絞め殺しの樹
著者 河崎秋子
新・直木賞作家のブレイク作! 北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、農...
絞め殺しの樹
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商品説明
新・直木賞作家のブレイク作!
北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、農作業、畜舎の手伝い、家事全般を背負わされボロ雑巾のようにこき使われた。その境遇を見かねた吉岡家出入りの薬売りの紹介で、札幌の薬問屋「仙雲堂」で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、早すぎた最愛の家族との別れ。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの生きた道のりを辿ろうとする。
「なんで、死んだんですか。母は。癌とはこの間、聞きましたが、どこの癌だったんですか」
今まで疑問にも思わなかったことが、端的に口をついた。聞いてもどうしようもないことなのに、知りたいという欲が泡のように浮かんでしまった。
「乳癌だったの。発見が遅くて、切除しても間に合わなくてね。ミサエさん、ぎりぎりまで保健婦として仕事して、ぎりぎりまで、普段通りの生活を送りながらあれこれ片付けて、病院に入ってからはすぐ。あの人らしかった」(本文より)
※この作品は単行本版『絞め殺しの樹』として配信されていた作品の文庫本版です。
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絶望の向こう側
2024/05/17 09:18
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は誰もが内面に世界を持っていて、
他人からそれを伺うことはできないし、
本人もそのすべてを把握しているわけではないと思う。
他人と接触するときに
世界のどこかとどこかが触れ合って、
新しい「私」が現れて私を形成していく。
木は丈夫に見えるけれど一定ではない。
作中でも有刺鉄線をのみ込んだ木の描写がでてくるけれど、
長い年月を経ると木も生物であるという当たり前の事実を見せつける。
その木も土壌があれていれば十全に育つことはできない。
人の難しいところは必要な栄養素もそれぞれだということだろう。
猫の描写がファンタジーすぎるのがちょっと気にはなったけれど、
昏くてもページをめくる手の止まらない作品でした。