著者の作品はすべて読んでいますが、本書も上々の一作。ただ読むべし。
2024/03/28 00:17
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投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
山崎豊子『大地の子』や辺見じゅん『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』、安部公房『けものたちは故郷をめざす』といった作品を彷彿とさせる主人公のトヨタ入社前を描いた暗澹たる前半を過ぎると、一気に視界が拡がり、「トヨタ最大の秘密」(帯より)が語られる後半へとなだれ込む傑作企業ノンフィクションでした。一気読みでした。
「中国人同士で殺し合えばいい。トヨタには無関係なこと」(271頁、天津汽車救済スキームにおいて、第一汽車と広州汽車を手玉に取って競わせる交渉戦術の見事さ!)
「章男ちゃんは章男ちゃんで、複雑なんだよ。奥田さんは章男ちゃんのことを、『章男はコンプレックスの塊だ』と話していたけれど・・・・・・。まあ、章男ちゃんはね・・・・・・複雑な子なんだよ。章一郎の育て方が問題だったんじゃないのかな」(304頁)
それにしても、奥田碩がかの小糸製作所買収防衛事案において最前線で仕事をし、米国流ガバナンス(あるいは資本の論理)について深い経験を積んでいたというのは目うろでした。
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【豊田章男と奥田碩。側近が明かすトヨタ世襲の暗闘】豊田章男に与えられた社長への試練。絶体絶命の中国ですがったのは、トヨタ社内で「バケモノ」と呼ばれる、中国育ちの日本人だった。
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これは面白いです! 自動車版『大地の子』で、タイトルとしては「中国の近現代史と自動車産業」のほうが正確かと思います(これだと売れないと思いますが…)。
中国で生まれ育った服部悦雄という元・トヨタ中国事務所総代表のインタビュー録です。「服部悦雄」は、『トヨトミの野望』では「八田高雄」で登場しますが、その『トヨトミの野望』も織り交ぜながら展開します。但し、こちらの本では全て実名。氏の経歴に合わせて、満州国解散から習近平時代までが描かれ、これを読むだけで中国の近現代史がわかります。
氏は、中国人の本質は「好死不如懶活(きれいに死ぬより、惨めに生きたほうがまし)」と言い切ります。毛沢東の大躍進運動(「雀撲滅運動」は初めて知りました)や文革、天安門事件など、マクロ面のみならず、この「本質」を裏付ける庶民の生きざまも描かれ、自動車事業に関係なくとも読める内容です。
児玉博氏は、かつて故・西田厚聰氏とのインタビューによる『テヘランから来た男-西田厚聰と東芝崩壊』を上梓していていますが、どちらもストーリー展開が秀逸。今回も一気読みコースでした。
実は、以前、トヨタが天津に進出する際に、天津汽車(後に第一汽車に買収)と部品合弁会社設立の交渉を担当しました。この本にある通り本当に大変で(一冊の本が書けると思った)、かつての体験を思い出し、ドキドキしながらページをめくりました。それ故とも言えますが、面白さは太鼓判の一冊です。
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章男会長が社長の頃からトヨタイムズを見たり、豊田章男の本を読んだりしていた。章男会長は親の七光りに見られがちだが、私は章男会長は意外と苦労人だと思っていて、そんなところに惹かれた。本書はそんな「豊田章男を社長にした男」というサブタイトルがついていたので読みたくなり買った。
ところが豊田章男が社長になっていく過程が描かれているわけではなく、そのタイトル通り豊田章男を社長にした「人」の話(そらそうか。。。)
でも面白かった。あれだけトヨタイムズを観ているのに服部悦雄という方のことを知らなかった。なんと壮絶な生い立ちを経て来られた方なんでしょう。。。
本書の半分くらいは、戦中〜戦後にかけての中国共産党支配下での人々の暮らしの話。それが惨過ぎて途中読むのがつらかった。驚くことと言えば、殺戮された、傷つけられた、強制労働させられた、人達のその数の多さだ。全ての単位が◯千万人。あり得ない。しかも笑けてくるほどに信じられない中国共産党のとんでもない政策のオンパレード。よくもまあそんな子供騙しのような政策を掲げて人々を振り回すことができるなあ!と読んでて「怒り」さえ覚えてきた。
