日本は仮面の黒字国?
2025/01/03 17:03
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投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は現役の銀行員。統計上の(経常収支の)黒字が、実際に円買い・外貨売りという為替取引、一言でいえばキャッシュフロー(CF)を伴っていない可能性に目を向けるべき。経常収支国や対外純資産国というステータスは一見して円の強さを担保する仮面のようなものであり、素顔としてはCFが流出していたり、黒字にもかかわらず外貨のまま戻ってこなくなったりしている可能性がある。この意味で日本は仮面の黒字国ないし仮面の債権国とも言える状況にあり、統計上の数字を見るだけでは見えてこない素顔に迫る必要があるというのが著者の問題意識である。米国の巨大IT企業が提供するプラットホームサービスや日本で事業展開する外資系コンサルティング企業、海外に拠点を構える国内外企業の研究開発拠点など、これまで為替の世界であまり注目されてこなかった費目で外貨の支払いが増えている。これがサービス収支赤字である。現在、日本ではインバウンド相手にサービス収支の一部である旅行収支は黒字であるが、外資系企業の提供するデジタルサービスへの支払いが旅行収支を上回っている。今後、人手不足の制約からインバウンドの受け入れには限界が見えるが、デジタルサービスの単価は今後とも引き上げが続く。本書は、こうした状況を様々なデータに基づき解説したものであり、日本の置かれた苦境をあらためて思い知らされる一冊である。
長く成長しない時代を経て、国際的に立ち後れたことを正面から見るしかない
2024/11/05 19:11
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
何十年か以前の経験から抜けるのは難しいと思われる。アベノミクスのように円安が必須と考える向きもある。安倍元総理はどこまでの円安を想定していたのであろうか。1ドル360円の固定相場の時代は、円安を武器にして経済発展を遂げ、高度経済成長を演出した。今、円安は実現されたが、予想以上の円安で大騒ぎとなった。著者は今の円安を「構造的円安」という。一過性でないことは確かだろう。リーマンショック後、第二次安倍政権からアベノミクスが始まり、東京外国為替市場では円を買うより、売る人が多い状況となっていた。
本書は国際収支を分析の中心に据えており、サービス収支赤字を「新時代の赤字」と位置付け、デジタル赤字といわれる点を明確にしようとしている。経常収支が黒字だから大丈夫と考える向きもあるが、バブル崩壊後の一時的なもので大丈夫と同じようにも見える。日本はどういう位置にいるかを考える。本書の目次を見ると、
はじめに
第1章 「新時代の赤字」の正体
BOX1 サービス収支に透ける製造業の行動変化
BOX2 旅行収支にどこまで頼れるのか
BOX3 デジタル赤字は日本だけなのか
第2章 「仮面の黒字国」の実情
BOX4 「普通の通貨」になった円―震災と円相場
第3章 資産運用立国の不都合な真実
第4章 購買力平価(PPP)はなぜ使えなくなったのか
BOX5 日経平均株価の騰勢は「インフレの賜物」
第5章 日本にできることはないのか ―円安を活かすカード
BOX6 日独GDP逆転の本質―為替要因だから良いのか?
おわりに
注 となっている。
以上のように展開される。多くのテーマがあることに果敢に挑戦している。インバウンドによる国際収支の改善を提唱する向きもあるが、改善の一助に過ぎないことを的確に指摘している。大阪での万博もインバウンドに寄りかかっている。しかし、大阪でインバウンドにより地価が上昇したりといっても一部のことに過ぎないし、オーバーツーリズムの問題も出ている。それどころか、飲食店等の人手不足は甚だしく、受けることができないというし、京都では市バスが観光客であふれ、市民生活に悪影響を及ぼしている。著者は国際収支に詳しいのでその面から勉強になる。一読されたい。
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現在日本は経常収支黒字国
「新時代の赤字」=その他サービス収支赤字のこと。その中には「専門・経営コンサルティングサービス」も入っている
2023年時点でサービス収支全体で2兆9158億円の赤字。これは旅行収支における3兆6313億円からサービス収支の5兆9040億円を引いた数字。
2030年には約8兆円に拡大するとの試算。2021年の原油輸入実績は約6.8兆円
少子高齢化などの人口減少傾向にある世界ではイノベーションの停滞が起こりやすい。
「研究開発サービス」で劣後する国がデジタル関連収支で黒字を積み上げるのは難しい。
今まで貿易収支があってその次に過去に行った投資の成果としての第一次所得収支の動向が注目されてきた。
しかし今後はサービス収支の変化幅が非常に大きくなると思われるので、その動きも追うべき
CFベースでの経常収支でみると第一次所得収支黒字の4割しか(13.9兆円)円買いに繋がっていないという事実が見えてくる。
