- 販売開始日: 2024/02/15
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-355531-5
夜露がたり
著者 砂原浩太朗
「どいつもこいつも、こけにしやがって」「難儀だね、身内って奴から逃れられないものさ」、追い詰められ女と男は危うい橋を渡ろうとする。「あの場所の生まれでなければ」と呪い、「...
夜露がたり
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商品説明
「どいつもこいつも、こけにしやがって」「難儀だね、身内って奴から逃れられないものさ」、追い詰められ女と男は危うい橋を渡ろうとする。「あの場所の生まれでなければ」と呪い、「死んどくれよ」と言葉の礫をぶつけながら、その願いが叶いそうになると惑う。ここに江戸八景の本物がある。「傑作」と呼ぶしかない短篇集。
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それでも、人は生きていく
2024/03/26 17:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一口に時代小説といっても、さまざまなジャンルがある。
砂原浩太朗さんがこれまで描いてきた、例えば『高瀬庄左衛門御留書』のような作品は
武家ものと呼ばれるものになる。
そんな砂原さんがこの『夜露がたり』という短編集で描いたのは、
町で暮らす庶民の人生模様を描く市井ものだ。
人生すべてが明るさに照らされていないように、
ここに描かれる8篇の短編も決して明るくはない。
まさに、夜の間にしっとりと降りてくる露のような物語である。
なかでも「死んでくれ」という作品は、どう答えを出していいのかわからなくなる。
十年も姿を消していた父親が娘のおさとの前に現れるところから、物語は始まる。
父親は博打依存で、多くの借金を抱えて逃げていた。
そして、今度もまた博打に負けて、おさとの前に現れたのだ。
やくざ者に追われてつかまった父親に、おさとが投げた言葉が「死んでくれ」。
やくざに連れられていく父親の姿を、呆然と見送るおさと。
この娘はどうすればよかったのか。
父親の借金のため、女郎で売られていくべきだったのか。
それとも、捨てるしかなかったのか。
そのほかの作品も、答えなど見つからない。
そもそも人生に、これが正しいとかいけないとか答えがあるものだろうか。
裏長屋で生まれたものが明るい世界に出ていくことは多くはない。
それでも生きるということは、息をし続けること。
救いがなくとも、息をし続けること。
読み終わったあと、ふっと人生の意味を考えてしまう短編集である。
著者初の短編市井時代小説
2024/03/23 09:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:スマートクリエイティブ - この投稿者のレビュー一覧を見る
小藩のお家騒動を題材にした時代小説が多い砂原幸太郎による8編の男女の機微を描く初の短編市井小説。どれも予定調和でない、ハッピーエンドでない終わり方。短編なので展開が早い。無駄な言葉は一切ない。
2編目の「向こうがわ」を紹介。以前は広小路側に住んでいた本所側の幹太と、広小路側の進次郎の2人の若者が両国橋をはさんでにらみ合っている。久しぶりに橋を渡った幹太が、進次郎の手下にとらえられているところを、同じく幼馴染のお蝶に助けてもらう。お蝶は進次郎の嫁になっていた。細君をなくした進次郎の父親が後添えとして幹太の母親を迎えにきた。「どんな行く末でも選べた時期はもう過ぎているのだった」。
4編目「さざなみ」から。「勝つことになれた者は自分が踏みつけた相手を見逃さないのだろう」「その場しのぎの臆病さが結局は自分を追いつめていくのだと悟ったが、もう遅かった」「沈黙が訪れるとその底になにが横たわっているのかと考えてしまう」時代小説を著していたころの乙川優三郎を思いださせる文章。
夕やみ迫る江戸の町のようだ
2024/04/01 16:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸の市井の暮らしを描く時代小説短編集。苛酷な長屋住まいの暮らしは、それおぞれに哀しみを抱えている。見方によっては清々しいのかもしれないが、現代社会から見れば、極貧にあえぐ生活と思える。その中で、欲に流され、世の中に漂う男と女の姿は、夕やみに佇むようだ。