投稿元:
レビューを見る
「密息」・・・初めて聞く言葉です。
尺八の演奏をするときの呼吸法が、この「密息」です。
腰を落として骨盤を後ろに倒して、腹をやや張り出したままどこにも力を入れず、横隔膜だけを上下させて深く呼吸をする。
これが「密息」という呼吸法です。
かつて畳に座り、帯を腰に締めていた日本人は、ごく自然にこの呼吸法を身につけていたそうですが、近代の生活様式の中で、いつの間にか忘れ去られてしまいました。
尺八奏者の筆者は、虚無僧尺八の伝承者を訪ねる中で、この「密息」に気づき、さらに様々な日本文化とのつながりにも言及していきます。
忘れられた「息の文化」を回復する過程で、日本人の身体や日本文化を見る新しい視点を発見できるかもしれません。
投稿元:
レビューを見る
帯表
虚無僧尺八の偉才が放つ画期的身体論!
日本人の身体に眠る「息の技術」
武術、禅、茶の湯・・・
日本文化の原点は「密息」にあった!
帯裏
日本人はあがりやすい。その原因のひとつとして、速くて浅い、胸式呼吸があるのではないか。緊張する、身体に力が入る、息があがる・・・この悪循環を断ち切るのにも、「密息」が効く。
投稿元:
レビューを見る
ちょっと啓発本的な軽めのタイトルだけど、中身はバークレーも出た日本の伝統的尺八奏者である著者による、呼吸法から導かれる日本人の身体論であり文化論。骨盤の倒し方に長年伝えられてきた日本人の姿勢があり、呼吸法があり、それは床座の生活文化から培われてきたという至極あたりまえの指摘が、すうーっと腑に落ちる。
明治以後100数十年を経て生活様式は洋式化したとしても、身体はそう簡単に変わるものではなく(でもやはり室内で靴は脱ぐのだし、床に座るのだし)、常に「過渡期」なんだなと。文句なく面白い。吹きもの楽器をやっている人は、是非読んでみると面白いと思う。
でも、そういう呼吸法をトレーニングしようなんて思わないんだよなー。(←ヘタレ)
投稿元:
レビューを見る
呼吸を含めて身体的なことに興味のあるこの頃。別の対談形式の本で知ったのをきっかけに買ってみた。「密息」という日本古来の呼吸法についてのあれこれが書かれた本。そのやり方も載っているが、自分でやってみても合っているのかいまいちよくわからんかった。西洋化の途中で忘れてしまった日本独自の音楽や空間の関わり方など、考えてみるきっかけになったと思う。
投稿元:
レビューを見る
演劇倶楽部『座』第27回公演
詠み芝居「歌行燈」は虚無僧尺八の中村明一氏とのコラボでした。
京都の建仁寺の法堂で3人の虚無僧が尺八の演奏を奉納していたのを見て以来です。
呼吸法が日本人論になるとはユニークだと思います。
投稿元:
レビューを見る
筆者は尺八奏者
■密息
尺八に伝わる呼吸方法
日本の身体意識・身体文化に密接に結びついている
尺八の音に魅せられて海外の音楽大学、大学院へ進学
胸式呼吸、腹式呼吸、逆腹式呼吸、循環呼吸とマスターするも、
尺八の演奏にはどの呼吸法もそぐわない
尺八は菅内の容量が非常に大きく、
世界的にも稀なほど大量の息が必要な楽器
虚無僧寺にて教わった奏法が密息
秘密の技法という意味ではなく、
「息をひそめる」、息を自他にわからせないようにするという意味
■密息の特徴
・大量に息が吸える
骨盤を後ろに倒すほど、吸える量が増える
・一瞬で吸える
鼻から吸うのが楽で、しかも音もなくできる
・強い安定感
骨盤が後ろに倒れているため、安定感がある
身体が動かず、安定し、吸う音がしないため静止感がある
・着物文化とのつながり
着物を着ると自然とできる呼吸