2022年に関して言えば貿易サービス収支赤字が21.1兆円のマイナス、また第二次所得収支は約2.5兆円の赤字だったため、CFベースでは(13.9−21.1−2.5)で9.7兆円の大幅な赤字だった疑いが強い
2019年ごろから日本の対外純資産残高の半分近くは直接投資で構成されている。
そのため売られたまま戻らぬ円が増え、円安の進行が進みやすい状況
2022年から2023年にかけて名目GDPは約560兆円から592兆円に増えたが、実質GDPは549兆円かは559兆円へプラス10兆円分の増分になっていて、残り22兆円なインフレによる上乗せであり、成長とは言えない。
特に個人消費に着目した場合、名目ベースでは11.2兆円伸びているが、このうちインフレによる上乗せは9.4兆円で実質ベースでは+1.9兆円しか増えていない。
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日経の大暴落、円の急騰を横目に読了。
為替は金利差だけでなく、様々な要因で決まっていることを知り、勉強になった。
会社で新たな為替ヘッジを入れようとしている矢先に今回の急騰が起きた。
タイミングに感謝だが、今後は内外金利差だけでなく、サービス収支や家計の円売りの存在についても意識していきたい。
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今の円安の構造を、思い込みではなくデータや多面的な角度から考察している。
デジタル赤字以外にも外資系コンサル赤字なども存在し、それは、金利という要因だけではなく、根本的に今の日本の経済・社会状況に起因している。
為替要因として、インバウンド需要や、新NISAもたまに上げられるが、果たしてGDP対比で見た時にそれはどのくらいの割合なのか。冷静になって考えることができた。
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『#弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』
ほぼ日書評 Day799
戦後の原則的に円高を基調とするトレンドは、円安基調に転じているという。
ウクライナ侵攻や、能登地震に際しても、有事の円買いが進まなかった(東日本大震災という国を揺るがすような災害に際しても円高が進んだのは記憶に新しい)ことは、この事実の強い証左だ。
一方でその理由だが、もはや日米金利差等の要因では説明できず、背景にはもっと大きな構造的要因がある。
キャッシュフロー(CF)ベースでの円の流出に著者はその根本要因を求める。
日本は世界最大の国際収支黒字国として知られるが、海外で稼いだカネが国内に還流せず、海外にとどまる結果、CFベースでの円の流出が加速し、円安を招くのだという。
「オルカン」ブームをもたらした新NISAも(新聞等で家計部門の円売りといわれるように)この傾向に拍車をかけるものとなった。
新NISA制度設計者もこのリスクに気づいていなかったはずはなく、関係省庁一体となっての「確信犯」だったと推論する。
オルカンで海外投資した者は勝ち組(円安のメリットを享受)となれそうだが、結局は国内物価がコストプッシュインフレの影響を受け、生活水準の低下につながる。
そうした投資のできなかった低所得層においては、円安に対抗するためのコストダウン(実質所得の切り下げ)の波をかぶることとなる。
評者の理解不足で用語等が不正確だった場合にはご容赦願いたいが、著者の現状分析の大要は以上であり、評者もある程度は同意できる議論と感じた。
一方で、ではどうするか?という対策の部分については、あまり腑に落ちる内容が無かったのが残念だ。
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先月の植田ショックで少し円高にはなったけど、相変わらず円安なことには変わりない昨今。本書がその真因に迫っているということで読んでみた。
読んでみて思った。これは円安になっても仕方ないと。
AWSしかり、Azureしかり、Googleしかり、クラウドサービスは外資ばかり利用している(これをデジタル小作人というらしい)けど、逆に外国人が日本のクラウドサービス使ってるとは考えにくいしね。
新NISAでの投資先もオルカンだのS&P500だの、外国株ばかりだし、そりゃ円安になるよねと…。
円安によってインバウンド需要はあるけど、それに対応する人材が減っていく現状を考えると、それ頼みというのは難しいのだろうなと。
『図表1-20 日本における思考停止(brain freeze)』で特許数における日本が占める割合のグラフが載ってたけど、どの分野も右肩下がりで衝撃。日本はそのうちノーベル賞をとれなくなると聞くけど、それがよくわかるグラフだった。
ただし、ちょっと見方が分からない。「ブロックチェーン技術」というグラフがあるけど、1990年代から始まってるように見える。ブロックチェーンという技術が発明されたのは2008年だそうだけど、どういうことなんだろう?
