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投稿者:わらび - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻はけっこう時間がかかったのに、下巻は先が気になるあまり、3日で読破。
上質な日本文学の世界を味わわせていただきました。
何度も読み返したくなる作品です。
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ハードブックの頃から、読みたいなぁ〜ってインスピレーションが湧いていたのだけど、他の本に押されて後回しになってしまいました。
それが新潮文庫から出ているのを見つけて即買い〜!
それでも、またまた他の本を先に読んでしまって後回し・・・
今調べたら、買ったの、なんと1月22日! 積読期間、長かったですねぇ・・^_^;
しかぁ〜〜し、読み始めたら、なんと面白いこと!!
上下合わせて1200ページ以上の大長編、本編に入る前に水村美苗さんの自伝とも思われる200ページもの序章があります。
そしてこのお話、現実にあったお話らしいです・・・
序章に、ニューヨークに渡ったばかりの東 太郎がアメリカ人のお抱え運転手として登場、当時、父親がニューヨークに駐在していた水村美苗一家と関わってきます。
20世紀後半にニューヨークの日本人社会に住んでいた人なら、知らない人はいないらしい『東 太郎』
時代背景は戦中から20世紀の後半まで・・
エミリー・ブロンテの『嵐が丘』のような話と作品説明にはありますが、そこにジェフリー・アーチャーの『ケインとアベル』と立原正秋の『恋人たち』を足したような・・あれ?それって私の大好きな作品ばかりではないですか!
舞台は成城学園辺りと、夏は軽井沢・・推測するに六本辻辺りではないかと思うのだけど、そこの洋館に集まる人たち、前半は美人三姉妹が中心になり、中半は三姉妹の次女の末娘と中国から引き上げてきた一家の末息子、これが東 太郎なのだけど、の、道ならぬ恋物語、ニューヨークに渡った東 太郎の立身出世物語を長年に渡って一族に仕えた女中:フミ子のとわず語りで進んでいきます。
私自身、最近は居続けるってことはないけど、物心つく前から親のいう事を聞いている間は、夏はずっと軽井沢で過ごしていたり、1980年にNYにいたり、物語の時代背景や舞台の2/3位を共有している気分で、知ってるお店や景色が次々に出てくるので、読んでて頭の中で易々と映像化されていきました・・・もお、とにかく面白い!!
これ、そう言っちゃうと俗っぽくなってしまいますが、お昼の1:30からの連続ドラマの原作になりそうなお話です。
そう言えば、恋人たちも根津甚八、大竹しのぶでドラマ化されましたし、ケインとアベルも映像化されましたね〜
少年期に柳楽優弥、成人してからを豊川悦司・・がいいけど、これだと1:30枠では実現しないか^_^;
他にも女中さん役、よう子役・・三姉妹の少女時代、壮年時代・・頭の中で色々と映像化しながら読んでいました。これもまた楽しい♪
東 太郎さん、1947生まれだそうですが、今、どこでどうしていらっしゃるのやら・・・・・
私の惹かれる男性像:道太郎さん、ケインに東 太郎さんを追加したいと思います。
なんか久しぶりに、強く惹かれる男性像に出会ったなぁ・・・(〃∇〃)
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んー。感想はなんともいえないなぁ。
この話を後世に残すのは意味がある。
そのためにこの人はこの小説を書くために作家になったのだなとは思うが、これ以外の作品はかけないだろうという点が致命的だな。
いい意味で裏切ってくれたらと期待はしたい。
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やっぱり不思議。
登場人物のすべてが、どこかで私の記憶や祖母や両親の記憶とつながるような気がする。
懐かしい思い出が蘇るようで、せつなくてたまらない気持ちになる。
嵐が丘の翻案小説でテーマ自体はきわめて一般的なはず。
なのに、自分自身のルーツを強く意識させられる。
祖母と母と私との紐帯を思い起こさせる。
ワイルドスワンを読んでもこんな風には感じなかった。
日本自体が希薄になったとはいえ、私もやはり日本人だということだろうか。
堪えきれない何かをぐっと噛み締めるような横顔や、
黄色い灯の下でのささやかな微笑みを見ながら、私も育ってきた。
作者はきっと、異国の地で母国の香りを何度も何度も繰り返し蒸留して濃縮してきたのだろう。
ここまで濃縮しなければ感知できないほど、無色透明な都会の生活の中で私の日本人としての感覚は鈍くなっているのかもしれない。
愛が人生を左右することは知っている。
でも、それが人生に幸福をもたらすのか、私にはわからない。
それは、太郎やよう子や冨美子や雅之が幸福なのかどうか、当人にすらわからないことと同じ問題だ。
死ぬ間際に死を意識してはじめて、ああ私の人生は幸福だったと思う、幸福はただそれだけのことなのかもしれない。
あるいは、死ぬ間際に死にたくないと思う、それが唯一の幸福の証なのかもしれない。
しかし、よう子が幸福でないとすれば、ふみ子はどうなるのだろう。
太郎のよう子への愛は常にふみ子への罪に転じるのであり、よう子の幸福の裏返しがふみ子なのだとすれば?
