失礼ながらあまりパッとしないところでバイトをしている主人公の淡々とした日々が、お客さんが忘れた本がきっかけで動き出す。「サキ」というのはその本の著者。ドラマチックに描かれていないのに、「え、すごい」というところに着地する。淡々とそこに向かっていく、その「淡々」がよかった。
「王国」
こういう、小さい子を主人公とした小さい子目線のその子独特の世界を生き生きと描ける人を心底尊敬する。似たようなものを読んだことがあるような、なかったような気になりながらも、とにかく尊敬する。素晴らしい王国だった。
「ペチュニアフォールを知る二十の名所」
これまた、おもしろかった。こういう形式のお話はあまり読んだ記憶がない。「ペチュニアフォール」という街への旅行をお客に勧めているであろう旅行代理店担当者(と思われる人)の語りだけで進んでいく。ふんふん、と大人しく聞いているとどんどんと「ペチュニアフォール」の怪しい黒歴史が紐解かれていく。架空の街の架空の歴史、大いに楽しませてもらった。私はすっかり「お客」だった。
「喫茶店の周波数」
これは、なんでかすごくおもしろかった。(←さっきからそればっかり)お気に入りの紅茶専門店兼喫茶店が閉店するということで、閉店二日前になんとか入店する主人公。この主人公は、喫茶店の周りの人の話をラジオのように楽しむ癖があり・・・。あんな客がいたな、あんな会話をしていたな、と思い出したり、今隣にいる客の話にじっと耳を傾けたり。ある時は、全く意味を待たないというか生産性のないことばかり言う隣のテーブルの若者にげっそりきて、「私はこの国の将来を憂い、無性に国籍を変えたくなった。」とあり、思わずブハっと笑ってしまった。他にも、まだ注文を迷っているという時点なのに、忙しくしている店員を呼びつける隣のテーブルの女性客がその店員に何を注文しようか「まよってる」というようなことを正直に言うと、「まよっ?」と驚愕する主人公。これにも思わずクスっと笑ってしまった。作者の津村さんの笑いのセンスの良さも感じられる。お話自体はただそれだけなんだけど、無性に、おもしろかった。
「Sさんの再訪」
これまた、あっさりスッパリした終わり方に「そこー?そこかぁ。そうきたかぁ。」と感心してしまった。いや、うまいな、津村さん。(←全然説明できていない)
「行列」
これも津村さんの力量がよくわかり、「う~ん」とうならされたお話だった。東京五輪以来初めてお披露目されるらしいあれを見るために長蛇の列に並ぶという話。あれがなんだかわからないからか、自分が知らない未来の話か、SFのようにも感じられ、自分でもちょっと不思議な感覚だった。私だったら言語化を諦めてし��いそうな状況を文字に落として説明して、このあれを見るための長蛇の列がどんなものかをすごくうまく読者に伝えてくれる。動きの少ない行列なのにやけに臨場感があった。そして行列のほぼ前後だけという狭い空間での人間模様がまた興味深かった。ちょっと嫌気がさすほど人間味にあふれていて、行列に並ぶ疲労感が味わえた。
「河川敷のガゼル」
河川敷に突如ガゼルが現れた。そんな驚きの出来事に町も人も浮足立つが、なんだかずっとグダグダしている。ガゼルをそのままにグダグダしている。ガゼルというあまりあり得るとは言い難い生物の出現の割には、地味に低いところを進んでいくようなお話で、ある意味新鮮なお話だった。余談だけれど、ガゼルをはっきり認識しようとググってその顔を知った翌日、PCを立ち上げたら、ログイン画面にガゼルが現れてびっくりした。ランダムに色んな画像が表示される仕組みとはいえ、とりあえず、「お!ガゼル!」とびっくりした。
「真夜中をさまようゲームブック」
これはゲームブック形式の小説だった。ゲームブック形式のお話なんて初めて読んだ。始めの注意書きを無視してメモを取らずに読んだから、何度もゲームオーバーしてどこからやり直したらいいのかと、ウロウロしてしまった。やっとクリアしたけど、気になるので、(当然)全部読んでみたら、もっといいクリアがあった。悔しい。ゲームだった、本当に。
「隣のビル」
上司が嫌なやつで、それでなんか仕事に戻りたくなくて、いつも眺めていた隣のビルに衝動的に飛び移る女性の話。と書くと変な話に思えるけれど、変な話なんだけど、なんかとても良い。未来が明るそうな終わり方で、そうだよ、そんな仕事続けるくらいなら、隣のビルに飛び移ってしまって、吹っ切れて良かったんだよ。と、ちょっと胸があつくなった。変なお話が「変」だけで終わらない。なんかすごい、津村さん。
全部の短編に何かひとこと感想を言いたくなる本でした。とても良かったので、津村記久子さん、これからも注目していきたいです。
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感想
誰かが残していった。歯車の隙間に挟まった。ちょっとした出来事だったけどそれがきっかけになる。きっかけを見落とさないように。
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表題作の「サキの忘れ物」
「一冊の文庫本が、18歳の千春を変えてゆく」
という帯を見て羨ましいな、と思い手に取った。
若い頃から本を読んできた人からしたら、18歳は遅いのかもしれないけれど、私はもっと遅くから本を読む習慣ができたので、18歳でも人生を変える出会いがあるなんて羨ましい。
千春のバイト先の菊田さんの様に、普段本の話なんかしないだけで、本が好きな人って身近にいるのかもしれない。
「喫茶店の周波数」は好きな話。『静かにしてれという要求の代わりに、席が隣り合う人には、面白い話をして欲しいと、思う。』と主人公が思うシーンがあるが、勝手な意見なのに妙に納得してしまう。
「行列」は何だかずっとイライラする。この主人公は喫茶店の彼か?と想像しながら案の定何の行列かは最後まで分からない。
「真夜中をさまようゲームブック」は楽しく挑んだが、やっぱり途中死んでしまったりしたので、やり直して、やっと終わった。他の結末もあるのだろうから、今度違う選択肢で進めてみたい。
基本的には作者らしい?不思議な話が多かった。
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津村記久子さんはいつも仕事、職業、職場を舞台として女性を書く作家というイメージ。正社員であれ、派遣社員であれ、パートやアルバイトであれ、そこで生まれる微妙な違和感や居心地の悪さを、そして多くはそこから救われる瞬間を描いているように見える。
違和感なのでひどく辛い世界ではない、しかしそのどん底に落ちていくのは辛い、そこから誰かの助けの手や、ちょっとした気づきで、ちょっと救われる。
そういう意味では表題作の「サキの忘れ物」は違和感以上の不幸の中に主人公は落ち込んでいるし、そこから抜け出す流れもちょっといつもの津村記久子さんの作風とは異なる気がするが、作品としてはやはり一番読後感が良い。
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共通テストの過去問に「サキの忘れ物」が使われていて、その問題で満点を取れたのが嬉しかったので買った
サキの忘れ物は高校を中退して病院のカフェで働いている主人公が忘れ物の小説をきっかけに本を読み始める話だった
空気の湿度とか温度とかにおいが伝わってくるみたいで読んでいてここちよかった
その他にもすりきずを毎日観察する園児の話とか観覧無料の展覧会を12時間待って見に行こうとするお話とかが収録されていた
感情がすっきりはっきりしていなくて頭と心の中で混ざって変化していく過程が伝わってくるようだった
雰囲気がとてもよかった