堤康次郎 西武グループと20世紀日本の開発事業
著者 老川慶喜 著
電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。早稲田大学在学中に起業、卒業するや別荘地や住宅地を精力的に開発した堤康次郎。その軌跡は、公務員・会社員などの新中間層...
堤康次郎 西武グループと20世紀日本の開発事業
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商品説明
電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。
早稲田大学在学中に起業、卒業するや別荘地や住宅地を精力的に開発した堤康次郎。その軌跡は、公務員・会社員などの新中間層(サラリーマン)の誕生や都市人口の増大と重なる。軽井沢や箱根では別荘地や自動車道を、東京では目白文化村や大泉・国立などの学園都市を開発した。さらに私鉄の経営権を握り、百貨店や化学工業も含めた西武コンツェルンを一代で築くが、事業の本分はまぎれもなく「土地」にあった。厖大な資料から生涯を読み解く。
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堤さんの功績が分かる伝記です。
2024/05/12 22:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
当書は西武グループ創業者として知られる堤康次郎さんの生前中の功績を、たっぷりの紙幅を当てて著した、堤さんの伝記書に相当する1冊です。
堤さんがどういう方か、どう西武グループを展開して行ったかを知りたくて購読しました。期待通りの内容で、堤さんや西武グループについて詳しく学べたのがよかったです。
目次直後に、西武グループ関連の鉄道網の詳細地図が、各路線ごとに掲載されています。これを見るだけでも、西武グループの大規模さを思い知ることができます。
引用文献に留まらず、もう少し踏み込みがあれば・・・
2025/02/22 16:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は西武コンツェルンを一代で築いた堤康次郎の評伝である。堤は実業家であるとともに、当選回数13回に及ぶ大物代議士としての顔も持つが、本書では不動産事業や鉄道事業の話題がメインであり、代議士としての活躍ぶりについては、ほとんど触れられていない。鉄道関連の話題の一部を以下に紹介する。◆現在の西武多摩湖線の沿線に東京商科大学の予科ができると、輸送力が不足して遅刻する学生が続出した。学校は「始業時間8時40分後20分間以内は遅刻と認めず」という「珍規則」を定めて対応。◆国立駅は堤経営の箱根土地会社の全額寄付により開設。ただし、当地の分譲価格が上昇し、わずか1年で元を取り戻した。◆「国立」の駅名由来は、東京商科大学の教授会で「国分寺、立川の両頭文字をとって国立にしたら」という意見(教授会説)と、康次郎が「ここに新しい日本という国がはじまる−即ち国が立つ」として名付けた(康次郎説)がある。◆東京市民の糞尿輸送は1921年に武蔵野鉄道(現西武池袋線)と東上線で開始されたが1928年に廃止、戦時期に再開。1944年に東京都は他の郊外電車にも糞尿輸送の依頼をしたが、引き受けたのは、康次郎が関係した武蔵野鉄道と旧西武鉄道(現西武新宿線)のみで、1953年まで続けられた。これ以外にも草軽鉄道や箱根山での他社との軋轢など興味深い内容であるが、引用文献の転記のみで理解しづらい点が散見される。その一部を次に紹介する。◆最初の糞尿輸送は7年で終了したが、その理由が不明。◆糞尿輸送の解説で「武蔵野鉄道と旧西武鉄道は、井荻・沼袋、長崎の3駅と東小平、清瀬など17の発着駅の工事を進め」との解説があるが、「駅」と「発着駅」の違いが不明確で、かつどのような工事を実施したか不明。◆武蔵野鉄道や旧西武鉄道は「沿線に多くの軍需工場があったため、東京近郊の私鉄のなかではもっとも爆撃を受けた私鉄」との解説がある一方で、別の頁には「西武鉄道の沿線はほとんど戦災を受けていない」との記述があり、内容が不整合。◆武蔵野鉄道と旧西武鉄道の共同使用駅であった所沢駅は旧西武鉄道が管理していた。所沢から東京へ行く乗客に、旧西武鉄道の駅員は高田馬場経由の切符を販売、乗客は武蔵野鉄道を利用。実態として、旧西武鉄道は乗客を輸送していないにも関わらず収入のみ着服していたという主旨の解説がある。これがなぜ可能なのか本書の記述では理解できない。武蔵野鉄道と国鉄の乗換駅「池袋駅」は当時、共同使用駅で改札を通ることなく武蔵野鉄道から国鉄線への乗り換えができたということであろうか?鉄道関連の著作も多く、鉄道史学会の会長も務めていた著者の経歴を踏まえると、単に引用文献の転記に留まらず、もう少し踏み込んだ解説があればと、若干の不満がのこる読後感であった。