アイルランドにグローバル企業が集積しているというのはなんとなく聞いたことあったけど、思ったより影響力が大きくて驚いた。一概にそれがいいわけではないようだけど。
新NISAについては自分も活用しているし素晴らしい制度だと思うけど、もう少し国内投資優位な制度にしてもよかったんじゃないかと思った。
つみたて枠はともかく、成長投資枠は日本株、もしくは日本株に投資する投資信託のみとしてもよかったのかもしれないと思う(といってる自分も、成長投資枠の半分は外国株の投資信託購入してるけど)。
それにしても、「安全資産の円買い」とか「リスクオフの円買い」っていったいなんだったのだろうと。正直、いまだに震災が起きて円高になったのがなぜなのかいまいち分かってない(今はその法則がなりたっていないらしく、今年の能登半島地震でも円高にならず、むしろ少し円安になったそう)。
円安になったら輸出数量が増加するはずなのだけど、どうも今の円安下ではそうなっていないらしい。まあ、いくら安くなっても需要がないと買われないしね…。
『図表4-5 世界の主要株価指数』のランキングにおいて、2024年3月までの過去1年間に株価が上昇した国ごとのランキングが載っていて日本は10位とのこと。そして、上位10国の対ドルの自国通貨はどれも下がっているとのことで、それが要因の一つというような感じで書かれてる。のだけど、2位のエジプトは対ドルにたいしてたった-0.8%という。エジプトはなぜこんなにあがったのだろう。
この円安の状況に日本ができることは、対内直接投資を促進させることだという。
どうやら、岸田政権は対内直接投資を促すことに積極的だったらしく、それによってTSMCの工場が熊本にできたり、海外企業によるデータセンターの建設が増えたりしているそう。
さらに、外資の企業は給料(時給)も高い傾向にあるとのことで、TSMC以外にも、��馬県にできたコストコの時給が群馬県の最低賃金の1.5倍以上だとのこと。
外資企業にとっては、日本は安いということだけど、むしろそれをいかしていくということかな。それがインフレ圧力になって国内企業も給料をあげていく傾向にあるのなら、いいことだと思う。
それにしても、岸田政権ってそんなに悪くなかったよなと思った。
支持率やけに低かったけど、ほとんど他の自民党議員の行いが原因じゃないかと思ったりしてる。
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なぜ円が弱くなったのか、構造的にわかる名著。
海外に4年ほど住んでおり、この4年で大きく円安が進み、コロナ前よりも日本が圧倒的に弱くなった、というのを肌で感じてきた。その中で、要因が一体何で、今後どうなるのかを正しく把握したくて読んだ。
結論、非常にわかりやすく、また日本人として何をすべきか考えさせられるものだった。
シンプルに要約すると以下。
日本の円安は国際収支構造に基づく構造的な円安であり、元には戻らないだろう。
今の日本は、経常収支は黒字だが、蓋を開けると貿易サービス収支が9兆円と大きく赤字、すでに貿易黒字国ではなくなっている。
黒字の要因は第一次所得収支と言われるもので、投資や配当金などによる不労所得のため、実はキャッシュフローを見ると円売りが大きく、赤字になっている。
貿易サービス収支の赤字は、コストカットによる海外生産へのシフトと、デジタル赤字と呼ばれるGAFAMのような外資大企業へ支払うプラットフォーム費用などが大きい。このデジタル赤字はプラットフォーム提供者が言い値でコントロールできるため、今後は肥大すると考えられる。
元々、日本では為替がFRBの金利施策と相関が高く、FRBの金利利下げ円高、利上げが円安につながってきた。ただし、貿易黒字だった時代は、需要のために結局円買いが発生していた。一方最近は、パンデミック後にFRBが大きく金利を上げており、かつ貿易赤字だったため円売りが加速してしまい、円安が進んでしまっている。
また、第一次所得収支が黒字でも、投資したお金の多くは海外で金融資産(保険など)として再投資されているため、日本に戻ってきていない。つまり、キャッシュフローでいうと円に戻ってきていない状態である。
このような背景の中で岸田政権が進めていた政策のひとつが、家計部門の「貯蓄から投資」への政策である。しかし投資先が円建てではなく外資建てになると、さらに円安が進むことになる。NISAなどによる外資投資も円安を誘発する一つの要因である。
とはいえ日本の家計部門は54%が預貯金であり、圧倒的に流動性がない、ここを動かすために将来は円建てに対する優遇策を考えることもひとつあるのではないか。
こういった中で日本は何ができるのか?
インバウンド収支はひとつ大きな施策だが、労働集約的な業務でもあり、人手不足のなかでメインにはならない。
また日本の対内直接投資はグローバルでみても非常に小さく、北朝鮮以下の水準。
円安はもう戻らないことを考えると、日本国内への外資からの投資誘致が大きなメリットになるのではないか。地政学的にも直近は友好国かどうかといった点が投資判断に大きくなっている。
また、投資をしてきている国はもはや欧米ではなくアジアが中心となってきている。アジアからの投資を、非製造業に対して行う、というのがひとつのキーポイントとなっている。
日本の将来をどうしても憂いでしまうような内容だったが、現実を把握しないと課題解決はできない。また、示唆されている対策が本当にベストかは分からない。とはいえとても勉強になった���だった。
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円の売れる要素が、あまり見当たらないため、円安になりそうです。円が売れるように、産業構造を変えていかないといけませんね。金融面やサービス面での議論が多かったですか、農産物の輸出を頑張ってみるとどうなんでしょうか?
