記憶を食む

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●読前#記憶を食む
僕のマリさんの作品は波長が合う感じですごく好き。一方、食にこだわりや思い入れがないので、食に関する読み物はまったく好きではない。本作は好きと好きでないものの組み合わせ。はたしてどちらが勝るのかに内容以上に興味がわく
https://mnkt.jp/blogm/b241106b/

●読後#記憶を食む
大好きな僕のマリさんだけど、僕が楽しめない食に関する作品で不安だったがすごくすごく楽しめた。「風邪を引いても食欲はある」「燃費が悪い身体」など、僕と同じ特質をマリさんが持っていることが書かれていて、さらに好きになった
https://mnkt.jp/blogm/b241106b/

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本当に烏滸がましいのだけど、読むたびに｢私がいる！｣と思う程、自分と似ている部分を沢山見付ける。ああ、わかる…！と笑っちゃったり、うんうん頷いたり、グッときたり。
日々の繰り返しの中で体に優しい美味しいものを作って食べたり、時にとびきりジャンキーなもので胃をいじめたりしながら大切な人たちと笑いながら楽しく生きていきたいな、と思う。｢美味しい｣は幸せ。
この本もまた何度も読み返す一冊になるんだろうなあ

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食べたことで思い出すこと、とある出来事があって食べたことを思い出すこと。
『記憶を食む』のタイトル通り、食と記憶が密接に絡み合う。

・美味しすぎなくて美味しい、という喜びも確かにあって、そういうものほど心に残ったりする。それはわたしにとって、お祭りの屋台の食べ物だったり、ファストフードだったり、コンビニの肉まんだったりする。（p.47）

…意外と中高時代に食べた20円の駄菓子や、試験勉強で飲み続けたバーミヤンのドリンクバーといったものを覚えていたりするものだ。
　ピザトーストに乗っていた玉ねぎを見て「口が臭くなるから食べない」といって学校に行く前に断って、「そう」とだけ母親に言われ、その後ピザトーストが朝食に出てくることはなかった、という話がけっこうつらいなあと思える。人を傷つけつつ、自分も傷つくような拒絶の記憶もけっこう残ったりもする。
　ホタルイカが豊漁で、どこでも安く買えたという話で、「ホタルイカと菜の花のパスタ」を食べたというエピソードについては、その手があったかと、今度真似したい。一時期安いと思って酢漬けとかいろいろ食べたけど、まだ試していない食べ方がたくさんあるな。過去の記憶と未来の食べ方。

・一緒にいる時間が増えていけば、喧嘩をしたり、それなりにイラッとしたりすることもあったけれど、「でもケーキの上の苺をくれたんだ……」と思うと、怒りがスーッと引いた。彼にとってはたかだか数百円のショートケーキの苺が、その後何年も力を放ち続けていたのだ。（p.92）
・長い間忘れていたととを突然思い出すと、狂おしい気持ちになる。頭のなかで突風が吹いたような、満潮の海が荒れるような、スノードームをひっくり返したような、そんな風に全身の細胞が泡立つのを感じる。頭で覚えていないようなことでも、においや音で急に記憶の蓋がとじ開けられることもある。忘れて、思い出して、また忘れ て、そんなふうにあと何十年も自分の内面と向き合っていくことになるのだ。
（p.138）

…逆に自分が忘れている些細な食に関する記憶を、ほかの人から教えてもらうときの新鮮感も好きかもしれない。数百円のショートケーキでの恩がそこらへんに転がっているのかもしれないと思うのも楽しい。そんな話をほかの人から言われたり、ふとした時に思い出したりしたときの新鮮で清々しい気持ちを「スノードームをひっくり返したような」で表現する文章もけっこう好き。自分の内面と食の記憶は不可分に結び続けるはず。