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  • 販売開始日: 2024/07/12
  • 出版社: 新潮社
  • レーベル: 新潮文庫
  • ISBN:978-4-10-102506-3
一般書

河童・或阿呆の一生(新潮文庫)

著者 芥川龍之介

芥川最晩年の諸作は死を覚悟し、予感しつつ書かれた病的な精神の風景画であり、芸術的完成への欲求と人を戦慄させる鬼気が漲っている。出産、恋愛、芸術、宗教など、自らの最も痛切な...

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河童・或阿呆の一生(新潮文庫)

税込 440 4pt

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商品説明

芥川最晩年の諸作は死を覚悟し、予感しつつ書かれた病的な精神の風景画であり、芸術的完成への欲求と人を戦慄させる鬼気が漲っている。出産、恋愛、芸術、宗教など、自らの最も痛切な問題を珍しく饒舌に語る「河童」、自己の生涯の事件と心情を印象的に綴る「或阿呆の一生」、人生の暗澹さを描いて憂鬱な気魄に満ちた「玄鶴山房」、激しい強迫観念と神経の戦慄に満ちた「歯車」など6編。(解説・吉田精一)

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みんなのレビュー132件

みんなの評価3.9

評価内訳

蜃気楼

2007/07/09 22:23

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る

この短編集の「蜃気楼」こそが 僕が最も好む芥川の作品である。


 鵠沼での芥川の生活を描き出したエッセイであり 筋らしい筋は無い。但し そこに使われる日本語の美しさは比類がない。


 芥川は もともとはストーリーテリングの巧みな作家である。彼の王朝物を読む限り あざといほどのストーリーを駆使しており 彼の知性のありかがいやというほど思い知らされる。
 そんな芥川が 晩年に ストーリーを棄てたということなのかもしれない。
 

 本書に収められた「河童」は 日本で書かれたガリバー旅行記のような話だ。ここにおいて芥川は自分のストーリーテリングの最後の作品を書き上げたのだと思う。短編しか書けなかった芥川にしては 大長編である。

 そんな芥川が 最後にたどり着いた 筋の無い短編に 僕は 芥川の後姿が見えるような思いがする。芥川は 才気が有りすぎた。そんな才気が 芥川を葬っていく姿が見える。「蜃気楼」とは 暗示的な題名だ。芥川自身が 海上に浮かぶ蜃気楼になっていったということだと思う。

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ガリバー旅行記の馬と「河童」

2019/01/25 23:34

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

「河童」を読んでやっぱり感じるのは、この作品はスウィフトの「ガリバー旅行記」に似ているということ。ガリバーは馬社会の清廉さに感銘しすぎて人間社会の醜さを感じすぎて人間嫌いになってしまった。「河童」では、河童社会から帰ってきた主人公が人間の体臭に我慢できなくって、あげく精神病院に収容されてしまう。河童をかきあげる参考にガリバー旅行記があったことは間違いないと思う。それにしても、なぜ、文豪と呼ばれる人たちに自殺者が多いのはなぜであろうか、川端康成、三島由紀夫、太宰治、有島武郎、そして芥川龍之介、歯車を読んでいると、もう自殺する気満々で作品を書いているとしか思えない。

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ダークサイド芥川

2022/04/22 22:08

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hachiroeto - この投稿者のレビュー一覧を見る

冒頭の「大導寺信輔の半生」がすでに、相当精神的に「こじれた」男の物語。次の「玄鶴山房」はまだ筋書きを追えるが、「蜃気楼」は不思議な味わいの情景文学でもいうべき一作になっていく(これはなかなかの作品)。

そして本書後半は「河童」「或阿呆の一生」「歯車」の傑作3篇が並ぶ。傑作ではあるが、狂気の淵を目をつぶって歩いているような危うさが、どの作品からも感じられる。「河童」はまだしも『ガリヴァー旅行記』を思わせるユーモラスな作品だが、語り手が精神病院にいることを忘れてはならない。彼の語る河童の話は、そもそも彼の頭の中の狂気が生み出したものかもしれず、そのことがラスト近くで示唆される。

「或阿呆の一生」は、『侏儒の言葉』を思わせる断章が並ぶが、「侏儒」で見られる冷静な余裕はすでにない。「歯車」はまさに狂気の文学の傑作だ。右目の奥に見える歯車、絶えず目の前に現れる死のイメージ。精神不安的な時には読まないほうがいい。

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文学

2021/07/08 05:16

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る

芥川短編作品集。文豪と言われるものは子供の頃から親しまれるものだが大人に書けて幾度か読むたびに味わいが違うものだ。

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幻想を生む狂気

2002/07/26 15:26

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:TAIRA - この投稿者のレビュー一覧を見る

 芥川龍之介晩年の作品たちは、芥川自身の狂気が映し込まれている。皮肉にもその狂気が幻想的であり、病的強迫観念が幻惑的である。
 芥川といえば『羅生門』『蜘蛛の糸』などが有名であるが、この『或阿呆の一生』や、本書に収録されている『歯車』は、あまり知られてはいないが重要な意味を持っている。この二作は、芥川の死後に発表された芥川最後の作品である。この芥川の思考を色濃く反映した二作は、芥川を語るには欠かせない作品であるといえるだろう。

『歯車』の最後は、こう締めくくられている。

「僕はもうこの先を書きつづける力を持っていない。こう云う気もちの中に生きているのは何とも言われない苦痛である。誰か僕の眠っているうちにそっと絞め殺してくれるものはないか?」

 この文章で芥川のこの瞬間のすべてが分かったような気にはならないだろうか?

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名作

2024/07/30 05:44

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る

古典のように感じてしまう作品だがほんのちょっと昔の作品だということも忘れてしまうくらいの端正な作品。

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生に対する不安が苦しいほどに行間からこぼれ出す

2023/04/27 06:06

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る

虚飾を捨て、自身を曝け出した作品は、転機を迎えたと言えば言えるが、それは作家としての充実を現わしたものではない。自らの生に対する不安が苦しいほどに行間からこぼれ出す。創作の衝動の結果ですらなく、狂った歯車の回転を少しでも鈍らせるために惰性で繰り返している習慣に過ぎぬ。芸術家としての熱も、まして生活のためなどという俗っぽさすらなく、書くしかないから書いている。しかも、書いても書いても楽になるわけではない。他人の目に曝した自分の奥底の闇は、おのずと自身の目にも触れ、その苦悩は手に負えない程大きく育っていく。

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2005/06/06 15:09

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2005/06/22 03:09

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2006/01/25 20:06

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2006/06/18 23:30

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2006/09/17 13:53

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2006/11/27 03:28

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2007/02/17 00:32

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2007/05/24 23:58

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