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「はじめに」の結びとして前著と同じことを述べたい。資源の純輸入国である日本にとって「通貨の価値」は国民生活の生殺与奪に関わるテーマだ。これは2022年を通じて日本全体が痛感したはずであり、2023年以降はその結果として値上げが頻発している。円安が万能薬として喧伝された時代は終焉を迎え、為替に対する社会規範も2022年を境として明確に変わったと筆者は感じている。そうでなければ「悪い円安」という言葉が流行語大賞の候補に入ったりはしない(2022年にはそうした話もあった)。歴史に通底する事実として「通貨高は先進国の悩み、通貨安は途上国の悩み」だ。2022年以降、日本は明らかに「通貨価値が高いこと(円高)」よりも「通貨価値が低いこと(円安)」に悩む時間が増えた。それをもって「途上国になった」と言うつもりはない。だが、足場が崩れ始めているような感覚を覚えるのは筆者だけではないのではないか。前著に続き本書が、読者の方々にとって日本円ひいては日本経済の現状と展望を考える契機になれば幸いである。
「成熟した債権国」らしい仕上がり
本書執筆時点では2023年が曆年として取得できる日本の最新の国際収支統計となる。この点、同年の経常収支は+2兆3810億円の黒字だった(図表1-1)。これはひとえに第一次所得収支黒字が+34兆9240億円と史上最大を更新したことの結果である。第一次所得収支黒字は、いわゆる過去に行った投資の「あがり」の部分とも表現される部分だ。こうした国内企業や国内投資家が抱える巨額の外貨建て資産は今の日本に残された希少な強みである。そうした「あがり」の部分が歴史的な円安もあって膨張したのが2022年や2023年であった。片や、第一次所得収支黒字で大きく黒字を稼ぎつつも、2023年は貿易サービス収支が▲9兆4167億円と現行統計開始以来で4番目となる大きな赤字を記録したことも見逃せない動きではあった。ちなみに前年(2022年)の貿易サービス収支は大幅な資源高と円安が直撃したことで▲2兆665億円と過去に類例を見ない規模の赤字を記録していたので、そこから比較すれば「赤字が半減した」という表現も可能ではあった。実際、メディア報道においてはそのようなヘッドラインが目立った。しかし、その2年間だけで優に▲30兆円を超える赤字が出ていたことを踏まえれば、2022年から2023年の日本において円の需給構造が歴史的な歪み(具体的には円売り超過)に直面していたのは疑いようのない事実である。
また、見方を変えれば、2022年も2023年も、貿易サービス収支でそれほどの赤字を記録しながらも、まだ世界有数の経常収支黒字国として君臨できているという評価も可能ではあった。例えば、史上最大の貿易サービス収支赤字を抱えた2022年でも日本の経常収支黒字は約+35億ドルで、これは世界で9番目に大きい黒字水準であった(図表1-2)。経済学の世界には国際収支統計の項目を用いて、ある国が債務国から債権国になり、それが崩れていく展開を6段階に分けて解説する「国際収支の発展段階説」という1950年代に提唱された考え方がある(図表1-3)。2022年や2023年の日本の国際収支は見事に「財では稼げないが、投資の収益で稼ぐ」という「成熟した債権国」らしい仕上がりではあった。詳しくは前著をお読み頂きたいが、2012年頃までの日本は「財を売っても外貨を稼ぐし、投資でも外貨を稼ぐ」という「未成熟な債権国」という段階にあった。それから10余年の月日を経て、段階が1つ進んだ状況(図表1-3で言えばから⑤に移った状況)である。この点については異論が存在しないところだ。
「国際収支の発展段階説」を疑う目が必要
しかし、本章でこれから取り扱う「新時代の赤字」がこのまま膨らんだ場合、⑤の「成熟した債権国」が⑥の「債権国取り崩し国」に進む契機になるかもしれないというのが筆者の抱く問題意識である。半世紀以上前の理論では「新時代の赤字」は当然、想定されていなかった。言い換えれば、現在は理論的に想定し得なかったコースから経常収支黒字が削られる状況とも言える。
デジタル赤字は10年で2倍、四半世紀で6倍に
では、その他サービス収支とは何か。その構成項目は多岐にわたる。図表1-6に示すように、まず「知的財産権等使用料」の黒字を除けば全て赤字項目である。そして、各赤字項目の性質も多種多様だ。近年、新聞紙面で頻繁に報じられるようになっているのが「通信,コンピューター・情報サービス」で、2022年は1兆4993億円、2023年は1兆6149億円の赤字だった。2014年が▲8879億円だったので、10年で赤字額が約2倍に膨れ上がったことになる。ちなみに遡及可能な1999年では▲2668億円だったので、そこから約四半世紀で約6倍に赤字が膨らんだことになる。「通信・コンピューター・情報サービス」はいわゆるGAFAMに象徴される米国の巨大IT企業が提供するプラットフォームサービスなどへの支払いを反映することで知られており、別名「デジタル赤字」というキャッチーな呼び名が2023年以降、メディアでは盛んに使われるようになっている。具体的にこれはどういった取引を含むのか。
例えば、日本では政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」においてもアマゾンのAWS(Amazon Web Services)、グーグルの3GCP (Google Cloud Platform)マイクロソ フトのAzure、オラクルのOCI(Oracle Cloud Infrastructure)の4事業が採用されており、2023年11月にさくらインターネット株式会社の「さくらのクラウド」が初めて国産クラウドとして採用されたことが話題になった。海外企業のサービスを利用すれば当然、外貨の支払が必要になり、それは円売り圧力に直結する。こうした動きは企業や個人でも体感しているはずであり、例えばiPhoneのクラウドストレージに月額課金すれば、やはりドル買い・円売りに加担していることになる。本書執筆時点であれば、50GBで130円、200GBで400円といった料金体系が「iCloud+」として用意されている。ほかにも、米OpenAI社の人工知能(AI)チャットボットであるChatGPTなどへの課金も「通信・コンピューター・情報サービス」に入ると見られる。例を挙げれば枚挙に暇がなく、その数は今後、年々増えていくと予想される。こうした項目に関するサービス取引について赤字が膨らんでると聞いて、日常生活の実体験から強く共感する読者は多いのではないかと思う。
外資系コンサルブームも「新時代の赤字」に寄与?
