長いものに巻かれないように
2023/11/03 22:00
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えると、戦争に関する深い思索が必要だと思い知らされた。第二次大戦末期、ドイツのある地方の村に住む十代の人々が、村の近くに作られた強制収容所の存在に気づき、そこでの虐殺が減るように行動を起こすことで物語が進む。群衆という集団性の中に埋没し同時に個々人の人間性も埋没させてしまう戦時下、見たくないものを視ず、知らないふりをする人々、そして戦後も自らは、戦争に加担しなかったという人々の存在が、戦争を失くさない。人が受け取ることができる個人のあり方はほんの断片であり、自らの作り上げた虚像を眺めるのみだった。
戦争を起こす政治があり、それを容認する人民がおり、知らないふりをする人民がいる限り、戦争はなくならない。そんな政治に厳しく批判の言葉を叫び続ける人にしか、平和を求められない。
ファシズムに抗して
2024/04/03 17:07
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次大戦のさなかのドイツ、父を喪ったばかりの少年ヴェルナーの前に現れたエルフリーデとレオンハルトは少年をエーデルヴァイス海賊団へ誘う。
緊迫する国内情勢と規範から外れた少年少女の抵抗。
前作では第二次大戦中のソ連、今作ではドイツが舞台。
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
自作の歌って、どんなふうにして広まったの?
そんな簡単に覚えて歌えるようになる?
戦時中にしては、ずいぶん生活が緩くない?
デビュー作が時流に合致して、想定外の売れ方をしたんだろうけど。
ずっとこの路線で書いていくのかな。
だとしたら、正直飽きられると思う。
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前作とはまったく違う読後感。
第二次大戦下のドイツが舞台ではあるけれど、彼らの抱えている悩みや生きづらさ、自分の在り方に迷う様は、現代にも通ずるものですごくリアルだった。
過去の戦争の中にあった悲劇や事実を忘れてはいけないと突きつけてくる現代パートは秀逸。
戦争描写は薄いので、戦争モノが苦手な人でも読めるのもよい。でも綿密な調査によって事実を取り入れ組み立てられた構成によって、戦時下の状況も知ることができる。
次回作も楽しみ!
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前作の「同志少女〜」が想定以上に面白かったから、期待し過ぎないようにしてたけど、その期待を裏切ることはなかった!
ナチの支配下にあった普通の人々の保身故の残酷さ。戦争の恐ろしさを再認識。
次作も楽しみ。
印象に残ったクリスティアン先生の言葉。
「人が受け取ることができる他人のあり方などほんの断片であり、一個人の持つ複雑な内面の全てを推し量ることなど決してできない〜そして自らの作り上げた虚像を眺めることで、他人を理解したつもりになる」
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期待がとても高かったからか、前作ほどの衝撃は感じられなかった(それでも考えさせられる小説だったことには変わりないけれど)。
作者は、ロシア側から描かれた前作で敵であったドイツ側の物語を語ることで、物事を一面的に判断すべきでないという理念を体現しているのではないかと思った。この2作を合わせてやっと作品が完成するのではないだろうか。
都合の悪いことには目を逸らして、その犠牲のもとに快適な暮らしを享受するという人間の弱さは私にもある。私はこの矛盾に気がついていたけれど、それは曖昧な認識でそれすらも見て見ぬふりをしていた。けれども、この本で私の人間としての弱さをうまく言語化してくれたと思ったし、それはみんなが持つ矛盾だと知ることができた。
私は戦時中の人々を批判することもできないし、自分が同じように戦時下に置かれたら集団性に隠れて保身すると思ってしまう。
他人の全てを知ることはできないというメッセージも考えさせられた。人を判断するときに属性を用いるし、一定の属性を持った人は同じ性質を持つと勝手に判断してしまう。その方が考えるときに便利だけれど、そこから出る結論は憶測であって真実は自分で見て聞いたことからしかわからない。それは、読者が読んでいるうちに悪役として刷り込まれていったホルンガッハー先生が迎合主義にとどまらない彼女の行動をとっていたというラストにも綺麗に描かれていると思った。
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#読書記録 2023.10
#歌われなかった海賊へ
#逢坂冬馬
再び、作者から大きな贈り物を受け取った。
読書をしていると、稀に自身の眼を見開かされる作品に出会うことがある。本作がそういう作品だ。
ヴェルナーたちは、1944年のドイツから、80年の時を超えて、現代の私たちの価値観を撃ち抜いてくる。
彼らの敵はナチスではなく、ごく普通の人々の無関心、単一的なものの見方、未知のものを既知の枠に無理やりはめようとする無自覚な思考の暴力。
あの時代に起こっていたことは、そのまま現在の世界に当てはまる。
「同志少女よ」を上梓してすぐにウクライナ侵攻が勃発。昨年11月のトークショーで、「ロシアでは反戦を口にするだけで逮捕・連行される。第三国だからこそ言えること、行動できることがある。まず自分にやれることを何かやること。それが無関心の罪を犯さないことにつながると思う」と語った作者を思い出す。
「同志少女よ」でロシアと戦争を描いた作者は、自らの作品と戦争の関わりをひたすら問い続けたのではないか。そして生み出した答えが本作なのだ。
差別と分断の現代を生きる我々(子ども、大人問わず)の必読書。自分の子どもに読ませたい本が増えたよ。
#読書好きな人と繋がりたい
#読了
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ナチス占領下のドイツで、反体制を掲げる少年少女たちの物語。
…驚いた。こんなふうに思想を持って行動することができるなんて。しかも成人してない子どもたちが。
強制収容所で目にするショッキングなシーンがあるが、それを見て、何とかしなきゃいけないと思えるだろうか。
大人たちは目を瞑っているし、何なら軍需産業による利益のため、この事態を迎合している節すらある。
そんな中、彼らは、自分たちの思想のために生きた。彼らの起こした事件により、何人も人が死んでいることから、彼らを礼賛するつもりはないのだが、彼らの生き様に感動を覚えた。
容赦なく奪われてしまった命が、後世に残したものは大きい。
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読み応え抜群の大作の力作。
当然ながら、ここでも(日本とは)別の戦争と戦後があったのだなぁ。
残念ながら、このお話の的確な感想を語るには、我が乏しい語彙力では如何ともしがたい。
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他者を完璧に理解することは出来ない。無意識にどこかで偏見が生まれる。カテゴリー分けをしてしまう。見て見ぬふりの狡さ、恐ろしさ、わかっていてもやってしまう弱さ、賢さ、柔軟さ。歌われなかった海賊へ。歌わなかった市民から。
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隣の町に、ナチスの強制収容所があると知ったら、あなたはどうしますか?
