ふしだら森の未亡人 みんなのレビュー
- 葉月奏太(著)
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評価内訳
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2016/10/20 18:06
愛慕と懺悔のファンタジー
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
挫折してお先真っ暗な27歳の主人公が宛てもなく彷徨った果てに美女と出会うのは竹書房の官能小説で割とよくある展開。今回は深い森の中の湖畔が舞台となる。出会ったのは33歳の未亡人だが28歳で独身の妹もいる。限りなくダブルヒロインだが一応のメインは未亡人ということでタイトルに冠されているのだろう。古びた旅館を営んでいて、何故か世話を焼いてもらい、文字通りに上げ膳・据え膳となる。起床から三度の食事に就寝まで、日常の全てを、まさに日常を送るがごとく甲斐甲斐しく尽くす2人。もちろん夜伽も含まれる。その真相が最後に判明して、これが亡夫への愛と哀しみのファンタジーだと解る作品である。
夜も上げ膳・据え膳につき主人公がアクションを起こすことはほどんどなく向こうから夜這いしてくれる官能描写。姉から始まり、妹が踏襲する流れで交互に営まれる。普段は清楚で貞淑な姉の方が未亡人の空閨もあって積極的。主人公が就寝する居間に始まり、露天風呂にも現れ、遂にはお尻にも求める貪欲な一面を併せ持つ。騎乗位も多く、されるがままの主人公は恐縮するばかり。そんな誘惑と癒しの情交が続くのだが、亡夫に容姿が似ている主人公を内心では重ねて見ているところもあって、かつての夫婦の営みを思い出すかの積極さとも受け取ることができる。
フランクな愛嬌の良さにらしさがあるものの情交では一転して受け身な妹。そのために自信はなくとも頑張る主人公によって(そのきっかけは妹だが)森の中で木の枝にロープを通して万歳緊縛させる立ちプレイが見られたりする。元より仲の良い姉妹ということもあって前夜の姉との交わりは全てお見通し。自分もとせがむところに可愛らしさがある。自分優位に進めつつも主人公の責めに喘ぐ姉と受け身の姿勢で被虐的に悶える妹といったコントラストもあり、それぞれ優しい官能描写なれど思いのほか淫猥度が高い。
こうした状況に耽溺することなく、時には耽溺しそうになっても持ち直し、自らを見つめ直す真面目で謙虚な主人公だが、終盤で『鶴の恩返し』よろしく入ってはいけない姉の部屋に入ってしまい、見てはいけないものを見てしまう。
ここで知らされる過去の真相は哀しくて切ない。自分の今の境遇やそこから生じる悩みに行く末までもが亡夫の過去と同じであることにショックを受けながらも、そこから新たな一歩を踏み出そうと決意した主人公。そして、その門出の夜を共に過ごす優しい姉妹。この一歩は自分だけでなく姉妹のためでもあるとする主人公もまた優しくも哀しく切ないのだが、その最後の一歩が亡夫とは異なることで希望へと繋がる結末である。
時が止まったかのように昭和然とした住まいや姉妹の衣装などに塗されたヒントによってどうにもならない行方が暗示されてはいるのだが、男なら過去を塗り替えて、このファンタジーをも塗り替えて、女心を塗り替える意気込みを見せてほしかったようにも感じてしまうところだが、それは詮無きことでもあろう。故に無念の歯痒さも残ると言わねばなるまい。
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