ちなみに、その他サービス収支の赤字はこうした「通信・コンピューター・情報サービス」だけに起因するものではない。そのほか「専門・経営コンサルティングサービス」の赤字も2022年は1兆6313億円��2023年は2兆1246億円と「通信・コンピューター・情報サービス」よりも大きな赤字を記録している。「専門・経営コンサルティングサービス」は広告取引や世論調査などにかかる費用が計上されたりする項目であり、当然、インターネット広告を売買する取引などもここに含まれてくる。この意味で「専門・経営コンサルティングサービス」もデジタル赤字の色合いを含んだ項目である。しかし、項目名が示す通り、外資系コンサルティング企業の日本における取引も反映している。多くの読者が知る通り、近年の日本では大学卒業後、外資系コンサルティング企業へ新卒で就職したり、もしくは転職したりするケースが増えている。筆者の周りでも業種問わず外資系コンサルティング企業に転職したという話は非常に多く、一種のブームのような機運も感じる(もちろん、ブームだと一過性で終わってしまうため、表現としては適切ではないかもしれない)。ここで重要なことは、それだけ外資系コンサルティング企業の事業拡大が日本で図られているという事実だ。外資系企業である以上、日本で計上した売上・利益の一部は本国へ送金される。日本人(日本企業)から見ればサービスの対価として外貨を支払っていることになるため、彼らの事業活動が日本で活発化するほど、それは円売り圧力に直結すると考えるのが自然だ。
「思考停止(brain freeze)」がもたらしたサービス収支赤字拡大
こうした「思考停止(brain freeze)」と揶揄される状況は「研究開発サービス」の赤字が拡大している事実と整合的であり、ひいてはサービス収支赤字が拡大している事実とも整合的に感じられる。真っ当に考えれば、「研究開発サービス」で劣後する国がデジタル関連収支で黒字を積み上げるのは難しい。だとすれば、The Economist の記事を踏まえると、2023年時点で▲5兆円を優に突破するデジタル関連収支赤字の背景も結局は少子高齢化という人口動態問題に帰着するという読み方もできる。執拗な円安地合いの背景も、様々な経済・社会課題と同様、結局、人口動態要因に行き着いてしまうのか。いずれにせよ、デジタル関連分野やコンサルティング分野、そして研究開発分野のように、これまで為替市場との関連がさほど注目されていなかった分野から外貨が流出する構造が根付き始めているのが近年の日本の対外経済部門の実情である。円相場の現状や展望を検討する上では、こうした構造変化を踏まえる必要性が年々増していると筆者は考えている。
「国際収支の発展段階説」にまつわる2つの問題点
そろそろ本章を締めたいと思う。最後は第1章と第2章を総括した上での議論とする。前掲図表1-3でも確認したように、「国際収支の発展段階説」に照らせば、現在の日本は財の貿易で外貨を稼ぐのではなく、過去の投資の成果として外貨を得るという典型的な「成熟した債権国」である。2022年9月に上梓した前著ではこの立場を疑ってかかるべきだという主張を展開し、書籍の帯では「成熟した債権国の夕暮れ」とやや踏み込んだ表現を付けさせて頂いた。こうした悲観的な論調に対し、相変わらず「統計上の黒字」に拘泥して「国際収支にまつわる過度な悲観論は誤りだった」という主張も見かけるが、浅薄な理解から導かれた浅薄な主張と言わざるを得ない。「国際収支の発展段階説」���決して完璧ではない。第1章でも述べたように、目線をアップデートしながら運用すべきである。
1950年代に提唱された同説を現在に持ち込むに際し、少なくとも2つの注意点が必要だと筆者は考えている。1つは第一次所得収支黒字の過半が自国通貨に回帰してこないという状況が十分に想定されていないこと、もう1つはサービス取引の国際化が隆盛を極め、その供給側(特に米国)の価格支配力が極度に強まるという状態が想定されていないこと、である。前者については、統計上の水準や符号を重要な判断材料とする「国際収支の発展段階説」にとって大きな問題点となり得る。理論上、「成熟した債権国」から「債権取り崩し国」へのステップダウンが検討されるにあたっては「貿易収支赤字が非常に大きくなり、第一次所得収支黒字では補いきれなくなるので、経常収支が黒字から赤字に転じる」という状況が想定されている。だが、筆者の仮説が正しければ、日本は「成熟した債権国」でありながら「第一次所得収支黒字の大部分が海外に残るため、CFベースで見れば、そもそも貿易収支赤字を補い切れていない」という状況が出現しやすくなっている可能性がある。言い換えれば「成熟した債権国」という仮面を被った「債権取り崩し国」である可能性が疑われる。