着物は着崩れないために、常に腹を張るようにしている必要がある
その状態での呼吸法が密息
・昔の日本人はみんな密息だった
密息でなければ演奏が難しい尺八の曲が非常に多い
■密息の方法
・腹を張り出したまま、吐いて、吸う
腹を張り出してその形を変えないこと
外の筋肉を動かさず、横隔膜だけを動かす
・力を抜く
へその下、下腹のみに力を入れること
・呼吸をしながら周囲に注意を向けてみる
身体は動かない、世界が静止したように見える
感覚が鋭敏になる、音・ものの動きを明瞭に感じられる
・骨盤を後ろに倒す(上級)
椅子に座って、腰を背もたれにつける感じ
首の付け根をやや前に出す感じ
力を入れないこと
・鼻の奥を広げて、目頭から吸う
■骨盤の位置と日本人
・日本人はかつて骨盤が後ろに倒れていた
日本の伝統的な家屋、農作業では後ろに倒れている方が自然な動作
現在は西洋風の家屋、生活で骨盤が立ち気味であるが、
西洋人ほどに立ちきってはいないため、精神的にも不安定となる
日本では国風文化ができた頃から床座の文化
立ち座りを繰り返すことで足腰が鍛えられた
椅子が普及した現在でも、お酒を飲むときなど床座が落ち着く
帯の文化は、腹部を抑え密息と深い結びつきがある
密息ができれば着崩れることがない
西洋人は身体の外側の筋肉が発達していて、骨盤も立っている
腹式呼吸は本来西洋人のための呼吸法
伊東浩二「日本人は他の人種と比べて、
最も骨盤が後ろに倒れている民族」
黒人の骨盤は前傾していて、
それがスプリントのスピードを生み出している
ナンバ歩きは加速には向いていないが、
山道・田んぼの多い悪路では安定する歩法
重心の上下動がない
骨盤が後ろに倒れているため、のこぎりなどを"引く"文化である
"しゃがむ"文化、西洋人はしゃがむことができない
投稿元:
レビューを見る
虚無僧尺八奏者がその研究で見付け出した、日本古来からの「呼吸法」を公開している。
中村さんはなかなかの博学者で、その知識が難しい言葉や名前と共にちりばめられている。内容は「密息」の紹介から始まって、日本の文化の特異性を密息と言う呼吸法から紐解いていく。
少しこじつけっぽくて無理を感じる所もなくはないけれど、なかなかユニークは発想があって面白い。
腹式呼吸と胸式呼吸があることは誰でも知っているけれど、少し不自然にすら思える密息なる呼吸法があって、それが日本独自の物だということだ。
読んでいる内に、密息を練習してどれだけ自分が変わるものか見届けたいという好奇心が沸いてきた。
投稿元:
レビューを見る
筆者は尺八奏者。尺八といえば、息を多く使う楽器だ。その筆者が書いた呼吸法の話。私も楽器を吹いていて、呼吸法には関心があったので、読んでみた。
筆者によれば、もともと日本人は胸式呼吸や腹式呼吸ではなく、密息と呼ばれる呼吸だったそうだ。密息は、息を吸うときに腹を膨らませ、息を吐くときにも下腹を突き出したままにする。骨盤が後ろに倒れている日本人の体系や、着物の帯を腰で支えていた事を考えると、日本人は密息だったというのは、うなずける。
呼吸法が変われば、身体や精神にも影響が変わるというくだりも興味を持って読めた。
投稿元:
レビューを見る
温泉に入った時に「ふ~っ」という吐息は、密息の名残だとか。
呼吸のリズムで体調の変化にも気づくことがあります。
日本人の呼吸は、日本の気候風土・文化が大いに関係しているとのこと。
呼吸が整った瞬間、呼吸をしていることさえ忘れ、集中力を高める業。
呼吸にとどまらず、音感、日本人自身が眠らせてしまっているのはもったいない!
