- 販売開始日: 2025/09/03
- 出版社: 評論社
- ISBN:978-4-566-02489-2
涙の箱
ノーベル文学賞作家ハン・ガンがえがく、大人のための童話この世で最も美しく、すべての人のこころを濡らすという「純粋な涙」を探して 昔、それほど昔ではない昔、ある村にひとりの...
涙の箱
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商品説明
ノーベル文学賞作家ハン・ガンがえがく、大人のための童話
この世で最も美しく、すべての人のこころを濡らすという「純粋な涙」を探して
昔、それほど昔ではない昔、ある村にひとりの子どもが住んでいた。その子には、ほかの子どもとは違う、特別なところがあった。みんながまるで予測も理解もできないところで、子どもは涙を流すのだ。子どもの瞳は吸い込まれるように真っ黒で、いつも水に濡れた丸い石のようにしっとりと濡れていた。雨が降りだす前、やわらかい水気を含んだ風がおでこをなでたり、近所のおばあさんがしわくちゃの手で頬をなでるだけでも、ぽろぽろと澄んだ涙がこぼれ落ちた。
ある日、真っ黒い服を着た男が子どもを訪ねてくる。「私は涙を集める人なんだ」という男は、大きな黒い箱を取り出し、銀の糸で刺繍されたリボンを解くと、大小、かたちも色もさまざまな、宝石のような涙を子どもに見せた。そして、このどれでもない、この世で最も美しい「純粋な涙」を探していると話す。男は子どもがそれを持っているのではないかと言うのだが――。
「過去のトラウマに向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」が評価され、2024年にノーベル文学賞を受賞したハン・ガン。本書は童話と銘打ちながらも、深い絶望や痛みを描き、そこを通過して見える光を描くハン・ガンの作品世界を色濃く感じられる作品です。
幸せな出会いが実現し、日本語版の絵はハン・ガン自身、長年ファンだったというjunaidaさんが担当。ハン・ガンが、「読者それぞれのなかにある希望の存在」としてえがいた主人公や、どこともいつとも特定しない本作の世界を美しく描き、物語とわたしたちをつないでくれます。
2008年、韓国で発売され、本国では子どもから大人まで幅広い年齢層に愛されている本作。ハン・ガン作品との出会いにもおすすめの一冊です。
「きみの涙には、むしろもっと多くの色彩が必要じゃないかな。特に強さがね。
怒りや恥ずかしさや汚さも、避けたり恐れたりしない強さ。
……そうやって、涙にただよう色がさらに複雑になったとき、ある瞬間、きみの涙は
純粋な涙になるだろう。いろんな絵の具を混ぜると黒い色になるけど、
いろんな色彩の光を混ぜると、透明な色になるように」
―本文より―
涙をめぐる、あたたかな希望のものがたり。
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涙を箱に集めるおじさんと特別な涙を待つ子ども
2026/01/05 09:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「私が探しているのは、純粋な涙なんだ」
涙を箱に集めるおじさんがいた。
かつて著者のハン・ガンさんが観たこども劇。その劇中のおじさんは、黒い箱を持って舞台に現れ、大きな透明な涙の粒を見せてくれた。
彼女に長い間強い印象を残したこのおじさんのをモチーフに、誕生したのが、この童話です。
小さい頃から、どうしたって涙が出てしまう、特別な涙を待つ「涙つぼ」と呼ばれている子どもと、涙を箱に集めるおじさんが、出会います。おじさんは涙を箱に集めて、それを買ったり、売ったりしているのです。ひょんなことから、子どもとおじさんは一緒にある人を訪ねることになりました。おじさんの飼っている青いウグイスと共に。
二人と一羽が行動する道中、いろんな涙に出合います。悲しい涙、うれしい涙、心が洗われるような涙、、、。人とのふれあいで、長年のしこりがほどける瞬間は感動的でした。この童話を読みながら、映画「ホリディ」のあることがきっかけで涙が出なくなったアマンダを思い出しました。アマンダの涙も悲しかったり、嬉しかったり、そしてその先の世界が急に開ける、すてきな涙だったなぁ。
ノーベル文学書受賞以前の童話
2025/10/22 06:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハン・ガンさんは2024年にノーベル文学賞を受賞した作家で
韓国人で初めてで、アジア人女性初めてで、1970年代生まれで初めてと初めて尽くしで、
受賞後その作品は日本でもベストセラーになった。
そして、この『涙の箱』は、そんなハン・ガンが描いた大人のための童話として
2025年8月に刊行された美しい一冊だが、
韓国で出版されたのが2008年ということだから彼女にとっては初期の作品になるだろうか。
そういう意味では、ハン・ガンの入門書として入りやすいかもしれない。
彼女がノーベル文学賞を受賞した際の受賞理由に、
「人間の命のもろさを浮き彫りにする詩的散文」という一節があったようだが、
この作品こそその「詩的散文」の力が遺憾なく発揮されているといえる。
登場してくるのが、まわりの人たちから「涙つぼ」とからかわれるほど涙がとまらない女の子。
この子の涙がとても貴重だと、彼女の前に現れるのが「涙を集めている」おじさん。
おじさんが探しているのは「純粋な涙」。
女の子の流す涙はきれいだけれど、本当の「純粋な涙」ではないとおじさんはいう。
彼女の涙が「純粋な涙」になるには、もっと時間が必要だと、おじさんは教える。
もしかしたら、ハン・ガン自身この童話を書いた時、
彼女自身がそう思っていたのではないだろうか。
もっと自分を鍛える、時間が必要だと。
この童話から10年以上の時を経て、ハン・ガンはノーベル賞作家となったのだから。
ノーベル賞作家
2026/01/22 13:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
何かがあっても、何もなくても、いつも涙が出てしまう少女と、涙を集めるおじさん。「涙」の意味と、それが持ついくつもの力を魅せてくれる美しい童話。
人は何故泣くのか。泣いても何も変わらないと言うけれど、それは違うのかもしれない。涙が代わりに主張してくれるお陰で、自分自身が少し冷静になれる。幻想的な世界観の内に秘めた強さがキラリと光る一冊。