また、後者についても、理論上は想定されていない状況と言える。第1章で見たように、現状、日本の企業部門や家計部門の経済活動ではGAFAMのような米巨大IT企業の提供するプラットフォームサービスに定額課金する状態がビルトインされてしまっている。しかも、それらの企業が行う値上げに抗する力は恐らく殆ど無い。それゆえに「デジタル小作人」や「デジタル農奴」といった言葉で主従関係が皮肉られる現状に陥っている。少なくとも現在から将来にわたってデジタルサービスの利用が減るという展開は考えられないのだから、貿易サービス収支におけるサービス収支の比重は今後ますます高まることが予想される。GAFAMのようなプラットフォーマー(言い換えれば地主)が提供するサービスの利用者(言い換えれば小作人)であることを離脱し、あらゆるデジタルサービスが国内で内製化される状況を想定しない限り、サービス収支赤字はデジタル関連収支主導で拡大していく公算が大きい。
なお、「国際収支の発展段階説」では暗に貿易収支とサービス収支が同じ方向に変化する未来を仮定しているわけだが、米国のように貿易収支は大幅赤字だが、サービス収支は大幅黒字という事例も出ているわけで、やはり理論的に想定していない時代の変化はどうしても起きている。また、6つの発展段階が必ず不可逆的に進展していくとは限らず、高齢化が進んだ成熟国として知られる北欧諸国やスイスなどにおいては経常収支黒字が維持された状態が続いている。結局、「国際収支の発展段階説」の枠に収まらない事態はいつでも、どのような形でも起こり得る。今後、第一次所得収支黒字からの円買い需要が限定され、サービス収支赤字によって貿易サービス収支の赤字の拡大が続くのだとすると、CFベース経常収支というレンズを通してみた日本の実情(本書的には円の需給環境)は「成熟した債権国」というよりも「債権取り崩し国」の方が近いという考え方は十分検討に値するものではないか。
日本は「仮面の黒字国���ないし「仮面の債権国」
よく知られている通り、円は安全通貨や逃避通貨といったレッテルを貼られてきた。こうした安全性を担保してきたのが「世界最大の対外純資産国」というステータスである。「世界最大の対外純資産国」とは、言い換えれば、「世界で一番外貨建て資産を保有している国」であるため、この事実をもって安全な通貨だと発想すること自体、誤りとは言えない。極論すれば、仮に外貨売り・自国通貨買いという通貨防衛戦に至った時に「最も弾薬がある国」という見方もできるのだから、少なくとも積極的に売られる通貨にはなり得ない。しかし、それはあくまで極論であって、「世界最大の対外純資産国」の解釈には注意を要する。これまで論じてきたように、日本の経常収支構造は明らかに変化している。その経常収支の黒字を累積したものが対外純資産なのだから、当然、対外純資産の構造変化も意識する必要がある。経常収支構造の変化は多岐にわたるが、黒字を支える主柱が貿易収支から第一次所得収支に切り替わったという点は最も大きい。既に見てきたように、第一次所得収支は海外有価証券から発生する利子や配当金などを含む証券投資収益と日本企業の海外子会社から発生する配当金や内部留保などを含む直接投資収益がある。本章を通じて議論してきた通り、日本企業の海外企業買収が盛んになった2011年以降、直接投資収益の比重が増しており、特に海外にそのまま残る再投資収益の割合が増えている。この点は前著や「【BOX④】:「普通の通貨」になった円~震災と円相場~」で議論している。結果、CFベースで見た経常収支が安定的に黒字を稼げなくなっている可能性は既に述べてきた通りだ。
これを対外純資産という視点から見れば、「直接投資残高が増えているから直接投資収益も増えている」という事実が想起される。図表2-9を見ればその通りで、既に2019年頃から日本の対外純資産残高の半分近くは直接投資で構成されている。繰り返しになるが、これは2011年頃から日本企業が行ってきた旺盛な海外企業買収などの結果だ(前掲図表1-9)。買った会社を簡単に売却することは無いのだから、この部分は「売られたまま戻らぬ円」と考えられる。しかし、2000年代初頭、外貨準備の存在も踏まえれば、対外純資産の殆どが海外有価証券であった。具体的にこれは米国債や米国株などが想定される。海外有価証券であれば流動性も高いため、確かに市場心理が悪化するタイミングで日本へ還流する動きなどが期待できたものの、直接投資であればそうはいかない。
既に日本について「成熟した債権国」という仮面を被った「債権取り崩し国」ではないかと論じたが、保有している外貨建て資産の多くが戻ってこない(戻す当てのない)資産ならば、やはり対外純資産国という表情はあくまで仮面であるように思える。
もちろん、本当に制御不能な円安相場に直面し、国を挙げて通貨を防衛する段階に入れば、日本企業が保有する外貨建て資産を強制的に国内へ還流させるような力業も検討されるかもしれない。例えば、穏当な手段としては2022年の円安時に期待する声も上がった企業部門に対するレパトリ減秘などは好例である。しかし、民間部門の資産保有形態にまで干渉して為替需給の改善を図ろうとする行為はあまり筋が良い政策とは言えず、そもそもかなり追い込まれている印象を与えるかもしれない。これを見た投機筋からつけ込まれる恐れもあるだろう。あまり想定したいシナリオではない。
「仮面の黒字国」ないし「仮面の債権国」として経験する円安にどこまで政治・経済・社会が耐えられるのか。毎月発表される経常収支の黒字水準を楽観的に騒ぐのではなく、その背後にある変化を見定めることが、円ひいては日本経済の現状と展望を分析する際に必要な目線と考える。なお、第1章や第2章で示した議論は筆者自身、まだ発展途上だと考えている。今後、研鑽を重ねることで分析の精度を上げていきたいと思う。