投稿元:
レビューを見る
虚無僧尺八奏者の呼吸から日本人らしさを探っていく本。管楽器奏者やボーカリストにも参考になるかと思う。また倍音の話や絵画に見られる「フォーカスイン/アウト」の話など結構面白い良書だと思うけど、安っぽい健康本のようなタイトルが良くない。
投稿元:
レビューを見る
尺八奏者である著者が、腹式でも胸式でもない密息という日本古来の呼吸法を紹介し、そこに帰ることを勧めている本。著者によれば、無理に西洋式の体の使い方をしていることが、日本人の体の負担になり、パフォーマンスが上がらない原因にもなっているとのこと。
投稿元:
レビューを見る
古くから伝わる呼吸法を忘れたことによって、日本人は知らず知らずのうちに、息だけではなく体全体の構え方、美的価値観まで欧米化してしまった。しかし日本人はいつまで経っても日本人であり、欧米人にはなれない。本来の型を忘れ、何にもなりきれない状態は、弊害しか生まないのではないか。今一度、持ち込まれたものではなく、日本人に合った姿勢、呼吸法を学びなおすべきだ。
投稿元:
レビューを見る
虚無僧尺八の海童道祖の呼吸法「密息」。それは座禅の呼吸法でもあり、床に座る日本人が古来から行っていた呼吸法だとの気づき。
腰を落とし骨盤を後ろに倒すことで、お腹に息を入れやすくする。
息を吸うときも吐くときも腹をやや張り出したまま。それは和服の帯に腹を張るのと同じ動作。
この密息の呼吸法で、腰が据わり、身体が安定することによって、視点のフォーカスイン/アウトや倍音による音楽の従構造の音量と音質の重みなど、日本人独特の感性が説明できるとする。
腹式呼吸ではなく、腹を張ったまま息を吐きだす呼吸法は、馴染みがあるというよりは、やはり新鮮だが、個人的には水泳に使えそうだと感じた。
16-139
投稿元:
レビューを見る
日本の身体技法に興味があって、手に取った。
いわく、伝統的な日本の姿勢は骨盤が傾いていた。
いわく、腰を落とし、すり足で歩いていた。
いわく、からだにひねりやねじりがなく、反動を使って動作しない…。
本書では、特に呼吸法のことがメイン。
それは、密息という。
腹式呼吸とも、胸式呼吸とも違うらしい。
吸うときは腹が膨らむが、吐く時は横隔膜を落とすだけ。腹は膨らんだままだという。
呼気も吸気も量が多く、吐く量も安定させられるそうだ。
そうして、密息で声を出すと、倍音を含んだ音になると。
倍音が多いと、子音や雑音が多くなる、というのはちょっとよく理解できなかったが、以前読んだ『日本人の声』という本の中で、日本ではかすれたような「渋い声」を好む傾向が特徴的だといった指摘を思い出す。
う
正直に言って、自分の体の中に落ちてくるような理解をできていないから、日本文化のさまざまな分野に密息の影響を見ていく第八章は半信半疑。
それでも、日本のt造形の美しさが、全体の統一性でなく、細部の一つ一つの要素をフォーカスして楽しむようなものになっている(そしてそのような眼が密息によって生み出されている)というのは面白かった。
投稿元:
レビューを見る
著者は尺八奏者。「密息」とは「秘密の息」ではなくて「密やかな息」のことらしい。要は尺八の演奏に際して、より多くの息を使えるようになるためにはどうしたらいいか、それを追求する過程で辿り着いたひとつの答えだそうである。
しかし、それはむしろ日本伝統の呼吸法であるという。そもそも立ち居振る舞い(ナンバ)を始め、建築、絵画(マンガも含む)、舞台(能・映画)、料理(和食)、禅、俳句、茶道など、古今日本の文化は密息あってのものだという。
どういうことか。
方法論としては、身体の上下動が生じない呼吸である。すなわち視点の水平が定まる。それにより全体(従構造、ディテール)に意識が向き始め、主構造が隠れる・・・。
と続く説明は哲学調を帯びてくるが、例えば日本独特の「間」って要は「呼吸」だよねと思えば、なかなか納得の話なのであった。