そんな惨い時代を27歳まで中国で過ごしてきて、トヨタの経営陣まで上り詰めた服部悦雄という人物のお話。面白くない訳がない。しかもドキュメントなのだが書かれているタッチが軽いタッチなのか重たくなく小説を読んでるみたいで読みやすかった。そしてなぜだか爽やかな読了感でした。
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これは面白い。
トヨタ自動車の中国市場を取り巻く歴史とそこに関わる歴代の社長陣を、服部悦雄という中国育ちの日本人で中国トヨタの立役者となった人物への対話から描いている。
ストーリー展開が秀逸で、あっという間に読み終えてしまった。
服部さんの生い立ちにも関わる、かつ、中国市場を語る上で欠かせないポイントが多いため、本の前半は満洲国解散〜近代における激動の中国近代史が記載されている。
その中で、中国人はどんな思いでどんな生活をしていたのかを服部さんが見た世界も含め記載されている。
何度も中国史は読んで来たがこんなにわかりやすく、イメージしやすく理解できるものは初めてだった。
後半ではトヨタ自動車の中での出来事が記載されている。
以前中国で働いていた経験からも、中国でのビジネスや中国人らしさというものには思い当たることが多かったが、特に服部さんが中国人らしいとして周囲の日本人から敬遠されるシーンもありありとイメージがわいた。
本書の中でも紹介されていたが、トヨタ自動車をモデルにしたトヨトミシリーズと、本書の作者である児玉さんが書かれている テヘランから来た男 西田厚聰と東芝壊滅も読んでみようと思う
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「中国」について書かれたものは三国志以来。
それくらい無縁でしたが、身近なトヨタの話と相まって、とても面白く読めました。
文末の参考書籍についても機会があれば読んでみたいと思いました。
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好 死 不 如 懶 活
hao si bu ru lai huo
きれいに死ぬよりも、惨めに生きたほうがまし
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「トヨタ 最大の秘密を知る男の『告白』」という帯のついたトヨタの中国進出の立役者、服部悦雄氏についての1冊。本好きの先輩からお借りして、ほぼ一気読みで読了しました。
なかなかイカツい表紙で、豊田章男さんの表情もなんか怖い(笑 これはオススメされなかったら読まなかったなぁ。(しかし、豊田章男さんと奥田碩さんが並ぶ表紙というのも味わい深いし、この3人の位置関係もなかなかですね)
本著、4割くらいはトヨタとは関係のない、服部氏の戦後中国での生い立ちが語られるのですが、強烈な印象を残すのはむしろこっちだなぁと。
「あまり話したくないんだ」と服部氏が著者に言いながら、それでも著者が引き出した(と思われる)大躍進政策に文化大革命。後者は『三体』でもその異常さが描写されていましたが、本著の切り口でもやっぱり凄まじい。政治で人は死ぬんだなぁ。
しかも、服部氏はそこに「悪質分子」とされる日本人として生きてきたというドのつくアウェー。。
「日本人は中国人をわかってないんだよ」という服部氏のセリフ。本著を読むと腑に落ちます。
トヨタに入って奥田碩さんと出会ってからの服部氏は、中国を中心に活躍し、特に豊田章男さんの下では異世界転生小説バリの無双をしていくのですが、辛い若き日とのコントラストがより際立つようにも感じました。
しかしこれだけの大仕事を成し遂げながら、最終章で「中国人になりきれない中国人で、日本人になりきれない日本人」と自らを評する服部氏。切ないなぁ。。
本著、インタビューと回想、史実の記述を上手く組み合わせて飽きさせない、魅せる1冊でした。
著者の「主な著書」で紹介されているものだけでも興味ある人物が複数挙げられていて、この筆致で読めるならぜひ読んでみようと思いました。本著内でも、さりげなく著者の別作品の紹介がされているのが上手いなぁと(笑
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これは面白い!