日本人の消費行動と内外金融市場がリンクする時代
そろそろ本章を締めよう。歴史的に日本の家計部門の金融資産構成は円の現預金が主体だった。よって、その消費・投資行動が内外金融市場の変動に影響される可能性などはあまり考える必要が無かった。しかし、上でも述べたように、国内外のリスク資産(典型的には米国株式など)を多く保有するようになれば、FRBを筆頭とする海外中央銀行の動きやこれに付随する資産価格の変動を受けて、日本の家計部門の消費・投資行動に影響が出る展開は避けられない。日本人の消費行動と内外金融市場が連動する時代に入ったとすれば、興味深い分析テーマではある。
今後の日本において名目賃金の上昇率がインフレ率に勝てないような状況(実質賃金が下落する状況)が続くと仮定すれば、資産運用の必要性を訴える政府の主張にも一理あるし、ひょっとしたらそれしかないという考え方もあり得る。長期低迷が続く日本の名目賃金を念頭に置いた上で、政府・与党が「運用で補って欲しい」という本音を抱いていたとしても、さほど不思議ではない。そうであったとしても、国民に選択肢を示したという意味で資産運用立国という政策自体、筆者は決して悪いとは思っていない。
なお、資産運用立国という錦の御旗も相まって、「今までよりも資産運用ニーズは増える」という想定はかなり堅いものだ。金融庁の発表する「NISA口座の利用状況調査(2023年9月末時点)」によれば、旧NISAの口座数に関し、30代(11.5%)・40代(18.9%)・50代(18.3%)がコアゾーンで60代以降はシェアが低下する。見方を変えれば、今後高齢者になる世代は従前の高齢者世代とは異なり、運用意欲と金融リテラシーを備えた層に入れ替わっていくことが想定される。また、上記コアゾーンである30~50代も「円安の痛み」を知る世代に入れ替わっていくので、外貨建て資産への運用意欲が一段と強い層になっていく可能性がある。既述の通り、円安相場が持続性を持つ(円高になっても限定的)と考えるのならば、外貨建て資産を保有すること自体は「投資」であると同時に「防衛」にもなる。これまで貯蓄に傾斜してきた日本人が初めて投資に積極的になるとしたら、やはり自己資産に対する危機感の芽生えが契機になるのだろうか。その防衛意識は過去の世代よりもこれからの世代の方が強いに違いない。このように考えると、ここから運用ニーズが萎むとは考えづらい。政府の施策に関わらず、資産運用立国化は今後も着々と進むと思われる。
同時に、運用の大部分が外貨建て資産に向かう状況が続けば、それに伴う効果・副作用の検証・分析も相応に求められて然るべきであり、この���は経済・金融分析を生業とする経済学者や金融市場のエコノミストなどが適宜、問題提起していくことになるはずだ。資産運用立国を目指す過程で日本人の消費・投資行動と内外金融市場がリンクする時代に入り、米国の政策運営に左右される側面が大きくなることについて、懸念を表明する論陣も増えるかもしれない。その懸念にも一理はある。しかし、四半世紀以上、名目賃金が上がらなかった世界と比べれば、まだ希望が持てるのではないか。調査・分析すべき論点は山積みだが、国民の関心を資産運用分野へ向かせただけでも収穫はあったと筆者は考えるようにしている。
対内直接投資促進に本腰となる日本政府
では「円安を活かすカード」として旅行収支が助攻だとした場合、主攻は何か。本書執筆時点では対内直接投資の促進と回答するのが一番適切だろう。これは岸田政権の政策方針とも合致する。2023年6月16日、次年度予算編成や重要政策の基本的な指針となる「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針)」が閣議決定された。ここでは海外から日本にして行われる対内直接投資残高について期限と水準の目標値が明記されている。
・海外からヒト、モノ、カネ、アイデアを積極的に呼び込むことで我が国全体の投資を拡大させ、イノベーション力を高め、我が国の更なる経済成長につなげていくことが重要である。対内直接投資残高を2030年に100兆円とする目標の早期実現を目指し、半導体等の戦略分野への投資促進(中略)我が国経済の持続的成長や地域経済の活性化につなげる。
なお、本書では手に余るので敢えて議論を避けたが、投資を請う相手が外資系企業であれ、国内企業であれ、生命線となる論点に電力問題がある。本書執筆時点のドイツではエネルギー政策の失政が対内直接投資の減少に繋がり始めており反面教師の様相を呈している(「【BOX】:日独GDP逆転の本質~為替要因だから良いのか?~」を参照)。ことエネルギー政策に関して言えば、理想と現実の乖離を読み間違えたドイツと同じ轍を踏んではならない。例えば今後、生成AIの普及が進む一方だと仮定すれば、電力需要は確実に増大するしかないだろう。既に米巨大IT企業がこぞってデータセンター増強に踏み切っているのだから、その未来に向けて現実は動き始めているとも言える。では、島国・日本として、いつまでに、どのような手段で安価な電力を安定的に確保するのか。その絵図は早急に描く必要がある。この議論も次回以降の書籍に取っておきたいと思う。また、この点は繰り返し論じてきたが、企業活動によって電力と並んで生命線になるのが労働力不足の問題である。今後の日本において、移民政策の実現可能性をどう考えるべきなのか。この議論も別の機会に譲りたい。