興味深い
2024/12/10 10:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
堤康次郎の評伝として、実像に迫ろうとしていて、興味深く読むことができました。経済の成長期のエネルギーに、驚かされました。
ピストル堤の新書版評伝
2024/05/27 15:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の著者は日本における鉄道史研究者であるが、本書においては西武グループの創業者である堤康次郎のその実業家としての側面のみから追った内容となっている。堤康次郎については数々の評伝と息子である堤清二が作家辻井喬として「父の生涯」等の小説でも書いているとおり、その人間関係や複雑な家族関係からの側面が語られる場合が多く、本書のようなその事業のみ書かれた本は却って新鮮に感じる。
関東の私鉄の中で、西武とかつて競合していた東急の創業者である五島慶太が「強盗慶太」と呼ばれたのに対して、堤康次郎は「ピストル堤」と呼ばれており、それついて本書では企業買収の敵対者に雇われたその筋の者からピストルで脅されても屈しなかったと本人が自慢していたことに由来するが真相については不明と書かれており、西武と東急の創業者についてはその旺盛な事業拡大欲と強引な手法からのトラブルには事欠かなかったらしいし、実際に両者は箱根のバス路線や遊覧船を巡って張り合っている(「箱根戦争」と呼ばれている)。
滋賀県の農村に生まれ、幼くして父親が亡くなり他家に再嫁した母とは生別し、小学校卒業後は祖父と農業に従事していたが、祖父の死後田畑を売り払い早稲田大学に進学し、大学在学中に大隈重信や永井柳太郎からの知遇を得て、在学中から事業を開始し実業家そして政治家となった人生はまさに立志伝中を地で行った人生でもある。
その手法は新規事業を行うに際しては、既存の会社の増資等ではなく新会社を設立して資金を集め、事業が軌道にのると企業合併により吸収するというパターンを繰り返している。そして、未開発の土地を安価で購入し、開発後に販売するという開発デベロッパーから開始してやがてその土地沿線の鉄道を手に入れてくという点では、手に入れた鉄道の沿線を開発して価値を上げていった阪急の小林一三とは逆になる。
そして、日本における土地本位資本主義という状況において、資産化した土地を担保に融資を受けて事業拡大するというパターンに変化して行くが、それは日本における新興階級の勃興により郊外の住宅や、箱根、軽井沢における別荘の販売更には居住者向けのテーマパークやスポーツ施設の建設につながっている。
しかしながら、衆議院議長まで務めた政治家でありながら国家への納税を少なくするために個人で会社の株を保有せずに持ち株によるグループ統治を目指した結果として、次世代において株式保有の偽記載による西武グループからの堤家の退場を招いたというのは皮肉ではあるが自業自得と言える。
最終章における堤康次郎亡き後の継承者に関する内容については、評価の分かれるところだと思うが、「家産」の継承者である堤義明と「事業」の継承者である堤清二という分類はどうもしっくりこなかった。
父堤康次郎も息子堤清二も多額の借金を背負って憑かれたような事業拡大を行ったという点では共通しているが、父親がその膨大な不動産を担保としていたのに対して、西武百貨店から始まる流通グループのみ継承した息子(清二)は所有不動産無しに借金を重ねた結果、セゾングループの崩壊を招いているし、本業を継承した息子(義明)の方はその父親以来の節税対策故に経営から退陣せざるを得なかったという点でともに父親の負の遺産も継承していた気がする。