途中、満州建国あたりからの中国の近代史に相当なページが割かれていて、なるほどと思わせる内容でした。
ググってみた限りでは主人公の「服部悦雄」なる人のwikiページがなさそうで、現在存命なのかどうかもわからず。。
いずれにしても、この本がすべて実名で登場のノンフィクションである以上、トヨタの中国進出の立役者であることは間違いなく、恐らくこの本を読むであろうトヨタ幹部/社員の人たちはどう感じるのだろうか。往々にしてこの手の暴露(?)本は関係者が世を去ってから出そうなものだが、この内容はここ30年ほどのかなり最近な話であることもあり。
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中国で終戦を迎え大躍進政策や文化大革命を生き抜き、トヨタ中国の総責任者まで努めた服部氏のインタービューを基にしたドキュメンタリー。氏の生い立ちたどる中で、インタービューで引き出される凄惨な実体験の数々。中国の近代史のリアルで非情な実態が炙り出されている。中国建国の英雄とされている毛沢東は日本の歴史の教科書でもそのような紹介がされているが実態は大躍進政策や文化大革命といった失政によって1億人近い人民を死に追いやった虐殺者でもある。全土で雀を徹底的に駆除する事を推奨された結果、害虫が発生して作物が育たなくなり飢饉が発生し4〜7千万人もの餓死者を生んだといあれているが、同じ事を書いた体験談が、評論家の石平氏の半生記でも記述されていて、それが偽りのない話であるという事が改めて思い知らされた。
冒頭に「日本人は中国人を分かっていない、本質をみていない」と言って服部が割り箸の袋の裏に書き留めて著者に見せた文字。
「好 死 不 如 櫑 活」hao si bu ru lai buo
「きれいに死ぬよりも惨めに生きたほうがまし」
これが中国人の本質だという。桜が散るみたいに潔く死ぬなんて、中国人は考えないと。かつて高杉晋作が上海を訪れた際に、列強に食い物にされていた中国を見て驚きを受けたエピーソードは歴史に記されているが、期せずして先週読んだ寺島実郎氏の「二十世紀と格闘した先人たち」の中で、高杉が「なぜ、戦わないのだ?」と町中の中国人に聞いて回った話が書かれていたのを思い出した。国がどうなろうと、死ぬよりはマシだということなのだろう。この言葉を知れただけでも、本書を読んだ価値があったと思う。
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こんな背景があったとは知らなかった。リアルだから、大変興味深く読めた。やっぱり血筋は守る民族なんですね。五兆円の利益を上げる企業はもう公でしょう。 馬鹿では勤まらないよね。
しかし服部さんはスゴイ人間だ。ここまでの生きる事&這い上がる野心があるのが素晴らしい。ひとは生きる環境で変化し、やり切るパワーが生みでるんですね。 中国
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面白い
世界の自動車メーカー トヨタ
その世界戦略の中で重要な中国
低迷していた中国でのトヨタを
トップに押し上げたのは
27年間中国で育ち
小鬼と蔑まれ 文革も経験し
厳寒の中労働し生き延びた男 服部
トヨタに中途採用から入社し
奥田という トヨタでは異才の上司に
見出され
才覚を現し中国でのてトヨタの礎を
造り
そして創業家の章男を社長にした男と
言われる
しかしその辣腕から
会社からは浮いた存在に
会長から感謝され伝えられた役員にも
遇されず
自家用ジェットも届かなかった
しかしトヨタの中にも
社長のポストに実力で異義を唱える
などした人物もいたんだ
これからこのマンモス企業が
どうなるのか面白い
久しぶりに読み応えのある本だった
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配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=10277432
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トヨタ中国の怪物と言われた服部氏の壮絶な人生の物語と中国の共産党と自動車産業の歩み及びトヨタという巨大企業の闇が交錯しとても読み応えのある作品に仕上がっていました。
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p35 奥田の祖父と父は三重県最大の証券会社、奥田証券を経営
トヨトミの野望
p82 荊州では、唐代に科挙に合格するものは全く出ず、それ故不毛の地、すなわち天荒と呼ばれていた。ところがその天荒の地で劉ぜいというものが初めて科挙に合格。かくして天荒の地は破られた。この故事から生まれた言葉が、破天荒だ。
p113 好死不如赖活 好死は悪活に如かず
中国人はきれいに死ぬよりも、惨めに生きたほうがまし
p172 帰国した服部を向かい合った次席事務官は、加藤紘一
p270
中国は国策として、外資は中国の自動車メーカ二社としか合弁事業を組むことができない
トヨタの合弁会社のひとつが、粗悪な小型車しか生産できず、2000億もの赤字を抱えた天津汽車、もう1社は四川旅行車(商用車)
p276 第一汽車に、天津汽車を買収させる
それによりトヨタのフルラインナップでの乗用車生産への道がひらかれた by 服部悦男
当時の中国責任者 豊田章男 補佐 服部悦男