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基礎知識がないとなかなかわかりづらいですが、何とか読み切りました。いいことも悪いことも選択するのは国民を意思だと言う事ですね。選挙行かないとまずいですね。日本の今ある倦怠感がなんとなく説明されてるような気がします。
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経常収支は黒字でもキャッシュフローから見た円の実需はマイナス。インバウンドを打ち消して余りあるデジタル赤字も寄与。当面この流れは変わらない。貯蓄から投資への移行で家計までもが円売りに走る可能性が高い。これらが相まって長期的には円安基調が続く。
実に真っ当な結論で、誰も異論は無いように思える。原因を突き詰めれば人口動態だと思う。シュリンクすることが確実な市場に誰が投資しようとするだろうか。その意味でもう手遅れのように思われる。
この事実を踏まえて、今後我々日本人がどのような社会を選択するのかが問われている。外国企業の直接投資を処方箋として挙げていて、それで経済統計は持ち直すだろうが、当の日本国民がハッピーになるだろうか?外国企業に雇用される具体的な姿が思い浮かばない。少なくともジョブセキュリティはうんと下がる気がする。格差も広がるだろう。
このまま何も手を打たず円安が進んで日本が三流国家になったとして、それとどっちがマシなのか?
それぞれが具体的にどのような世界になるのか頭の良い人にシミュレーションで示して欲しい。進路を決めるのはそれからだと思う。
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2024年83冊目。満足度★★★★☆
ドル円を中心とする為替レートの変動は企業も日本国民にとっても大きな関心事となっている
本書は、かつて、日本を苦しめてきた「円高」の再来などは「構造的」に起こりにくい状況になっていることを数々のデータを示して論証
昨今、海外への投資が増えている多くの個人投資家にとって、読んで損がないオススメの一冊
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専門外では、細かい数字は難解であるが、円安の背景、厳しい日本の経済環境は、理解できる。しっかり心して対応する気持ちになる。
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貿易収支の赤字化を境に、円高の歴史が終わった。所得収支は蓄積されて円に戻らないから円高要因にならない。
「新時代の赤字」は米金利の低下では消えない。
国際収支の発展段階説では、成熟国は通貨高になるはずだが、新時代の赤字と、所得収支が戻らないことから赤字は消えない。
新時代の赤字とは、サービス収支の赤字のこと。
デジタル赤字、コンサルティングサービス、研究開発の赤字、知的財産権収支は黒字、著作権使用料はデジタル赤字とともに赤字。
保険、年金も積み上がると積立金の運用、再保険料が円安の一端となっている。
アイルランドは、デジタル貿易が大幅黒字=低法人税のため大企業の本社が置かれている。
研究開発投資も日本に残らなかった。
人口動態が高齢化することで社会のイノベーションが起きなくなっている。
シンガポールが子どもに補助金を支給しても出生率が戻らなかったように、出生率の増加に政府は無力。
イノベーションボックス税制の導入は世界的な動き。
同じ人口減少社会でも、韓国やスイスは貿易収支が悪くなっていない=研究開発を怠ったツケではないか。
旅行業も人手不足を考えると救世主にはなれない。インバウンドによって人手不足が加速=人件費の高騰=インフレの輸入。
デジタル収支はアメリカ、英国、EUの3強。通信コンピューター情報サービスで日本が弱い。
以前は円は逃避通貨だった。国難のとき円高になったが、今は国難になると円安になる=普通の通貨。安全資産、リスクオフの円買い、はもはやない。
家計部門も円売り=貯蓄から投資へ、海外投資信託が売れる。対外証券投資の半分が家計による投信買い。
すでに日本人は円安物価高になれている。
今後、NISAの拡充で、国内投資向け優遇策が出るかもしれない。英国のISAがその方針を発表した。
PPP(購買力平価)では円安は過剰になっている。どちらが訂正されるのか。円安=輸出数量増加、にならない。円安は株高を呼ぶ。
対内直接投資で変わるか。TSMCやコストコ、イケアなど。英語力の不足と行政手続きの煩雑さがネック。
スローバリゼーション=直接投資の分断化。耐久性のあるサプライチェーン作り=友好国回帰は日本に追い風になる。
対内直接投資は、外資の収益になるだけ。
アイルランドでおきたことは、GDPよりもGNIのほうが28%も小さい状態。国内の生産量は大きいが、居住者の所得合計は小さい、ということ。