世界の美しさを思い知れ
著者 額賀澪(著)
俳優だった双子の弟が遺書もなく自殺した。一卵性双生児の兄が遺品のスマホを見つけて顔認証を突破すると、メールには礼文島行きの航空券があった。旅に出ようとしていたのに、なぜ弟...
世界の美しさを思い知れ
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商品説明
俳優だった双子の弟が遺書もなく自殺した。一卵性双生児の兄が遺品のスマホを見つけて顔認証を突破すると、メールには礼文島行きの航空券があった。旅に出ようとしていたのに、なぜ弟は自死してしまったのか。遺骨と喪失感を抱え、弟の死の答えを探すため、兄は旅に出る。マルタ島、台湾、ロンドン、NY、南米、東京――。青春小説の名手が紡ぐ「喪失と克服」の感動長編!
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生死感のみならずいろんな観点から読める本
2024/10/16 23:13
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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
俳優の弟が自殺し、双子の兄はいつも一緒で仲が良く、お互いのことをなんでもわかっていたはずなのに、その事実を受けとめられない。
弟の行きたかったと思しき場所や過去に訪れた場所を訪ね歩き、現地で見たものや景色に思いを馳せ、出会った人たちと交流する。
元カノの女優もまた喪失感を抱えてどう生きていったらいいのかふわふわしている。
彼女と旅をするうちに、彼女も苦しんでいることを知る。
双子なので、一般人の兄も元カノのことは好きだった。
けれども、彼女は兄とは付き合わなかっただろう。
今一緒に旅をしてお互いの気持ちを共有しているが、それは尚斗という存在を挟んでのものであって、それ以上にはならない。
貴斗は尚斗の代わりではない。
双子だからといって、全く同じというわけではないことをお互いが思い知る。
当たり前だけれど、辛い現実。
しかし、貴斗は動けば動くほど喪失感が増し、気持ちのやりばがなくなる感じであったが、辻ちゃんの存在がますます気持ちを掻き乱すことになりつつも、大切な人を失った苦しみをぶつけあえるという点では、救いになったのではないか。
その意味で、尚斗が見たもの、貴斗が尚斗に見せたかったもの、一緒に見たかったもの、それを尚斗とともに味わい、かみしめるために寄り添うのは、凛ではなく辻ちゃんだったのは、当然かと思った。
決して、自死を肯定するわけではない。
残された者の苦しみや混乱を描きたいわけでもないと思う。
ただ、タイトルにあるように、せっかくだから生きている間にできるだけたくさんの、世界中にある美しいものを見て体験して感動し、それを誰かと共有して楽しみつくせたら、というところに救いを求めたい。
この本を読んだ多くの人は、タイトルや人物の設定からある俳優のことを思い浮かべるだろうが、彼のこととは別の物語である。
本の構成が工夫されている。
ネット記事、SNSの投稿、後クレ風のレイアウトなど。
映画の制作現場に詳しいようで、最後まで緊張感を持って読めた。
俳優ではないけれど、自然と言葉が出てきた貴斗表情が浮かぶようだった。