の帯文対して、喜んで騙される行為を続けていた。の一文が真っ直ぐ突き刺さります。
エーデルヴァイス海賊団達は巨悪に諦めず立ち向かいましたが、その原動力である怒りの根源は、生まれた土地や環境、境遇で大きく異なるだろうと…というように自分も正当化する言葉が出てきてしまうのが辛いです…。
ただ、歌が文化となり、怒り以外のものが人々の原動力に、希望になっていくのが良かったです。
ごめんなさい。正直装画は綺麗なドイツ風景の方が…と思ってましたが、読後、これが良いです。その目から、目の前の事実から、目を逸らさないように、努めます。
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すごく面白かった。
私の中の今年一番面白かった本が塗り替えられたかも。
特に後半、久々に、読むのを止められない本を読んだ!
エーデルヴァイス海賊団の4人が捕まらないか、ハラハラドキドキの展開がずっと続くだけではなく、戦後、伝わっている歴史が正しいのか、生き残った人たちに都合の悪いことは見て見ぬふりをしてなかったことにされているのではないか、と考えさせられた。
最後の方を読んでいる時、もう一度冒頭の現代パートの、生徒の戦争の課題の内容を読み返した。
冒頭では、よくできている優等生のレポートとして書かれている内容と、フランツ・アランベルガーが書いた小説の内容とでは、人物の評価がかなり違っていた。
参考文献の数もすごい。読み応えのある作品だった。
『同志少女よ、敵を撃て』も面白くて、本屋大賞をとったけど、この本もまた本屋大賞で良いのでは!?と思うほど、良かった!
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「同志少女よ敵を撃て」が面白くてこちらも読んでみた。最後の驚きを期待してしてしまったかな。解説が丁寧なので気楽な読書をしたい私には良かった。キャラにとって不都合な展開がギリギリで何度も回避される展開には、アニメチックというかラノベ感(読んだことないけど)を感じた。
前作は男に書けない内容でびっくりしたけど、今回も男が好むヒロインではないあたり、筆者は本当に男なのかと脳がバグる。
あと、あのキャラ結局誰!?
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ナチスの非道な行いに目を瞑りたくなるようなヘビーな描写ですが、読む手が止まらなかったです。翻訳して他国の人にも広めたい!と思ったぐらい近年稀に見る傑作だと思いました。
レオの手紙に涙止まらん。
私は歌えなかったんだと後で言い訳する市民です。自分が歌ったらあの時の状況は少しは良くなったんじゃないかと後悔していることはあります。
海賊団のルールが沁みる…
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大戦末期のドイツでナチスに抵抗し、自由を望む若者のエーデルヴァイス海賊団(参考文献リストを見ると海賊団は実際に存在していたようだ)。ゲシュタポやヒトラーユーゲントとの諍いは絶えない。彼らが住んでいる村に鉄道が敷設され、その延長線上に強制収容所があることを突き止めた海賊団は、遂に破壊活動を実行する計画を始める。
話の内容もあるが、前作ほどの痛快な面白さにはならない。昨今のポリティカルコレクトネス的な考えと、ナチス的な優生思想のぶつかり合いが主要テーマの一つでもある。
これを読んで私が卒業した高校に戦時中だろうが、ヒトラーユーゲントの使節団一行が来校し、大きな歓迎を受けたという話を思い出した。ナチスドイツは日本国が同盟を結んでいた最後の国である(現在の日米関係は、まぁ隷属関係となっており同盟ではないだろう)。そんなこともありなかなかナチスドイツの話となると感情は複雑なものとなる。更にイスラエルという国がその建国以来、中東アラブ諸国民を、ナチス顔負けの非道さで虐殺し続けているという事実がある。この本で書かれているような仕打ちをナチスからされていたユダヤ人が、同様の行為を他民族に出来るものなのだろうか。強烈な復讐心のなせる業なのか。それとも被害者特権だとでも勘違いしていて、世界はそれを許すべきだと考えているのだろうか。