いずれにしろ、幸福も愛も望みどおりにいくことが全てではない。
生は死によって照らし出されるのであり、身分の際が二人の濃厚な世界を際立たせ、純粋であればあるほど残酷きわまることになる。
経済的な富に自らのルーツを断絶され希薄化してしまった日本人は、なんでも望みどおりに手に入るような気になって、表面上の幸福や愛を語ることしかできないから、自分自身が何を求めてよいのかわからずさまよっているのかもしれない。
だから結局、合理的で狡猾になり下がるしかないのかもしれない。
愛が何かわからなければ、愛されることはおろか、愛することすらできないというのに。
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推理小説慣れしてしまったわたしの頭には
かなり刺激の少ない本だった。
ただ刺激が少ないからといって
面白くないというわけではない。
軽井沢の自然や東京の昔の町並みのなかで
話は展開する。
祐介の友達が嫂やその妹のことで
カルい会話をするところなんかは現実に引き戻される。
東太郎の人生が語られ始めるとあっという間に読める。
冨美子がずっとメインで語っていたのに、
最後に冬絵の登場で冨美子が語る立場から
小説の登場人物へと代わる。
ここで冨美子の悲しさ、
現実がどっとあふれ出てくる。
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水村さんの仕事を一つずつ丁寧に検証していきたいと思わせてくれた一冊です。彼女を称して、「寡作な小説家」と言う人がありますが、これは現代において最高の敬称だと思います。彼女の作品を眺めると、単に物語るだけでなく、小説の可能性を常に模索し続けている姿勢が伺えます。そこに学問的な姿勢を感じてしまうのは私だけでしょうか。
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上巻の読み始め、すごく時間がかかった。その部分だけは「つまらない」が正直な感想だ。それはなにか機械化されて上がり下がりのない文章の羅列に感じた。だが、それが無いとこの作品はもっとつまらない。それぐらい必要なソースだったと思う。読み終わった後の圧倒的な焦燥感。いつまでも思い出のように本格小説の世界が頭の中で広がっている。子供の頃の世界、青年期の世界、大人になってから、その後今に至るまでなぞった部分を思い返す。そして最後の結末。本当にせつない。いつまでもあの頃の2人が遊んでいる文章が離れない。
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よう子ちゃん、雅之さんの情愛の深さ、太郎ちゃんの子供のままの激しく深い愛情に何度も読む手を止めて感慨に浸りました。
語り手が変わるごとに登場人物の思いの深さがさらに加わり、ページを戻ります。
最後のフミ子さんの事実に腑に落ちます。
「日本人が希薄になった」は作者の感でもあるのでしょう。
作者のあとがきで現代に戻ってきますが、しばらく余韻が抜けませんでした。
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数年前の夏、仕事で軽井沢に住んでた時に、運命的に出会った一冊。
この本をあの環境で読めたことは、いま考えても本当に幸せなできごとでした。
大げさだ昼メロだ、という人もいるかもしれないけれど、わたしは何度読んでも感情を揺さぶられてしかたない。
物語のとてつもない力を感じさせる、まさに自分好みの作品です。
土屋富美子の人生って何だったんだろう?生きる意味なんてものを、危うく考えてしまいそうになる。
ラスト近くで太郎が言う、日本人は「浅薄と言うよりむしろ希薄」という言葉には、束芋の作品(特に団地をモチーフにしたもの)を連想しました。
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しっかりどっしりとした小説で、その重厚な世界観に引き込まれる。
もっともっと色んな人の語りを聞きたかった。
写真が挟まれているせいか映像をとても想像しやすいけれど、物語が軽くなってしまうのは怖いから小説のままでいてほしいような気もする。
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まさに日本の「嵐が丘」3つのストーリーが複雑に展開し、1つにまとまる。複雑だがそれを感じさせない。それぞれの登場人物の深い思いが読者に伝わる。1世代前の日本語の美しさを思い出させてくれた。
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上巻から引き続き、東太郎のこれまでが語られます。
下巻も一気に読んでしまいました。
戦後から平成まで、日本がどう変わってきたのか、日本人がどう変わってきたのか、が描かれています。
『嵐が丘』を日本の戦後を舞台に書いてみた、そこから浮き上がってくる「日本」の姿、というのでしょうか。
変わってしまった日本を考えて、まだ消化不良です。
久しぶりに読みごたえのある小説を読みました。
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余韻のある恋愛小説でした。どうでもいいことですが、主要登場人物が大体優雅で美男美女と言う設定ながら、主人公の女性が、その中ではブスっていうは作者の好みなんでしょうか。
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下巻に入るともう一気読み。そして読み終わるのがもったいなくて、いつまでもいつまでも読んでいたいと思うような。単なる恋愛ものではなく、もうこれは戦後日本のすべてというものがつまっているような感じがした。それとさまざまな人たちのさまざまな人生。人生とは、と考えさせられるような。ものすごく読みごたえがあって。まさに本格小説。すごく客観的に人やものごとをながめられる女中フミさんの語りで、人ひとりひとりの人生全体をながめられるような感じ。フミさんの、人生なんてそんなもの、っていう感じ方に共感するような。人生は、はかない。「本格小説が始まる前の長い長い話」からずっと、著者が、将来がひらけているかどうか、未来があるかどうか、とか、そして結局どんな人生だったか、なにを得られたのか、みたいなことをずっと考えている感じが好きだった。なんだかすばらしすぎて感想がうまく書けない……。
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ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちになった伝説の男の数十年にも及ぶ悲恋の物語。
愛するということに切なくてやりきれない気持ちになります。
読後も余韻の残る物語でした。所々に差し挟まれた写真が想像力を一層広げてくれます。