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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代背景も世界観も異なる6つの物語が魅せてくれる、幻想的な女性の友情と歩みの一片。
どの作品もメインとなる女性二人の性質が真逆と言っていいほど違う事で、選択肢が広がり、世界が広がるのが目に見えるところが面白い。価値観や感性は違っても、反発し合う事はなく、なぜか心地好い。そんな言葉に出来ない空気感を掬い取って閉じ込めたような作品。
女性二人の間に男性が現れた時の微妙な戸惑いと、どちらに向けられているのか自分すらもわかっていない青い嫉妬心が、はっとするほど美しい。
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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこが良いのかは分からないけど、なんだか不思議。
タイトルも、何かしらの意味があるのだろうけど、理解不能。
こういう話が受けるんだね。
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ファンタジックな作品ありユーモアにとんだ作品など6編の珠玉な作品群「ベルを鳴らして」ではタイプライターの歴史など打ち手の苦悩なところなど深く感動しました。「あしながおばさん」ではスタンプを集めるおばさんのユニークでおもしろい。そして「あたたかくもやわらかくもないそれ」題名からも想像もつかないゾンビの話の数々ファンタジーありユーモアあり感動ありの短編集あなたも読んで楽しんで下さい。
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「嘘つき姫」を読んだ時にも感じた、ちょっと心が穏やかではなくなる不穏な感じがするのに読後感わまったく悪くないのがたまらなく好きです。今年の自分の心のベストテン入りは間違いないな。
そしてなぜか昔テレビ東京でやっていたドラマ「下北沢ダイハード」を思い出した。
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週刊新潮 2024年12月5日号 大森望 評
web本の雑誌 2025年1月3日 杉江松恋
https://www.webdoku.jp/newshz/sugie/2025/01/03/141500.html
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静かで目には見えないけど、確かにある感情が力強い。すごい。
「ベルを鳴らして」
タイプライターの先生と、彼が守りたかった秘密が静かに浮き上がってきて心が震えた。自分の存在を消そうとする先生と、彼の存在を追い続けるシュウコの勝負は、初めてタイプ勝負をしたときから決まっていたのかもしれないと感じた。次の行へ移るときに鳴るベルが象徴的に響く。
「イン・ザ・ヘブン」
テンポよくストーリーが展開していく。エリサたちが語る本からの引用セリフはどこか浮いていて、地獄の中で手を取り合うカミラとの絆だけが現実と結びついているような不思議な感覚。
「名前をつけてやる」
とても好き。朝世とすみれの関係性には名前がない。でも爽快な気分になった。
「あしながおばさん」
中盤かられいなの印象ががらりと変わった。娘を失った心の穴を埋めようとするわたしと夫、他人によりかかって生きるれいな。どこか寂しい読後感。
「あたたかくもやわらかくもないそれ」
ゾンビとは何だったのだろう。ゾンビはひとりで、人間は群れる。かつでゾンビで一度死んだくるみは、モモたちの紙飛行機で人間として生き返った。人間は得体の知れないものに恐れを感じて遠ざけようとしてしまうけど、赤い血の通った、温かみも感じる旅だった。
「渦とコリオリ」
実はそう見えているだけ、というものはたくさんあるなと感じた。この短編集も、現実も。
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六編からなる短編集。テイストは諸々で、読み心地は最初なんだかゾワつく床の上を裸足で歩かされているような不気味さに落ち着かない。が、徐々に読み慣れてきて、3番目の「名前をつけてやる」が来て、ひと息ついて、あ、こういうのもいけるのね、と懐に入られ、安心してたところに続く「あしながおばさん」で気を引き締められ、「やわらかくもあたたかくもないそれ」のゾンビが出てこないゾンビものに肝を冷やされる。一編一編心があちゃこちゃに振り回される。
全体通して、ここで終わったらちょうどいいのにーって思うとこからもうひとふた展開あって、あーなるほどと裏切られまくるのもまた一興。なんだか不思議なものを読ませてもらった。
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六つの短篇は百合ではないけど女性二人を軸に置いた物語。爆発的に面白いというものでは無いものの、各話の雰囲気がまったく違っていて坂崎さんの器用さがとてもよく出てると思った。
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『嘘つき姫』の作者が解き放った短編集。
あらすじをまとめるのが非常に難しいのですが、私が読んだ限りでまとめると、作者が用意した箱庭の世界で起きる日常的な非日常を生きる女性達を描いた作品です。
おそらく、タイトル通り、用意された箱庭、いやもしかすると、作者の中で育った箱庭が世に解き放たれたと表現するのが正しいかもしれない本作品。
現実的だけどどことなく非現実感が漂う不思議な感じが個人的には好きです。
作者の作品、実は今年の4月に出会ってから全部読んでいるという私。
そんな私の本作品の読みはじめの印象は『嘘つき姫』かなと。
正直、何を読んでいるのかわからないのになぜか読み進めたくなる感じはそれだなと。
くさやの干物とか鮒ずし、ブルーチーズという感じで癖強めですが、もう一口食べても良いかな?と思うと、いつの間にか美味しく感じて最後まで食べ切れてしまうような感じがありました。
各短編、バラバラに見えて実はある程度共通点がみられる作品だなと思ったわけですが、読んでいて思ったのは、実は私も各短編のように同じ世界にいて別の世界にいる。
住んでいる世界というのは同じできっと世界は広いはずなのですが、箱庭のように自分だけの狭い世界に生きているということになんとなく気付かされました。
どんなに世界を旅しても、どんなに有名になろうがどんなに金持ちであろうが、あるいはその逆であろうが、実は自分が見ている世界、感じている世界というのは限られているはずです。
つまり、生きるということは自分の箱庭を作るということなんじゃないかと。
そして、その箱庭の外の世界というのはなかなか見えない。
また、勿論ですが、他人の箱庭も見えません。
そうやって本作品を思い返してみると、登場人物達の秘密の箱庭を覗くような感覚だったなと思いました。
だからこそ、他人の現実の中に起きる非現実なストーリーを読むのが楽しくて仕方ないのではないか。
そんなことを思いながら感想を書いていると坂本真綾さんの『ヘミソフィア』の歌詞が頭に流れて来て、そういうことなのかもしれないなとなぜか思った作品です。
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中短編6作
不思議と受け止められない部分とそうじゃない部分があって、ときどき行間に突っかかる
嫌いじゃないのにうまく咀嚼できないからなかなか飲み込めない
けど、シュウコは好き
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現実をベースにしながら、ファンタジー要素や異国情緒を感じられる作品。読み終わった時の気持ちも寂しさと切なさと暖かさが入り混じったような不思議な感覚。
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稀有なワードセンスに脱帽! 女性の人間関係を幻想的かつ無情に描いた作品集 #箱庭クロニクル
何ですか、この稀有なワードセンスは。派手ではなく木訥と綴られる言葉の渦に溺れそうです。たしかに新人先生とは思えないですね~、これからの作品にも期待しちゃいます!
