３日でわかるローマ帝国 みんなのレビュー

古代ローマの軍事・社会システムに焦点を当てた、分かりやすく骨太な解説書

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投稿者：いえぽん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

英雄もいれば暴君もいる、名君もいれば、私利私欲に走った者たちも……古代ローマを彩る人々は様々で、現代の私たちからすれば、驚いてしまうようなエピソードも無数に存在しています。そして、シンボリックな戦争や事件などは、数千年経った今でも語り継がれ、史書やフィクション作品という形でもって、目にすることができます。

ただ、ローマという巨大帝国の軍事・社会・政務といったシステムが、どのように運営されていったかという部分に関しては、専門的で難解な語り口が取られることもしばしばで、帝国を知る上では不可欠なものであるにも関わらず、敬遠されることも多かったのですが、本書は古代ローマの社会的構造、軍隊や政治の仕組み等について、極めて分かりやすい構成で解説することに成功しています。ローマの誕生から成熟、衰退に至る年代順の過程を追いながら、それぞれの年代で用いられたシステムを示し、詳細に解説を加えることで、ローマがどのように動いて行ったかが、無理なく理解できる特徴を持っていて、兵の任期や、軍隊の詳細な構成、ローマの警備や消防を扱う部隊の大きさや、今日のキャリアとノンキャリアにも似た官僚・騎士階級の内容など、かなりディープな知識を扱っているにも関わらず、図解が効果的に機能しているため、難しい印象を受けないという特徴を持っているのは素晴らしいと言えるでしょう。社会システム的な部分に特化しているため、雑学的なエピソードや豪壮な闘技場などの記述はあまりありませんが、その分、より骨太な、歴史研究の入門書として、知識を深めていくことができます。

「３日で分かる」という副題ですが、何度も繰り返し時間をかけてじっくりと読み返し、理解を深めることで、専門的な書籍を読み進める際の足がかりとしての役割を果たしてくれる好著です。これから大学で何を学ぼうかと考えている学生の方にも、おススメできるかも知れません。