人はどう悩むのか
著者 久坂部 羊
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざ...
人はどう悩むのか
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商品説明
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざまな困難が待ち受けています。
長生きとはすなわち老いることで、老いれば身体は弱り、能力は低下し、外見も衰えます。社会的にも経済的にも不遇になりがちで、病気の心配、介護の心配、さらには死の恐怖も迫ってきます。
そのため、最近ではうつ状態に陥る高齢者が増えており、せっかく長生きをしているのに、鬱々とした余生を送っている人が少なくありません。
実にもったいないことだと思います。
その状態を改善するには、どうすればいいのか。
身体を鍛え、機能の低下を防ぐためにあらゆる努力を重ねることでしょうか。
ちがいます。老いに抵抗することは、どんどん数が増える敵と闘うようなものです。それならば老化予防に執着するより、早めの和平、すなわち実現可能な状態で満足するほうが理に適っています。
身体が衰えるのは致し方ないとしても、精神的に健康であれば、日々をよりよく生きられるでしょう。病気や障害があっても、経済的に恵まれていなくても、家族がいてもいなくても、精神的に満たされていれば、幸せを感じることができるはずです。
「幸せな老後」を実現するのに、何より大切なことは、精神的に満たされること、すなわち、「精神の健康」です。
私は精神科医ではありませんが、福祉系の大学で「精神保健学」を昨年(2023年)まで、15年間、学生たちに講義をしてきました。精神保健学とは、文字通り「精神の健康(メンタルヘルス)を保つ」ための学問です。「精神の健康」とは、言い換えれば「毎日を気分よくすごせる状態」です。悩みや不安もなく、社会人、家庭人、個人として、健全な生活をしていることです。すなわちそれは、「幸福」ということで、年齢や地位や財産などに関係なく、生きていく上でもっとも大事なものではないでしょうか。
そこで、本書では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説していきます。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、今回は逆に高齢者の側からたどってみたいと思います。
というのは、今の超高齢社会では、高齢者うつなど、「精神の健康の危機」に直面している人が多いからです。お釈迦さんが唱えた「生老病死」の四苦のうち、「老病死」の三つが襲いかかってくるのが高齢者です。悩みは心に生じるもので、物質や事実のように客観的に存在するものではありません。それなら、事前に悩みのありようを知ることで、実態のない悩みを少しは抑えることができるのではないでしょうか。せっかく手に入れた長生きを、気分よくすごす。それが本書の目的です。
目次
- はじめに
- 第1章 他人事ではない高齢者うつ
- うつになりやすい高齢者/「うつ」とはどういう状態か/うつ発症のきっかけ(・退職して仕事がなくなる・配偶者の死・同世代の知人や友人の死・麻痺や不自由を伴う病気・身体の機能低下・環境の変化・些細な失敗・その他)/うつのサイン/うつと仮性認知症/うつの治療/うつの予防
- 第2章 うつだけではない高齢者の悩み
- 老年期の三大喪失体験その1身体的喪失/老年期の三大喪失体験その2社会的・経済的喪失/老年期の三大喪失体験その3性格の変化/老いを認めない悩み/したいことができない悩み/周囲に迷惑をかけたくない悩み/リハビリの悩み/完全主義者の悩み/プライドがもたらす悩み/世の中の変化に対する悩み/敬老精神の衰退に対する悩み/不安と疑心暗鬼がもたらす悩み/配偶者に先立たれる悩み/長生きをしすぎる悩み/自殺に至る悩み/家族と友人の大切さ、ひとりで生きる強さ
- 第3章 中高年の心の危機
- 中高年にも危機はある/会社人間のジレンマ/リストラの恐怖/昇進うつと上昇停止症候群/定年というハードル/中高年の家庭に潜む危機/重複する困難/夫源病・帰宅拒否症/熱心な母親が陥る空の巣症候群/男女ともにある更年期障害/人生の折り返し点という危機/中高年のうつ/アルコール依存・買い物依存・ギャンブル依存/逸脱行為・妄想から人生の破綻へ/危機を乗り越えるには
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