本作は幻想的な世界観の中でも科学的な視点もあり、社会・歴史問題に切り込む純文学寄りのエンタメ。どなたでも気軽に読める短編ですね。
●ベルを鳴らして
日中戦争戦時下の頃、邦文タイピリストの女性の物語。中国人のタイピングの先生、友人とのやりとりを描く。日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
邦文タイプですか、そんなのがあったんですね。かつての最先端技術やそれを扱う人々の背景を知ることができて勉強になりましたね。ミステリのような展開でハッとする場面もあり、楽しませていただきました。
本作内でタイプライターを身体の拡張性と評され、向き合い方について疑問を投げかけられる。現代でもAIやデバイスなど様々な技術が出てきてますが、我々はどう向き合っていくべきなんでしょうか。
●イン・ザ・ヘブン
アメリカ女学生の物語、友人やイケメン家庭教師との交流を描く。主人公の母は原理主義であり、また未成年者保護のため禁書運動も行っていた。そのため学校に行かせてもらえない彼女だったのだが…
サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の文面を物語に活用するセンス。また文章に圧倒的な品があってカッコイイなぁ。ラスト数行は痺れましたね。
原理主義か科学かのどちらが正しいのか?ということではなく、色んな選択肢があって、分からないことも正しいんだよということを教えてくれる作品。
●名前をつけてやる
とある企業、ボードゲームの商品名を決める話。外様部長の拘りのせいで、営業部とデザイン部で社内コンペをやることになり…
本作は現代社会が背景なので、特に文章にセンスを感じますね。同僚と会話してるみたいにすっと入ってくる。以下の一文が特にお気に入り、仕事場の惰性感がめっちゃ伝わってくるわー
本書引用―――
やってきた仕事を右から左へ流していく。ゆく川の流れは絶えずして、給料とやる気そこそこにやっている。
クイズの答えはひとつだけど、商品名はいくつもの答えがあって良く。正答を出すよりも大切なことがあるよね。
●あしながおばさん
揚げ物レストランで店員と客の交流。間もなくスタンプカードのルールが変わるらしく客は不満の様子で…
主人公の女性をあまり好きになれないと思いながら読んでいると、中盤あたりから切り口が変わる。どこに不満や辛さをぶつけていいか分からない想いが良く描けており、胸が痛みました。
●あたたかくもやわらかくもないそれ
モモとくるみの物語。幼い少女時代と大人になってからの時代を描かれる。最初の一文はもはや伝説ですね、何じゃコレ。どんな話なのか一気に引き込まれます。
コロナ禍時代の荒んだ人間関係や責任の押し付け合いが思い出されます。少女たちの近くて遠い距離感と、生と死���距離感が調和する。
●渦とコリオリ
バレエ劇団でのお話、掌編。人の価値観なんて所詮は思い込みで、それぞれ違ってもいいんだと優しく教えてくれました。
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幻想的な物語に登場する女性たちは、それぞれ心に暗い部分を抱えています。
それらと向き合い、折り合いをつけながら生きていくのですが、読んでいて気持ちがざわつき、さざ波が立ったように感じました、
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不思議で幻想的で奇跡のような短編が6話。
少し悲しさがあったり暗いところもあるけれど、それぞれのお話の終わりには、それだけでは終わらない人間の強さが垣間見える。
暗いのに明るい、明るいのに暗い。
とても読みやすい短編ばかりなのに読み応えがありました。
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すごく良かった。
美しい言葉で紡がれる5篇の短編集。
日本語のタイプライターとその講師の先生を巡る『ベルを鳴らして』と、ゾンビ・パンデミックと少女たちの連帯と交歓を描いた『あたたかくもやわらかくもないそれ』が特に好きです。
どの作品も、ちょっとビターで切ない結末なんですが、女性たちの一時の交流がとてもキラキラしていて愛おしくて。
まさにタイトル通り箱の中に閉じ込めて時々取り出して眺めたいなぁと思う作品でした。